日本のマイナンバー制度 後編

2021年9月23日

 桂川 雅夫

(日本のマイナンバー制度 前編より続く)

以上が、日本のマイナンバー制度についての現状を精査した結果とはいえないが、短期間に理解できた範囲での疑問点だ。

 マイナンバー制度に加えて、マイナンバーとマイナンバーカードの違いもわかりづらい。

 マイナンバーカードは日本国居住者の申請により付与されるが、マイナンバーは自動的に国が与えること、2016年に利用開始で5年以上が経過した2021年8月1日で36%の普及率であるのはカードだったと、前編公開後に分かった。

 どうしてカードに運転免許証や、健康保険証や、パスワードや、有効期限などと複雑な要素を取り組む必要が有るのかだ。来年4月から運用される改正年金法とマイナンバーは既に結びつけられているという事であるから、年金番号を簡素化して、それをマイナンバーと呼ぶ様にすればよかったのではないのか。後は20歳以下の未だ年金ナンバーを持っていない人たちに、年金ナンバー(即ちマイナンバー)を与えればよかったという事だったと思う。

 或いは既に各個人にマイナンバーが通知されているという事であるから、マイナンバーカードを申請ベースでなく、国が全員に無料で送ればよいことだ。あとは銀行の口座開設時に番号記入をすでに国は義務づけているのだから、納税や年金支給で行政の機械化が促進される事になれば、納税、社会保障、災害対策と云うようなマイナンバーの3つの当初目的を十分カバーすると思う。

 そうすれば申請ベースでマイナンバーカードを取得する必要もなく、国のデジタル化促進という目的から言えば手っ取り早く簡単であり、そうでなくとも日本の行政のデジタル化の遅れの早期改善に寄与するのではないかと思う。運転免許証や健康保険証と結びつけて若しも今のまま進めて、マイナンバーカードの普及が100%に達しなかったら、国の行政のデジタル化が完結しない、という様な事になるのだったら、本末転倒だと思う。

 あくまでも参考までであるが、米国のSSN(Social Security number)やカナダのSIN(Social Insurance Number)は9桁の番号で長年の歴史がある。例えば筆者自身は、米国で約60年前に、カナダで約30年前に貰った番号は、運転免許証や健康保険証とは結びつけられたりしておらず発行されたものだ。

 即ち、SINはそれぞれの国に住居住者に政府が、誕生とともに、或いは海外から移住した滞在許可を得た居住者一人一人に、自動的に発行してくれる終身同一番号のもので、カードは自動的に送付されてくる。パスワードも不要、有効期限もなく、銀行口座の開設や、毎年の納税申告時に使われる。一方政府からの給付金の支給の折には、支給願いの申請をしなくとも、自動的に振り込まれてくる。又年金の支給もその年齢になれば通知が来て、必要な手続きをすれば、自動的に届けてある銀行口座に振り込まれる、という様な多目的な事柄を可能にする番号である。従って、それぞれの国の行政のデジタル化に、最も簡便にして寄与している、国内の全居住者を識別する番号制度だと思う。

 これからの日本の雇用形態もますますこれまでの終身雇用でなく、転職も多くなることであろうし、夫婦別姓の時代も近く来るだろうし、企業も統合合併も増すであろうから個人の納税業務を肩代わりするのはやめて、又世帯主制度のもとでものごとを進めるのでなく、更にマイナンバーカードの普及が100%になるまで待つのでなく、全てがそれぞれ個人をベースにした、納税や社会補償が行われる時代を前提とした、デジタル化社会の構築が必要になるであろう。

 そういう目的により適した、マイナンバー制度を早期に実現して欲しいと願っている。  

 (完)

                                         

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