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【更新】「やっと始まった」2026年カナダワーホリ招待 昨年より遅く不安の声も

 今年のカナダワーキングホリデー(International Experience Canada=IEC)ビザ申請への招待が3月2日に始まり、胸をなでおろしている申請者も多いことだろう。3月4日付の記事に続いて、カナダ移民・難民・市民権省(Immigration, Refugees and Citizenship Canada=IRCC)から追加質問への回答が4日に送られてきた内容を追記する。

 追加質問では受け入れ枠減少の理由を聞いたが、移民基準計画に基づき、近年と比べてIECの受け入れ枠も減少しているとの説明を繰り返した。

 また、招待開始が例年より遅れたことで応募資格を失う可能性がある応募者への対応については、招待を受け取った時点で18〜30歳であれば申請資格があると従来の制度に基づくことを強調。現時点で招待開始の遅れに伴う救済措置についての説明はなく、「将来的な政策判断については推測できない」との回答だった。

 3月6日時点で招待数は2,438、次回に招待を受け取る可能性は「Very Good」となっている。

 今後も新たな動きがあれば、随時記事を更新していく。

(取材 田上麻里亜)

***

やっと始まった、2026年カナダワーホリ 昨年より遅れSNSで不安の声(3月4日付)

 「やっと始まってくれたー!」。カナダの2026年ワーキングホリデー(International Experience Canada=IEC)の招待が3月2日から始まったことを受け、SNS上では安堵の声が上がった。

 今年は昨年より招待開始が遅れ、日本人応募者の間では不安の声が出ていた。ただ、やっと招待が始まったものの、招待の時期や審査の見通しを巡って疑問も残る。

 そこで、2026年ワーキングホリデービザの状況について、カナダ移民・難民・市民権省(Immigration, Refugees and Citizenship Canada=IRCC)に2月28日にメールで質問を送った。

例年より遅い開始 安堵の声と続く不安

 今年は昨年より招待開始が大幅に遅れた。日本ワーキングホリデー協会公式ブログによると2025年の最初の招待は1月27日となっている。今年は約1カ月の遅れだ。

 さらに2025年と違う点は年間枠。今年は6,283人で、昨年の6,500人からやや減少している。一方で招待を待つ応募者数は昨年よりも多くなっているようだ。カナダ政府が発表した3月2日時点では5,509人。昨年は1月24日時点で1,770人だった。

 招待開始の遅れや応募者数の増加に伴い、招待や申請後の審査の時期について不安の声が上がっている。現在カナダにワーキングホリデーで滞在し、2回目の招待を待つ紗織さんは、「例年より(抽選の)開始が遅く、5月末に31歳の誕生日を迎えるとワーホリの延長ができなくなるのでソワソワしている」と話す。

 紗織さんの現在のビザは今年6月30日に期限を迎える。それまでに招待を受け、申請手続きを行い新たなワーキングホリデービザに切り替える必要がある。「早くプールに入れたから、同時期の人と同じように来るかと思ってたのに私の分はまだ来ていない」と不安を口にする。「誕生日までに無事に申請が済むことを祈るのみ」と話した。

カナダ入国外国人数減少政策が影響

 日加トゥデイの質問にIRCC広報担当から3月3日に回答が来た。質問は、1.招待開始時期と枠数の公表時期、2.招待開始が昨年より遅れている理由、3.ワーホリ申請が生涯で2回となった背景、4.2回申請可能による枠数増加の可能性、5.招待開始時期の遅れによる申請者への救済対応。

 招待開始時期については3月2日、発表のタイミングについては枠数決定後となったためとの回答だった。

 さらに移民政策について、カナダ政府は移民制度の管理を強化し、持続可能な水準に戻す方針を示していると説明。2026〜2028年の移民基準計画では、2027年以降の永住者受け入れ数を人口の1%未満に抑え、2027年末までに一時滞在者の割合をカナダ人口の5%未満にする方針を掲げているため、2026年のIECでもカナダに入国する外国人数を減少していると続けた。

 申請が2回になった背景については、日本とカナダが2024〜2025年に制度を見直したことによるものとの説明だったが、この制度変更が移民受け入れ数の削減方針には影響しないとも明確に言及している。

 今回の回答では、招待前に31歳になり応募資格を失う可能性がある応募者への対応などについての明確な回答はなく、追加質問への回答次第で記事を更新する予定。

(取材 田上麻里亜)

訂正:「昨年は1月で1,770人だった」について具体的な日付を加え、「昨年は1月24日時点で1,770人だった」と訂正しました。

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「やっと始まった」2026年カナダワーホリ招待 昨年より遅く不安の声も

  「やっと始まってくれたー!」。カナダの2026年ワーキングホリデー(International Experience Canada=IEC)の招待が3月2日から始まったことを受け、SNS上では安堵の声が上がった。

 今年は昨年より招待開始が遅れ、日本人応募者の間では不安の声が出ていた。ただ、やっと招待が始まったものの、招待の時期や審査の見通しを巡って疑問も残る。

 そこで、2026年ワーキングホリデービザの状況について、カナダ移民・難民・市民権省(Immigration, Refugees and Citizenship Canada=IRCC)に2月28日にメールで質問を送った。

例年より遅い開始 安堵の声と続く不安

 今年は昨年より招待開始が大幅に遅れた。日本ワーキングホリデー協会公式ブログによると2025年の最初の招待は1月27日となっている。今年は約1カ月の遅れだ。

 さらに2025年と違う点は年間枠。今年は6,283人で、昨年の6,500人からやや減少している。一方で招待を待つ応募者数は昨年よりも多くなっているようだ。カナダ政府が発表した3月2日時点では5,509人。昨年は1月に1,770人だった。

 招待開始の遅れや応募者数の増加に伴い、招待や申請後の審査の時期について不安の声が上がっている。現在カナダにワーキングホリデーで滞在し、2回目の招待を待つ紗織さんは、「例年より(抽選の)開始が遅く、5月末に31歳の誕生日を迎えるとワーホリの延長ができなくなるのでソワソワしている」と話す。

 紗織さんの現在のビザは今年6月30日に期限を迎える。それまでに招待を受け、申請手続きを行い新たなワーキングホリデービザに切り替える必要がある。「早くプールに入れたから、同時期の人と同じように来るかと思ってたのに私の分はまだ来ていない」と不安を口にする。「誕生日までに無事に申請が済むことを祈るのみ」と話した。

カナダ入国外国人数減少政策が影響

 日加トゥデイの質問にIRCC広報担当から3月3日に回答が来た。質問は、1.招待開始時期と枠数の公表時期、2.招待開始が昨年より遅れている理由、3.ワーホリ申請が生涯で2回となった背景、4.2回申請可能による枠数増加の可能性、5.招待開始時期の遅れによる申請者への救済対応。

 招待開始時期については3月2日、発表のタイミングについては枠数決定後となったためとの回答だった。

 さらに移民政策について、カナダ政府は移民制度の管理を強化し、持続可能な水準に戻す方針を示していると説明。2026〜2028年の移民基準計画では、2027年以降の永住者受け入れ数を人口の1%未満に抑え、2027年末までに一時滞在者の割合をカナダ人口の5%未満にする方針を掲げているため、2026年のIECでもカナダに入国する外国人数を減少していると続けた。

 申請が2回になった背景については、日本とカナダが2024〜2025年に制度を見直したことによるものとの説明だったが、この制度変更が移民受け入れ数の削減方針には影響しないとも明確に言及している。

 今回の回答では、招待前に31歳になり応募資格を失う可能性がある応募者への対応などについての明確な回答はなく、追加質問への回答次第で記事を更新する予定。

(取材 田上麻里亜)

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JAMSNET-CANADAに聞く「海外で暮らす邦人の医療とケアをどう支えるか」

2025年に行われた「第12回JAMSNETワールド会議」レセプションの様子。 JAMSNET-CANADA からは3人が出席した。2025年11月7日、アメリカ・ニューヨーク州「在ニューヨーク日本国総領事公邸」。写真クレジット:JAMSNET-USA/提供:JAMSNET-CANADA
2025年に行われた「第12回JAMSNETワールド会議」レセプションの様子。 JAMSNET-CANADA からは3人が出席した。2025年11月7日、アメリカ・ニューヨーク州「在ニューヨーク日本国総領事公邸」。写真クレジット:JAMSNET-USA/提供:JAMSNET-CANADA
2025年に行われた「第12回JAMSNETワールド会議」の様子。同年8月の年次総会時点で、団体会員3団体を含む会員数は約110人。医師、看護師(RN、RPN)、薬剤師、サイコロジスト、カウンセラー、ソーシャルワーカーのほか、日本では2010年代から診療看護師として知られるナースプラクティショナー(NP)なども参加している。2025年11月7日、アメリカ・ニューヨーク州「在ニューヨーク日本国総領事公邸」。写真クレジット:JAMSNET-USA/提供:JAMSNET-CANADA
2025年に行われた「第12回JAMSNETワールド会議」の様子。同年8月の年次総会時点で、団体会員3団体を含む会員数は約110人。医師、看護師(RN、RPN)、薬剤師、サイコロジスト、カウンセラー、ソーシャルワーカーのほか、日本では2010年代から診療看護師として知られるナースプラクティショナー(NP)なども参加している。2025年11月7日、アメリカ・ニューヨーク州「在ニューヨーク日本国総領事公邸」。写真クレジット:JAMSNET-USA/提供:JAMSNET-CANADA

 カナダで暮らす日本人にとって、医療や介護、心の不調に直面したとき、日本語で相談できる先を見つけることは容易ではない。

 在留邦人が直面している医療や生活上の課題について、医療・福祉・教育・心理分野の専門家らが連携し、情報共有を通じて邦人医療支援に取り組むネットワークJAMSNET-CANADAに話を聞いて、まとめた。

在留邦人が直面するカナダの医療制度

 カナダの医療制度で、日本から来た人が戸惑いやすい点の一つが、受診の仕組みの違いである。日本では、目の不調であれば眼科、腹部の痛みであれば消化器内科と、症状に応じて専門医を直接受診することが一般的だ。一方、カナダでは、症状の種類にかかわらず、まず家庭医(ファミリードクター)を受診し、必要に応じて専門医への紹介を受ける仕組みが基本となっている。

 この制度の下では、家庭医を持たない人が受診先の確保に苦労する場合がある。留学生など短期滞在者や移住直後の人は家庭医を持てないケースが多い。

 そうした人でも利用できるのが、予約なしで受診できる「ウォークインクリニック」。診察や薬の処方が受けられる一方で、専門医による診療は行われていない。症状に応じて専門的な検査や治療が必要と判断された場合は、家庭医や病院を通じて専門医の紹介を受ける必要がある。

 このため、専門医の診察にたどり着くまでに時間がかかるケースが多い。実際に数カ月、地域や診療科によっては1年以上待つ例があり、カナダの医療制度が抱える課題の一つと言える。

 JAMSNET-CANADAが実施している在留邦人向けのアンケート調査でも、こうした待ち時間の長さを不安要因として挙げている人が多い。

 体調がすぐれない中で、制度を理解し、受診の流れを自ら調べなければならない負担は大きく、その結果、日本に一時帰国して検査や治療を受ける選択をする人もいる。

言語や文化の違いが壁となるメンタルヘルス

 在留邦人が直面する医療を巡る問題の中でも、メンタルヘルスは、言語や文化の違いが影響しやすい分野である。身体的な不調と異なり、症状を検査値などで客観的に示すことが難しく、相談や支援は本人の言葉による説明を前提として進められるためだ。

 カウンセリングでは、血液検査や画像診断のように数値や画像で状態を共有することができず、自身の感情や置かれている状況を言葉で伝える必要がある。日常会話程度の英語力があっても、「何がつらいのか」「どのように感じているのか」といった抽象的な感情を英語で正確に表現することに難しさを感じる人は少なくない。

 さらに、言語の問題に加えて、日本人特有の文化的背景が影響する場面もある。日本人の相談者の中には、心身の不調や悩みを抱えていても、「日本にいる家族に心配をかけたくない」「迷惑をかけたくない」と考え、家族には状況を伝えないまま一人で抱え込むケースがあるという。

 一方、北米では困りごとがあれば家族や身近な人に相談することが自然だと受け止められることが多い。こうした前提の違いが十分に共有されないままカウンセリングが進むと、相談者の背景や心理が十分に伝わらず、話がかみ合わない。

 過去には、JAMSNET-CANADAに会員を通じて性被害に関する相談が寄せられたケースがあった。被害を受けた本人は精神的に余裕のない状態で、英語で情報を探し、相談先を見つけること自体が大きな負担になっていたという。

 この相談をきっかけに、カナダ各州にある性被害サポート団体について、日本語対応の可否を含めた情報を整理し、ウェブサイトやSNSで共有した。当初はトロント周辺の支援窓口を中心に紹介していたが、後にブリティッシュ・コロンビア(BC)州向けの連絡先も追加したところ、BC州に関する情報へのアクセスが特に多かったという。

  支援制度が存在していても、英語で助けを求めることへの心理的な負担や、どこに相談すればよいのか分からない状況そのものが、支援につながるまでの大きな壁になっている。

 こうした課題を背景に、JAMSNETではこれまで、「高齢者支援ネットワーク」と「メンタルヘルスネットワーク」の二つの分科会を設け、分野ごとに在留邦人が直面する問題の整理や情報共有を進めてきた。さらに2025年には、国や地域を越えた連携を強化する枠組みとして、新たに「ワールド・メンタルヘルス・ネットワーク」が発足した。

 第1回総会には、世界5地域からメンタルヘルス分野の専門家が参加し、それぞれの地域で見えている課題や支援の実情について意見が交わされた。今後は、世界各地にいる日本語で対応可能なカウンセラーの把握やリスト作成などを進め、必要なときに適切な支援につながりやすい体制づくりを目指すとしている。

日本にいる家族の介護をどう支えるか

 カナダでの生活が長くなる中で、医療や心のケアに加え、日本に住む家族の高齢化に直面する在留邦人もいる。親が認知症などにより支援を必要とするようになっても、カナダに生活基盤があるため、日本とカナダを頻繁に行き来することは簡単ではない。現地の介護制度や支援サービスの情報収集や家族との調整を離れた場所から行わざるを得ない状況に置かれる人もいる。

 こうした状況を受けて、2023〜24年にカナダ公衆衛生局の助成を受け「認知症サポーター養成プロジェクト」が実施された。これは、認知症について正しい知識を持つ一般市民を「認知症サポーター」として育成し、地域全体で認知症の人や家族を支えることを目的とした取り組みである。

2025年に行われた「第12回JAMSNETワールド会議」レセプションの様子。 JAMSNET-CANADA からは3人が出席した。2025年11月7日、アメリカ・ニューヨーク州「在ニューヨーク日本国総領事公邸」。写真クレジット:JAMSNET-USA/提供:JAMSNET-CANADA
2025年に行われた「第12回JAMSNETワールド会議」レセプションの様子。 JAMSNET-CANADA からは3人が出席した。2025年11月7日、アメリカ・ニューヨーク州「在ニューヨーク日本国総領事公邸」。写真クレジット:JAMSNET-USA/提供:JAMSNET-CANADA

 プロジェクトでは、カナダ国内9都市で認知症に関するワークショップを開催し、約830人が参加した。内容は、日本の厚生労働省が推奨する、認知症の初期段階から地域で支援につなげる仕組み「チームオレンジ」の考え方を参考に構成され、認知症への理解を深めるとともに、日常生活の中でどのような支え方ができるかを学ぶ機会とした。

 モントリオールでは、この取り組みを通じて生まれたつながりを継続するため、「チームオレンジ」交流会が月1回程度開かれている。2026年にはトロントで日系人高齢者およびその家族、介護者を対象とした「認知症サポートプログラム」が始まる予定だ。

 ワークショップ後のアンケートでは、認知症への理解が深まったとする回答が多く寄せられた一方、認知症であることを近隣や地域の人に打ち明けることへの抵抗感を示す声も半数以上あった。また、日本語で利用できる医療・介護情報が限られていることや、認知症に対する社会的な理解が十分でないと感じている参加者もいた。

 こうした声を踏まえ、日本とカナダ双方の知見を整理した「カナダ在住日本人・日系人のための『遠距離介護ハンドブック』」が作成された。多分野の専門家との勉強会を重ね、実務的な内容をまとめたもので、今後は希望者にどのように共有していくかが検討されている。

情報をどうつなぎ、どう生かすか

「認知症サポーター養成ワークショップ」の様子。2023年11月11日、マニトバ州「マニトバ日本文化協会」。写真クレジット:JCAM(マニトバ日本文化協会)/提供:JAMSNET-CANADA
「認知症サポーター養成ワークショップ」の様子。2023年11月11日、マニトバ州「マニトバ日本文化協会」。写真クレジット:JCAM(マニトバ日本文化協会)/提供:JAMSNET-CANADA

 カナダでは、医療やメンタルヘルス、被害者支援などの公的・民間サービスが一定数用意されている。一方で、案内が英語のみということも多く、その存在自体に気づけない在留邦人がほとんど。情報にたどり着いたとしても、英語で相談することへの心理的な負担から、自分には利用できないと感じ、支援につながらないまま抱え込んでしまうケースも少なくない。

 2026年は、世界各地のJAMSNETが集まる「第13回JAMSNETワールド会議」が、カナダの首都オンタリオ州オタワ市で開催される予定だ。各地域での在留邦人支援の取り組みや課題を共有するほか、安全、発達障害、マリッジ・ファミリーセラピーなどをテーマにしたセミナーも企画されており、オンラインとリアル会場で誰でも参加できる。

 またJAMSNETでは現在、在留邦人が医療や健康面でどのような不安や困りごとを抱えているかを把握するためのアンケート調査も行っている。寄せられた声をもとに、今後の情報発信や支援のあり方を検討するという。アンケートの回答は以下のリンクから。

https://forms.gle/2hvdtDwqKxAyqCVC9

JAMSNET-CANADA

 JAMSNET-CANADAは、カナダで暮らす在留邦人の医療や健康、生活上の課題について、専門家同士の情報共有と連携を目的に活動する団体。母体となるJAMSNET(Japanese Medical Support Network)は2006年、在留邦人の心身の健康と生活を支援する非営利団体としてニューヨークで設立された。

 2014年、JAMSNET-USA創設者の一人である仲本光一医務官が在カナダ日本国大使館に着任したことを契機に、カナダ拠点としてJAMSNET-CANADAが発足。現在、JAMSNETのネットワークは北米をはじめ世界6地域に広がっている。

 専門家同士のネットワークを基盤に、一般向けセミナーやウェブサイト、ソーシャルメディアでの情報発信を通じて、在留邦人が必要な支援や情報につながるための環境づくりに取り組んでいる。

https://jamsnetcanada.org/

https://www.facebook.com/jamsnetcanada

(取材 田上麻里亜)

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「ごみ問題と防災を芸人が発信」マシンガンズ滝沢さんとワタリ119さんがバンクーバーで

イベントを終えたお笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さん(左)と、お笑い芸人のワタリ119さん。2026年2月16日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
イベントを終えたお笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さん(左)と、お笑い芸人のワタリ119さん。2026年2月16日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ

 お笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さんとお笑い芸人のワタリ119さんが、2月16日にバンクーバー市でトークイベントを開催した。主催は日本カナダ商工会議所。

 芸人としての活動と並行して環境活動や防災問題に取り組む2人。滝沢さんは2012年からごみ収集会社で清掃員として働きながら、「ごみ清掃芸人」としてごみ分別や資源の重要性を発信している。これまでに19冊の本を出版し、2020年には環境省のサステナビリティ広報大使に就任した。ワタリ119さんは元消防士で、防災士資格を取得。芸人活動と並行し、防災教育や災害時の備えの啓発に取り組んでいる。

 バンクーバー到着から数時間後という慌ただしい日程の中、イベント終了後に2人に話を聞いた。

日本での共演から来加へ 強行スケジュールでも楽しいイベントに

 イベントでは、日本とカナダのライフスタイルの違いを入り口に、ごみや防災をテーマにトークが展開された。2人は昨年日本で環境と防災をテーマに講演を行い、カナダの防災や環境分野にも関心があったことから今回の来加につながった。

 ワタリさんは、初めての海外トークイベントを前に緊張もあったという。バンクーバーに向かう機内では、「寝るぞ寝るぞって思ってたんですけど、飛行機に乗ったら全然寝れなくて」と笑う。ほとんど眠れないまま到着し、そのままヘイスティングス通りやガスタウンの蒸気時計を見て会場へ向かった。

 寝不足のまま迎えたイベントだったが、「めっちゃ楽しかったです」と声を弾ませ、「結構みんなしゃべってくれたじゃないですか。ディスカッションみたいに」と、参加者が積極的に発言する形式が印象に残ったという。

 滝沢さんも「参加型でおもしろかったですね。日本とはちょっと違う」と話す。日本での講演では「結構みんな『うんうん』ってうなずくんだけど、今日は『おおー!』みたいな感じで言ってくれるから、おもしろいですよね。リアクションが前向きというか、食いつきがいい感じ」と笑顔を見せた。

ごみと防災は切り離せない

 ごみ清掃芸人として活動している滝沢さんはごみ分別の重要性を訴える。ワタリさんは防災について話す。一見、ごみ問題と防災は異なるテーマのようにも見える。しかし滝沢さんは「ごみも突き詰めると防災に関わってくる」と言う。

イベント終了後にインタビューに応じる滝沢さん(左)とワタリさん。2026年2月16日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ
イベント終了後にインタビューに応じる滝沢さん(左)とワタリさん。2026年2月16日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ

 2019年の台風19号が日本を直撃した時には被災地で災害ごみの回収にも携わった。「タンスでも何でも1回水に浸かったりすると、川の水なのでもうヘドロの臭いがして使い物にならない。ありとあらゆるものがごみになってしまう」と説明。洪水被害では家財のほとんどが廃棄対象になるという。

 また、「親御さんが亡くなったりすると実家に帰って、70年、80年と積み上がったものも全部ごみになってしまうんですよね」と、親を亡くし実家の片付けに直面する人の実態も話した。加えて、地域ごとに異なる分別ルールに従い大量のごみを処理する負担は想像を絶するという。

 「生きているうちに物の整理をする。使えるものはリユースするとか、ごみになる前にどうにかするっていうのは、防災にも繋がっていると思います」。

 さらに能登半島地震の被災地での活動にも触れた。進めないほどの山道でも、「そこに人が住んでいるのでごみって出るんですよね」。人の営みがある限り廃棄物は発生する。災害時に下水が使えないと糞尿もごみとして廃棄されることがあるという。そうすると、清掃車でごみを回収する際に袋が破れ、中身が飛び散ることがある。水が使えなければ車両も制服も洗えず、衛生環境はさらに悪化すると説明する。

 「防災時の分別みたいなことも広げていかなきゃいけない」。平時の整理や再利用、普段からのごみ分別への理解が、災害時の廃棄物削減につながり、安全や衛生も支えるという考えだ。「僕の役目はごみといろんなことを繋なぎ合わせて、イベントをやったり、エンターテイメントを通して、現状とか問題とか知ってもらうこと。それが大事だなと思ってます」。

助け方は一つじゃない 消防士から芸人へ

日本でも増える山火事にカナダの消防に興味を示すワタリさん。バンクーバー滞在中には2人で消防署や清掃工場を訪問した。2026年2月16日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ
日本でも増える山火事にカナダの消防に興味を示すワタリさん。バンクーバー滞在中には2人で消防署や清掃工場を訪問した。2026年2月16日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ

  ワタリさんは、かつて「人を助けたい」と思い消防の現場に立っていた。しかし、「テンパってしまうところがあって、そのミスで人を危険にさらすこともあるんじゃないか」と葛藤を抱えたという。現場を離れ芸人の道を選んだが、「人の助け方って本当にいろんな方法があるなって思った」と振り返る。人を笑顔にすることもまた一つの助け方だと考えるようになった。

 芸人として活動する中で発信力を得た今、「消防士の時の経験もあるから、それを発信力に乗せて伝えていきたい」と語る。今回のカナダ訪問もその延長線上にある。「カナダには日本にない災害があるし、日本にしかない技術もある。ちゃんと吸収して日本に持って帰れたら」と話す。

 芸人に転身した後、防災士の資格を取得した理由について、「消防士って、災害があった時に現場での活動の勉強をするんですよ。でも、被災された方の勉強ってしてなかったなと思って」。救助や消火の訓練は重ねてきた。しかし「被災生活をされる方のことって勉強する機会がなかった」と振り返る。

 その気づきが資格取得につながった。「そういうところって実は全然学べてないんだなって思って防災の資格取って。学んでいったら、見落としているところってめちゃくちゃ多くあって」。

 防災イベントでは火の起こし方や非常食の備えが取り上げられることが多いが、「もっと実は抜けてるところってあって。女性への気遣いとか、ペット飼ってる人とか、その後のケアの部分が色々あるんです」と言う。「そこをもっと伝えていきたい」との思いから、救命講習の普及に関わる資格も取得。教える立場として地域や学校で活動を始めている。

 今年3月には東日本大震災から15年を迎えることについて聞くと、「地震に関しては全国どこでもあることで、東日本でもすごく被害された方はもちろんいると思うんですけど、能登も岩手とかも実はスポットが当てられてない所ってめちゃくちゃあると思っていて。僕はそういうところにもフォーカスしてほしいなと思っています」と気遣った。

 そして、「忘れないようにしようっていうところで止まっている気がしていて。その先の若い子に伝えていかなきゃなっていうのを忘れないようにしていかないといけない」と、世代を超えた防災教育の必要性を強調した。

「世界中からごみという言葉をなくしたい」

「世界中からごみという言葉をなくしたい」と語る滝沢さん。2026年2月16日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ
「世界中からごみという言葉をなくしたい」と語る滝沢さん。2026年2月16日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ

 滝沢さんは日本のごみ分別について「日本独特だと思います」と話す。「ペットボトルってみんな90% 以上分けてくれる」。PETボトルリサイクル推進協議会によると2024年の日本でのペットボトル回収率は91.9%という。その徹底ぶりを「これは(日本の)すばらしい技術なので、世界にも広げたいなと思っています」と評価する。

 根底にあるのは、ごみの捉え方そのものへの問いかけだ。「ちゃんと分別すると資源になって、ごみじゃなかったりするんですよ」と話し、「基本的には世界中から『ごみ』という言葉をなくしたいと思っています」と語る。

 発信の力にも手応えを感じている。「意外とそういうのを知って広めたり、周知活動みたいなことをするのもごみを減らす一つの方法。僕の発信を聞いて、『こうやって出せばいいんだ』って資源に回してくれる人も増えたりするんです」。

 さらに、ごみ収集や消防といった仕事は「インフラの一つ」と位置づける。「ごみ清掃がなくなったら、本当に街中ごみだらけになる」。新型コロナウイルス禍でその重要性を改めて実感したという。一方で、日本では清掃員の待遇が十分とは言えず、なり手不足も課題だと指摘する。「もっと注目してもらえるようになったらいい」と語る。

 また、これまで滝沢さんは、日本で不要とされたランドセルや文房具などをフィリピンやフィジー共和国など海外に届ける活動にも取り組んできた。「文房具とかノートとかも人気あるんですけど、そういったものって心躍るもので、誰かにとってはごみかもしれないけど、誰かにとっては宝物の可能性があったりする」。ごみとされるものの価値は、見る立場によって変わると実感する。

 そして、「究極ね、本当に分別だとか資源みたいなことを大切にしたら、争いごとも減るんじゃないかなって思うんですよ。大きく言うと、6割ほどが資源の奪い合いで戦争とか争うことが起きるみたいな話もあるので、ちゃんと分別して、もう1回使えるものは使う。そういうことを積み重ねれば、余計な争いってなくなるんじゃないかな。そういう精神みたいなのを世界に伝えていきたい」と力を込めた。

(取材 田上麻里亜)

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「カナダで俳優・キャストとして活動するには」Momo Films 高畠晶さんインタビュー

トロント日本映画祭2025のオープニングの様子。2025年6月12日、オンタリオ州トロント市トロント日系文化会館。提供:高畠晶さん
トロント日本映画祭2025のオープニングの様子。2025年6月12日、オンタリオ州トロント市トロント日系文化会館。提供:高畠晶さん

 映画やドラマの制作拠点としてバンクーバーやトロントを中心に多くの映像制作が行われているカナダ。日本を舞台にした映画作品も多数制作されており、ドラマ「SHOGUN(将軍)」シーズン1がカナダで撮影されたことは大きな話題となった。

 こうした映像制作の現場で、日本人が俳優やエキストラとして関わることも多い。日本とカナダ両国の映像業界に長年関わってきた Momo Films Inc.代表の高畠晶さんに、日本人がカナダで芸能活動を行う際に必要な条件や現場の実情を聞いた。

日本と北米で異なるキャスティングの考え方

 高畠さんによると、日本と北米ではキャスティングの進め方が大きく異なるそうだ。日本では、特定の俳優を前提に企画が進み、主要キャストにオーディションが行われないケースもある。一方、北米では、知名度のある俳優であってもオーディションを受けることが多く、役ごとに候補者を集め、演技や適性を比較した上でキャストが決定される。

 カナダでの選考に参加する前提条件となるのが就労資格である。俳優やエキストラの仕事も報酬が発生する以上、労働にあたるため、カナダで報酬を得て出演するには就労可能なワークビザが必要となる。

 一部の大規模な作品では制作側が特定の俳優を起用するため、作品限定で有効なビザを申請するケースもあるという。ただしその場合、該当作品の撮影期間のみ有効で、他作品への出演はできない。「これは有名俳優など限られたケース」と、一般の応募者がこの方法で活動の幅を広げるのは現実的ではないと説明する。

 エキストラについては、背景に映るのみであれば演技経験がなくても参加できる場合があるが、せりふのある役や演技を伴う役では経験の有無が選考に影響する。「演技をやったことがある人とない人の差は明らかです」と、準備の重要性を指摘する。

カナダで日本人キャストが求められる場面

 カナダで日本人キャストが求められる場面はあるのか。高畠晶さんによると、その判断基準になるのは物語の中で日本語での演技が必要かどうかだという。

 例えば、日本を舞台にしたドラマや、日本人の家族、歴史、文化を描く作品では、日本語のせりふが自然に話せることが前提となる。高畠さんが過去に制作に携わった日本を舞台にした作品でも、日本語での演技ができるキャストが求められていた。

 そして重要なのは「日本語が話せる」だけでは十分ではない点だ。撮影現場では、発音やイントネーション、方言の違いがそのまま映像に残る。高畠さんは、日本を舞台にした作品の制作に関わる中で、「この人の日本語は自然か」「関西が舞台だが、関西弁になっているか」といった点について、日本人として制作側から判断を求められる場面があったと振り返る。

 一方で、日本語を必要としない役柄では、英語での演技が前提となるため、ハードルはかなり高い。英語での演技ではアクセントや話し方、せりふの言い回しや感情の出し方が自然かどうかまで見られ、「ネイティブと同じ条件で比べられることになる」と言う。

キャストとしてのキャリアの積み上げ方

 カナダで俳優やタレントとして活動を目指す場合、最初に必要になるのは「選考の土俵に立てる状態を整えること」だという。「俳優用のレジュメ(履歴書)と演技が分かるリールを用意しておくことが前提になる」と強調する。

 俳優用のレジュメは、これまでの演技経験や出演作品、役柄を簡潔にまとめたもので、一般的な履歴書とは異なる。あわせて求められるのが、過去の出演作から演技シーンを抜き出して編集した動画、いわゆるリールである。「経験のある人は、だいたいリールを持っています。まずは『これを見てください』と言える状態を作ることが大切」と説明する。

 そして北米のキャスティングでは、最初の選考としてセルフテープが求められるケースが多い。台本が送られ、自身で演技を撮影して提出し、その映像をもとに次の選考に進むかどうかが判断される。新型コロナウイルスの流行以降、こうしたセルフテープやオンライン形式のオーディションが一般的になったため、「セルフテープの撮り方や見せ方を知らないと、最初の段階で止まってしまいます」。

 一方、実際のキャリアは、いきなり商業作品から始まることは多くないとも。「本気で続けたい人ほど、最初はインディペンデント作品や学生映画から経験を積むケースが多いです」。小規模な作品に参加しながら人脈を広げ、オーディションを受け、段階的に仕事の幅を広げていくことが多い。

 北米の現場では、演技力に加えて「何ができるか」も評価の対象になる。「踊れる」「アクションができる」「楽器が演奏できる」といった演技以外のスキルが、役につながることもあるという。

 また、現場で可能性を広げるためには語学力も欠かせない。撮影現場でのやり取りは英語で行われるため、「日本語の役だから英語ができなくてもいい、というわけではない」と高畠さん。多国籍のスタッフが動く現場では、最低限の英語で意思疎通ができるかどうかが信頼関係や次の仕事につながるかどうかにも影響する。

 学生映画や映画祭でのボランティア、インターンといった経験も、現場につながるきっかけになることがある。「カナダでは、ボランティアがキャリア形成の一部になっています」。高畠さん自身も学生時代に映画祭や映画関連の現場でボランティアを経験して、業界との接点を広げてきたと話す。

 商業作品に直接たどり着く前に、段階を踏んで経験を積み、現場との接点を増やしていくことが、現実的なキャリアの積み上げ方だとアドバイスした。

Momo Films Inc.

カナダ・オンタリオ州トロントを拠点とした映画会社。日本とカナダの映像業界をつなぐことを理念とし、日本映画の配給や日本に関する映像プロジェクトなどを手がける。日本とカナダをまたぐ制作コーディネートや翻訳・通訳業務に加え、日本人および日本語話者の俳優・タレントを対象に、カナダ国内の映像制作現場向けに人材紹介やキャスティング支援を行っている。

https://momofilms.com/casting

武内英樹監督(Dir. Hideki Takeuchi、左から2番目)と高畠さん(右から2番目)。他の関係者と一緒にトロント日本映画祭2025のオープニングで。2025年6月12日、オンタリオ州トロント市トロント日系文化会館。提供:高畠晶さん
武内英樹監督(Dir. Hideki Takeuchi、左から2番目)と高畠さん(右から2番目)。他の関係者と一緒にトロント日本映画祭2025のオープニングで。2025年6月12日、オンタリオ州トロント市トロント日系文化会館。提供:高畠晶さん

(取材 田上麻里亜)

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学生や在留邦人を狙う詐欺 総領事館とRCMPが注意喚起

Royal Canadian Mounted Police: by Japan Canada Today
Royal Canadian Mounted Police: by Japan Canada Today

 前回の記事では、カナダで詐欺被害に遭った日本人留学生の体験談をまとめた。こうした被害は一部の人だけの問題ではなく、就労や住居探しなど、カナダで生活する中で誰もが直面する可能性がある。

 在バンクーバー日本国総領事館とRCMP(連邦警察)は、留学生や在留者を狙った詐欺に注意を促している。両機関に詐欺被害の現状と対策について話を聞いた。

留学生を狙う詐欺の現状

 RCMPによると、詐欺は来加を予定している留学生と、すでにカナダに滞在している留学生の双方に影響を及ぼしているという。留学を検討する段階から渡航後まで、さまざまな場面で詐欺に接触する可能性がある。

 特に留学やビザ申請に関わる過程では移民サービス詐欺への注意が必要という。カナダ移民・難民・市民権省(IRCC)は、留学ビザ申請を支援すると称しLOA(入学許可証)要件を満たすための虚偽書類作成を持ちかける手口について注意を呼びかける。

 また、カナダに滞在している間は他の在住者と同様の詐欺の手口にもさらされる可能性があると指摘する。

 詐欺グループは電話やSMS、電子メール、QRコード、SNSなど複数の手段を使い、被害者に接触する。SNSでは、正規の企業や政府機関を装った広告や偽サイトが使われる場合もあるという。RCMPは、使われる媒体は変化しても、被害者を信用させて近づくという手口の基本は変わっていないと警鐘を鳴らす。

 さらに、留学生が意図せず犯罪行為に利用される可能性にも言及する。荷物の運搬や銀行口座の開設などを依頼されマネーロンダリングに関与させられるケースなどもあるとして、注意の必要性を強調した。

確認されている主な詐欺の手口

 バンクーバー総領事館は、詐欺の対象は留学生に限らないとした上で、手口が日々変化しているため、実際に被害に遭うまで詐欺だと気付かないケースも少なくないと指摘する。その上で、過去1年間に領事館に寄せられた相談を基に、いくつかの典型的な詐欺の手口を挙げた。

 「誰でも簡単に稼げる」「軽作業で高収入」などをうたう広告は、いわゆる「タスク詐欺」と呼ばれる手口の可能性が高い。固定電話番号や正確な所在地が示されず、Gメールなどのフリーメールや携帯電話番号のみを連絡先としている場合は注意が必要としている。

 他にも、住居探しに関連した賃貸契約詐欺も多い。内見前や賃貸契約前にデポジットや家賃の前払いを求められるケースがあり、簡単に支払いに応じないよう注意が必要としている。

記者も経験、就職に関する詐欺メールを受信

 今年5月、アメリカIT大手メタ(Meta)の研究部門「Reality Labs」を名乗る採用に関するメールを受け取った。送信元のメールアドレスは「info@employlinkrealitylabs.recruitee.com」で、募集ポジションには希望していた職種が含まれていた。数カ月前に複数の求人に応募していたこともあり、見た目は正規の採用連絡と区別がつきにくい内容だった。

メタ(Meta)の研究部門「Reality Labs」を名乗る詐欺メール。宛先に個人名や応募を希望するポジション名が記載され、正規の採用連絡と見分けがつきにくい内容となっている。画像:田上麻里亜
メタ(Meta)の研究部門「Reality Labs」を名乗る詐欺メール。宛先に個人名や応募を希望するポジション名が記載され、正規の採用連絡と見分けがつきにくい内容となっている。画像:田上麻里亜

 しかし大手企業にも関わらず短期間で採用が進む点に違和感を覚え、メールアドレスをインターネットで調べたところ、同じアドレスに関する詐欺被害の報告が多数見つかり、詐欺の可能性に気付いた。送信元のメールアドレスにも一見すると正規の採用管理サービスを装ったドメインが使われるなど、求人を巡る詐欺の手口は分かりにくくなっている。

被害を防ぐために求められる行動

 詐欺被害を防ぐためには、どのような場合でも一人で判断せず、家族や友人、知り合いなど第三者に相談することが重要と総領事館は助言する。あわせて、個人情報を安易に渡さないこと、不審なリンクを安易にクリックしないことも基本的な対策として挙げている。

  RCMPも、「If it’s too good to be true, it probably is.(うますぎる話には裏がある)」という古くからの言葉が示すように、条件が良すぎる話には注意が必要だとしている。応募していない懸賞への当選連絡などは、その一例だという。さらに、ソーシャルメディアではプライバシー設定を確認し、個人情報が過度に公開されていないか見直すことを勧めている。

被害に遭ってしまった後の行動

 RCMPは、緊急事態が発生している場合は、警察や救急、消防に9-1-1で通報するよう呼びかけている。緊急性がない場合でも、被害があった地域を管轄する警察に相談することができ、地域によってはオンラインでの通報も可能としている。

 また詐欺被害に遭った場合は、管轄の警察に加え、Canadian Anti-Fraud Centre(CAFC)への通報を推奨している。CAFCは捜査機関ではないが、全国から情報を集約し、法執行機関の捜査や被害防止に役立てている。被害に遭わなかった場合でも、詐欺の接触を受けた時点で通報することが可能だという。

 被害の未然防止に向けた取り組みとして、リッチモンドRCMPでは、個人間取引に伴うトラブル防止を目的とした「セーフゾーン(Safe Zone)」を設けている。オンライン上で知り合った相手との売買や物品の受け渡しを警察施設周辺のより安全な環境で行う取り組みで、ソーシャルメディアなどを通じた取引などが対象となっている。

 セーフゾーンは、リッチモンドRCMP分署(11411 No. 5 Road, Richmond, BC V7A 4E8)の正面入口付近に設けられており、フロントオフィスの開庁時間である午前7時から午後8時まで利用できる。

 祝日はフロントオフィスが閉鎖されており、警察官は24時間体制で施設を使用しているものの、窓口職員は配置されていない。この時間帯は、分署前の屋外で受け渡しを行うことができ、周辺には防犯カメラが設置されている。警察官が立ち会う形ではないものの、警察施設の近くであることや防犯カメラの存在が犯罪抑止につながるとしている。

 詐欺を目的とする人物は、警察署での受け渡しに応じない場合が多いため、取引場所として警察施設周辺を指定すること自体が一つの確認手段にもなるとしている。

 被害報告はバンクーバー総領事館でも受け付けており、被害届提出方法の案内や今後の対応について助言を行っている。同種の被害が続く場合には、同館のホームページや領事メールを通じて注意喚起を行い、再発防止に役立てるとしている。

各種犯罪被害(詐欺、強盗・暴行、車上ねらい等)に関する注意喚起(在バンクーバー日本国総領事館)https://www.vancouver.ca.emb-japan.go.jp/itpr_ja/kakusyuhanzaihigai.html

Canadian Anti-Fraud Centre (CAFC)https://antifraudcentre-centreantifraude.ca/index-eng.htm

British Columbia RCMP (B.C. RCMP)https://rcmp.ca/en/bc

Immigration and citizenship fraud and scams (Government of Canada)https://www.canada.ca/en/immigration-refugees-citizenship/services/protect-fraud.html

(取材 田上麻里亜)

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カナダで気をつけたい「留学生を狙う詐欺 日本人留学生3人の証言」後編

 知らない土地で住まいを探し、慣れない英語で契約など手続きに取り組む留学生にとって、巧妙な詐欺を見抜くことは容易ではない。その状況につけ込み、さまざまな詐欺被害が起きている。

 カナダに留学中、詐欺被害に遭った日本人学生3人に被害の経緯を聞いた。前編では賃貸契約でのトラブルを装った詐欺を紹介した。後編はSNSを利用して売買をした時に遭った詐欺について。

小切手を使った古典的手口 フェイスブックマーケットでの被害

 ビクトリア市の公立カレッジに通っていた惇貴さんは2024年初め、引っ越し準備のために不要品を整理しようとフェイスブックのマーケットプレイスでヘッドホンを250ドルで出品した。以前は買い手がつかなかったが、この時はすぐに「買いたい」というメッセージが届いた。

 相手は「今ビクトリアにいない。引っ越し業者に受け取りに行かせたい」と説明し、「小切手で1,250ドルを送る。そのうち250ドルがヘッドホン代金、950ドルを業者の口座へ送金してほしい」と提案した。差額の50ドルは手間賃だという。惇貴さんは違和感を抱きながらも、「カナダではこういう支払い方法もあるのかもしれない」と半信半疑のままやり取りを続けた。

 相手から届いた小切手を銀行のアプリで撮影すると、1,250ドルの入金がアプリ上に反映された。小切手を扱った経験がなかった惇貴さんは、本当に入金されたものと思い、指示された950ドルを銀行を通じて個人間で即時送金できる「イートランスファー」で送金しようとしたが、銀行側のシステムに止められた。勤務先で事情を相談すると、同僚からは「典型的な詐欺だよ。場合によってはマネーロンダリングに使われることもある」と警告された。

 翌日、銀行の支店で相談すると、最初に対応した行員は「変だね」と言いながらも「金額も低いし、マネーロンダリングではないと思う」と説明し、イートランスファーで送金できるよう設定を変更した。惇貴さんは不審に感じ、相手に「今後の受け渡しはキャッシュでしかしない。一度返金する」と伝え、1,250ドルをイートランスファーで返金した。

 その後、直接会う約束を取り付けたが、当日の1時間前に「引っ越し業者がトラブルで来られない」とメッセージが届き、そこで詐欺だと確信した。惇貴さんは相手との連絡を断った。

 しかし数日後、銀行から「口座がマイナスになっている」と通知が届いた。貯金が残っているはずだと思い確認すると、残高はマイナスになっていた。惇貴さんはすでに相手に1,250ドルを相手に返金していたが、その後、銀行が小切手を偽物と判定し、アプリ上で一時的に反映されていた1,250ドルの入金自体を取り消したためだった。結果として、返金分と入金取り消し分の双方が差し引かれ、残高がマイナスになった。

 小切手は入金が反映されても、銀行が真偽を判断するまでタイムラグがある仕組みだと、この時初めて知ったという。

 その後、勤務先のマネージャーが同行して銀行に再度相談したが、前回対応した行員について、支店側は「本人はそのような説明はしていないと言っている」と回答した。窓口対応は録音されておらず、事実確認の手段がないことを理由に補償はできないとされた。

 警察への相談については、長年カナダに住む同僚から「この金額ではまず動かない」と忠告された。惇貴さん自身、以前日本で詐欺被害に遭った際に十分な対応を得られなかった経験もあり、今回も行っても意味はないだろうと判断し、相談しなかった。

 当時住んでいたシェアハウスのカナダ人女性に話すと、「その手の小切手詐欺は昔からある。留学生は小切手を使ったことがないから狙われる」と説明された。ここでようやく、自分が典型的な手口に巻き込まれていたことを実感したという。

 振り返ってみると、送り主と振込先の名前が一致していなかった。「日本ならその時点で気づけてたと思う。でもカナダは英語名と本名が違う人もいるし、文化が分からないからそういうものなのかなって思ってしまった」と振り返る。当時は引っ越し費用や生活費がかかり、「早く売りたい」という焦りもあった。「お金がなかったし、資金を少しでも作りたかった。だから余計に冷静になれなかった」と話した。

 「仕組みが分からない留学生は本当に狙われやすい。相手の身元が確認できるまでは絶対に送金しないでほしい。一度送ったお金は本当に戻ってこない」。これからカナダに来る学生へ向け、強く注意を呼びかけた。

eスポーツチケットの転売詐欺 SNSでの匿名取引

 裕加さんは2024年末に留学目的で来加し、世界で人気のゲーム「リーグオブレジェンズ」のカナダで行われる大会チケットを探していた。大会は北米でも注目度が高く、公式販売は開始から数秒で完売したという。「せっかくカナダにいるなら絶対に見に行きたいと思っていた」と話す。

 公式サイトでの再販も逃し、次に頼ったのがSNS「Reddit」だった。同じゲームファンが多く集まり、リセール情報がやり取りされていると知ったためだ。譲渡希望の投稿にコメントすると、複数の利用者からDMが届いた。

 そのうちの1人は、ほぼ定価での販売を提示した。チケットアプリの画面を撮影した画像も送られ、「仕事で行けなくなっただけだから、早くチケットを手放したい」と説明したという。やり取りは深夜に続き、裕加さんは2時ごろ、提示された金額をイートランスファーで送金した。

 しかしチケットは届かず、翌朝には相手のアカウントが消えていた。「あ、やられたなって思いました」と振り返る。送金先の名前はプロフィール名と異なっていたが、「カナダではイングリッシュネームを使う人もいる」と疑わなかった。100ドル前後の被害で、その後銀行に詐欺として問い合わせメールを送ったが、返答はなかった。

 「こっちの文化や仕組みが分からないから、少しおかしな点があってもそういうものなのかなって思ってしまう。特にチケットみたいに争奪戦になるものは焦りやすくて、そこにつけ込まれるんだと思います」と話す。

 留学生である自分が狙われた理由についても、「匿名取引で、相手の身元がまったく分からないのに送金してしまったのが一番大きい。絶対に先にお金を渡さないでほしい」と警鐘を鳴らした。

***

 次回は、在バンクーバー日本国総領事館と連邦警察(RCMP)に聞いた詐欺の実態と対策についてを紹介する。

(取材 田上麻里亜)

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カナダで気をつけたい「留学生を狙う詐欺 日本人留学生3人の証言」前編

 知らない土地で住まいを探し、慣れない英語で契約など手続きに取り組む留学生にとって、巧妙な詐欺を見抜くことは容易ではない。その状況につけ込み、さまざまな詐欺被害が起きている。

 カナダに留学中、詐欺被害に遭った日本人学生3人に被害の経緯を聞いた。前編・後編で紹介する。

マンションで突然の退去 入居後3カ月目に起きた被害

 千歩さんは専門学校を卒業後ワーキングホリデーでバンクーバーに来た。当時21歳で、貯金額は約10万円。ホームステイ終了後の住まいを探す中で、日本語掲示板でイエールタウンの高層マンションにある家賃800ドルの「デン」と呼ばれる小部屋を見つけた。入居を決めた理由について「仕事場がウォーターフロントだったので」と話す。

 入居後しばらくは大きな問題もなく過ごしていたが、入居して3カ月目のある朝、オーナーから突然「鍵を作りたいからメールアドレスを教えて」と連絡が来た。本人もよく意味が分からなかったが、言われたとおりにメールアドレスを伝えて外出した。しかし、帰宅すると鍵が使えなくなっていた。裏口も反応せず、アルバイトの時間が迫り困っていると、マンションの中から出てきた男性が扉を開けてくれた。

 ところがその男性は、扉を開けた瞬間に「何号室の方ですか?」と言い当てるように聞いてきた。そのまま千歩さんを共用スペースに連れて行き、オーナー名や住人数、どのような契約で住んでいるのかなどを次々と問い始めた。千歩さんは、「英語が分からないふりをしても翻訳アプリを使って質問が続いて、逃げ場がなかった」と当時の緊迫した様子を話す。

 そして契約書データをこっそり確認しようと端末を開いた瞬間、男性は画面をのぞき込んで「これは何?」と追及し、契約書データの送付を強く求めた。鍵が使えず部屋へ戻ることもできない状況で、拒否することはできなかったという。

 契約書のデータを共有して部屋の鍵を開けてもらい、戻ってオーナーに状況を伝えると、すぐに電話がかかってきて「なんで従ったのか」と強い口調で責められた。その後アルバイトがあったにもかかわらずその場で待機することを命じられ、「管理人さんに出ていってって言われた」と当日の夜までの退去を指示された。急な対応で欠勤となり、職場からも注意を受け、信用にも影響したという。

 オーナーの車で移動した先は、ロブソン通り沿いのマンションで、ソラリウムと呼ばれる、壁がガラス張りになっている小部屋だった。1カ月は同じ家賃で住めるが、2カ月目からは家賃が上がると説明された。不信感が強くなっていた千歩さんは、その後新たな住まいを見つけ、1カ月で退去した。

 退去後もデポジット返金や電気代の差し引きをめぐる混乱が続いた。返金を問い合わせると「今アメリカ旅行に行ってる」などと説明し、鍵のデポジット100ドルは返金されていなかった。指摘すると「忘れていた」と話し、家賃のデポジットは時間をかけて返金されたが、電気代の計算は曖昧なままだった。

 その後移った一軒家では、ブリティッシュ・コロンビア州の規定に沿った紙の契約書を対面で交わした。ここで初めて適切な契約手続きを知った。以前の契約書はデータのみで、オーナー名はファーストネームだけ、署名もなかった。

 その後、友人の紹介で偶然にも同じマンションで以前暮らしていた日本人に会った。その人も、水漏れ工事を理由に突然退去させられ、まったく同じソラリウムに移されたという。もともと住んでいたデンは値上げされて再募集されていた。さらに入居前にも、別の日本人留学生がデポジットをめぐるやり取りでトラブルになり、迫られて退去させられたケースがあったという。

 こうした話を聞くうちに、千歩さんは「管理人とオーナーは最初からつながっていて、理由をつけて住人を入れ替え、家賃を上げる流れができていたのではないか」と感じたと話す。

 渡航前の貯金は10万円ほどで、急な退去は生活の基盤を大きく揺るがす出来事だった。当時の心境について千歩さんは「なんでこうなってるんだろうって。追い出されて次どうしようっていうので頭がいっぱいで、何も考えられなかった」と振り返る。

 「留学生って、本当に狙われやすいんだなと思いました。自分は知らなかっただけで、後から同じ被害にあった人に会って、ようやく全部つながった。これから来る人には、最初に知っておいてほしいです」と話した。

***

 後編では、SNSをきっかけにした被害で、小切手やE-transferなどカナダ特有のやり取りに戸惑う体験談を紹介する。

(取材 田上麻里亜)

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2026年「朝日」新年会 来年のジャパンツアーに向けて始動

真っ赤なユニフォームをまとった選手たちを、家族や関係者が囲んだ。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
真っ赤なユニフォームをまとった選手たちを、家族や関係者が囲んだ。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 朝日ベースボール・アソシエーションの新年会が1月11日、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー市の日系文化センター・博物館で開催された。会場には朝日のユニフォームを身に着けた選手や家族、指導者、関係者など約150人が集まり、活気あふれる新年会となった。

朝日にとってどれほど大きな存在だったのか

あいさつするジョン・ウォン会長。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
あいさつするジョン・ウォン会長。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 朝日ベースボール・アソシエーションのジョン・ウォン会長はあいさつで、「朝日ベースボールは、この会場にいる一人ひとりが時間や労力、思いを注いでくれているからこそ成り立っている」と述べ、選手や家族、指導者、ボランティアの存在が欠かせないことを強調した。その後、活動を支える理事やボランティア一人ひとりの名前が紹介され、会場から大きな拍手が送られた。

 また、当日は戦前の日系人野球チーム「朝日軍」の元選手、上西ケイさんの誕生日であり、「Vancouver Asahi Day」に当たることにも触れた。「この時期に集まることで、ケイが朝日にとって、そしてここにいる多くの人にとって、どれほど大きな存在だったのかを改めて感じさせられます」と述べ、朝日の物語を子どもたちや家族と共有し、次の世代に伝えていくことの重要性を強調した。

朝日は「ただのチームではなく、家族のような存在」

 今年の「ケイ・カミニシ・アワード」には、エイダン・パク(Aiden Park)さんが選ばれた。朝日ベースボールチームのメンバーから毎年1人を選出するこの賞は、朝日の精神であるスポーツマンシップや礼儀に加え、野球の技術や次世代育成への貢献などを総合的に見て贈られる。

「ケイ・カミニシ・アワード」受賞の様子。左から、朝日野球協会副会長小川学さん、エイダン・パクさん、エド・カミニシさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
「ケイ・カミニシ・アワード」受賞の様子。左から、朝日野球協会副会長小川学さん、エイダン・パクさん、エド・カミニシさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 パクさんは13歳で朝日に加わり、その後、ボランティアコーチとして選手の指導に携わってきた。受賞スピーチでは、「朝日は、より良い選手にしてくれただけでなく、より良いチームメート、より良い人間、より良いコーチにしてくれました」と述べた。その上で、「朝日は自分の人生の大きな一部で、このコミュニティから多くのものをもらいました。だからこそ、これからは次の世代に返していきたい」と、指導者として関わり続ける意気込みを語った。

 スピーチを終えたパクさんに話を聞くと「とても緊張した」と笑顔を見せ、朝日に加わった当時を振り返り、「ここはただのコミュニティではなく、自分にとっては本当に家族のような存在です」と話した。

スピーチを終え、ほっとした様子で笑顔を見せたパクさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
スピーチを終え、ほっとした様子で笑顔を見せたパクさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 そのほか、州代表(Team BC)として全国大会に出場した選手の表彰や、今年から新たに設けられた「アサヒ・スピリット・アワード」を発表。初回受賞者には長年にわたり活動を支えてきた鈴木一家が選ばれた。同賞は、選手だけでなく、家族や団体を含め、コミュニティの一員として朝日に関わり、継続的に活動を支えてきた人たちに感謝を伝えることを目的に創設された。

 創設の背景について朝日野球協会副会長の小川学さんは、「長年にわたり朝日に関わり、活動を支えてきた選手や家族、団体に対して感謝を伝える機会を広げたかった」と説明し、朝日に関わった人たちが集まる場を、今後もより充実させていきたいと語った。

2027年ジャパンツアーに向けて

  2027年には、待ちに待ったジャパンツアーが予定されている。ツアーには18人の選手が参加する予定で、ヘッドコーチを務めるのはベン・チョウ(Ben Chow)さん。今回が初のヘッドコーチ就任となる。

2027年ジャパンツアーのヘッドコーチを務めるチョウさん。ツアーでは、選手たちが朝日スピリットを感じて、好きになってくれることが一番大切と語った。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
2027年ジャパンツアーのヘッドコーチを務めるチョウさん。ツアーでは、選手たちが朝日スピリットを感じて、好きになってくれることが一番大切と語った。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 チョウさんは2018年から朝日ベースボール・アソシエーションの活動に関わり指導を重ねてきた。2027年のジャパンツアーについては、「目標は、選手たちが朝日スピリットを感じ、好きになってくれることです。朝日ベースボールにはとても長い歴史があります。今回選ばれた選手たちが将来また朝日に戻ってきて、コーチとして教えたり、支えたり、良いロールモデルになってくれることを目指しています」という。

 日本での交流についても、「日本のコーチから『この選手たちは野球を尊重している。グラウンドを尊重している。コーチを尊重している。まるで日本の選手のようだ』と言われることが、一番の褒め言葉だと思っています」と語った。

 ツアーの訪問先は、東京、千葉、名古屋(愛知)を予定している。朝日の歴史と精神を胸に、2027年のジャパンツアーに向けた活動が始まっている。

2027年ジャパンツアー参加予定の選手と指導者。朝日の新たな1年が動き出した。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
2027年ジャパンツアー参加予定の選手と指導者。朝日の新たな1年が動き出した。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

朝日ベースボール・アソシエーション

 2016年に発足。当時の名称はカナディアン日系ユースベースボールクラブ。2015年に最初のジャパンツアーを実施し、これを機に2016年に創設した。

朝日チーム・ジャパンツアー

 2015年を第1回として、2年に一度、同アソシエーションでプレーする選手から選抜チームを結成し日本に野球遠征している。2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止に。2017、2019年には、横浜、静岡、滋賀、奈良などで、2023年は神戸を中心に関西地区で親善試合や野球交流、2025年は千葉、東京、栃木を訪問した。

朝日ベースボールアソシエーションウェブサイト: https://www.asahibaseball.com/

ケイ・カミニシさんの家族も駆けつけた。左からレイ・シモクラさん、ジョイス・シモクラさん、ケニー・シモクラさん、エド・カミニシさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
ケイ・カミニシさんの家族も駆けつけた。左からレイ・シモクラさん、ジョイス・シモクラさん、ケニー・シモクラさん、エド・カミニシさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
Go Taikoによる太鼓のパフォーマンス。朝日の赤と同じ赤い法被で、会場は赤と熱気に包まれた。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
Go Taikoによる太鼓のパフォーマンス。朝日の赤と同じ赤い法被で、会場は赤と熱気に包まれた。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
2025年ジャパンツアーのメンバー。新年会では2025年のジャパンツアーの報告として、現地での活動をまとめたスライドショーが上映され、選手や指導者、保護者が協力してツアーに臨んだ様子が紹介された。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
2025年ジャパンツアーのメンバー。新年会では2025年のジャパンツアーの報告として、現地での活動をまとめたスライドショーが上映され、選手や指導者、保護者が協力してツアーに臨んだ様子が紹介された。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

(取材 田上麻里亜)

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姉妹都市60周年バンクーバーと横浜がつなぐ次世代への交流

金沢動物園・ののはな館で榎本彩乃さんの講演を視聴する参加者。2025年12月5日(日本時間12月6日)、神奈川県横浜市。写真提供:横浜市役所国際局
金沢動物園・ののはな館で榎本彩乃さんの講演を視聴する参加者。2025年12月5日(日本時間12月6日)、神奈川県横浜市。写真提供:横浜市役所国際局

 カナダ・バンクーバー市と横浜市の姉妹都市提携60周年を記念したイベントが、12月5日(日本時間12月6日)に行われた。

 バンクーバーからはバンクーバー在住の社会人やブリティッシュコロンビア大学(UBC)の学生、横浜市の海外留学支援制度を活用してカナダに留学中の高校生が、横浜からは市内在住・在学の中学生以上の参加者が集まり、計45人が参加した。

オンライン講演会終了後、第2部では会場参加者12人が金沢動物園ツアーに参加、バンクーバーから寄贈されたトーテムポールやカナダにも生息するオオツノヒツジを巡り、姉妹都市のゆかりを学ぶ時間となった。2025年12月5日(日本時間12月6日)、神奈川県横浜市。写真提供:横浜市役所国際局
オンライン講演会終了後、第2部では会場参加者12人が金沢動物園ツアーに参加、バンクーバーから寄贈されたトーテムポールやカナダにも生息するオオツノヒツジを巡り、姉妹都市のゆかりを学ぶ時間となった。2025年12月5日(日本時間12月6日)、神奈川県横浜市。写真提供:横浜市役所国際局

 第1部ではバンクーバーと会場になった横浜市金沢区の金沢動物園・ののはな館をオンラインでつなぎ、バンクーバーでの暮らしや学び、海外で働くことについて参加者が語った。

 オンライン講演会終了後は、第2部として会場の参加者を対象に動物園内を周るツアーが行われ、バンクーバーから寄贈されたトーテムポールやカナダにも生息するオオツノヒツジを巡り、姉妹都市のつながりに触れる機会となった。

バンクーバーと横浜 約140年続くつながり

 バンクーバーと横浜の関係は1887年に横浜港からバンクーバーへの太平洋航路が就航したことをきっかけに始まった。横浜港から多くの日本人がカナダに渡航し移民した歴史的な背景を踏まえ1965年に姉妹都市に、1981年にはバンクーバー港と横浜港が姉妹港提携した。両市はUBCと市立大学の学術協力や高校の姉妹校提携など若者の交流を中心に、バンクーバーからは少年少女野球チーム「朝日」(旧バンクーバー新朝日)が訪問するなど、双方向の交流が続いている。2015年の姉妹都市50周年には横浜市林文子市長(当時)がバンクーバーを訪問。グレゴール・ロバートソン市長(当時)と友好交流の覚書に署名した。

 今回のイベントはバンクーバー市と横浜市の姉妹都市提携60周年を機に、両市の未来を担う若い世代のさらなる交流の場として企画された。海外の異なる文化や両都市が抱える共通の課題に触れるきっかけを提供することで、グローバルな視野を持つ人材の育成につなげる狙いがある。

 主催は横浜市国際局、協力はバンクーバーから日本カナダ商工会議所。

在住者が語る多文化社会バンクーバーで働くこと

 最初に講演したのは、横浜市出身でバンクーバー在住6年目の榎本彩乃さん(日本カナダ商工会議所所属)。カナダ渡航直後に新型コロナウイルスのロックダウンに巻き込まれ、限られた環境で生活を始めることになったという。しかしその後、勉強やアルバイトに加えてボランティア、インターンにも積極的に取り組み、現在は日本産品のマーケティング業務に携わっている。

 カナダで働く中で「日本の感覚にとらわれず、違う文化の視点から物事を考えられるようになった」と語り、多文化環境で働く中で得た視点を述べた。また、日本では相手の気持ちを察することが重視される一方、カナダでは言葉で伝えなければ意図が共有されないと説明し、「自分の当たり前は相手の当たり前ではない」と文化の違いを説明した。

学生が感じるバンクーバーと日本

 続いて、UBCの学生団体「UBC Japan Association」の学生2人がプレゼンテーションを行った。同団体には約300人が所属し、日本文化をテーマにしたイベントを企画している。

 学生たちは、バンクーバーでは豊かな自然環境を背景にランニングやハイキングが日常に組み込まれていることや、街中で見知らぬ人同士が気軽に会話を交わす文化があると紹介。バス停やレストランの待ち時間でも自然と会話が始まるなど、日本ではあまり見ない光景などを話し、日常の文化の違いについて触れた。

 また価値観の違いについても、多様な意見をまず受け入れてから考える姿勢が尊重されると、多文化社会を基盤にしたコミュニケーションが定着している点を強調した。

 一方、カナダで生活して見えた日本の良さとしては、礼儀や周囲への気遣いが日常の中で自然に行われている点を挙げた。元にあった場所に戻す、使った場所を来た時よりもきれいな状態にして次の人に渡すといった、周囲への配慮が行動として表れている。

 食文化についても、「いただきます」という言葉や、「一粒のお米に七人の神様がいる」という考え方を例に挙げ、日本では食べ物や日常生活の中で感謝の気持ちを持つ文化があると説明した。

 後半には、横浜市の海外留学支援制度を活用してカナダに留学中の高校生3人が留学生活で得た気づきを紹介した。質疑応答では海外でのコミュニケーションや文化の違いに関する質問が多く出た。

 横浜市国際局政策総務課欧州米州担当課長の川島とも子さんは、「今後も横浜市国際局では、バンクーバーを知り、友好交流を一層深める取組を進めていきます」と、継続的に交流事業を推進していくと語った。

(取材 田上麻里亜)

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被爆3世代の記憶をつなぐドキュメンタリー「ある家族の肖像」海外初上映

左から、金谷康佑さん、鈴木カオルさん、日本カナダ商工会議所の高橋サミー会長、吉崎大貴さん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
左から、金谷康佑さん、鈴木カオルさん、日本カナダ商工会議所の高橋サミー会長、吉崎大貴さん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 戦後80年の節目を迎えた今年。広島の被爆1世、2世、3世の歩みを記録したドキュメンタリー映画「ある家族の肖像~被爆三世代の証言~」が11月22日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で上映された。

 初の海外上映となった今回のイベントでは、映画に出演した被爆2世の鈴木カオルさん、音楽を担当したジャズピアニスト金谷康佑さんが日本から参加、家族の記憶と被爆に向き合う自身の思いについて語った。

旧知の縁がつないだバンクーバー上映

 上映会を主催したのは日本カナダ商工会議所。高橋サミー会長は日本でカオルさんと同じ職場に勤めていたことがあり、カオルさんの父、鈴木照二さんとも面識があったという。この旧知の縁が再び結び、今年3月に「海外で上映したい」と相談を受けたことから企画が動き出した。バンクーバー広島県人会の後援を得て、家族3世代の被爆の記憶が初めて国外の観客へ届けられた。

 映画はテレビ朝日の報道番組を数多く手がけた上松道夫監督が2023年に制作。旧制広島高等学校在学中に勤労動員先の寮内で被爆した被爆1世の祖父の照二さん、高校生の時に心臓に異常が発見され体調不良の日々を過ごしてきた被爆2世のカオルさん、大学4年で甲状腺がんを宣告された被爆3世の万祐子さん。兵庫県神戸市の3世代が広島を訪ね、戦争と原爆の記憶、そして未来への思いを語った旅が記録されている。

 カオルさんと金谷さんがこの活動を始めたのは2020年ごろのこと。もともとカオルさんは金谷さんのマネージャーを務めており、福島第一原発事故で避難を余儀なくされた子どもたちをサマーキャンプに招き支援した経験をきっかけに、「平和のために自分も行動したい」と考え、活動へと歩みを進めた。

自身と家族の体験を語り、世代を越えて記憶を継承する意義を伝えるカオルさん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
自身と家族の体験を語り、世代を越えて記憶を継承する意義を伝えるカオルさん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 上映後に観客の前でマイクを握ったカオルさんは、「Can I be very honest with you?」と始め、「映画の中では強い人間だと話しましたが、私はただの母親で、娘のことを心配しているだけです」と静かに語り始めた。娘の病気や当時の心境に触れると声を詰まらせ、言葉を続けながら涙を拭う場面もあった。その姿に目頭を押さえる参加者の姿も見られた。

 イベント後、「初めてですね。一人の母としての気持ちを伝えたいなと思ったのは」とカオルさんは打ち明けた。「いつもなら映画がどう作られたか、音楽がどう生まれたかを話すんですけれど、今日は全くそういう雰囲気ではなくて」と続け、「私の本当に一人の母としての気持ちを伝えたいと思った」と穏やかに語った。

残された記憶をどうつなぐか

 被爆3世でありバンクーバー広島県人会の理事を務める吉崎大貴さんは、祖母が原爆投下時に爆心地から約2.5キロ地点で被爆した体験を紹介した。

 祖母は閃光と爆風を受けた後、行方が分からなくなった母親を捜して町へ向かい、「シャベルを持って数え切れないほどのがれきと遺体を掘り返し、ようやく母の遺体を見つけた」と語っていたという。吉崎さんはその証言を受け継ぎながら、「(非核は)世界的な責任」と語り、二度と同じ悲劇を繰り返してはならないと強く訴えた。

 さらに、被爆者の平均年齢が80〜90歳に達し、直接体験を語れる人が急速に減っている現状に、「だからこそ、私は今日ここに立っています」と述べ、継承の重要性を参加者に呼びかけた。

 質疑応答では、さまざまな形で被爆の記憶や家族の体験が語られた。就労先の長崎で被爆した父を持つ参加者は、帰郷後も支援を受けられず後遺症と闘い続けた過去を話した。また、被爆3世として参加した来場者は、祖母の死の間際に自身の体調不良が被爆の影響かもしれないと告げられた経験を明かし、世代を越えて続く不安と向き合ってきた胸中を語った。

音楽が導いたドキュメンタリー

 上映後には音楽を担当した金谷康佑さんが、映画のタイトル曲「A Portrait of a Family(家族の肖像)」をはじめ3曲を演奏した。

映画楽曲などを生演奏する金谷康佑さん。美しいピアノの音に、観客は息をのむように静まり、作品の余韻を楽しんだ。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:日加トゥデイ
映画楽曲などを生演奏する金谷康佑さん。美しいピアノの音に、観客は息をのむように静まり、作品の余韻を楽しんだ。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:日加トゥデイ

 ピアノの一音が響いた瞬間、会場の空気は静まり、観客の意識が一斉に音楽へと向かう。曲調が変わるたびに深い集中に包まれ、アンコールでさらに2曲を披露。映画の挿入曲も演奏され、会場には揺らぐような余韻が残った。

 ドキュメンタリー制作の経緯について金谷さんに聞くと、監督の上松道夫さんが金谷さんのコンサートに通い、演奏を聴き込む中で映像の構想を固めていったことを明かした。上松監督はソロアルバムに収録されている「家族の肖像」に強いインスピレーションを受けたといい、「監督から『曲から映画のイメージができた』と言われた」と振り返った。映画の核となる世界観が音楽から立ち上がった。

 また、「第2次世界大戦から、まだ終わってないと感じています」と、被爆の歴史をめぐる問題が現在も続いていると思うと語った。今回の上映と演奏については、「若い人にとっても意味のあるイベントだったと思う」と、海外での上映や演奏の機会を今後も広げていきたいと話した。

母としての胸の内と、音楽がつないだ力

会場となった日系文化センター・博物館で。左から、金谷さん、在バンクーバーの被爆者ランメル幸さん、鈴木さん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:日加トゥデイ
会場となった日系文化センター・博物館で。左から、金谷さん、在バンクーバーの被爆者ランメル幸さん、鈴木さん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:日加トゥデイ

 イベント終了後も会場では参加者がカオルさんたちと言葉を交わし続け、温かな余韻が漂っていた。インタビューに応じたカオルさんは、ふっと表情を緩め、「(今日のイベントは)すごく身内のファミリー感があって。初めてお会いするのに、お客様というより家族のように感じました」と笑顔で振り返った。

 映画の中では、被爆1世である父の体験とともに、カオルさん、そして娘の万祐子さん、それぞれの視点から被爆の影響が描かれている。カオルさんは娘に対して病気や被爆のことを「怖くて、今まで聞いたことがなかった」と明かし、映画を通じて初めて娘の本心を知ったと話す。

 またこの活動を続ける上で、音楽の存在が大きな支えになったとカオルさんは語る。手術を控えて不安定だった時期、万祐子さんが一人で暮らす小さなアパートには、大学時代の友人たちが入れ替わりで泊まり込み、万祐子さんを見守った。そしてカオルさんに向けても、「僕たちが守りますから。寂しい思いをさせないから、お母さん大丈夫だからね」と声をかけ続けたという。

 「みんな音楽で繋がった仲間です」とカオルさん、手術が無事終わったことについて「音楽の友達が起こしてくれた奇跡」と目を潤ませた。

 音楽が家族を支えた経験は、この活動の原動力にもなっている。「音楽が心に残って映画を思い出してくださればいいんです」、言葉ではなく音として残る記憶にも意味があると話した。さらに今後の活動への思いとして、「若い人に種を植えたい」と繰り返し、「映画の内容を覚えてなくても、原爆ドームを思い出すだけでいい。小さな種でいい」と力を込めた。

原爆ドーム。広島市。撮影 日加トゥデイ
原爆ドーム。広島市。撮影 日加トゥデイ

(取材 田上麻里亜)

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2025年 バンクーバーイルミネーション特集

ライトナイトの屋外エリアの様子。2025年11月26日、サレー市。撮影:日加トゥデイ
ライトナイトの屋外エリアの様子。2025年11月26日、サレー市。撮影:日加トゥデイ
約300万個のライトが作るトンネルを歩く来場者。幻想的な空間が広がる。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜
約300万個のライトが作るトンネルを歩く来場者。幻想的な空間が広がる。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 冬の訪れとともに、今年も街が鮮やかな光に包まれる季節がやってきた。メトロバンクーバーでは、湖畔を照らす大規模なイルミネーションから、サンタやトナカイと触れ合えるクリスマスイベントまで、各地で個性豊かな光の景色が広がる。

 今回はメトロバンクーバーで、この冬訪れたいイルミネーションを紹介する。

ブライトナイト復活!ロック市長「サレーの誇り」に

 28年の歴史を持つ「ブライトナイト(Bright Nights)」が今年、これまでのスタンレーパーク(バンクーバー市)から発祥の地であるサレー市へ帰ってきた。11月26日には開幕イベントが行われ、熱傷患者支援のためのブリティシュ・コロンビア(BC)州最大の募金活動の復活を祝った。

火傷基金の寄付金贈呈式に登壇したサレー市ブレンダ・ロック市長。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜
火傷基金の寄付金贈呈式に登壇したサレー市ブレンダ・ロック市長。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 火傷基金の寄付金贈呈式にはサレー市ブレンダ・ロック市長があいさつ、「ブライトナイトはメトロバンクーバーで最も愛されてきた伝統の一つ」と述べ、多くの都市がブライトナイトの開催を希望する中でサレー市が選ばれたことを「大変誇りに思い、感謝している」と笑顔を見せた。

  ブライトナイトは、BC州消防士協会火傷基金の最大チャリティイベント。ロック市長は自身も家族と訪れた思い出を語りながら「このイベントは地域コミュニティの象徴であり、支え続けてきた消防士やボランティアの努力があって成り立っている」と感謝を表明。 500人を超える消防士の設営協力や地域企業の支援が紹介されると、会場には大きな拍手が沸き起こった。

火傷基金(BC Professional Fire Fighters’ Burn Fund)のトッド・シアリング会長。開幕式のステージ前で。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜
火傷基金(BC Professional Fire Fighters’ Burn Fund)のトッド・シアリング会長。開幕式のステージ前で。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 個別のインタビューに応じたBC州消防士協会火傷基金トッド・シアリング会長は、サレーでの開催について「1990年代にボブとマージがニュートンの住宅街で始めた場所に戻ってこられて本当にうれしい」と語った。「バンクーバー市での長い開催を経てサレー市に戻ることは、地域にもBurn Fundにも大きな意味がある」と話す。

 準備では新しい環境に合わせた再設計が必要で、「会場や構造を一から作り直す作業が大変だった」と振り返った。一方で、約2,800平方メートルの屋内会場や広いスペースが今回の魅力を引き立てていると説明。「暖かい屋内で過ごせること、食事や展示を楽しめること、駐車場の広さも大きな特徴」と話した。

Vancouver Fire & Rescue Services Bandによる演奏。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜
Vancouver Fire & Rescue Services Bandによる演奏。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 来場者には「寄付する気持ちや喜び、そしてコミュニティの一体感を感じてほしい。ブライトナイトがここに帰ってきた特別な雰囲気を味わってもらえれば」と期待した。

 屋外では、池の周囲に約300万個のライトが装飾され、来場者は光に包まれた遊歩道を自由に散策できる。ライトのテーマエリアが点在し、写真撮影スポットも多く、ゆったりと歩きながら見どころを巡ることができるのが特徴だ。会場内には15メートルの観覧車も設置され、光に囲まれた会場を高い位置からも楽しめる。

 屋内の「Noel Village」には、サンタとの撮影会、音楽、クリスマスマーケットを楽しむことができ、約2,800平方メートルの会場を活かした多彩なアクティビティが用意されている。

ライトで装飾された消防車。ブライトナイトを支える消防士たちの存在を象徴する展示となっている。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜
ライトで装飾された消防車。ブライトナイトを支える消防士たちの存在を象徴する展示となっている。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜

期間:2025年11月28日〜2025年12月28日
時間:16:00〜22:00(チケット制・日付指定)
場所:ブリティッシュ・コロンビア州サレー市クローバーデール・フェアグラウンド
公式サイト:https://www.noelfestival.com/

ライト・アット・ラファージュ(Lights at Lafarge)

ライト・アット・ラファージュ。Photo by City of Coquitlam
ライト・アット・ラファージュ。Photo by City of Coquitlam

 メトロバンクーバー最大の無料屋外イルミネーションが今年も湖畔を鮮やかに照らす。湖の周囲に延びる遊歩道を歩きながら、多彩な光のアートを楽しめるほか、毎年新しい演出が加わるため、今年もこれまでとは違った景色が広がる。

期間:2025年11月28日〜2026年2月16日
時間:16:00〜23:00
場所:ブリティッシュ・コロンビア州コキットラム市、Lafarge Lake
公式サイト:https://www.coquitlam.ca/784/Lights-at-Lafarge

フェスティバル・オブ・ライト(Festival of Lights)

フェスティバルオブライト。Photo by VanDusen Botanical Garden
フェスティバルオブライト。Photo by VanDusen Botanical Garden

 バンクーバー市中心部・ショーネシー地区にあるバンデューセン植物園で開催されている冬の名物イルミネーション。約6万平方メートルの敷地に100万球以上のライトが灯り、池や森が幻想的な光の庭園に変わる。特徴はなんといっても、植物園ならではのボタニカル・ライトアート。自然を活かした光の演出を楽しめる。

期間:2025年11月28日〜2026年1月4日 ※12月25日は休園
時間:16:00〜22:00
場所:ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市ショーネシー地区
公式サイト:https://vandusengarden.ca

キャニオンライト(Canyon Lights)

キャニオンライト。Photo by Capilano Suspension Bridge Park
キャニオンライト。Photo by Capilano Suspension Bridge Park

 深い渓谷にかかる「キャピラノ・サスペンションブリッジ」で行われるバンクーバー屈指の人気イルミネーション。長さ140m、高さ70mのつり橋がライトアップされ、谷を横断する光のラインが浮かび上がる迫力のイベント。森を歩く「Treetops Adventure」や、ライトをまとった木々が鏡のように反射するリフレクションも美しく、森全体が幻想的な空間へと変わる。

 2025年は新たに「3Dワイルドライフプロジェクション」が登場し、森の動物たちが立体的に動いているかのような新演出も。自然、光、テクノロジーを融合させた唯一無二のイルミネーションが楽しめる。

期間:2025年11月21日〜2026年1月18日 ※12月25日は休園
時間:11:00〜21:00(閉園後1時間滞在可)
場所:ブリティッシュ・コロンビア州ノースバンクーバー市
公式サイト:https://www.capbridge.com

ピーク・オブ・クリスマス(Peak of Christmas)

ピーク・オブ・クリスマス。Photo by Grouse Mountain
ピーク・オブ・クリスマス。Photo by Grouse Mountain

 ノースバンクーバーの象徴であるグラウスマウンテンでは、「バンクーバーの北極」として親しまれるクリスマスイベントが開催される。

 山頂ではライトウォークやサンタのワークショップ、トナカイとの触れ合い、そり、映画の上映会など、多彩なアクティビティが楽しめる。雪景色とイルミネーションの中、家族で冬を過ごす毎年人気のイベントだ。

期間:2025年11月21日〜12月24日
時間:アクティビティにより異なる。ウェブサイトを要確認
場所:ブリティッシュ・コロンビア州ノースバンクーバー市グラウスマウンテン山頂
公式サイト:https://www.grousemountain.com/peak-of-christmas

(取材 田上麻里亜)

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