カナダで開設できる3つの積立口座「RRSP」「TFSA」「FHSA」:第2回「TFSA」

RBC Wealth Management Group日本語チームの平井アンディさん。2023年2月10日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito
RBC Wealth Management Group日本語チームの平井アンディさん。2023年2月10日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito

 将来のために積み立てを考えている人、現在のプランを見直したい人など、知っておくとためになる、カナダの3つの積立口座を紹介。

 退職後のための自己積立型年金プラン「RRSP:Registered Retirement Savings Plan」、非課税が特長の「TFSA:Tax-Free Savings Account」、今年中に始まる「FHSA:First Home Savings Account」。

 それぞれに特徴が異なるが、複数を開設しての利用も可能で、内容をよく理解して、自身や家族の将来のために賢く利用したい。

 そこで今回はRBC Wealth Management Group日本語チームの平井アンディさんに話を聞いた。

 第1回では「RRSP」を紹介。2022年タックスリターンへの税控除対象期間はすでに終了したが、2023年の対象期間はすでに始まっている。詳しくは、「カナダで開設できる3つの積立口座『RRSP』『TFSA』『FHSA』:第1回『RRSP』」を参照。

 第2回は「TFSA:Tax-Free Savings Account」を紹介する。

TFSA:Tax-Free Savings Account

 2009年から導入された貯蓄専用口座。RRSPも同じく貯蓄専用口座で、両方とも基本的に長期的な積立型の口座として開設し、将来に備えることを本来の目的としているが、条件や特徴が異なる。

 所得から控除ができる特典はないものの、一般的にはTFSAの方が自由度が高く使いやすいと言われている。詳しく解説する。

対象:
カナダに居住し、SIN(Social Insurance Number)を持っている成人

特徴:

  • カナダでの所得の有無にかかわらず、カナダに居住する成人でSINを持っている人なら誰でも開設できる。RRSPより始めやすいと言われる理由の一つ。
  • 積立額からの利益が非課税、引き出しは必要な時にいつでも可能で税金がかからない。
     TFSA最大の特徴。一般的なSaving Account(普通預金口座)や投資の利益は課税されるが、TFSAは課税されない。目的に応じた貯蓄が非課税でできる。
  • 1年間の預金限度額は毎年連邦政府が決定する。
     2023年の限度額は6,500ドル、累積限度額は最大88,000ドル。
  • 累積限度額は、カナダに居住した年から利用できる。
     TFSAは口座を開設した時期に関係なく、カナダに居住した年から限度額が累積されていく。
     例えば、TFSAは2009年に導入されたため、2009年以前からカナダに居住している人は、今年TFSA口座を開設しても2009年からの累積限度額88,000ドルまで入金できる。2023年にカナダに移住した人は、今年の限度額6,500ドルが利用できる累積限度額となる。
     個人の限度額はカナダ歳入庁(Canada Revenue Agency: CRA)の自身のアカウントで確認できる。

 TFSAはカナダに居住し、SINを持っている成人なら誰でも開設できるが、数年以内にカナダを離れることが分かっている場合は、口座を保つことはできるが、解約手続きの煩雑さなどを考慮するとあまり勧めないとのこと。

 TFSA口座を開設できる成人年齢は、居住している州の成人年齢によって決まる。ブリティッシュ・コロンビア州は19歳、アルバータ州、オンタリオ州は18歳。その他も各州で確認が必要。

お勧めの利用方法

 TFSAは一律の限度額こそあるものの、非課税という特長を活かした利用方法があると説明した。

 一つは、RRIF(Registered Retirement Savings Plan:年金所得口座)からの年金の入金先として利用する。RRIFは71歳になる年にRRSPから移行する口座(詳しくは第1回RRSPを参照)。RRIFからの引き出し額をすぐに使用する予定がない場合は、TFSAに入金しておくと非課税で運用ができる。

 もう一つは、成人している子や孫に自動積立設定を勧める。TFSA口座の最初の入金を自己資金からサポートする、子や孫への金銭的支援、若いうちからお金の管理を学ぶ機会を与えるなどの目的で利用することを勧めている。

RRSP / RRIF / TFSAに共通する口座管理の見直しについて

 平井さんは、この3つの口座には共通の特徴があり、自身の持つ口座の見直しを定期的に行うことを勧めている。

 共通の特徴の一つは、遺言書なしで相続の受取人を設定できること。受取人を設定していない、もしくは設定した当初から状況が変わったなどの理由で変更が必要になることがあるため、「必要に応じて設定をしておかないと、その時に自分が望む相手が受け取れないということになりかねませんので、見直しを勧めています」と説明した。

 また、管理を簡単にするために口座の整理・一本化も勧めている。開設時にはその時々の判断で複数の金融機関などに口座を作ったとしても、時がたって利用していない金融機関があったり、複数個所にあることで管理が大変だったりと、状況が変わる。そこで、口座を見直し、整理・一本化することが望ましいと話す。

 RRSPやTFSAは不要な口座を解約して1つにまとめることができる。しかも、解約は自身で金融機関に伝える必要はなく、まとめたい側の金融機関に依頼することで金融機関が代行してくれる。自分の口座にあるお金を移行するということで税金もかからない。

 「忙しい生活の中では、口座をまとめることで時間の節約にもなりますし、書類の見落としなども防げるので、口座の整理・一本化を勧めています」と語った。

 第3回は、今年から始まる「FHSA:First Home Savings Account」を紹介する。

平井アンディ(ひらい・あんでぃ)
Chris Kwok Wealth Management Group・Associate
15年以上のキャリアを持つ。将来を安定して過ごせるためのライフプランについて、セカンドオピニオンの相談も受けている。
https://ca.rbcwealthmanagement.com/chris.kwok/home

Chris Kwok Wealth Management Group
RBC Wealth Management Dominion Securities Inc.(RBCウェルス・マネジメント資産運用グループ)の日本語担当サービス。
RBCグループを構成する5事業の一つRBCウェルス・マネジメントに含まれる。個人および法人の資産管理、並びにあらゆるニーズに応える金融商品・コンサルティングサービスを提供している。

RBC Wealth Management Group日本語チーム。写真提供:斉藤光一
RBC Wealth Management Group日本語チーム。写真提供:斉藤光一

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