11☆「めんそーれ沖縄」編

こんな夢を見た。
我が輩はしゃれたかりゆしを着て、とてもうれしい気分で、沖縄・那覇の国際通りを歩いている。でもなぜだかよく分らない。秋たけなわの10月、夕日が美しいたそがれ時である。スターバックスのマークが目に入り、びっくり。
思わず店に飛び込みコーヒーを飲んでいると、前の席で子どもたちが楽しそうにしゃべっている。中学生ぐらいの男の子と女の子、そしてまだ幼いお茶目な女の子の兄弟姉妹らしき3人。今日、ママが結婚した新しいパパをナンて呼ぼうか・・・、そんな相談をしているようで思わず耳を傾けた。
しばらくしてママと新しいパパが現れた。そのパパの顔を見たとき、目がさめた。
令和5年10月 夢一夜(漱石「夢十夜」に因んで)

 私事で恐縮ですが、この10月久しぶりに日本を訪れ、先ずは沖縄に、さらに足を伸ばして台湾、そして東京・川崎と駆け巡った。実は、息子が沖縄の女性と結婚式を。那覇でささやかながら、沖縄伝統のシャツ、かりゆしを着て、心に残る結婚披露宴を。そして突如として素敵なお孫ちゃんが3人。沖縄の守り神シーサーのおかげで、初めてのじいちゃん・ばあちゃん役も無事こなすことができ、とてもうれシーサー。

 自然豊かな、独特な歴史を持つ沖縄にはぜひ一度訪れてみたいと思っていたが、バンクーバーに移住してからは、かなり遠い存在に。でもこのような形で夢が実現するとは、この上ない喜びで、先ずは息子に感謝。また、はるか昔の教師養成講座の卒業生とハグもでき、すごくたのシーサー。誠に有意義な大きな節目となる沖縄の旅であった。

 また、日本語教師として沖縄語(うちなーぐち)はとても興味深い。数多くあるが先ずは空港で目につく「めんそーれ沖縄」は「ようこそ沖縄」であり、「こんにちは」は「ハイサイ」と「ハイタイ」で、男性と女性で異なり、確かに文化の違いを感じる。

 さらに、言い方は標準語と同じだが、意味がおもしろく異なる。例えば「ランチに行きましょうね」である。この表現を沖縄以外の会社などで、突然聞いた人は「えー、なぜ、急に・・・」と、間違いなく戸惑ってしまうであろう。

 日本語教師としても、この「~しましょう」は「Let’s」の意味、相手を誘う表現として教えている。「あ、もうお昼、ランチに行きましょう」や「疲れました、ちょっと休みましょう」などである。

 でも沖縄では文の最後に「ね」を付けて「~しましょうね」はナント、誘いではなく、単に自分の行動を相手に伝えるときに使う表現とのこと。えー、びっくり。

 すると、「ランチに行きましょうね」を聞いて誘われたと思い、一緒について行ったら、沖縄の人(うちなーんちゅ)は逆にびっくりしちゃうのであろう。

 実際、「お先に帰りましょうね」と言って、一人で帰るのがごく自然で、標準語の「お先に帰ります」と同じ意味として使っているとのこと。うーん、なるほど。

 こんな言い方は人との繋がりを大切にし、相手に対して常に温かな言葉で接したいとする沖縄特有の文化と言われており、慣れれば、確かに温かみを感じる表現である。

 このように、沖縄言葉は古き文化とも絡んで奥が深い言語であり、ぜひもっと学んでみたい。そしてまた、お孫ちゃんたちとおしゃべりしながら国際通りを歩いてみたい。

 では、今回のエッセイはこれにて終わりにします、ではなく、終わりにしましょうね。

「ことばの交差点」
日本語を楽しく深掘りする矢野修三さんのコラム。日常の何気ない言葉遣いをカナダから考察。日本語を学ぶ外国人の視点に日本語教師として感心しながら日本語を共に学びます。第1回からのコラムはこちら

矢野修三(やの・しゅうぞう)
1994年 バンクーバーに家族で移住(50歳)
YANO Academy(日本語学校)開校
2020年 教室を閉じる(26年間)
現在はオンライン講座を開講中(日本からも可)
・日本語教師養成講座(卒業生2900名)
・外から見る日本語講座(目からうろこの日本語)    
メール:yano@yanoacademy.ca
ホームページ:https://yanoacademy.ca