山野内勘二 駐カナダ大使の年頭挨拶

 明けましておめでとうございます。バンクーバー新報改め、日加トゥデイの読者の皆様におかれては、健やかな新年をお迎えのこととお喜び申し上げます。

 昨年5月にオタワに着任して、早くも8か月が経ちました。パンデミック下での行動制限が徐々に緩和され、幸いなことに、着任から現在までの間にカナダ国内各地を訪れる機会にも恵まれました。日本からカナダへの主要な玄関口であるバンクーバーも6月に早速訪問し、日本関連企業の皆様、日系コミュニティ関係の皆様、文化・芸術活動に携わっている皆様等と直接にお会いし、お話を伺う機会を頂きました。広いカナダは東西南北、地方ごとに異なる特色に溢れ、また、国を構成する人々や考え方も実に多様です。ここオタワは連邦の管轄を司る街であり、州の管轄が別途定められているこの国を少しでもよりよく知るにはオタワの外に出て、できるだけ多くの場所に足を運び、その土地の空気と人に触れなければならないと常々思っているところです。着任後比較的すぐのバンクーバー訪問は、その思いを明確にする鮮烈な体験となりました。バンクーバー及び西海岸地域を次に訪れる機会を、また楽しみにしたいと思います。

 一方、昨年は、ロシアによるウクライナ侵略が発生し、また、日本の周辺では、東シナ海や南シナ海における力を背景とした一方的な現状変更の試みやかつてない頻度でミサイル発射実験を試みる北朝鮮等により、世界の平和と安全、そして国際秩序が挑戦を受けた年でした。地政学的な困難が顕著となっています。パンデミック以降の半導体不足に象徴されるサプライ・チェーンの問題、ウクライナ危機を端緒とする食料安全保障やエネルギー安全保障の問題は、日本・カナダも例外なく、世界中の市民レベルでその影響が認識されています。一方、こうした様々な困難な課題を前に、カナダはインド太平洋地域の重要性に目を向け、この地域の同志国との関係強化を目指す方向に舵を切りました。昨年11月の「インド太平洋戦略」の発表は、伝統的に欧州・大西洋との結び付きが強く、また、長きにわたり外交戦略を策定してこなかったカナダが、現下の情勢を見据え、インド太平洋を掲げ分野横断的に外交・安全保障政策の基本戦略を策定・公表したものであり、非常に大きな意味を持っています。ジョリー外相を始めとする連邦政府の主要閣僚による同戦略の発表がバンクーバーで行われたことも、内外に鮮烈な印象を与えるものでした。これに先立つ昨年10月には、ジョリー・カナダ外相の初訪日が実現し、林外相と共に「自由で開かれたインド太平洋に資する日加協力のアクションプラン」を発表しました。日本とカナダは、日加両国そして地域の平和と繁栄を確保していけるよう、共にプラン実施に取り組んでいきます。

 日加間のビジネス関連では、農業やエネルギーという伝統的な分野に加え、脱炭素社会への移行の加速化を視野に入れ双方向で大きく進展しつつあり、今後はLNG、水素やアンモニアといった次世代エネルギー、重要鉱物資源、AI・量子等のハイテク分野での日本からカナダへの投資も期待されます。また、日本食はもはやカナダの食文化の一角を占めており、ミシュラン・ガイドにおける日本食レストランの際立った存在感は誇らしい限りです。パンデミックによる行動制限もなくなり、今後またバンクーバーを足がかりにカナダを訪問する邦人が増えることと思います。そこから多くの新しい交流が生まれることを期待しています。

 本2023年は、日本がオタワに公使館を開設し外交関係を樹立して95周年という節目の年でもあります。本年日本はまた、G7議長国として、5月にG7広島サミットを開催し、それに合わせて一年を通し国内各地でG7関係閣僚会合を開催します。要人の訪日を始め人の往来を促すこれらの機会も捉えつつ、様々な分野・レベルにおける日加間の協力が深まるよう、政府レベルでも一層努力したいと思っております。

 ウィズ・コロナの時代にあって、邦人の皆様が日々安心して生活し、活動できるよう、日本大使館・バンクーバー総領事館ともに力を尽くして参ります。

 本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

令和五年元旦