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Maria Tagami

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学生や在留邦人を狙う詐欺 総領事館とRCMPが注意喚起

Royal Canadian Mounted Police: by Japan Canada Today
Royal Canadian Mounted Police: by Japan Canada Today

 前回の記事では、カナダで詐欺被害に遭った日本人留学生の体験談をまとめた。こうした被害は一部の人だけの問題ではなく、就労や住居探しなど、カナダで生活する中で誰もが直面する可能性がある。

 在バンクーバー日本国総領事館とRCMP(連邦警察)は、留学生や在留者を狙った詐欺に注意を促している。両機関に詐欺被害の現状と対策について話を聞いた。

留学生を狙う詐欺の現状

 RCMPによると、詐欺は来加を予定している留学生と、すでにカナダに滞在している留学生の双方に影響を及ぼしているという。留学を検討する段階から渡航後まで、さまざまな場面で詐欺に接触する可能性がある。

 特に留学やビザ申請に関わる過程では移民サービス詐欺への注意が必要という。カナダ移民・難民・市民権省(IRCC)は、留学ビザ申請を支援すると称しLOA(入学許可証)要件を満たすための虚偽書類作成を持ちかける手口について注意を呼びかける。

 また、カナダに滞在している間は他の在住者と同様の詐欺の手口にもさらされる可能性があると指摘する。

 詐欺グループは電話やSMS、電子メール、QRコード、SNSなど複数の手段を使い、被害者に接触する。SNSでは、正規の企業や政府機関を装った広告や偽サイトが使われる場合もあるという。RCMPは、使われる媒体は変化しても、被害者を信用させて近づくという手口の基本は変わっていないと警鐘を鳴らす。

 さらに、留学生が意図せず犯罪行為に利用される可能性にも言及する。荷物の運搬や銀行口座の開設などを依頼されマネーロンダリングに関与させられるケースなどもあるとして、注意の必要性を強調した。

確認されている主な詐欺の手口

 バンクーバー総領事館は、詐欺の対象は留学生に限らないとした上で、手口が日々変化しているため、実際に被害に遭うまで詐欺だと気付かないケースも少なくないと指摘する。その上で、過去1年間に領事館に寄せられた相談を基に、いくつかの典型的な詐欺の手口を挙げた。

 「誰でも簡単に稼げる」「軽作業で高収入」などをうたう広告は、いわゆる「タスク詐欺」と呼ばれる手口の可能性が高い。固定電話番号や正確な所在地が示されず、Gメールなどのフリーメールや携帯電話番号のみを連絡先としている場合は注意が必要としている。

 他にも、住居探しに関連した賃貸契約詐欺も多い。内見前や賃貸契約前にデポジットや家賃の前払いを求められるケースがあり、簡単に支払いに応じないよう注意が必要としている。

記者も経験、就職に関する詐欺メールを受信

 今年5月、アメリカIT大手メタ(Meta)の研究部門「Reality Labs」を名乗る採用に関するメールを受け取った。送信元のメールアドレスは「info@employlinkrealitylabs.recruitee.com」で、募集ポジションには希望していた職種が含まれていた。数カ月前に複数の求人に応募していたこともあり、見た目は正規の採用連絡と区別がつきにくい内容だった。

メタ(Meta)の研究部門「Reality Labs」を名乗る詐欺メール。宛先に個人名や応募を希望するポジション名が記載され、正規の採用連絡と見分けがつきにくい内容となっている。画像:田上麻里亜
メタ(Meta)の研究部門「Reality Labs」を名乗る詐欺メール。宛先に個人名や応募を希望するポジション名が記載され、正規の採用連絡と見分けがつきにくい内容となっている。画像:田上麻里亜

 しかし大手企業にも関わらず短期間で採用が進む点に違和感を覚え、メールアドレスをインターネットで調べたところ、同じアドレスに関する詐欺被害の報告が多数見つかり、詐欺の可能性に気付いた。送信元のメールアドレスにも一見すると正規の採用管理サービスを装ったドメインが使われるなど、求人を巡る詐欺の手口は分かりにくくなっている。

被害を防ぐために求められる行動

 詐欺被害を防ぐためには、どのような場合でも一人で判断せず、家族や友人、知り合いなど第三者に相談することが重要と総領事館は助言する。あわせて、個人情報を安易に渡さないこと、不審なリンクを安易にクリックしないことも基本的な対策として挙げている。

  RCMPも、「If it’s too good to be true, it probably is.(うますぎる話には裏がある)」という古くからの言葉が示すように、条件が良すぎる話には注意が必要だとしている。応募していない懸賞への当選連絡などは、その一例だという。さらに、ソーシャルメディアではプライバシー設定を確認し、個人情報が過度に公開されていないか見直すことを勧めている。

被害に遭ってしまった後の行動

 RCMPは、緊急事態が発生している場合は、警察や救急、消防に9-1-1で通報するよう呼びかけている。緊急性がない場合でも、被害があった地域を管轄する警察に相談することができ、地域によってはオンラインでの通報も可能としている。

 また詐欺被害に遭った場合は、管轄の警察に加え、Canadian Anti-Fraud Centre(CAFC)への通報を推奨している。CAFCは捜査機関ではないが、全国から情報を集約し、法執行機関の捜査や被害防止に役立てている。被害に遭わなかった場合でも、詐欺の接触を受けた時点で通報することが可能だという。

 被害の未然防止に向けた取り組みとして、リッチモンドRCMPでは、個人間取引に伴うトラブル防止を目的とした「セーフゾーン(Safe Zone)」を設けている。オンライン上で知り合った相手との売買や物品の受け渡しを警察施設周辺のより安全な環境で行う取り組みで、ソーシャルメディアなどを通じた取引などが対象となっている。

 セーフゾーンは、リッチモンドRCMP分署(11411 No. 5 Road, Richmond, BC V7A 4E8)の正面入口付近に設けられており、フロントオフィスの開庁時間である午前7時から午後8時まで利用できる。

 祝日はフロントオフィスが閉鎖されており、警察官は24時間体制で施設を使用しているものの、窓口職員は配置されていない。この時間帯は、分署前の屋外で受け渡しを行うことができ、周辺には防犯カメラが設置されている。警察官が立ち会う形ではないものの、警察施設の近くであることや防犯カメラの存在が犯罪抑止につながるとしている。

 詐欺を目的とする人物は、警察署での受け渡しに応じない場合が多いため、取引場所として警察施設周辺を指定すること自体が一つの確認手段にもなるとしている。

 被害報告はバンクーバー総領事館でも受け付けており、被害届提出方法の案内や今後の対応について助言を行っている。同種の被害が続く場合には、同館のホームページや領事メールを通じて注意喚起を行い、再発防止に役立てるとしている。

各種犯罪被害(詐欺、強盗・暴行、車上ねらい等)に関する注意喚起(在バンクーバー日本国総領事館)https://www.vancouver.ca.emb-japan.go.jp/itpr_ja/kakusyuhanzaihigai.html

Canadian Anti-Fraud Centre (CAFC)https://antifraudcentre-centreantifraude.ca/index-eng.htm

British Columbia RCMP (B.C. RCMP)https://rcmp.ca/en/bc

Immigration and citizenship fraud and scams (Government of Canada)https://www.canada.ca/en/immigration-refugees-citizenship/services/protect-fraud.html

(取材 田上麻里亜)

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 カナダに留学中、詐欺被害に遭った日本人学生3人に被害の経緯を聞いた。前編では賃貸契約でのトラブルを装った詐欺を紹介した。後編はSNSを利用して売買をした時に遭った詐欺について。

小切手を使った古典的手口 フェイスブックマーケットでの被害

 ビクトリア市の公立カレッジに通っていた惇貴さんは2024年初め、引っ越し準備のために不要品を整理しようとフェイスブックのマーケットプレイスでヘッドホンを250ドルで出品した。以前は買い手がつかなかったが、この時はすぐに「買いたい」というメッセージが届いた。

 相手は「今ビクトリアにいない。引っ越し業者に受け取りに行かせたい」と説明し、「小切手で1,250ドルを送る。そのうち250ドルがヘッドホン代金、950ドルを業者の口座へ送金してほしい」と提案した。差額の50ドルは手間賃だという。惇貴さんは違和感を抱きながらも、「カナダではこういう支払い方法もあるのかもしれない」と半信半疑のままやり取りを続けた。

 相手から届いた小切手を銀行のアプリで撮影すると、1,250ドルの入金がアプリ上に反映された。小切手を扱った経験がなかった惇貴さんは、本当に入金されたものと思い、指示された950ドルを銀行を通じて個人間で即時送金できる「イートランスファー」で送金しようとしたが、銀行側のシステムに止められた。勤務先で事情を相談すると、同僚からは「典型的な詐欺だよ。場合によってはマネーロンダリングに使われることもある」と警告された。

 翌日、銀行の支店で相談すると、最初に対応した行員は「変だね」と言いながらも「金額も低いし、マネーロンダリングではないと思う」と説明し、イートランスファーで送金できるよう設定を変更した。惇貴さんは不審に感じ、相手に「今後の受け渡しはキャッシュでしかしない。一度返金する」と伝え、1,250ドルをイートランスファーで返金した。

 その後、直接会う約束を取り付けたが、当日の1時間前に「引っ越し業者がトラブルで来られない」とメッセージが届き、そこで詐欺だと確信した。惇貴さんは相手との連絡を断った。

 しかし数日後、銀行から「口座がマイナスになっている」と通知が届いた。貯金が残っているはずだと思い確認すると、残高はマイナスになっていた。惇貴さんはすでに相手に1,250ドルを相手に返金していたが、その後、銀行が小切手を偽物と判定し、アプリ上で一時的に反映されていた1,250ドルの入金自体を取り消したためだった。結果として、返金分と入金取り消し分の双方が差し引かれ、残高がマイナスになった。

 小切手は入金が反映されても、銀行が真偽を判断するまでタイムラグがある仕組みだと、この時初めて知ったという。

 その後、勤務先のマネージャーが同行して銀行に再度相談したが、前回対応した行員について、支店側は「本人はそのような説明はしていないと言っている」と回答した。窓口対応は録音されておらず、事実確認の手段がないことを理由に補償はできないとされた。

 警察への相談については、長年カナダに住む同僚から「この金額ではまず動かない」と忠告された。惇貴さん自身、以前日本で詐欺被害に遭った際に十分な対応を得られなかった経験もあり、今回も行っても意味はないだろうと判断し、相談しなかった。

 当時住んでいたシェアハウスのカナダ人女性に話すと、「その手の小切手詐欺は昔からある。留学生は小切手を使ったことがないから狙われる」と説明された。ここでようやく、自分が典型的な手口に巻き込まれていたことを実感したという。

 振り返ってみると、送り主と振込先の名前が一致していなかった。「日本ならその時点で気づけてたと思う。でもカナダは英語名と本名が違う人もいるし、文化が分からないからそういうものなのかなって思ってしまった」と振り返る。当時は引っ越し費用や生活費がかかり、「早く売りたい」という焦りもあった。「お金がなかったし、資金を少しでも作りたかった。だから余計に冷静になれなかった」と話した。

 「仕組みが分からない留学生は本当に狙われやすい。相手の身元が確認できるまでは絶対に送金しないでほしい。一度送ったお金は本当に戻ってこない」。これからカナダに来る学生へ向け、強く注意を呼びかけた。

eスポーツチケットの転売詐欺 SNSでの匿名取引

 裕加さんは2024年末に留学目的で来加し、世界で人気のゲーム「リーグオブレジェンズ」のカナダで行われる大会チケットを探していた。大会は北米でも注目度が高く、公式販売は開始から数秒で完売したという。「せっかくカナダにいるなら絶対に見に行きたいと思っていた」と話す。

 公式サイトでの再販も逃し、次に頼ったのがSNS「Reddit」だった。同じゲームファンが多く集まり、リセール情報がやり取りされていると知ったためだ。譲渡希望の投稿にコメントすると、複数の利用者からDMが届いた。

 そのうちの1人は、ほぼ定価での販売を提示した。チケットアプリの画面を撮影した画像も送られ、「仕事で行けなくなっただけだから、早くチケットを手放したい」と説明したという。やり取りは深夜に続き、裕加さんは2時ごろ、提示された金額をイートランスファーで送金した。

 しかしチケットは届かず、翌朝には相手のアカウントが消えていた。「あ、やられたなって思いました」と振り返る。送金先の名前はプロフィール名と異なっていたが、「カナダではイングリッシュネームを使う人もいる」と疑わなかった。100ドル前後の被害で、その後銀行に詐欺として問い合わせメールを送ったが、返答はなかった。

 「こっちの文化や仕組みが分からないから、少しおかしな点があってもそういうものなのかなって思ってしまう。特にチケットみたいに争奪戦になるものは焦りやすくて、そこにつけ込まれるんだと思います」と話す。

 留学生である自分が狙われた理由についても、「匿名取引で、相手の身元がまったく分からないのに送金してしまったのが一番大きい。絶対に先にお金を渡さないでほしい」と警鐘を鳴らした。

***

 次回は、在バンクーバー日本国総領事館と連邦警察(RCMP)に聞いた詐欺の実態と対策についてを紹介する。

(取材 田上麻里亜)

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マンションで突然の退去 入居後3カ月目に起きた被害

 千歩さんは専門学校を卒業後ワーキングホリデーでバンクーバーに来た。当時21歳で、貯金額は約10万円。ホームステイ終了後の住まいを探す中で、日本語掲示板でイエールタウンの高層マンションにある家賃800ドルの「デン」と呼ばれる小部屋を見つけた。入居を決めた理由について「仕事場がウォーターフロントだったので」と話す。

 入居後しばらくは大きな問題もなく過ごしていたが、入居して3カ月目のある朝、オーナーから突然「鍵を作りたいからメールアドレスを教えて」と連絡が来た。本人もよく意味が分からなかったが、言われたとおりにメールアドレスを伝えて外出した。しかし、帰宅すると鍵が使えなくなっていた。裏口も反応せず、アルバイトの時間が迫り困っていると、マンションの中から出てきた男性が扉を開けてくれた。

 ところがその男性は、扉を開けた瞬間に「何号室の方ですか?」と言い当てるように聞いてきた。そのまま千歩さんを共用スペースに連れて行き、オーナー名や住人数、どのような契約で住んでいるのかなどを次々と問い始めた。千歩さんは、「英語が分からないふりをしても翻訳アプリを使って質問が続いて、逃げ場がなかった」と当時の緊迫した様子を話す。

 そして契約書データをこっそり確認しようと端末を開いた瞬間、男性は画面をのぞき込んで「これは何?」と追及し、契約書データの送付を強く求めた。鍵が使えず部屋へ戻ることもできない状況で、拒否することはできなかったという。

 契約書のデータを共有して部屋の鍵を開けてもらい、戻ってオーナーに状況を伝えると、すぐに電話がかかってきて「なんで従ったのか」と強い口調で責められた。その後アルバイトがあったにもかかわらずその場で待機することを命じられ、「管理人さんに出ていってって言われた」と当日の夜までの退去を指示された。急な対応で欠勤となり、職場からも注意を受け、信用にも影響したという。

 オーナーの車で移動した先は、ロブソン通り沿いのマンションで、ソラリウムと呼ばれる、壁がガラス張りになっている小部屋だった。1カ月は同じ家賃で住めるが、2カ月目からは家賃が上がると説明された。不信感が強くなっていた千歩さんは、その後新たな住まいを見つけ、1カ月で退去した。

 退去後もデポジット返金や電気代の差し引きをめぐる混乱が続いた。返金を問い合わせると「今アメリカ旅行に行ってる」などと説明し、鍵のデポジット100ドルは返金されていなかった。指摘すると「忘れていた」と話し、家賃のデポジットは時間をかけて返金されたが、電気代の計算は曖昧なままだった。

 その後移った一軒家では、ブリティッシュ・コロンビア州の規定に沿った紙の契約書を対面で交わした。ここで初めて適切な契約手続きを知った。以前の契約書はデータのみで、オーナー名はファーストネームだけ、署名もなかった。

 その後、友人の紹介で偶然にも同じマンションで以前暮らしていた日本人に会った。その人も、水漏れ工事を理由に突然退去させられ、まったく同じソラリウムに移されたという。もともと住んでいたデンは値上げされて再募集されていた。さらに入居前にも、別の日本人留学生がデポジットをめぐるやり取りでトラブルになり、迫られて退去させられたケースがあったという。

 こうした話を聞くうちに、千歩さんは「管理人とオーナーは最初からつながっていて、理由をつけて住人を入れ替え、家賃を上げる流れができていたのではないか」と感じたと話す。

 渡航前の貯金は10万円ほどで、急な退去は生活の基盤を大きく揺るがす出来事だった。当時の心境について千歩さんは「なんでこうなってるんだろうって。追い出されて次どうしようっていうので頭がいっぱいで、何も考えられなかった」と振り返る。

 「留学生って、本当に狙われやすいんだなと思いました。自分は知らなかっただけで、後から同じ被害にあった人に会って、ようやく全部つながった。これから来る人には、最初に知っておいてほしいです」と話した。

***

 後編では、SNSをきっかけにした被害で、小切手やE-transferなどカナダ特有のやり取りに戸惑う体験談を紹介する。

(取材 田上麻里亜)

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2026年「朝日」新年会 来年のジャパンツアーに向けて始動

真っ赤なユニフォームをまとった選手たちを、家族や関係者が囲んだ。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
真っ赤なユニフォームをまとった選手たちを、家族や関係者が囲んだ。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 朝日ベースボール・アソシエーションの新年会が1月11日、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー市の日系文化センター・博物館で開催された。会場には朝日のユニフォームを身に着けた選手や家族、指導者、関係者など約150人が集まり、活気あふれる新年会となった。

朝日にとってどれほど大きな存在だったのか

あいさつするジョン・ウォン会長。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
あいさつするジョン・ウォン会長。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 朝日ベースボール・アソシエーションのジョン・ウォン会長はあいさつで、「朝日ベースボールは、この会場にいる一人ひとりが時間や労力、思いを注いでくれているからこそ成り立っている」と述べ、選手や家族、指導者、ボランティアの存在が欠かせないことを強調した。その後、活動を支える理事やボランティア一人ひとりの名前が紹介され、会場から大きな拍手が送られた。

 また、当日は戦前の日系人野球チーム「朝日軍」の元選手、上西ケイさんの誕生日であり、「Vancouver Asahi Day」に当たることにも触れた。「この時期に集まることで、ケイが朝日にとって、そしてここにいる多くの人にとって、どれほど大きな存在だったのかを改めて感じさせられます」と述べ、朝日の物語を子どもたちや家族と共有し、次の世代に伝えていくことの重要性を強調した。

朝日は「ただのチームではなく、家族のような存在」

 今年の「ケイ・カミニシ・アワード」には、エイダン・パク(Aiden Park)さんが選ばれた。朝日ベースボールチームのメンバーから毎年1人を選出するこの賞は、朝日の精神であるスポーツマンシップや礼儀に加え、野球の技術や次世代育成への貢献などを総合的に見て贈られる。

「ケイ・カミニシ・アワード」受賞の様子。左から、朝日野球協会副会長小川学さん、エイダン・パクさん、エド・カミニシさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
「ケイ・カミニシ・アワード」受賞の様子。左から、朝日野球協会副会長小川学さん、エイダン・パクさん、エド・カミニシさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 パクさんは13歳で朝日に加わり、その後、ボランティアコーチとして選手の指導に携わってきた。受賞スピーチでは、「朝日は、より良い選手にしてくれただけでなく、より良いチームメート、より良い人間、より良いコーチにしてくれました」と述べた。その上で、「朝日は自分の人生の大きな一部で、このコミュニティから多くのものをもらいました。だからこそ、これからは次の世代に返していきたい」と、指導者として関わり続ける意気込みを語った。

 スピーチを終えたパクさんに話を聞くと「とても緊張した」と笑顔を見せ、朝日に加わった当時を振り返り、「ここはただのコミュニティではなく、自分にとっては本当に家族のような存在です」と話した。

スピーチを終え、ほっとした様子で笑顔を見せたパクさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
スピーチを終え、ほっとした様子で笑顔を見せたパクさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 そのほか、州代表(Team BC)として全国大会に出場した選手の表彰や、今年から新たに設けられた「アサヒ・スピリット・アワード」を発表。初回受賞者には長年にわたり活動を支えてきた鈴木一家が選ばれた。同賞は、選手だけでなく、家族や団体を含め、コミュニティの一員として朝日に関わり、継続的に活動を支えてきた人たちに感謝を伝えることを目的に創設された。

 創設の背景について朝日野球協会副会長の小川学さんは、「長年にわたり朝日に関わり、活動を支えてきた選手や家族、団体に対して感謝を伝える機会を広げたかった」と説明し、朝日に関わった人たちが集まる場を、今後もより充実させていきたいと語った。

2027年ジャパンツアーに向けて

  2027年には、待ちに待ったジャパンツアーが予定されている。ツアーには18人の選手が参加する予定で、ヘッドコーチを務めるのはベン・チョウ(Ben Chow)さん。今回が初のヘッドコーチ就任となる。

2027年ジャパンツアーのヘッドコーチを務めるチョウさん。ツアーでは、選手たちが朝日スピリットを感じて、好きになってくれることが一番大切と語った。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
2027年ジャパンツアーのヘッドコーチを務めるチョウさん。ツアーでは、選手たちが朝日スピリットを感じて、好きになってくれることが一番大切と語った。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 チョウさんは2018年から朝日ベースボール・アソシエーションの活動に関わり指導を重ねてきた。2027年のジャパンツアーについては、「目標は、選手たちが朝日スピリットを感じ、好きになってくれることです。朝日ベースボールにはとても長い歴史があります。今回選ばれた選手たちが将来また朝日に戻ってきて、コーチとして教えたり、支えたり、良いロールモデルになってくれることを目指しています」という。

 日本での交流についても、「日本のコーチから『この選手たちは野球を尊重している。グラウンドを尊重している。コーチを尊重している。まるで日本の選手のようだ』と言われることが、一番の褒め言葉だと思っています」と語った。

 ツアーの訪問先は、東京、千葉、名古屋(愛知)を予定している。朝日の歴史と精神を胸に、2027年のジャパンツアーに向けた活動が始まっている。

2027年ジャパンツアー参加予定の選手と指導者。朝日の新たな1年が動き出した。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
2027年ジャパンツアー参加予定の選手と指導者。朝日の新たな1年が動き出した。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

朝日ベースボール・アソシエーション

 2016年に発足。当時の名称はカナディアン日系ユースベースボールクラブ。2015年に最初のジャパンツアーを実施し、これを機に2016年に創設した。

朝日チーム・ジャパンツアー

 2015年を第1回として、2年に一度、同アソシエーションでプレーする選手から選抜チームを結成し日本に野球遠征している。2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止に。2017、2019年には、横浜、静岡、滋賀、奈良などで、2023年は神戸を中心に関西地区で親善試合や野球交流、2025年は千葉、東京、栃木を訪問した。

朝日ベースボールアソシエーションウェブサイト: https://www.asahibaseball.com/

ケイ・カミニシさんの家族も駆けつけた。左からレイ・シモクラさん、ジョイス・シモクラさん、ケニー・シモクラさん、エド・カミニシさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
ケイ・カミニシさんの家族も駆けつけた。左からレイ・シモクラさん、ジョイス・シモクラさん、ケニー・シモクラさん、エド・カミニシさん。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
Go Taikoによる太鼓のパフォーマンス。朝日の赤と同じ赤い法被で、会場は赤と熱気に包まれた。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
Go Taikoによる太鼓のパフォーマンス。朝日の赤と同じ赤い法被で、会場は赤と熱気に包まれた。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
2025年ジャパンツアーのメンバー。新年会では2025年のジャパンツアーの報告として、現地での活動をまとめたスライドショーが上映され、選手や指導者、保護者が協力してツアーに臨んだ様子が紹介された。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
2025年ジャパンツアーのメンバー。新年会では2025年のジャパンツアーの報告として、現地での活動をまとめたスライドショーが上映され、選手や指導者、保護者が協力してツアーに臨んだ様子が紹介された。2026年1月11日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

(取材 田上麻里亜)

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姉妹都市60周年バンクーバーと横浜がつなぐ次世代への交流

金沢動物園・ののはな館で榎本彩乃さんの講演を視聴する参加者。2025年12月5日(日本時間12月6日)、神奈川県横浜市。写真提供:横浜市役所国際局
金沢動物園・ののはな館で榎本彩乃さんの講演を視聴する参加者。2025年12月5日(日本時間12月6日)、神奈川県横浜市。写真提供:横浜市役所国際局

 カナダ・バンクーバー市と横浜市の姉妹都市提携60周年を記念したイベントが、12月5日(日本時間12月6日)に行われた。

 バンクーバーからはバンクーバー在住の社会人やブリティッシュコロンビア大学(UBC)の学生、横浜市の海外留学支援制度を活用してカナダに留学中の高校生が、横浜からは市内在住・在学の中学生以上の参加者が集まり、計45人が参加した。

オンライン講演会終了後、第2部では会場参加者12人が金沢動物園ツアーに参加、バンクーバーから寄贈されたトーテムポールやカナダにも生息するオオツノヒツジを巡り、姉妹都市のゆかりを学ぶ時間となった。2025年12月5日(日本時間12月6日)、神奈川県横浜市。写真提供:横浜市役所国際局
オンライン講演会終了後、第2部では会場参加者12人が金沢動物園ツアーに参加、バンクーバーから寄贈されたトーテムポールやカナダにも生息するオオツノヒツジを巡り、姉妹都市のゆかりを学ぶ時間となった。2025年12月5日(日本時間12月6日)、神奈川県横浜市。写真提供:横浜市役所国際局

 第1部ではバンクーバーと会場になった横浜市金沢区の金沢動物園・ののはな館をオンラインでつなぎ、バンクーバーでの暮らしや学び、海外で働くことについて参加者が語った。

 オンライン講演会終了後は、第2部として会場の参加者を対象に動物園内を周るツアーが行われ、バンクーバーから寄贈されたトーテムポールやカナダにも生息するオオツノヒツジを巡り、姉妹都市のつながりに触れる機会となった。

バンクーバーと横浜 約140年続くつながり

 バンクーバーと横浜の関係は1887年に横浜港からバンクーバーへの太平洋航路が就航したことをきっかけに始まった。横浜港から多くの日本人がカナダに渡航し移民した歴史的な背景を踏まえ1965年に姉妹都市に、1981年にはバンクーバー港と横浜港が姉妹港提携した。両市はUBCと市立大学の学術協力や高校の姉妹校提携など若者の交流を中心に、バンクーバーからは少年少女野球チーム「朝日」(旧バンクーバー新朝日)が訪問するなど、双方向の交流が続いている。2015年の姉妹都市50周年には横浜市林文子市長(当時)がバンクーバーを訪問。グレゴール・ロバートソン市長(当時)と友好交流の覚書に署名した。

 今回のイベントはバンクーバー市と横浜市の姉妹都市提携60周年を機に、両市の未来を担う若い世代のさらなる交流の場として企画された。海外の異なる文化や両都市が抱える共通の課題に触れるきっかけを提供することで、グローバルな視野を持つ人材の育成につなげる狙いがある。

 主催は横浜市国際局、協力はバンクーバーから日本カナダ商工会議所。

在住者が語る多文化社会バンクーバーで働くこと

 最初に講演したのは、横浜市出身でバンクーバー在住6年目の榎本彩乃さん(日本カナダ商工会議所所属)。カナダ渡航直後に新型コロナウイルスのロックダウンに巻き込まれ、限られた環境で生活を始めることになったという。しかしその後、勉強やアルバイトに加えてボランティア、インターンにも積極的に取り組み、現在は日本産品のマーケティング業務に携わっている。

 カナダで働く中で「日本の感覚にとらわれず、違う文化の視点から物事を考えられるようになった」と語り、多文化環境で働く中で得た視点を述べた。また、日本では相手の気持ちを察することが重視される一方、カナダでは言葉で伝えなければ意図が共有されないと説明し、「自分の当たり前は相手の当たり前ではない」と文化の違いを説明した。

学生が感じるバンクーバーと日本

 続いて、UBCの学生団体「UBC Japan Association」の学生2人がプレゼンテーションを行った。同団体には約300人が所属し、日本文化をテーマにしたイベントを企画している。

 学生たちは、バンクーバーでは豊かな自然環境を背景にランニングやハイキングが日常に組み込まれていることや、街中で見知らぬ人同士が気軽に会話を交わす文化があると紹介。バス停やレストランの待ち時間でも自然と会話が始まるなど、日本ではあまり見ない光景などを話し、日常の文化の違いについて触れた。

 また価値観の違いについても、多様な意見をまず受け入れてから考える姿勢が尊重されると、多文化社会を基盤にしたコミュニケーションが定着している点を強調した。

 一方、カナダで生活して見えた日本の良さとしては、礼儀や周囲への気遣いが日常の中で自然に行われている点を挙げた。元にあった場所に戻す、使った場所を来た時よりもきれいな状態にして次の人に渡すといった、周囲への配慮が行動として表れている。

 食文化についても、「いただきます」という言葉や、「一粒のお米に七人の神様がいる」という考え方を例に挙げ、日本では食べ物や日常生活の中で感謝の気持ちを持つ文化があると説明した。

 後半には、横浜市の海外留学支援制度を活用してカナダに留学中の高校生3人が留学生活で得た気づきを紹介した。質疑応答では海外でのコミュニケーションや文化の違いに関する質問が多く出た。

 横浜市国際局政策総務課欧州米州担当課長の川島とも子さんは、「今後も横浜市国際局では、バンクーバーを知り、友好交流を一層深める取組を進めていきます」と、継続的に交流事業を推進していくと語った。

(取材 田上麻里亜)

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被爆3世代の記憶をつなぐドキュメンタリー「ある家族の肖像」海外初上映

左から、金谷康佑さん、鈴木カオルさん、日本カナダ商工会議所の高橋サミー会長、吉崎大貴さん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
左から、金谷康佑さん、鈴木カオルさん、日本カナダ商工会議所の高橋サミー会長、吉崎大貴さん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 戦後80年の節目を迎えた今年。広島の被爆1世、2世、3世の歩みを記録したドキュメンタリー映画「ある家族の肖像~被爆三世代の証言~」が11月22日、ブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で上映された。

 初の海外上映となった今回のイベントでは、映画に出演した被爆2世の鈴木カオルさん、音楽を担当したジャズピアニスト金谷康佑さんが日本から参加、家族の記憶と被爆に向き合う自身の思いについて語った。

旧知の縁がつないだバンクーバー上映

 上映会を主催したのは日本カナダ商工会議所。高橋サミー会長は日本でカオルさんと同じ職場に勤めていたことがあり、カオルさんの父、鈴木照二さんとも面識があったという。この旧知の縁が再び結び、今年3月に「海外で上映したい」と相談を受けたことから企画が動き出した。バンクーバー広島県人会の後援を得て、家族3世代の被爆の記憶が初めて国外の観客へ届けられた。

 映画はテレビ朝日の報道番組を数多く手がけた上松道夫監督が2023年に制作。旧制広島高等学校在学中に勤労動員先の寮内で被爆した被爆1世の祖父の照二さん、高校生の時に心臓に異常が発見され体調不良の日々を過ごしてきた被爆2世のカオルさん、大学4年で甲状腺がんを宣告された被爆3世の万祐子さん。兵庫県神戸市の3世代が広島を訪ね、戦争と原爆の記憶、そして未来への思いを語った旅が記録されている。

 カオルさんと金谷さんがこの活動を始めたのは2020年ごろのこと。もともとカオルさんは金谷さんのマネージャーを務めており、福島第一原発事故で避難を余儀なくされた子どもたちをサマーキャンプに招き支援した経験をきっかけに、「平和のために自分も行動したい」と考え、活動へと歩みを進めた。

自身と家族の体験を語り、世代を越えて記憶を継承する意義を伝えるカオルさん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜
自身と家族の体験を語り、世代を越えて記憶を継承する意義を伝えるカオルさん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:田上麻里亜

 上映後に観客の前でマイクを握ったカオルさんは、「Can I be very honest with you?」と始め、「映画の中では強い人間だと話しましたが、私はただの母親で、娘のことを心配しているだけです」と静かに語り始めた。娘の病気や当時の心境に触れると声を詰まらせ、言葉を続けながら涙を拭う場面もあった。その姿に目頭を押さえる参加者の姿も見られた。

 イベント後、「初めてですね。一人の母としての気持ちを伝えたいなと思ったのは」とカオルさんは打ち明けた。「いつもなら映画がどう作られたか、音楽がどう生まれたかを話すんですけれど、今日は全くそういう雰囲気ではなくて」と続け、「私の本当に一人の母としての気持ちを伝えたいと思った」と穏やかに語った。

残された記憶をどうつなぐか

 被爆3世でありバンクーバー広島県人会の理事を務める吉崎大貴さんは、祖母が原爆投下時に爆心地から約2.5キロ地点で被爆した体験を紹介した。

 祖母は閃光と爆風を受けた後、行方が分からなくなった母親を捜して町へ向かい、「シャベルを持って数え切れないほどのがれきと遺体を掘り返し、ようやく母の遺体を見つけた」と語っていたという。吉崎さんはその証言を受け継ぎながら、「(非核は)世界的な責任」と語り、二度と同じ悲劇を繰り返してはならないと強く訴えた。

 さらに、被爆者の平均年齢が80〜90歳に達し、直接体験を語れる人が急速に減っている現状に、「だからこそ、私は今日ここに立っています」と述べ、継承の重要性を参加者に呼びかけた。

 質疑応答では、さまざまな形で被爆の記憶や家族の体験が語られた。就労先の長崎で被爆した父を持つ参加者は、帰郷後も支援を受けられず後遺症と闘い続けた過去を話した。また、被爆3世として参加した来場者は、祖母の死の間際に自身の体調不良が被爆の影響かもしれないと告げられた経験を明かし、世代を越えて続く不安と向き合ってきた胸中を語った。

音楽が導いたドキュメンタリー

 上映後には音楽を担当した金谷康佑さんが、映画のタイトル曲「A Portrait of a Family(家族の肖像)」をはじめ3曲を演奏した。

映画楽曲などを生演奏する金谷康佑さん。美しいピアノの音に、観客は息をのむように静まり、作品の余韻を楽しんだ。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:日加トゥデイ
映画楽曲などを生演奏する金谷康佑さん。美しいピアノの音に、観客は息をのむように静まり、作品の余韻を楽しんだ。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:日加トゥデイ

 ピアノの一音が響いた瞬間、会場の空気は静まり、観客の意識が一斉に音楽へと向かう。曲調が変わるたびに深い集中に包まれ、アンコールでさらに2曲を披露。映画の挿入曲も演奏され、会場には揺らぐような余韻が残った。

 ドキュメンタリー制作の経緯について金谷さんに聞くと、監督の上松道夫さんが金谷さんのコンサートに通い、演奏を聴き込む中で映像の構想を固めていったことを明かした。上松監督はソロアルバムに収録されている「家族の肖像」に強いインスピレーションを受けたといい、「監督から『曲から映画のイメージができた』と言われた」と振り返った。映画の核となる世界観が音楽から立ち上がった。

 また、「第2次世界大戦から、まだ終わってないと感じています」と、被爆の歴史をめぐる問題が現在も続いていると思うと語った。今回の上映と演奏については、「若い人にとっても意味のあるイベントだったと思う」と、海外での上映や演奏の機会を今後も広げていきたいと話した。

母としての胸の内と、音楽がつないだ力

会場となった日系文化センター・博物館で。左から、金谷さん、在バンクーバーの被爆者ランメル幸さん、鈴木さん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:日加トゥデイ
会場となった日系文化センター・博物館で。左から、金谷さん、在バンクーバーの被爆者ランメル幸さん、鈴木さん。2025年11月22日、バーナビー市。撮影:日加トゥデイ

 イベント終了後も会場では参加者がカオルさんたちと言葉を交わし続け、温かな余韻が漂っていた。インタビューに応じたカオルさんは、ふっと表情を緩め、「(今日のイベントは)すごく身内のファミリー感があって。初めてお会いするのに、お客様というより家族のように感じました」と笑顔で振り返った。

 映画の中では、被爆1世である父の体験とともに、カオルさん、そして娘の万祐子さん、それぞれの視点から被爆の影響が描かれている。カオルさんは娘に対して病気や被爆のことを「怖くて、今まで聞いたことがなかった」と明かし、映画を通じて初めて娘の本心を知ったと話す。

 またこの活動を続ける上で、音楽の存在が大きな支えになったとカオルさんは語る。手術を控えて不安定だった時期、万祐子さんが一人で暮らす小さなアパートには、大学時代の友人たちが入れ替わりで泊まり込み、万祐子さんを見守った。そしてカオルさんに向けても、「僕たちが守りますから。寂しい思いをさせないから、お母さん大丈夫だからね」と声をかけ続けたという。

 「みんな音楽で繋がった仲間です」とカオルさん、手術が無事終わったことについて「音楽の友達が起こしてくれた奇跡」と目を潤ませた。

 音楽が家族を支えた経験は、この活動の原動力にもなっている。「音楽が心に残って映画を思い出してくださればいいんです」、言葉ではなく音として残る記憶にも意味があると話した。さらに今後の活動への思いとして、「若い人に種を植えたい」と繰り返し、「映画の内容を覚えてなくても、原爆ドームを思い出すだけでいい。小さな種でいい」と力を込めた。

原爆ドーム。広島市。撮影 日加トゥデイ
原爆ドーム。広島市。撮影 日加トゥデイ

(取材 田上麻里亜)

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2025年 バンクーバーイルミネーション特集

ライトナイトの屋外エリアの様子。2025年11月26日、サレー市。撮影:日加トゥデイ
ライトナイトの屋外エリアの様子。2025年11月26日、サレー市。撮影:日加トゥデイ
約300万個のライトが作るトンネルを歩く来場者。幻想的な空間が広がる。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜
約300万個のライトが作るトンネルを歩く来場者。幻想的な空間が広がる。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 冬の訪れとともに、今年も街が鮮やかな光に包まれる季節がやってきた。メトロバンクーバーでは、湖畔を照らす大規模なイルミネーションから、サンタやトナカイと触れ合えるクリスマスイベントまで、各地で個性豊かな光の景色が広がる。

 今回はメトロバンクーバーで、この冬訪れたいイルミネーションを紹介する。

ブライトナイト復活!ロック市長「サレーの誇り」に

 28年の歴史を持つ「ブライトナイト(Bright Nights)」が今年、これまでのスタンレーパーク(バンクーバー市)から発祥の地であるサレー市へ帰ってきた。11月26日には開幕イベントが行われ、熱傷患者支援のためのブリティシュ・コロンビア(BC)州最大の募金活動の復活を祝った。

火傷基金の寄付金贈呈式に登壇したサレー市ブレンダ・ロック市長。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜
火傷基金の寄付金贈呈式に登壇したサレー市ブレンダ・ロック市長。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 火傷基金の寄付金贈呈式にはサレー市ブレンダ・ロック市長があいさつ、「ブライトナイトはメトロバンクーバーで最も愛されてきた伝統の一つ」と述べ、多くの都市がブライトナイトの開催を希望する中でサレー市が選ばれたことを「大変誇りに思い、感謝している」と笑顔を見せた。

  ブライトナイトは、BC州消防士協会火傷基金の最大チャリティイベント。ロック市長は自身も家族と訪れた思い出を語りながら「このイベントは地域コミュニティの象徴であり、支え続けてきた消防士やボランティアの努力があって成り立っている」と感謝を表明。 500人を超える消防士の設営協力や地域企業の支援が紹介されると、会場には大きな拍手が沸き起こった。

火傷基金(BC Professional Fire Fighters’ Burn Fund)のトッド・シアリング会長。開幕式のステージ前で。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜
火傷基金(BC Professional Fire Fighters’ Burn Fund)のトッド・シアリング会長。開幕式のステージ前で。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 個別のインタビューに応じたBC州消防士協会火傷基金トッド・シアリング会長は、サレーでの開催について「1990年代にボブとマージがニュートンの住宅街で始めた場所に戻ってこられて本当にうれしい」と語った。「バンクーバー市での長い開催を経てサレー市に戻ることは、地域にもBurn Fundにも大きな意味がある」と話す。

 準備では新しい環境に合わせた再設計が必要で、「会場や構造を一から作り直す作業が大変だった」と振り返った。一方で、約2,800平方メートルの屋内会場や広いスペースが今回の魅力を引き立てていると説明。「暖かい屋内で過ごせること、食事や展示を楽しめること、駐車場の広さも大きな特徴」と話した。

Vancouver Fire & Rescue Services Bandによる演奏。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜
Vancouver Fire & Rescue Services Bandによる演奏。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 来場者には「寄付する気持ちや喜び、そしてコミュニティの一体感を感じてほしい。ブライトナイトがここに帰ってきた特別な雰囲気を味わってもらえれば」と期待した。

 屋外では、池の周囲に約300万個のライトが装飾され、来場者は光に包まれた遊歩道を自由に散策できる。ライトのテーマエリアが点在し、写真撮影スポットも多く、ゆったりと歩きながら見どころを巡ることができるのが特徴だ。会場内には15メートルの観覧車も設置され、光に囲まれた会場を高い位置からも楽しめる。

 屋内の「Noel Village」には、サンタとの撮影会、音楽、クリスマスマーケットを楽しむことができ、約2,800平方メートルの会場を活かした多彩なアクティビティが用意されている。

ライトで装飾された消防車。ブライトナイトを支える消防士たちの存在を象徴する展示となっている。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜
ライトで装飾された消防車。ブライトナイトを支える消防士たちの存在を象徴する展示となっている。2025年11月26日、サレー市。撮影:田上麻里亜

期間:2025年11月28日〜2025年12月28日
時間:16:00〜22:00(チケット制・日付指定)
場所:ブリティッシュ・コロンビア州サレー市クローバーデール・フェアグラウンド
公式サイト:https://www.noelfestival.com/

ライト・アット・ラファージュ(Lights at Lafarge)

ライト・アット・ラファージュ。Photo by City of Coquitlam
ライト・アット・ラファージュ。Photo by City of Coquitlam

 メトロバンクーバー最大の無料屋外イルミネーションが今年も湖畔を鮮やかに照らす。湖の周囲に延びる遊歩道を歩きながら、多彩な光のアートを楽しめるほか、毎年新しい演出が加わるため、今年もこれまでとは違った景色が広がる。

期間:2025年11月28日〜2026年2月16日
時間:16:00〜23:00
場所:ブリティッシュ・コロンビア州コキットラム市、Lafarge Lake
公式サイト:https://www.coquitlam.ca/784/Lights-at-Lafarge

フェスティバル・オブ・ライト(Festival of Lights)

フェスティバルオブライト。Photo by VanDusen Botanical Garden
フェスティバルオブライト。Photo by VanDusen Botanical Garden

 バンクーバー市中心部・ショーネシー地区にあるバンデューセン植物園で開催されている冬の名物イルミネーション。約6万平方メートルの敷地に100万球以上のライトが灯り、池や森が幻想的な光の庭園に変わる。特徴はなんといっても、植物園ならではのボタニカル・ライトアート。自然を活かした光の演出を楽しめる。

期間:2025年11月28日〜2026年1月4日 ※12月25日は休園
時間:16:00〜22:00
場所:ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市ショーネシー地区
公式サイト:https://vandusengarden.ca

キャニオンライト(Canyon Lights)

キャニオンライト。Photo by Capilano Suspension Bridge Park
キャニオンライト。Photo by Capilano Suspension Bridge Park

 深い渓谷にかかる「キャピラノ・サスペンションブリッジ」で行われるバンクーバー屈指の人気イルミネーション。長さ140m、高さ70mのつり橋がライトアップされ、谷を横断する光のラインが浮かび上がる迫力のイベント。森を歩く「Treetops Adventure」や、ライトをまとった木々が鏡のように反射するリフレクションも美しく、森全体が幻想的な空間へと変わる。

 2025年は新たに「3Dワイルドライフプロジェクション」が登場し、森の動物たちが立体的に動いているかのような新演出も。自然、光、テクノロジーを融合させた唯一無二のイルミネーションが楽しめる。

期間:2025年11月21日〜2026年1月18日 ※12月25日は休園
時間:11:00〜21:00(閉園後1時間滞在可)
場所:ブリティッシュ・コロンビア州ノースバンクーバー市
公式サイト:https://www.capbridge.com

ピーク・オブ・クリスマス(Peak of Christmas)

ピーク・オブ・クリスマス。Photo by Grouse Mountain
ピーク・オブ・クリスマス。Photo by Grouse Mountain

 ノースバンクーバーの象徴であるグラウスマウンテンでは、「バンクーバーの北極」として親しまれるクリスマスイベントが開催される。

 山頂ではライトウォークやサンタのワークショップ、トナカイとの触れ合い、そり、映画の上映会など、多彩なアクティビティが楽しめる。雪景色とイルミネーションの中、家族で冬を過ごす毎年人気のイベントだ。

期間:2025年11月21日〜12月24日
時間:アクティビティにより異なる。ウェブサイトを要確認
場所:ブリティッシュ・コロンビア州ノースバンクーバー市グラウスマウンテン山頂
公式サイト:https://www.grousemountain.com/peak-of-christmas

(取材 田上麻里亜)

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「よさこい、海を越えて」北米初の国際祭りがカナダで実現

桜の模様が鮮やかな青い衣装をまとい、和傘を手に舞う「桜舞トロント(Sakuramai Toronto)」の踊り子たち。トロントを拠点に、カナダ各地でよさこいの魅力を伝えている。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
桜の模様が鮮やかな青い衣装をまとい、和傘を手に舞う「桜舞トロント(Sakuramai Toronto)」の踊り子たち。トロントを拠点に、カナダ各地でよさこいの魅力を伝えている。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
日加友好日本庭園という特別な舞台に、北米と日本からの踊り子たちが集結。池に映る衣装の彩りが秋空に美しく映えた。2025年9月28日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
日加友好日本庭園という特別な舞台に、北米と日本からの踊り子たちが集結。池に映る衣装の彩りが秋空に美しく映えた。2025年9月28日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee

 北米で初めてとなる「北米国際よさこい祭り」が9月27日と28日の2日間、アルバータ州レスブリッジ市の日加友好日本庭園で開催された。日本、カナダ、アメリカのチームから踊り子とボランティア約200人が集結、訪れた約2,000人の観客を魅了した。

 イベントを主催した楓文化協会の本田朋之さん、田中恵美子さん、井上昇さんに話を聞いた。

日加3人の情熱が動かした初開催

多くの挑戦を乗り越え、笑顔で当日を迎えた北米国際よさこい祭りの主催者3人。左から井上昇さん、本田朋之さん、田中恵美子さん。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供:北米国際よさこい祭り参加者
多くの挑戦を乗り越え、笑顔で当日を迎えた北米国際よさこい祭りの主催者3人。左から井上昇さん、本田朋之さん、田中恵美子さん。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供:北米国際よさこい祭り参加者

 イベントの発端は3人の共通した「日本文化を自らの手で伝えたい」という思いだった。

 本田さんは、愛知県出身でアルバータ州カルガリー市に移住後、日本では当たり前にある地域の祭りや季節の行事がほとんどないことに気づいたという。日本人の人口は増えているのに、日本の祭りが増えていない。

 そこで2017年にカルガリーでよさこいチームを立ち上げた。その後、地元のパレード「カルガリー・スタンピード」への参加を続ける中で、2023年ごろから「自分たちでよさこいの祭りを開きたい」という構想が本格的に芽生えた。レスブリッジ市の日加友好日本庭園を訪れた時、「ここでよさこいができたらおもしろい」と直感し、開催の可能性を関係者に相談したという。

 しかし当時、本田さんには自身が所属するカルガリーのチーム以外につながりがなく、実現は容易ではなかった。そんな中、よさこいメンバーに紹介してもらい出会ったのが高知県よさこいアンバサダーとして、オンタリオ州トロントを中心に海外や日本で活動する田中さん。田中さんは「海外でよさこいは30カ国以上に広がってはいますが、まだまだその間の壁は大きい。お互いをつなげるきっかけにしたいと思いました」と語る。

 当初は迷いもあった。「お会いしたことがなかったので」と正直に振り返る。それでも「子どもたちの未来のために何かを残したい」という本田さんの言葉に心を動かされ、一緒にやろう、と決意した。

 さらに、田中さんの紹介で日本から井上さんが加わった。本場の高知や東京で18歳から30年以上よさこいに携わる井上さんにとっても、北米での開催は未知の挑戦だった。「最初に話を聞いたときは、正直ハードルが高いと思いました」。それでも「本田さんの情熱に圧倒された」と語り、「日本では考えられないスピード感で動き、地元の理解を得ていく姿を見て、これは本当に実現するかもしれないと思うようになった」と話した。

 こうして日本、カルガリー、トロントの3拠点がつながり、準備は本格的に動き出した。

「歴史を一緒に作りたい」

 しかし、前例のない試みは困難の連続だった。スポンサー探し、助成金申請、チーム集め。資料も実績もない中での説得は容易ではない。本田さんは「見せられるものがない状態で賛同を得るのは大変だった」と本音を漏らす。田中さんは「一番難しかったのは日本のチームで、実際に旅費を伝えた時に高額だったので、そこの壁を感じた」と説明した。

 それでも3人は、北米で初めてのよさこい祭りを開催するという歴史を一緒に作りたいと訴え続けた。その姿勢が支援者の共感を呼び、よさこい発祥の地である高知県で、1954年に結成された最古のよさこいチーム「帯屋町筋」が協力したことが大きな転機となった。その後日本各地や北米のチームにも参加の輪が広がった。

 本田さんは「日系コミュニティの発展を含め、自分たちで作るということがすごく重要だと思った」と語り、北米で文化を自らの手で形にする意義を強調した。

北米で芽生えた新しい文化の輪

 鳴子の音が響き、祭りの始まりを告げた。開会パレードでは、色とりどりの衣装をまとった踊り子たちが庭園を進み、観客の拍手が会場に広がった。来場者は約2,000人、踊り子とボランティアを合わせ約200人。北米や日本各地から集まった人々が、言葉や文化の違いを越えて一体となった。

カナダ・アルバータ州レスブリッジ市で行われた北米国際よさこい祭り。色鮮やかな衣装をまとった踊り子たちが、鳴子の音に合わせて総踊りを披露し、会場を盛り上げた。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供:北米国際よさこい祭り参加者
カナダ・アルバータ州レスブリッジ市で行われた北米国際よさこい祭り。色鮮やかな衣装をまとった踊り子たちが、鳴子の音に合わせて総踊りを披露し、会場を盛り上げた。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供:北米国際よさこい祭り参加者

 本田さんは全体統括として会場を駆け回っていた。「当日は本当に走り回っていました。Tシャツが届かない、スピーカーの準備ができていないといったトラブルも多かったけれど、みんなが笑顔で楽しんでくれた。それだけでうれしかった」と笑顔で振り返る。

 開催前日に、予約していた大型バス2台から日本チームの踊り子約80人が降り立った瞬間を今でも忘れられないという。「150人来るとは聞いていたけれど、実際に目の前で降りてきた時は震えました。ああ、本当にこの日が来たんだなって実感しました」と目を細めた。

司会を務めた田中恵美子さん(右から2人目)が出演チームを紹介。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
司会を務めた田中恵美子さん(右から2人目)が出演チームを紹介。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee

 司会を務めた田中さんは、観客と踊り子の笑顔があふれる会場の雰囲気を印象深く覚えている。「高知の帯屋町筋のチームの方が『何も考えず純粋にこんなによさこいを楽しめたのは久しぶりだった』と言ってくださって、とてもうれしかった」。異なる文化や背景を持つ人々が鳴子を手に一体となって踊る姿は、主催者や観客、全ての参加者の心に残った。

 井上さんも「余韻がすごくて、単に幸せだったなというところに行きつく」と語り、「北米という縁もゆかりもない土地で、自分と同じ思いを持つ人たちと出会えた幸せを強烈に感じました」と続けた。

秋空の下、色鮮やかな衣装をまとった踊り子たちが舞台に立つ。芝生に座る観客も手拍子で応え、会場が一体となった。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供:北米国際よさこい祭り参加者
秋空の下、色鮮やかな衣装をまとった踊り子たちが舞台に立つ。芝生に座る観客も手拍子で応え、会場が一体となった。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供:北米国際よさこい祭り参加者

 また、会場ではワークショップや共同パフォーマンスも行われ、日本チームと北米チームが一緒に作品を踊る場面もあった。田中さんは「よさこいは子どもから大人まで鳴子を握れば誰でもできるところ、そして言語や育った背景に関係なく踊れるところが一番の魅力」と語り、「だからこそ現在世界30カ国以上に広まっているんだと思います」。

「続けていくことで初めて文化になる」

首都オタワから在カナダ日本大使館・山野内勘二大使も駆けつけた。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供:北米国際よさこい祭り参加者
首都オタワから在カナダ日本大使館・山野内勘二大使も駆けつけた。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供:北米国際よさこい祭り参加者

 初開催を終えた今、3人はすでに次の目標を見据えている。アンケートでは「また来たい」という声が9割を超え、予想を上回る反響が寄せられた。イベントを終えてなお、会場で芽生えたつながりが広がり続けており、この流れを絶やさずに次へつなげたいという思いが3人を再び動かしている。

 井上さんは、現地での経験を通して感じた変化を語る。「日本にいると当たり前のことが、外に出ると当たり前ではないと気づきます。そうした経験を通じて、日本の人たちにも新しい視点で文化を見つめ直してほしい」と話し、よさこいを広めるだけでなく文化のあり方を見直す契機にもなったという。

 田中さんも「文化は子どもたちに伝えていかないと消滅してしまう。未来につないでいけるようなお祭りにしていきたい」と強調する。「(イベント名に)国際という言葉を入れたのは、北米だけでなく世界中の人に参加してほしいという願いから。将来的にはヨーロッパやアジアからもチームが集まるお祭りにしたい」と展望を語った。

 2回目の開催は2026年秋に予定されている。本田さんは「日本では当たり前にあるお祭りも、ここカナダでは誰かが動かないと始まらない。待っているだけでは何も生まれない」と語り、「北米にいる日本人一人ひとりが、自分の得意なことを生かして動き出せば、日系コミュニティはもっと豊かになる」と呼びかけた。

 2026年の開催について、詳細については以下のウェブサイトから。https://kokuyosa.com/

色鮮やかな衣装をまとった踊り子たちが、日加友好日本庭園の小道を進む。鳴子の音が響き、祭りの幕開けを告げた。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供:北米国際よさこい祭り参加者
色鮮やかな衣装をまとった踊り子たちが、日加友好日本庭園の小道を進む。鳴子の音が響き、祭りの幕開けを告げた。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供:北米国際よさこい祭り参加者
桜の模様が鮮やかな青い衣装をまとい、和傘を手に舞う「桜舞トロント(Sakuramai Toronto)」の踊り子たち。トロントを拠点に、カナダ各地でよさこいの魅力を伝えている。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
桜の模様が鮮やかな青い衣装をまとい、和傘を手に舞う「桜舞トロント(Sakuramai Toronto)」の踊り子たち。トロントを拠点に、カナダ各地でよさこいの魅力を伝えている。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
アメリカ・サンノゼを拠点に活動する「渦丸(Uzumaru)」の演舞。赤い和傘を使った華やかな舞で、よさこいの魅力を力強く表現した。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
アメリカ・サンノゼを拠点に活動する「渦丸(Uzumaru)」の演舞。赤い和傘を使った華やかな舞で、よさこいの魅力を力強く表現した。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
カルガリーを拠点に活動する「夜奏華(YOSOCA)」。主催団体Kaede Cultural Societyが所属するチームとして、力強い演舞で北米初のよさこい祭りを盛り上げた。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
カルガリーを拠点に活動する「夜奏華(YOSOCA)」。主催団体Kaede Cultural Societyが所属するチームとして、力強い演舞で北米初のよさこい祭りを盛り上げた。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
「高知県よさこいアンバサダー絆国際チーム」が華やかな演舞を披露。言語や文化の違いを越え、世界に“よさこいの絆”を広げる活動を続けている。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee
「高知県よさこいアンバサダー絆国際チーム」が華やかな演舞を披露。言語や文化の違いを越え、世界に“よさこいの絆”を広げる活動を続けている。2025年9月27日、アルバータ州レスブリッジ市。提供: KOKUYOSA Project Committee

(取材 田上麻里亜)

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「朝日軍」初代団長の孫・松宮哲さん、BCスポーツ殿堂博物館を訪問

BCスポーツ殿堂博物館で、殿堂担当者のベックさん(左)と記念メダルを持つ松宮さん(右)。長年の交流を経て、歴史的な節目の日に訪問が実現した。2025年9月18日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
BCスポーツ殿堂博物館で、殿堂担当者のベックさん(左)と記念メダルを持つ松宮さん(右)。長年の交流を経て、歴史的な節目の日に訪問が実現した。2025年9月18日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ

 戦前の日系人野球チーム「朝日軍」の初代団長、松宮外次郎(1873〜1957)の孫、松宮哲(さとし)さんが、9月18日にブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバー市のBCスポーツ殿堂博物館を訪れた。この日は偶然にも、朝日軍が最後の試合を行った1941年9月18日の記念日と重なった。

 哲さんは、映画「バンクーバーの朝日」を見たことをきっかけに松宮商店と朝日の研究を開始。長年の調査活動が実を結び、祖父の記念メダルが今年7月にカナダから届いた。喜びを胸に、現地のカナダで初代団長の足跡をたどった。

滋賀県から祖父の足跡たどり、バンクーバーへ

 松宮外次郎さんは1896年にバンクーバーへ渡り、日本町「パウエル街」で食料雑貨店「松宮商店」を開業した。野球用品も扱ったことから、店員らが中心となり1914年に朝日軍が結成され、初代団長を務めた。

 哲さんが祖父の足跡を調べ始めたのは、2014年公開の映画「バンクーバーの朝日」を見たのがきっかけだった。父、増男さんの著書「開出今物語-梅の花と楓」に朝日軍の記述がわずかにあったことから、「これはひょっとしたら祖父とつながりがあるのでは」と感じたという。

 哲さんは、10歳のときに祖父を亡くし、直接祖父からカナダでの話を聞く機会はなかった。それでも父から聞いた話を手掛かりに、約2年間にわたりバンクーバーの新聞記事を調べ続けた。その結果、松宮商店が朝日軍の拠点となり、外次郎さんが創設と運営を支える重要な役割を果たしていた事実にたどり着いた。2017年には著書「松宮商店とバンクーバー朝日軍」を出版。「調べれば調べるほど分かっていく。もっと知りたいという気持ちが研究を続ける原動力になった」と語る。

 研究を進める中で、朝日の選手に贈られたメダルの多くが遺族に渡っていないことも分かった。哲さんは、同じく朝日軍の選手を祖父に持つ嶋洋文さんと協力し、約10年かけて遺族探しとBCスポーツ殿堂博物館への情報提供に取り組んだ。これまでに30人の遺族へメダルを届けることに貢献。今年7月には、外次郎さんの記念メダルが哲さん自身の手にも届いた。

現地で祖父の足跡を実感、涙が出た

祖父が開業したジャパンタウンの「松宮商店」跡地を訪れた松宮哲さん。2025年9月18日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
祖父が開業したジャパンタウンの「松宮商店」跡地を訪れた松宮哲さん。2025年9月18日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ

 松宮さんにとって今回が初めての海外訪問。カナダに到着後も「ずっと興奮しっぱなしでなかなか寝られない」と胸を弾ませている様子だった。当初は1年前に訪問を計画していたが、新型コロナウイルスに感染し延期を余儀なくされたため、念願の訪問だったという。

 ジャパンタウン跡地、かつて松宮商店があった場所にも足を運び、「感動した。涙が出てきた。父も祖父もここにいたから、どうしてもここで(父と祖父を)感じたかった」と思いもひとしお。

 現地を訪れたことで新たな発見もあった。地図や映像だけでは分からなかった街の広さや道の感覚、当時の商店の規模などを実際に体感し、「こんなに(松宮商店は)狭かったのかと驚いた。日本人は起伏のある土地に住んでいたが、ここは平坦で、その違いも印象的だった」という。気候についても「湿気がなく住みやすいと感じた。来てみないと分からないことばかりで、体験できてよかった」とうれしそうに話した。

今も語り継がれる頭脳野球 今でも人気の朝日

ベックさんが朝日軍の活躍について説明。訪問に同行した滋賀大学の学生たちも熱心に聞き入った。2025年9月18日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
ベックさんが朝日軍の活躍について説明。訪問に同行した滋賀大学の学生たちも熱心に聞き入った。2025年9月18日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ

 BCスポーツ殿堂博物館のジェイソン・ベックさんは、朝日軍が今でも人気の殿堂入りチームだと説明。朝日のプレースタイルについて「バントなどの頭脳的な野球で、非常に速く、カナダのスタイルとは大きく異なっていた」と話す。さらに、「一度もヒットを打たずに勝った試合があった」という逸話を紹介。四球で出塁し、盗塁を重ねて得点につなげるなど、独自の戦術が広く尊敬を集めた理由の一つだとした。

BCスポーツ殿堂博物館内のバンクーバー朝日の展示パネル。「Vancouver Asahi Pioneer, Baseball」としてチームが紹介されている。2025年9月18日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
BCスポーツ殿堂博物館内のバンクーバー朝日の展示パネル。「Vancouver Asahi Pioneer, Baseball」としてチームが紹介されている。2025年9月18日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ

 厳しい差別の中で「フェアプレー」を貫いた朝日の展示を前に、訪問に同行した滋賀大学の学生、岩崎里音さんは「移民はただ普通にそこに住んで、商売をして暮らしてるだけなのかなって思ったら、野球でこんなに活躍したことにびっくりしました」と、朝日の功績に驚いていた。

若い世代へ歴史のバトンを 滋賀県で研究会設立へ

 松宮さんは、今後の活動として、若い世代へ朝日の歴史をバトンタッチしたいという。学生には「いろんなことを知ってほしいし、自分で感じたことを次の世代に伝えていってほしい」と期待した。

 こうした活動の一環として、松宮さんは今年、滋賀県で「滋賀・カナダ移民研究会」を立ち上げた。この研究会は、明治・大正期に琵琶湖の湖東や湖北地域からカナダへ渡った人々の生活や足跡を掘り起こし、後世へ残すことを目的としている。

 松宮さんによると、カナダに渡った日本人のうち、1910年ごろは滋賀県出身者が最も多かったという。今後もこの地方出身者をはじめ、日本からの移民の歴史をより詳しく研究していきたいと語った。

松宮さんと同行した滋賀大学の学生たち。2025年9月18日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
松宮さんと同行した滋賀大学の学生たち。2025年9月18日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ

(取材 田上麻里亜)

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Sake Fest ’25、150種超の酒と食文化をバンクーバーで発信

純米酒をはじめ、にごり酒なども紹介したKIZUNA SAKE。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
純米酒をはじめ、にごり酒なども紹介したKIZUNA SAKE。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
日本酒をはじめ、果実酒、ビールが並び、賑わう会場。ブースでは好みの味を伝えると、米の産地や精米歩合からぴったりの銘柄を勧めてくれる。2025年10月9日、バンクーバー市。提供 SABC/Photographer: John Lau
日本酒をはじめ、果実酒、ビールが並び、賑わう会場。ブースでは好みの味を伝えると、米の産地や精米歩合からぴったりの銘柄を勧めてくれる。2025年10月9日、バンクーバー市。提供 SABC/Photographer: John Lau

 「Vancouver Sake Fest’25」が10月9日、バンクーバー市で開催された。日本とカナダの酒蔵や輸入業者21社以上が集まった会場には、日本酒や焼酎、ビール、フルーツ酒など150種類を超える酒が並び、さらに日本酒に合うフードも提供された。昼の部は業界関係者向けトレードショー、夜の部は一般向け試飲会が行われ、招待客などを含め約300人が日本の酒と食を楽しんだ。

業界連携で築く、新たな日本酒市場

 日本では10月1日は「日本酒の日」。BC州日本酒協会(The Sake Association of British Columbia:SABC)が主催する同イベントは今回が5回目で、これまでも毎回10月に行われ、日本酒を通じてカナダと日本の文化交流を深めることを目的としている。

日本文化の発信を通じて、日本酒だけではなく飲食業界全体を盛り上げたいと意気込む、SABC代表の小西隆之さん。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
日本文化の発信を通じて、日本酒だけではなく飲食業界全体を盛り上げたいと意気込む、SABC代表の小西隆之さん。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ

 BC州では約1,000銘柄の日本酒が流通しているが、アルコール税率が高く、州政府が流通を管理するなど厳しい市場環境にある。SABC代表の小西隆之さんは「税金が高くて、最終的に一般の消費者のところに渡らない」と語り、販売構造に課題があると指摘する。

 それ以外にもカナダ全体の好みとして、「アルコールを飲む方が少なくなってる気がします。飲んでも低アルコールのものを選ぶ傾向があります」と、若年層を中心にビールやチューハイなど軽めの飲料が好まれる中で、日本酒のように度数の高い酒が選ばれにくいと感じている。

 それでも「BC州はアジアからの移民が多く、文化的にお酒を知っている人が一定数います。だからこそ、この地域は日本酒を広める上で重要な市場」と話す。

純米酒をはじめ、にごり酒なども紹介したKIZUNA SAKE。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
純米酒をはじめ、にごり酒なども紹介したKIZUNA SAKE。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ

 また今回からは食品スポンサーの協力よる、和牛や日本米を使った料理、加工食品などが並んだ。来場者は酒を片手に食も一緒に楽しめて、会場は1日中賑わっていた。

 小西さんは、「飲食業、輸入商社、アルコール業界が一緒にビジネスを考えていかないとマーケットが大きくならない」と述べ、同イベントを「業界が協力しながら新たな市場を育てるための場」と位置づけていると期待した。

 来場者からは「お酒だけでなく、食事も楽しめた」「ビールや焼酎、フルーツ酒もあり幅広く味わえた」などの声が多く聞かれた。

しつこくない油が日本酒にもぴったりだという、A5のBMS12サーロインステーキ。2025年10月9日、バンクーバー市。提供 SABC/Photographer: John Lau
しつこくない油が日本酒にもぴったりだという、A5のBMS12サーロインステーキ。2025年10月9日、バンクーバー市。提供 SABC/Photographer: John Lau

 茨城県産の「常陸牛」を提供したFrobisher International Enterprisesの担当者、廣見麻里亜さんは、カナダのレストランなどで見かける和牛の多くは日本産ではなかったり、グレードの低いものだったりする現状の中、「本物のジャパニーズ和牛は高価でなかなか手が出しづらい」と話す。だからこそ、「お客さんがたくさん集まるこういう機会に、せっかくなので日本の良い和牛を試してもらって、どういうものかを楽しんでいただきたい」と語った。

 また、Azuma Foods (Canada) Co., Ltd.の土橋祐斗さんは、現地生産を行う食品メーカーとして、食を通じた文化理解を促進したいという。「まずは日本のカルチャーというものを知って欲しい」と語り、JETROと連携したジャパンモール事業を紹介していた。

金芽米を使った料理に興味を示す来場者。他にも日本酒に合わせた料理が並んだ。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
金芽米を使った料理に興味を示す来場者。他にも日本酒に合わせた料理が並んだ。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ

 そのほかにも食を軸にした取り組みとしてToyo Rice Corporationが日本米を提供。担当者の石塚貴史さんは、「去年はお米を展示するだけでしたが、今年は実際にホテルのフィンガーフードに使ってもらいました。食べてもらって興味を持ってもらいたい」と語り、体験を通じて日本米の魅力を伝えた。 LA International Tradingはオレンジマダイを提供した。

 昼の部では日本酒の味わいや香りを学ぶセミナーも行われた。講師を務めたのは、日本酒のWSET認定講師でCru Classe Hospitality Corp.の代表ララ・ビクトリアさん。参加者に向けて「umami(うま味)の理解」をテーマに、日本酒のテイスティング方法や風味を構成する要素について解説した。

参加者たちは、日本酒一つひとつの香りや味の違いを確かめながらテイスティングを行なっていた。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
参加者たちは、日本酒一つひとつの香りや味の違いを確かめながらテイスティングを行なっていた。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
乾杯のあいさつするバンクーバー総領事館・岡垣首席領事。会場にはBC州政府ポール・チョイ貿易担当政務次官なども出席した。2025年10月9日、バンクーバー市。提供 SABC/Photographer: John Lau
乾杯のあいさつするバンクーバー総領事館・岡垣首席領事。会場にはBC州政府ポール・チョイ貿易担当政務次官なども出席した。2025年10月9日、バンクーバー市。提供 SABC/Photographer: John Lau
出羽桜のブース。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ
出羽桜のブース。2025年10月9日、バンクーバー市。撮影 田上麻里亜/日加トゥデイ

(取材 田上麻里亜)

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BC州でサッカイサーモン927万匹回帰 予想の3倍、4年に一度の大量年

フレーザー川水系のアダムス川に遡上するサッカイサーモン。写真提供: Fisheries and Oceans Canada
フレーザー川水系のアダムス川に遡上するサッカイサーモン。写真提供: Fisheries and Oceans Canada

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州の川に、赤く色づいたサッカイサーモンの群れが次々と姿を現している。今年は4年に一度の大量回帰の年にあたり、各地でピークを迎えつつある。フレーザー川水系を中心に観測された回帰数は、事前予測の約3倍にあたる927万匹にのぼり、近年ではまれな規模として注目されている。

 一方で、サーモン回帰を取り巻く環境は年々変化しており、保護や漁業規制、気候変動への対応も課題となっている。その現状について、カナダ漁業・海洋省(DFO)に話を聞いた。

927万匹と過去平均を上回る回帰数

サレー市のサーペンタイン川を遡上するサーモン。 The Serpentine Enhancement Societyのブライアン・イングランドさんによると、大雨の翌日は多くのサーモンが上ってくることが予想されるという。2025年10月29日、サレー市。撮影:田上麻里亜
サレー市のサーペンタイン川を遡上するサーモン。 The Serpentine Enhancement Societyのブライアン・イングランドさんによると、大雨の翌日は多くのサーモンが上ってくることが予想されるという。2025年10月29日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 太平洋サーモンはカナダ西海岸の象徴的な魚種で、先住民コミュニティにとっては食料としてだけでなく、社会的、儀式的にも欠かせない存在である。また、レクリエーション漁業や商業漁業を通じて地域経済にも貢献している。海洋および淡水の生態系でも重要な役割を果たしており、その保全は自然環境と文化の両面において大きな意味を持つ。

 太平洋サーモンには、チヌークサーモン(キングサーモン)、コーホーサーモン(銀サーモン)、サッカイサーモン(紅サーモン)、ピンクサーモン(カラフトサーモン)、チャムサーモン(白ザケ)の5種が存在し、それぞれ異なる生態的特徴を持つ。

 中でも、サッカイサーモンに見られる「周期的優占(cyclic dominance)」と呼ばれる現象は特異であり、BC州のフレーザー川には4年に一度、おびただしい数のサッカイサーモンが回帰する。

 2025年のサッカイサーモン回帰数は、フレーザー川水系で約927万匹と予測されている。事前の予測中央値290万匹を大きく上回る数で、過去の平均も上回る水準となった。今年は4年に一度の大量周期にあたり、前回の周期だった2021年の回帰数(約630万匹)を大きく超えている。

保全を目的とした漁獲制限と管理

The Serpentine Enhancement Societyでは、Tynehead Hatcheryでサーモンを養殖し、地元で絶滅の危機にある魚種の補充と再放流に力を注いでいる。2025年10月29日、サレー市。撮影:田上麻里亜
The Serpentine Enhancement Societyでは、Tynehead Hatcheryでサーモンを養殖し、地元で絶滅の危機にある魚種の補充と再放流に力を注いでいる。2025年10月29日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 一方で、近年BC州の一部地域ではサーモン資源を守るため、漁獲制限や規制を強化している。これは、産卵前に高い死亡率が見られていることが背景にある。特に近年では、水量の減少や高水温、干ばつ、地すべりといった要因により、産卵前の死亡率が90%に達するケースもあるという。

 また、夏に回帰するサッカイサーモンとともに遡上する系統の中には、個体数が少なく保護が必要とされる在来種が含まれている。特に「レイトラン(late-run)」と呼ばれるフレーザー川のサッカイサーモンは、全体の回帰群の中でも規模が小さく、複数の脆弱な系統を含んでいる。このため、DFOはこれらの保全を目的に漁獲上限を設けている。

 加えて、気候変動と生息地の変化も大きな影響を与えている。具体的には、水温の上昇、食物連鎖の変化、河川流量ピークの時期のずれ、干ばつや豪雨の増加、浸食の進行、氷河の縮小、川や湖の氷結期間の短縮などが報告されており、これらがサーモンの生存率や遡上範囲に影響を及ぼしている。

 こうした状況に対応するため、カナダ政府はPacific Salmon Strategy Initiative(PSSI)を推進。BC州やユーコン準州を中心に、生息地の回復や気候変動対策を目的としたプロジェクトが展開されている。

サーモン回帰の観察スポット

オスのコーホーサーモンを紹介するブライアンさん。鼻の先の突起は「キープ(Kype)」と呼ばれ、オス同士がメスと交尾する権利をめぐって争う際に使われる。2025年10月29日、サレー市。撮影:田上麻里亜
オスのコーホーサーモンを紹介するブライアンさん。鼻の先の突起は「キープ(Kype)」と呼ばれ、オス同士がメスと交尾する権利をめぐって争う際に使われる。2025年10月29日、サレー市。撮影:田上麻里亜

 サーモンの回帰を目にすることができるスポットがBC州各地にある。一度見たら人生観が変わるとまで言われるサーモンの遡上風景。例年秋には、アダムス川や、ゴールドストリーム州立公園などに多くの人がサーモンの回帰を見るために訪れている。

 観察に適した時期や場所は、以下のウェブサイトから。

「Where and when to see salmon」Fisheries and Oceans Canada (DFO)
https://www.pac.dfo-mpo.gc.ca/sep-pmvs/see-observer-smon-eng.html

The Serpentine Enhancement Society: https://tyneheadhatchery.ca/

(取材 田上麻里亜)

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キャップス、プレーオフ第1戦で快勝 高丘はクリーンシート守る

試合後にファンと一緒に喜ぶ選手たち、高丘も笑顔を見せる。FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
試合後にファンと一緒に喜ぶ選手たち、高丘も笑顔を見せる。FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
超満員のファンが詰めかけたMLSカップ・プレーオフ1回戦。FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
超満員のファンが詰めかけたMLSカップ・プレーオフ1回戦。FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 ファンが3階席まで埋め尽くし、 BCプレースが熱気と水色に染まった。10月26日、MLSカップ・プレーオフの1回戦が行われ、バンクーバー・ホワイトキャップスFCがFCダラスを3対0で完封した。

 観客動員数は32,066人と、ホワイトキャップスのMLSカップ・プレーオフでのホーム記録を更新。悲願のMLSカップ制覇へ向けて、力強い一歩を踏み出した。

10月26日(BCプレース:32,066)
バンクーバー・ホワイトキャップス 3 – 0 FCダラス

前半から主導権を握り、試合をコントロール

 試合序盤からホワイトキャップスが主導権を握った。左サイドのアリ・アーメドが積極的に仕掛け、攻撃のリズムをつくった。

 43分、セバスチャン・ベルハルターが右サイドへ展開。アーメドが素早くクロスを送り、リオスが力強く頭で合わせて先制した。リオスは今季全大会を通じて4得点目を記録。

PKが決まった後、ミュラーの周りに集まり感情を爆発させるホワイトキャップス選手たち。 FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
PKが決まった後、ミュラーの周りに集まり感情を爆発させるホワイトキャップス選手たち。 FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 後半に入っても流れは変わらず、エマニュエル・サビが前線で躍動。ドリブルで相手DFセバスティアン・イベアガと競り合いペナルティエリア内でPKを獲得。サビがPKを誘うのは2試合連続で、試合後にソレンセン監督が「相手の背後を常に脅かしていた」と称賛するほど、終始攻撃の軸として存在感を見せた。

 PKはトーマス・ミュラーが右上に決め、リードを2点に広げた。ミュラーは加入後9試合で9得点。ホワイトキャップスでの公式戦PKは6本全て成功している。

 そして83分、途中出場の18歳ライアン・エルーミが果敢なドリブルでゴールライン際を突破。倒されながらも低いクロスを送り、これを同じく途中出場で日本生まれの日系ペルー人選手ケンジ・カブレラが滑り込みながら押し込み、3対0。若手の活躍で試合を締めくくった。

今年7月に加入したケンジ・カブレラ、今回の試合で公式戦通算2点目を挙げた。ホームでは初ゴール。FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
今年7月に加入したケンジ・カブレラ、今回の試合で公式戦通算2点目を挙げた。ホームでは初ゴール。FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 ミュラーは試合後、「最初から試合をコントロールできた」と振り返った。攻守のバランスや相手のカウンターへの備えなど、試合の戦い方に手応えを感じたという。そして、「まだ1勝を手にしただけで、2勝目が必要」と次戦への意気込みを語った。

安定感ある守備でチームを完封勝利に

 守備ではチーム全体が冷静に最終ラインを支え、相手に決定機を与えなかった。FCダラスのシュート数は0本と、完璧に封じ込めた。GK高丘は大きなセーブを要する場面は少なかったものの、安定感ある守備でチームの完封勝利に貢献。

 試合後には、「前半からボールをちゃんと握ってコントロールできましたし、チャンスも作っていた。3点取って勝てたのは大きいと思いますし、無失点で抑えられたのは良かったかなと思います」と手応えを話した。

背後のスペース管理を意識したというGK高丘。 FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
背後のスペース管理を意識したというGK高丘。 FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 また、「相手の狙いは僕らの背後のスペースだったので、そこの管理を意識していました。ボールを足で扱う場面も多かったけれど、プレッシャーをうまく受けながら対応できたと思います」と自身のプレーを振り返った。

次戦アウェーは「0対0からのスタート」と高丘

 ソレンセン監督にとって、北米でのプレーオフは今回が初めて。「旗や歓声、チームへの愛情があふれていて、本当に特別な夜になった」と語り、「観客に最高の試合を見せることができてうれしい」と感謝した。

 今月18日に行われたレギュラーシーズン最終戦では、やはりBCプレースで同じくダラスと対戦し敗れている。ソレンセン監督は、「1週間前の試合で得た情報をもとに修正できた。集中して、狙ったテンポで試合を進められた」と振り返った。

 高丘はプレーオフへの意気込みについて、「2年連続でこのラウンド1で負けていたので、悔しさは持っています。今年はチームの状態もいいですし、MLSカップを取れるように1試合ずつ勝っていきたい」と力を込めた。そして第2戦に向けては、「アウェーでも0対0からのスタートになる。1週間良い準備をして、また集中して臨みたいと思います」と気を引き締めた。

 この日の観客動員数は32,066人、ホワイトキャップスのMLSカップ・プレーオフでのホーム記録を更新した。高丘も、「観客の後押しをすごく感じました。今季は満員の試合も多く、年々熱が上がってきていると思います」と話す。

 ホワイトキャップスはこれでシリーズ1勝。次戦は11月1日午後6時30分(太平洋標準時)、アメリカ・テキサス州のトヨタ・スタジアムで行われる第2戦に臨む。勝てば準々決勝進出が決まり、シリーズが第3戦にもつれた場合は11月7日に再びBCプレースで行われる。

試合後にファンと一緒に喜ぶ選手たち、高丘も笑顔を見せる。FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
試合後にファンと一緒に喜ぶ選手たち、高丘も笑顔を見せる。FCダラス戦。2025年10月26日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

(取材 田上麻里亜/写真 斉藤光一)

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