血栓懸念の中、アストラゼネカ接種に殺到

混乱が続く薬局でのアストラゼネカ接種 2

 急きょ3月31日に始まった薬局でのアストラゼネカ製ワクチン接種。サンシャインコーストのロンドンドラッグスで薬局長として勤務する佐藤厚さんに、その後の状況を聞いた。佐藤さんは、バンクーバー新報コラム『お薬の時間ですよ』の連載でもお馴染みだ。

 混乱が続く薬局での状況を3回に分けてリポートする。2回目は佐藤さんが勤務するロンドンドラッグスの状況、副反応について。

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 ロンドンドラッグスでのワクチン接種予約は、ウェブサイトで登録して、ウエイトリストに入って、ワクチンが届いたら連絡があるので予約して接種という形なのでしょうか。

 はい。オンライン上で登録(https://pharmacy.londondrugs.com/HealthClinics/FeaturedArticles/COVID-19-Vaccinations)→ウエイトリスト→ワクチン入荷の連絡が届いたら予約→接種という流れになります。

 ワクチンが届くまではウエイトリストで待っていただくしかありません。しかも、初期の段階ではオンライン予約システムも完璧ではなく、トラブルもありました。

 そもそも、いつになるか分からないワクチン接種を待つという状況がかなり特殊なために「本当に自分の名前が入っているのか?」、「ワクチンが届くのはいつになるのか?」、「なぜ何の連絡がないのか?」とイライラ感が募って、薬局に電話される方もいます。

 当初アストラゼネカ社のワクチンの接種対象であった55歳から65歳(注)の方の多くは、オンラインショッピングなどにも非常に慣れています。そのため、このような状況に納得できないようです。(注:4月13日からは年齢の上限がなくなり、現在は55歳以上の全ての人が対象となっている)

 ただ、薬局としては「在庫のないワクチン」の予約を入れることはできませんので、ウエイトリストの方には、我慢をして待っていただく状態が続いています。

 今、どれぐらいの方が佐藤さんのロンドンドラッグスのウエイトリストで待っているのでしょうか。

 3月14日の午後8時現在、634人と表示されています。

 そんなに多くの方が接種を希望して待っているのですか?

 はい。これまで入荷した200人分のワクチンを全て使いきり、一時はウエイトリスト上の人数が減ったものの、さらに登録された方が多いようです。

 ただ、日を追うごとにワクチン接種機関として指定を受ける薬局の数が増えてきました。できるだけ早く接種が受けられるように、何件もの薬局のウエイトリストに登録しているお客さんも多くいるようです。希望する方には、私の薬局でなくても、1日でも早く順番が回ってくればと思っています。

 先日、カナダで初めての血栓発生のニュースが報道されましたね。あのニュースでキャンセルした人はいますか?

 予約をする前に相談をする方はいらっしゃいますが、既存の予約をキャンセルした人は見当たりません。カナダ保健省(Health Canada)もカナダ血栓症学会(Thrombosis Canada)も、血栓症のリスクよりもワクチンの利益が大きいので、接種を推進しています。薬局でワクチン接種を受けられる方は、すでに血栓症のリスクを認識された上で予約をしているという印象を受けています。

 佐藤さんの薬局でワクチン接種を受けた人で、副反応がひどかったケースなどありましたか?

 複数の方から、接種後5〜6時間後から寒気が始まり、翌日の仕事に影響が出たという話を聞いています。同様の副反応が3日目まで続いたという方もいました。

 ほかに例えば頭痛や身体の節々が痛かったなどという話は聞いていませんか?

 それらの報告はまだ受けていませんが、可能性はありますから、これから接種人数が増えるにつれて耳にすることはあるかもしれません。

 少し前まで、新型コロナウイルスワクチンの副反応として、ファイザー製ワクチン接種後のアナフィラキシーがよく話題になっていました。しかしアナフィラキシーは、接種後すぐに起こる反応で対処が可能です。一方、接種から数週間たってから起こる血栓は、命にもかかわりますので、多くの方が不安に感じるのも当然だと思います。

 アストラゼネカ社以外のワクチン接種を受けたい方は、薬局で予約せずに、各地域ごとに行われているファイザー社やモデルナ社のワクチンの順番を待っているとも聞いています。ワクチン接種前に副反応に対して準備しておきたいという人に勧めることなどありますか?

 どのような副反応が起こるかによって対応は異なりますが、頭痛や関節の痛にはタイレノール(ジェネリック名:アセトアミノフェン)が有効です。

 狭心症、心筋梗塞や脳梗塞の既往のある人、またそのリスクの高い方には、81mgのアスピリンを血栓予防のために処方されることがあります。しかし、アストラゼネカ社のワクチン接種前にアスピリンを服用するということは勧められていません。

 ファイザー社のワクチンでは接種箇所の痛みが出やすいと聞いています。しかし、私がアストラゼネカ社のワクチン接種を行った患者さんに限っていえば、今の所、接種箇所の痛みを訴えられた方はいません。

 アストラゼネカ製ワクチンに限らず、新型コロナのワクチンは新しい薬ということで、不安を感じている人もいます。

 いずれのワクチンも、この1年以内に開発されたものなので、各製薬会社が追跡調査を続けることで、長期的な副作用のデータが出てくることになります。現在大きな話題となっている変異株に対する有効性についても、今後明らかにされていくのではないかと考えます。

 インフルエンザの予防接種でも、シーズンの最初と最後を比べると、少なからずウイルスは変異をしています。それでも、集団接種を行うことで、ある程度の効果があるということで、毎年、高齢者施設などでは接種を行います。新型コロナウイルスのワクチンでも同様の考えをもって、変異型が流行しても、現行のワクチン接種は継続したほうが効果的であろうと思います。

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ロンドンドラッグスのウェブサイトでは、対象者はアストラゼネカ製ワクチン接種の予約ができる。
https://pharmacy.londondrugs.com/HealthClinics/FeaturedArticles/COVID-19-Vaccinations

ブリティッシュ・コロンビア薬局協会のウェブサイトでは、ワクチン接種機関となったすべての薬局を確認することができる。
www.bcpharmacy.ca/resource-centre/covid-19/vaccination-locations

佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)
2008年よりLondon Drugs(Gibsons)勤務
2014年、国際渡航医学医療職認定(CTH)を取得し、薬局内でトラベルクリニックを担当
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)
2019年からは薬局長を務め、マネジメントに奮闘

バンクーバー新報でコラム『お薬の時間ですよ』を連載。

*記事は2021年4月22日時点での情報に基づく

(取材 西川桂子)

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