復活したアフガニスタンのタリバン(後編)

2021年8月31日

 桂川 雅夫

 8月26日には、カブール空港の入り口近くの検問所で、爆弾テロが起きて100名以上の犠牲者(米兵13名、タリバン兵28名、残りは一般アフガン人)が出た。同日ISは犯行声明を出した。ISは米軍の撤退に協力するタリバンを敵視しての犯行で、両者は対立関係だという。

 8月27日の日経ニュースメールの見出しは、 

”日本のアフガン退去難航  自衛隊派遣、初動の遅れ響く“

であり、鈴木一人東京大学教授の「日本政府の危機意識の乏しさ」と云う見解が載せられた。又「大使館などで協力していたアフガン人の方針が決まらないまま、大使館員らが先に脱出したのは拙速だった」と云うことと、「日本は緊急事態の計画対応が十分でない」と云う見解が載っている。

 先ず、日本の大使館員が17日に同盟国(英国)の航空機でアフガン国外に退去したという報道であるが、大使館員が国外退去を勝手にするとは考えられないから、退避の指示か同意があったことだと思う。仮にその真相が伏せられる様な事が有っても、残されたアフガン人たちが居れば、日本を非人道国としていずれは世界中に言いふらす事になるだろう。今や海外に百万人単位の日本人が居るし、何百社もの日本企業が存在している。そうなれば当然のこと、世界の日本人を見る目はこれまでとは違ってくるだろうし、海外での優秀な人材は得難くなるだろう。そういう事に配慮が及ばないリーダー達は、海外に居る我々日本人にとっては迷惑な存在であり、即刻退場してもらいたい。

 鈴木教授からは、大使館などで協力していたアフガン人の方針が決まらないまま、時間がたったというご指摘である。即ち、人道的な問題を日本がどう対処するかの課題であり、「法」以前の問題であり、前例があるなしにかかわらず現地のG7の他国の行動からの情報を以って即断しえることだったはずだ。それを決めるのに他国に比して1週間も10日もかかったとは考えにくい。若しもそれがために遅れたのなら、日本国の国際感覚や為政者のレベルは論外だという話になる。従って遅れはそれ以外のどういう理由によるものなのかが問われるところであろう。先ずその点を知りたいと思う。  

 次に撤退実施上で問題があれば、日本の現行法で制約を受けるような事柄であろう。今後もあり得る緊急事態を想定し法を改めるか運用上の解釈を改めるかであろう。そのためにはそれなりの作業が必要なのかもしれないが、緊急事態を前に今それを論じていて機会を失うなどは愚の骨頂と云うべきではないのだろうか。とにかく1週間とか10日間とか他国に比して何故遅れたか、政府或いは本件にかかわりを持つ諸官庁の責任者は、国民に説明すべきでだし、必要な改革を行うべきだ。

 そういうことを実施する様に政治評論家やマスコミが主導し、今後に備えるべきだ。それが政治評論家やマスコミの大事な役割の一つであり、単に今回のNHKの報道の様に結果だけを報道して終わるのでなく、そうなっている原因とか背景を関係者に問いただし、説明する必要が有るということが、北米のTV放映のメディアの実情との比較から、現代のメディアの義務だと断言してもよいと思う。即ち、国の政治は政治家だけに任すのものでなく、メディアや評論家たちもその一翼を担っているのだという意識に基づく、積極的な政治への参加義務だ。まして国民から聴取料を徴収しているNHKには、そういう役割が義務として課されているという自覚をもって行動をしてもらいたい。

 (完)

                                         

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