第113回 庭のトマトと95歳友達 

グランマのひとりごと

~グランマのひとりごと~

 避けても避けてもやってくるのが 人生の課題(問題?)であると同時に運命や使命かもしれない。諸問題を乗り越え使命を果たしていくには 自分の個人的な枠で考えずに、誰かの為、世の中という大きな枠でとらえて智恵を絞り、ご縁で出会った人達と力を合わせていくのがいいのだろう。私のトイレット「人生は人との出会いの積み重ね。運命は人が運んでくる私の命」*と書いたカレンダーがある。

 お早う! 近所の和子さんが自転車でやって来た。LINEに彼女が「藍染の風呂敷」が欲しいと書いていた。「終活」で持ち物整理中のグランマ、早速「藍染風呂敷」あるよ「取り来て」とメイルした。さっそうと自転車でやって来た彼女へ風呂敷を渡す。彼女は看護婦さんが使うマスクや帽子を作っていると言う。以前はアフリカの子供達の募金ランチ会も皆でやっていた。「誰かの為、世の中の為」に常に目が向いている人だねぇ……。

 と、突然「ねぇ、トマトどう?」と言った。「なんでぇ?」「私がトマトを植えているのを知っているの?」聞くと、私のトマトの生みの親は彼女だった。彼女がトマトの苗を多数の友達に分けた。それが周り回って私の所にも1本来た。トマトの生みの親は和子さんで、その彼女が「トマトが見たい」と言う。早速見て貰った。14個実った。正式にどう呼ぶかは知らないが「ブラックトマト」と言った人がいる。濃い赤い色で、本当に美味しい! 来年も苗を呉れる約束した。

 郵便受けを開けた。「あれぇ、これ!」手にして思わずニコニコ。今はあまり見かけなくなった、赤と青の縁取り航空便封筒だ。この赤青縁取り封筒をグランマが日本から受け取り始めて、もう30年。その送り主は今「95歳」、当時大学教授だった彼は日本から学生をキャピラノカレッジ(当時はカレッジだった**)へ送り、交換留学を始めていた。その延長をグランマの会社で引き受け、仕事をとうしての知人が友人となった。第1回目の企画終了最終日、お別れ会でカレッジから、又ホームステイ先の家族等大勢の参加者がいた。そこで彼は英語でスピーチした。大喝采だった。あの時、ニコニコ壇上から降りて来た先生の姿が今も忘れられない。 

 今、開封した彼の手紙、書かれた文字の美しい!何時もながら数ページに近況、後はコロナ情報、新聞の切り抜きが同封。文中5年前に運転免許を返納とあった。多分その頃、彼が礼子奥様と一緒に安城駅へ私を迎えに来て下さった。あの時、彼の運転はスピードが有るので驚いた。「へぇー。90歳で!」

 更に手紙には「93歳の時、卒業生の依頼で旧制の学校の事を1時間40分、駅前にできたコンベンション ホールで公演」それでも「平気でした」とある。しかし、その後、現在は「急激に力の減退」を感じると書いている。ちょっと心配。頑張れ山下先生! 

 さて、どんどん自分の難聴は酷くなる。補聴器も4回買い換えた。そして、生活もそれに従って狭まって来る。其の狭まった生活の中から、生きる力を外から貰い、世の中を見て、感じて、一所懸命、身体の節々の痛みと戦いながら、それでも、楽しく生きる、そんな、グランマなのだ。そして、沢山の「人との出会いの積み重ね」やはり「運命は人が運んでくる、私の命」だなぁ。

 許 澄子

*「人生は人との出会いの積み重ね。運命は人が運んでくる私の命」-小林正観さんの言葉。
**現キャピラノ大学。2008年まではキャピラノカレッジだった。