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「遊び心あふれるノーティーファッションで魅了」バンクーバー・ファッション・ウィーク2025秋冬コレクション

maison de chatnoirの服をまとったモデルたち。2025年4月8日、バンクーバー市。写真提供: Vancouver Fashion Week
maison de chatnoirの服をまとったモデルたち。2025年4月8日、バンクーバー市。写真提供: Vancouver Fashion Week
Vancouver Fashion Weekの様子。2025年4月8日、バンクーバー市。写真提供: Vancouver Fashion Week/Enoch Feng
Vancouver Fashion Weekの様子。2025年4月8日、バンクーバー市。写真提供: Vancouver Fashion Week/Enoch Feng

 北米でニューヨークに次ぐ規模を誇るファッションイベント「バンクーバー・ファッション・ウィーク(Vancouver Fashion Week:VFW)」が4月8日から13日までバンクーバー市David Lam Hall, Chinese Cultural Centre of Greater Vancouverで開催された。

 2001年にスタートして以来、毎年春と秋の2回開催され、若手から著名デザイナーまで世界各国のブランドがコレクションを発表する登竜門的存在として注目されている。

 今年は、カナダ国内をはじめ、アメリカ、フランス、メキシコ、オーストラリア、ウクライナ、タイ、コロンビア、日本、韓国、中国などから注目のデザイナー約40人が参加。ファッション業界関係者だけでなく一般の観客も多く、国際都市バンクーバーの文化的魅力を象徴するイベントのひとつ。

革製品・革靴デザイナーのNoirさん(左)と服飾デザイナーのMacotoさん。2025年4月8日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜
革製品・革靴デザイナーのNoirさん(左)と服飾デザイナーのMacotoさん。2025年4月8日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜

 日本からも複数のデザイナーが参加。各国から多様なブランドが集まる中、日本のファッションもその一角を担った。今回は熊本を拠点とするmaison de chatnoirのデザイナー、NoirさんとMacotoさんに話を聞いた。

日本から初参加、maison de chatnoirが魅せた「ノーティファッション」

maison de chatnoirの服をまとったモデルたち。2025年4月8日、バンクーバー市。写真提供: Vancouver Fashion Week
maison de chatnoirの服をまとったモデルたち。2025年4月8日、バンクーバー市。写真提供: Vancouver Fashion Week

 初日のランウェイで存在感を放ったのは日本から初参加のmaison de chatnoir(メゾン・ド・シャノワール)。熊本にアトリエ兼店舗を構え、革製品・革靴デザイナーのNoirさんと服飾デザイナーのMacotoさんの二人が手がけるブランドだ。

 メゾン・ド・シャノワールは1930~60年代のイギリスファッションに「やんちゃで好奇心旺盛な子ども」をイメージした「ノーティースタイル(Naughty Style)」で、独自の世界観を築いてきた。今回のショーでは60年代スタイルを軸に、ブランドオリジナルの柄を随所に取り入れているという。

ショーの直前Macotoさんと一緒にインタビューに答えるNoirさん。2025年4月8日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜
ショーの直前Macotoさんと一緒にインタビューに答えるNoirさん。2025年4月8日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜

 ショー直前のインタビューにNoirさんは「日本人は外から入れてきたものをより良くして、日本スタイルにするっていうのがすごい好きだと思う」と語り、「だからこそ(同ブランドのコンセプトは)60年代のイギリスのファッションなんですけど、そのスタイルを日本人がやることがやっぱり一番かっこいいと思ってる」と話した。

「今の自分だったら海外でもおもしろいことが起こせるかも」

 今回のショー参加に至るまでには、数年前から招待がありながらも、まだ自分たちのタイミングではないと辞退してきた経緯があった。だが知人デザイナーからの後押しや増えてきた海外ファンの存在が背中を押し、「今ならおもしろいことが起こせるかもしれない」と初の海外ランウェイに挑んだ。

ショー直前のインタビューに答えるMacotoさん。2025年4月8日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜
ショー直前のインタビューに答えるMacotoさん。2025年4月8日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜

 ブランドの出発点には「誰とも同じ服を着たくない」というMacotoさん自身の思いがある。ロリータファッションに引かれながらも、既製品で人とかぶることに違和感を抱き自ら服を作り始めた。ブランド立ち上げ当初はロリータスタイルを軸に展開していたが、約2年後、現在のスタイルへと方向転換した。

 「ロリータってお嬢様のイメージがあるじゃないですか。でも私はその逆、親の言うことを聞かない子どもみたいな、ちょっとクソガキっぽい子が着る服があってもおもしろいんじゃないかって思ったんです」と笑顔で話す。

 自由な発想と遊び心が詰まったコレクションは多様な文化が交錯するバンクーバーの空気の中で堂々とランウェイを飾った。

「次は200倍、300倍を目指したい」

 ショー直前のインタビューでは「どんな反応が返ってくるのか、不安と楽しみが入り混じっていた」と話していたMacotoさんだったが、ステージを終えた二人の表情には安堵がにじんでいた。

 ショー終了後に話を聞くと「いろんな国の人たちが、すごい、かわいいと、日本語で声をかけてくれて。本当に反応が伝わってきてうれしかったです」とNoirさん。コレクションの場でこれほどダイレクトに海外の観客のリアクションを感じたのは初めてだったという。

ショー終了後にモデルたちと記念撮影するMacotoさん(前列左から2番目)とNoirさん(前列右から2番目)。2025年4月8日、バンクーバー市。写真提供: Vancouver Fashion Week
ショー終了後にモデルたちと記念撮影するMacotoさん(前列左から2番目)とNoirさん(前列右から2番目)。2025年4月8日、バンクーバー市。写真提供: Vancouver Fashion Week

 「次に出るかどうか、もう悩んでいるくらい」と声を弾ませ、「今はもっと前向きに歩いていこうと思っていますね。200倍、300倍って、どんどん上も目指せそうな気がします」と先を見据えた。

ジャマル代表が語る日本ブランドの魅力

 VFWを主催するジャマル・アブドゥラーマン代表はイベントの理念について、「私たちの目的や目標は毎年同じです。クライアント、デザイナー、パートナーの露出を高めること、そしてショーに来てくださるお客様に、すばらしく、インスピレーションに満ちた体験をしていただくことです。毎シーズンそのために努力を重ねています」と語った。

インタビューに答えるジャマル・アブドゥラーマン代表。2025年4月8日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜
インタビューに答えるジャマル・アブドゥラーマン代表。2025年4月8日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜

 今年も世界各国から多彩なブランドが集う中で日本のブランドについては、「プレゼンテーションや音楽、演出まで、どれもこだわりがありすばらしい」と評価。「たとえ自分のスタイルとは違っても、自然とリスペクトしたくなる」と述べ、日本の文化的背景やものづくりへの姿勢に敬意を示した。

maison de chatnoirのカラフルな服をまとったモデルたち。2025年4月8日、バンクーバー市。写真提供: Vancouver Fashion Week
maison de chatnoirのカラフルな服をまとったモデルたち。2025年4月8日、バンクーバー市。写真提供: Vancouver Fashion Week

(記事 田上麻里亜)

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春の訪れを祝う2日間 さくらデイズ・ジャパンフェア 2025

華やかな衣装でよさこいを披露するAppare Yosakoi Vancouverのパフォーマーたち。2025年4月13日、バンクーバー市。Photo by Hirotomo Nijima
華やかな衣装でよさこいを披露するAppare Yosakoi Vancouverのパフォーマーたち。2025年4月13日、バンクーバー市。Photo by Hirotomo Nijima

 バンクーバー春の恒例行事「さくらデイズ・ジャパンフェア2025」が4月13日・14日にブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市のバンデューセン植物園で開催された。天候にも恵まれ、美しい桜とともに園内に咲き誇る色とりどりの春の草花が来場者を迎え、日本文化に触れるひとときとなった。

 2009年に始まったこのフェアは、2度の中止と1度のオンライン開催を経て、今年で15回目。バンクーバー桜まつり(VCBF)の一環として行われ、春の訪れを祝うイベントとして、多くの人々に親しまれている。

和文化の多彩なブースが来場者を楽しませる

 会場には、日本の食文化や伝統工芸、雑貨、体験型ワークショップなど、さまざまなブースが立ち並び、参加者は1日で回りきれないほどのブースを楽しんでいた。

 浴衣の試着体験では、家族連れや若者たちが列をつくり、写真を撮ったりスタッフと会話を交わしたりする姿が多く見られ、終日にぎわった。

毎年大人気の浴衣の着付けブース。日本の伝統衣装に身を包んだ来場者が会場を華やかに彩った。2025年4月14日、バンクーバー市。Photo by 田上麻里亜
毎年大人気の浴衣の着付けブース。日本の伝統衣装に身を包んだ来場者が会場を華やかに彩った。2025年4月14日、バンクーバー市。Photo by 田上麻里亜

 飲食・物販ブースでは、塩麹をはじめとする麹を使った調味料を紹介する出展も見られた。VANKOJI FOODSの都奈美さんによると、味噌はすでに一定の認知がある一方で塩麹や醤油麹はまだ知られていない食材だという。だからこそ「こういう対面式の機会をいただければ(直接)説明して、買っていただいて、それからまたリピーターとして使っていただける」と、フェアの意義を話した。

麹を使った調味料の魅力を伝えるVANKOJI FOODSの都奈美さん。2025年4月14日、バンクーバー市。Photo by 田上麻里亜
麹を使った調味料の魅力を伝えるVANKOJI FOODSの都奈美さん。2025年4月14日、バンクーバー市。Photo by 田上麻里亜

 また日本文化に強い関心を持つ来場者が多いこのフェアは「日本のものを望んで求めて来られる方が多いので、また違った雰囲気」とも述べ、ファーマーズマーケットとの違いを実感するという。「リピーターができるきっかけにもなるので毎年しっかり準備して臨んでいる」と話した。

地域の輪が詰まった「風車ブース」子どもたちに大人気

桜の花びらのような風車づくりに夢中になる親子。2025年4月14日、バンクーバー市。Photo by 田上麻里亜
桜の花びらのような風車づくりに夢中になる親子。2025年4月14日、バンクーバー市。Photo by 田上麻里亜

 毎年建友会が主催する子どもたちに人気の「風車づくり体験」ブース。今年は初日には用意された200個分の材料が午後早々に完売するほどの盛況ぶりを見せた。

 完成した風車を手に走り回る子どもたちの姿が会場のあちこちで見られ、体験に参加した親子からは「初めてだったけど丁寧に教えてもらえて作れた。楽しかった」という声が聞かれた。

手作りの風車を手に、笑顔を見せる子どもたち。2025年4月14日、バンクーバー市。Photo by 田上麻里亜
手作りの風車を手に、笑顔を見せる子どもたち。2025年4月14日、バンクーバー市。Photo by 田上麻里亜

 建友会の松原昌輝会長はさくらデイズ・ジャパンフェアの初期から参加してきた一人。「昔に比べて来場者が増え、ベンダーも多様になった」とイベントの成長を実感する。「以前は人を集めるのが大変だったが今は人が集まってくれるイベントになった」と笑顔を見せた。

 このブースの収益はBCチルドレンズホスピタルに寄付される。松原さんは「本業とは違う活動だが、地域とのつながりが生まれるのがうれしい」と話し、「こういう細かい作業は日本の人の得意技なので、そういうところをうまく伝えられればいい」とも語った。

未来へつながるフェアに

 第1回からジャパンフェア実行委員会委員長を務める塚本隆志さんは「昨年は皆さん知らなかったから人が少なかったけど、今年は結構みんなこっち(新設エリア)に流れてきてもらってる」と新設エリアへの来場者の増加を喜んだ。初期は人集めにも苦労したというが、現在は人が自然と集まるイベントに成長し、ベンダーの応募を断るほどの人気ぶりだ。

力強い和太鼓の響きが会場を包み、多くの来場者がステージ前に集まった。2025年4月13日、バンクーバー市。Photo by Hirotomo Nijima
力強い和太鼓の響きが会場を包み、多くの来場者がステージ前に集まった。2025年4月13日、バンクーバー市。Photo by Hirotomo Nijima

 イベントの成長については「今年で15回目ですかね。最初は本当にここだけ(小さなエリア)でやってたんです。そこからこれだけの規模になってすごいです。まあ、自分でもびっくりしますね」と振り返る言葉には、長年フェアを支えてきた主催者としての思いがにじむ。

 最後に「皆さんが日本というものをよく知っていただくということで、このバンクーバーの中で他の日本の人が大手を振って胸張って歩けるようになれればいいなと思います」とフェアを通じた願いを語った。

 桜の下に集った多くの来場者が笑顔で日本文化に触れた2日間。さくらデイズ・ジャパンフェアは、異文化が交わるこの街で、日本文化が深く根を張り、次世代へと受け継がれていく確かな場となっている。

書道体験で仕上げた作品を手に、満足げな表情を見せる3人。「桜」や「春」の文字に笑顔がこぼれた。2025年4月14日、バンクーバー市。Photo by 田上麻里亜
書道体験で仕上げた作品を手に、満足げな表情を見せる3人。「桜」や「春」の文字に笑顔がこぼれた。2025年4月14日、バンクーバー市。Photo by 田上麻里亜
満開の桜が咲き誇る会場では、多くの来場者が春の陽気のなかイベントを楽しんでいた。2025年4月13日、バンデューセン植物園。Photo by Hirotomo Nijima
満開の桜が咲き誇る会場では、多くの来場者が春の陽気のなかイベントを楽しんでいた。2025年4月13日、バンデューセン植物園。Photo by Hirotomo Nijima

(取材 田上麻里亜)

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ホワイトキャップス快勝で首位堅持 GK高丘は安定の守りで貢献

バンクーバー・ホワイトキャップス試合時にBCプレースのサウスサイダーズ前に掲げられているGK高丘の “Upgrade Complete”の前で。2025年4月5日、BCプレース。コロラド・ラピッズ戦。撮影 田上麻里亜
バンクーバー・ホワイトキャップス試合時にBCプレースのサウスサイダーズ前に掲げられているGK高丘の “Upgrade Complete”の前で。2025年4月5日、BCプレース。コロラド・ラピッズ戦。撮影 田上麻里亜

 MLS(メジャーリーグサッカー)西カンファレンス首位を走るバンクーバー・ホワイトキャップスFCは5日、BCプレースにコロラド・ラピッズを迎えた。

4月5日(BCプレース:17,993)
バンクーバー・ホワイトキャップス 2-0 コロラド・ラピッズ

ホワイトキャップスは前節欠場したエースのFWホワイトが先発復帰。前半19分、右サイドからのクロスに合わせて先制ゴールを決め、今季通算4点目をあげた。さらに前半38分には、FWアーメドの右サイドからのパスを受けたFWサービーがゴール前で冷静に押し込み、移籍後初ゴール。キャップスは前半にリードした2点を守り切った。

前回の反省を生かし、無失点で首位キープ

 ホワイトキャップスはこの試合を終え、今季通算5勝1敗1分と開幕7試合で勝ち点を16に伸ばして、クラブ史上最も好調なスタートダッシュで開幕から首位を堅持している。

 この日は攻撃がかみ合い前半に2点をリード。キャプテンのゴールドは引き続き欠場中だが攻撃の厚みは着実に戻りつつある。

 一方守りはこの日も固く、相手にほとんど決定機を与えなかった。GK高丘は安定した守りでレギュラーシーズンでは今季3度目のクリーンシート。「90分間通して僕たちが試合を支配できていました」と冷静に分析した。

 「今日ホームで勝ち点3を取るというのは、首位でいるために非常に重要な試合だったので勝ち切れて良かった」とも。主力の多くを欠き厳しい状況だったが「そういったイレギュラーな時にきちんと自分が仕事しないといけないなと思っている」と話し、「今日は(前節シカゴ戦での失点した)反省をある程度活かせたと思います」と手応えを口にした。

 連戦には「日本の頃から慣れている」と語った一方で、「こちらだと移動が日本とは比べものにならないくらい大変なので、あとは時差の調整とか」と続け、北米ならではの遠距離移動や時差の影響に触れた。それでも「もう3年目なのでかなりアジャストできていますし、問題ないかなと思います」と、国際大会と並行する過密なスケジュールでも安定感を崩さない秘訣を語った。

次戦はチャンピオンズカップ準々決勝第2レグ

 現在チームはレギュラーシーズンと並行して行われているCONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)チャンピオンズカップ(CCC)に出場中で、次は準々決勝第2レグに臨む。対戦相手はプーマスUNAM。第1レグは4月2日にホームで1−1で引き分けた。第2レグは4月9日、アウェイのメキシコ・シティで対戦する。勝てば間違いなく、引き分けでも得点次第では準決勝に進出する。

4月、5月のホームゲーム

4月12日(土) オースティンFC戦 4:30pm
5月3日(土) レアル・ソルトレイク戦 6:30pm
5月11日(日) LAFC戦 4:00pm
5月28日(水) ミネソタ・ユナイテッドFC戦 7:30pm
5月31日(土) ポートランド・ティンバーズ戦 6:30pm

(取材 田上 麻里亜)

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今年で40周年、桜楓会2025年新年会開催

巳年生まれの会員。会長、前会長と一緒に。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
巳年生まれの会員。会長、前会長と一緒に。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
桜楓会新年会の様子。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
桜楓会新年会の様子。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 桜楓会の年次総会と新年会が1月18日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で開催された。

 参加者は約60人。年次総会では昨年の活動報告や新会長選出などが行われた。続く新年会では食事を取りながら参加者は笑顔で交流し、尺八と箏の演奏など会場は和やかな雰囲気に包まれた。この日は1月のバンクーバーには珍しく快晴で桜楓会40周年に花を添えた。

久保前会長「皆さんのおかげで10年間やってこれた」

10年の任期を振り返る久保前会長。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
10年の任期を振り返る久保前会長。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 久保克己前会長は10年間の任期を振り返り「皆さんのお力添えとご協力があって10年やってこられたと思っております。本当にありがとうございました」と感謝。

 今後は「桜楓会がほかのコミュニティと横のつながりを深めることが、これからの発展には大切」とアドバイスし、「伝統を継承しながら新たなつながりを築いてほしい」と期待した。

松尾新会長「楽しく学び、絆を深めるコミュニティに」

前会長 久保さんへの感謝の言葉と今後の意気込みについて語る松尾会長。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
前会長 久保さんへの感謝の言葉と今後の意気込みについて語る松尾会長。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 新会長には松尾健一さんが就任した。久保前会長の後任として満場一致で承認された。

 松尾会長は80歳になって気をつけることとして「健康管理、社会とのつながり、お金の管理」の3つを挙げ、桜楓会が提供するウォーキングイベントへ参加して健康を維持してほしいと呼び掛けた。

 今後の取り組みとして「病院での言葉の壁に困る会員を支えるための英語サポートなどにも挑戦したい」と述べ、「楽しく学び、絆を深めるコミュニティを作っていきたい」と意気込みを語った。

髙橋総領事「桜楓会は人と人をつなぐ場」

あいさつする髙橋バンクーバー総領事。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
あいさつする髙橋バンクーバー総領事。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 在バンクーバー日本国総領事館・髙橋良明総領事は「40周年を迎え、地域に根ざした歴史ある活動を続けている」と桜楓会の活動を称賛、これからも人と人とをつなぐ場として発展してほしいと期待した。

 「こうした場を通じて人と人とのつながりを深め、皆さんの声を聞ける機会を増やしたい」と総領事。合わせて参加者にとって健康で充実した2025年となることを願った。

音楽と笑顔で彩られた新年会

新年会で披露された尺八(山本篁風さん)と箏(成谷百合子さん、キャッツ幸子さん、高橋有紀子さん)の演奏。伝統的な音色が会場に響き渡った。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
新年会で披露された尺八(山本篁風さん)と箏(成谷百合子さん、キャッツ幸子さん、高橋有紀子さん)の演奏。伝統的な音色が会場に響き渡った。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 新年会では尺八と箏の演奏に合わせて、参加者も「赤とんぼ」や「浜辺の歌」を「懐かしい」と表情をほころばせながら一緒に歌った。さらに日本の歴史や文化にまつわるクイズ大会では大いに盛り上がり、楽しい懇親会となった。最後に巳年生まれの会員に記念品が贈られ、閉会した。

 桜楓会は1985年に「退職移住者の会」として発足。現在は会員約150人。1年を通じて、歩こう会や教養講座、ブルーベリー摘みなど活動が充実し、日系コミュニティのシニアを支える重要な存在となっている。40周年を迎えた今年、新会長を中心にさらなる活動が期待されている。

巳年生まれの会員。会長、前会長と一緒に。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
巳年生まれの会員。会長、前会長と一緒に。2025年1月18日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

桜楓会
Eメール ohfukaicanada@gmail.com 
ウェブサイト https://ohfukai-vancouver.themedia.jp/

(取材 田上 麻里亜)

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朝日の精神を次世代へ、新年会で2025年ジャパンツアーを発表

2025年ジャパンツアーチームのキャプテンに選ばれたKota Hirai選手のスピーチ。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
2025年ジャパンツアーチームのキャプテンに選ばれたKota Hirai選手のスピーチ。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 朝日ベースボール・アソシエーションの2025年新年会が1月12日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で行われた。

 昨年9月に102歳で亡くなった戦前の朝日軍の元選手上西ケイさんを偲び、今年日本に遠征するジャパンツアーチームを激励する新年会となった。

上西ケイさんを偲ぶ、レガシーは次世代に引き継がれていく

記念品には上西ケイさんの写真も。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
記念品には上西ケイさんの写真も。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 新年会は上西ケイさんへの黙とうで始まった。ジョン・ウォン会長は「ケイさんは、私たちが悲しむのではなく、彼の人生を祝い、記憶を生かし続けることを望んでいると思います」と思いを語った。

 その後「ケイ・カミニシ・アワード」の授与式が今年も行われ、Kai Konkin選手が受賞した。2023年の日本遠征でキャプテンとしてチームをまとめたリーダーシップや野球以外での活動が評価された。

2025年「ケイ・カミニシ・アワード」を受賞したKai Konkin選手。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
2025年「ケイ・カミニシ・アワード」を受賞したKai Konkin選手。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 Konkin選手は「この賞は自分一人の努力ではなく、チームメートやコーチ、家族の支えのおかげです」と感謝し、上西ケイさんが伝えたスポーツマンシップを次世代にも引き継いでいきたいと話した。朝日と上西ケイさんのレガシーは若い選手たちに受け継がれている。

ジャパンツアー概要発表

 今年のジャパンツアーは3月14日から24日までの10日間で、千葉、東京、栃木を訪問する。最初の週末は千葉で現地チームとの合同練習を通じて日本の選手たちと交流するほか、千葉ロッテマリーンズのトレーニング見学も予定している。予定されていたバンクーバー市と横浜市の姉妹都市60周年記念イベントは中止となったが、東京ではカナダ大使館を表敬訪問する。最後の訪問先栃木では、親善試合のほかスポーツ科学体力測定体験などスポーツ三昧となる。

 ジャパンツアーは、戦前バンクーバーで活躍した日系人野球チーム「朝日」の精神を受け継ぐ「新朝日」チームが、日本で親善試合や文化交流を行うことを目的に2015年に始まった。以降2年に一度実施され、野球の技術向上だけでなく、日加両国の絆を深める重要な機会となっている。

特大のケーキを前に。左から、岡垣首席領事、エド・カミニシさん、ジョイス・シモクラさん。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
特大のケーキを前に。左から、岡垣首席領事、エド・カミニシさん、ジョイス・シモクラさん。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 在バンクーバー日本国総領事館・岡垣さとみ首席領事は、昨年1月11日が「Vancouver Asahi Day」として制定されたことは戦前の朝日軍の活躍をたたえる非常に意義深い出来事だと述べ、今年のジャパンツアーも「カナダと日本の絆を一層強めることを確信しています」と期待した。

キャプテン「日本とカナダの野球の違いを現地で直接学びたい」

 2025年ジャパンツアーチームのキャプテンに選ばれたKota Hirai選手は、チームについて「これまで築いた絆は家族のように深いもの」と語り、「​​皆さんのおかげで私たちはここまで来ることができました」とチームメートや家族、ボランティア、そしてコーチたちに感謝した。

2025年ジャパンツアーチームのキャプテンに選ばれたKota Hirai選手のスピーチ。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
2025年ジャパンツアーチームのキャプテンに選ばれたKota Hirai選手のスピーチ。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 カナダで育ち、幼い頃から野球に親しんできたというHirai選手。スピーチ後に話を聞くと「バンクーバー朝日のことはみんな知っている」と歴史やインパクトに引かれて入団を決意したことを明かした。

 ジャパンツアーへは「日本とカナダの野球の違いを現地で直接学びたい」と意欲を示し、「日本語を使わない選手が多いので僕が日本語を使ってみんなをサポートしたい」と、野球以外でもリーダーシップを見せる。

 それでも「みんなは日本に行ったことがないから、日本食(を一緒に食べられること)もすごい楽しみ」と無邪気な笑顔も見せた。

日本らしい野球に欠かせない「チームビルディング」

 今年のジャパンツアーの監督を務める小川学さんは数年前からチーム作りに力を入れてきたと話す。カナダと日本の野球の違いを意識した指導を行い「カナダでは個人の成果が重視されがちですが、日本の野球には教育的な価値観やチームワークの文化があります」。その中で、選手同士が「阿吽の呼吸」のように自然に連携できるチームワークの構築を目指し、選手たちに互いを補い合う姿勢を教えてきたという。

 朝日の活動は毎年8月から翌年3月まで。その後、選手たちは各地域のチームに戻る。遠征に向け限られた期間の中で選手たちが一体感を育むためのチーム作りが重要となる。

 今回の遠征には、約45人のトライアウト参加者から選ばれた17人が参加する。選考では「単に技術力だけではなくて、どれだけチームに献身してくれるか、成長したいという意欲があるかを大事にしました」と監督。

 遠征を間近に控え、「まずはとにかく楽しんでほしい」と話しつつも「日本で朝日がただのカナダのチームと思われないようにしたい」と監督としての強い思いも見せた。選手たちには「日本の野球文化を体験し、そこで得た学びを次の世代に伝えてほしい」と期待した。

成長し続ける朝日

 新年会は、和太鼓の演奏やケーキカットセレモニーで盛り上がる中、選手だけでなく、家族、元選手、ボランティアコーチなど多くの関係者が一堂に会し、親睦を深める時間となった。朝日を陰に陽に支えている人たちだ。

イベント最後の集合写真にはボランティアコーチたちも。選手たちに囲まれ少し照れた様子で笑顔の撮影。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today
イベント最後の集合写真にはボランティアコーチたちも。選手たちに囲まれ少し照れた様子で笑顔の撮影。2024年1月12日、バーナビー市。Photo by Japan Canada Today

 その中で日本で野球を経験してきたボランティアコーチは朝日の成長を支える重要な役割を担う。学生から社会人まで背景はさまざまで、選手たちの練習を支えている。小川監督も「実際に日本で野球をしていた彼らが教えることに深い意味がある」と頼りにしている。

 戦前の「朝日軍」の意思を継ぐ「新朝日」チームは、当初14人のメンバーからスタートし、現在では200人以上が参加するチームとなった。朝日の成長は多くの人に支えられている。選手たちは過去のレガシーに憧れ、このチームで経験を重ねながら、次世代へつなぐ役割を担おうと努力を続けている。ジャパンツアーは野球だけでなく、日加をつなぐ架け橋としての役割も担っている。

朝日ベースボール・アソシエーション

2016年に発足。当時の名称はカナディアン日系ユースベースボールクラブ。2015年に最初のジャパンツアーを実施し、これを機に2016年に創設した。https://www.asahibaseball.com

1月12日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館でAsahi Baseball Associationの新年会が開催された。今年3月のジャパンツアー詳細も発表された。
1月12日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館でAsahi Baseball Associationの新年会が開催された。今年3月のジャパンツアー詳細も発表された。

(記事 田上 麻里亜)

訂正:滞在時の予定が変更されたため、情報を更新しました。

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髙橋良明バンクーバー総領事歓迎レセプション開催、120人が集う

あいさつで日系社会の重要性と今後の展望について語る髙橋良明総領事。2024年11月13日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/写真提供 バンクーバー日系ビジネス連絡協議会
あいさつで日系社会の重要性と今後の展望について語る髙橋良明総領事。2024年11月13日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/写真提供 バンクーバー日系ビジネス連絡協議会
髙橋総領事を囲んで記念撮影。日系コミュニティの代表者たちが集い、交流を深める場となった。2024年11月13日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/写真提供 バンクーバー日系ビジネス連絡協議会
髙橋総領事を囲んで記念撮影。日系コミュニティの代表者たちが集い、交流を深める場となった。2024年11月13日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/写真提供 バンクーバー日系ビジネス連絡協議会

 在バンクーバー日本国総領事館総領事に着任した髙橋良明総領事の歓迎レセプションが、11月13日にバンクーバー市で開催された。バンクーバー日系コミュニティの経済界や文化界など25団体以上、約120人が参加した。

 髙橋総領事は各団体からの参加者一人ひとりと言葉を交わしたり、写真撮影に応じたりしながら、会場は終始和やかな雰囲気に包まれた。

日系コミュニティ約120人で歓迎

司会を務めたバンクーバー日系ビジネス連絡協議会の吉武政治議長。2024年11月13日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/写真提供 バンクーバー日系ビジネス連絡協議会
司会を務めたバンクーバー日系ビジネス連絡協議会の吉武政治議長。2024年11月13日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/写真提供 バンクーバー日系ビジネス連絡協議会

 今回の歓迎レセプションを主催したバンクーバー日系ビジネス連絡協議会の吉武政治議長は「髙橋総領事をお迎えし、多くの方々が集まる機会を提供できたことを大変うれしく思います」と安どの表情を見せ、数日前に日本から戻ってきたばかりだったが「そのような状況でも、事務局メンバーをはじめ多くの団体の協力があって開催できました」とコミュニティの協力に感謝した。

 「なかなか皆さんが総領事と直接話す機会ないので、できるだけ多くの方との交流が生まれる場になればうれしいです」と話すも、このような場が「総領事との交流だけではなく、業界を超えて色々な人々と垣根をこえて交流する機会になるように」と、これからもさまざまな団体が存続し、横のつながりが広がっていくよう尽力していきたいと語った。

バンクーバーならではの日系社会と共に日・BC州関係を盛り上げる

あいさつで日系社会の重要性と今後の展望について語る髙橋良明総領事。2024年11月13日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/写真提供 バンクーバー日系ビジネス連絡協議会
あいさつで日系社会の重要性と今後の展望について語る髙橋良明総領事。2024年11月13日、バンクーバー市。撮影 斉藤光一/写真提供 バンクーバー日系ビジネス連絡協議会

 髙橋総領事は、前任地シンガポールもバンクーバーも「アジアと欧米を結ぶ重要な拠点として発展してきました」と述べ、多様な文化が共存し、新しいものを受け入れる柔軟性が両都市の特徴だと語る。

 一方で「シンガポールの人口密集型の成長スタイルとは異なり、バンクーバーは豊かな自然と調和の中で、持続可能な成長を目指していると感じます」との印象。そんな町で発展してきた100年以上の歴史を持つ日系コミュニティについて「このような可能性に満ちた都市で、皆様のお役に立てることを光栄に思います」とあいさつした。

 参加者との交流の後に話を聞くと「これまで赴任したところではここまでの規模の日系コミュニティはありませんでした」と驚いていたが、「直接お話して皆様の熱意を知ることができ、またこのような機会を作ってくださって心から感謝しています」とコミュニティとの触れ合いを楽しんだ様子。

 そして「これだけ日本に対する関心が高い人々が多いということで、日系コミュニティやその周りにいる人たちに、どのように日本を理解してもらうかが重要だと考えています」と日系コミュニティと共に日本とブリティッシュ・コロンビア州のさらなる関係強化に期待を込めた。

(取材 田上 麻里亜)

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