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“Blue Moon” 笑顔の裏に隠された友情、出世、恋愛物語

「Blue Moon」より。Photo by 2025 Sony Pictures Classics
「Blue Moon」より。Photo by 2025 Sony Pictures Classics

 リチャード・リンクレイター監督による俳優イーサン・ホーク主演の映画「ブルームーン」には、どこか哀愁が漂う。映画は、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」で知られる有名なソングライター・コンビ、ロジャース&ハートこと作曲家リチャード・ロジャースと作詞家ロレンツ・ハートのあまり知られていない晩年を描いている。

 1943年3月31日、演劇「オクラホマ!」が初めて上演された日の夜、作詞家のローレンツ・ハート(イーサン・ホーク)は、25年間もコンビを組んで仕事をしてきた相棒の作曲家リチャード・ロジャーズ(アンドリュー・スコット)が初めて自分以外の作詞家と組んで大成功した初日公演を観劇する。ハートは自分の居場所を失くして、バーのマスターや見知らぬ客に自分の過去の成功、哲学や最近気になっている20歳の女学生(マーガレット・クアリー)の話をするが…。

 一昔前までハンサムで恋愛映画の主人公だったイーサン・ホークが、150cmの中年男性に変身して若い女性に対してかなりの気持ち悪さを見せてくれる。だが彼が抱えているアルコール依存、これまでの恋愛失恋歴、長年の友情に終止符、そして時代に乗り遅れた芸術家という状況を考えると同情してしまう。映画は予算が少ないながら、俳優の頂点に達したホークの1人劇にぜひ注目したい。

(文 Jenna Park)

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「映画を作りたい人へ捧げる」バンクーバー国際映画祭セミナー

VIFFシアターでのセミナーの様子。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
VIFFシアターでのセミナーの様子。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
左からSung Moonさん、Rebecca Steeleさん、Seo Woo-Sikさんと通訳。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
左からSung Moonさん、Rebecca Steeleさん、Seo Woo-Sikさんと通訳。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

国境を越えた映画のコラボ

 バンクーバー国際映画祭では映画上映だけではなく、セミナーやコラボイベントも多く開催されている。10月7日には「Co-Producing Across the Pacific: Bridging Canadian and Korean Stories」と題するセミナーがVIFFシアターで開催された。

 これはSpotlightイベントの一環で、太平洋の国境を越えて結ぼうとする新しい試み。第1回のセミナーには映画をこれから作りたい人や映画関係者など多くが参加した。

映画を作る基本

 映画を作るためにはまず観客を知らなければならない。今観客は何を求めているのか、作り手はまず彼らの声に耳を傾ける。歴史物では事実の背景をリサーチして忠実にストーリーを伝える。良い人、悪い人などキャラクターにも焦点を当てる。作る、繋ぐ、改革するなど映画作りの基本を学ぶことが大切。そして何よりも後世に残すことを考える。何も残せなければ映画の未来はない、というぐらい自分の情熱を伝え残すのが大切だ。

 オープニングからいきなりそんな助言的な発言が飛び出したセミナー。この日のゲストは韓国からCEOで「Okja」などのプロデューサーSeo Woo-Sikさんと、Jeonju映画祭のプログラマーSung Moonさん、そしてカナダからは国際映画製作をしているRebecca Steeleさんの3人がスピーカーとして参加した。

 「韓国映画にはアメリカ・ニューヨークみたいな大きな予算はないし、ハリウッド的な1人の強いヒーローを作るのも容易ではない。韓国の男優においては80%がデートしたいタイプで、夫風でなくロマンチックな男性が求められています」とSeoさんが話すと会場が爆笑した。

 「韓国政府はこれまで30年以上映画を推薦していて、公私に関わらず外国からの映画製作に協力的です。税額も映画の大きさを考慮してくれるし、少ない予算のために値引き交渉もできます」とSungさんが話すと、「まず自分が何を作りたいか、何を提供できるかをクリアにすること。ただ資金が欲しいというだけはでなく、相手側に与えるものも必要。コラボはギブ&テイクを踏まえて交渉する」とSeoさん。「例えばこの俳優と一緒に写真が撮れるという利点はグラントやファンディングに使える」と笑った。さらに「自分のストーリーのアイデアと、映画祭のこんな映画を探しているがマッチすれば、もっとファンディングが出る」とも話した。 

国際コラボについて

 「最近は映画祭でもアジアとヨーロッパなど国際コラボの作品が増えました」とSungさん。Seoさんは「コラボでは各国の法律や税金についてプロデューサー同士がまず話し合う」と話す。「例えば、ある監督は大きな機材を注文して全く必要なかったにも関わらず、50%の予約料が取られて予算に響いたこともあります」と説明した。カナダのSteeleさんも「マリファナが認められているカナダでは、吸わないと仕事ができないスタッフが数人いて、彼らはロケ地からすぐ帰国しなければなりませんでした」とつけ加えて、「システムやカルチャーの違いは事前に知っておかなければならない事項です」と忠告した。

 また、韓国では映画の予算・ロケーションやスタッフなどのコンタクトリストが用意されているので外国人の監督でも予算の見積もりはしやすいが、美しい景色が撮れるカナダでは州ごとに税金や法律が違うし、各プロデューサーの報酬も違う、「どうやって税金の返金が受けられるのかなど、誰に聞いたらいいのか全く分からなかった」など、Seoさんはこれまでの国が違うからこその苦労話も披露した。

 観客から「韓国でゲリラ撮影(撮影許可なし)でも警察に捕まらないか」という質問には、「そうすると上映させてもらえなくなるかも」と笑って、「予算が少ないインディーズ映画だからディスカウントをください」と積極的に政府に頼んだ方がいいと回答。ちなみにSeoさんのようなプロデューサーはいつも次のコラボ作品を探しているので、ぜひ映画の大小に関わらず積極的にプロジェクトの声を上げてほしいとのことだった。

VIFFシアターでのセミナーの様子。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
VIFFシアターでのセミナーの様子。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

(取材 Jenna Park)

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映画「あかし」がVIFFでワールドプレミア!吉田真由美監督インタビュー

「あかし」より。Photo by VIFF
「あかし」より。Photo by VIFF

 「今は緊張していますが、やっとここまで来れたって感じです」と、笑顔でインタビューに応じた吉田真由美監督。2017年に監督・主演した短編映画「あかし」が、ブリティッシュ・コロンビア州映画界のSpotlight Awardsで新人賞を受賞した当時は、自分で脚本、監督、主演、プロデュースの全てをこなし「4つくらい帽子をかぶっていないと不安になるんです」と話していた。

 YouTubeで無料配信していたその短編映画が、約9年後さらに大きくなって今回長編デビューする。しかも初プレミアの舞台はバンクーバー国際映画祭(VIFF)の目玉、世界各地から選ばれた注目作品が上映されるPlayhouse劇場。「この映画とは長いつきあいだった」と監督が認めるぐらい映画「あかし」には監督自身のプライベートな思い出がある。

映画のストーリー「『あかし』は、世代と時を越えて紡がれる愛の物語」

「あかし」より。Photo by VIFF
「あかし」より。Photo by VIFF

 バンクーバーでアーティストとして奮闘するカナ(吉田真由美)は、祖母(木野花)の葬儀のために10年ぶりに東京へ戻ってくる。長い海外生活のせいで、故郷に居場所を見いだせずにいるカナ。これをきっかけに、祖母と自分だけが共有していた秘密――祖父(村井國夫)にもう一人の女性(松原智恵子)がいたこと――を思い出すカナは、偶然にも昔の恋人ヒロ(田島亮)と再会する。物語は祖父の長きにわたる愛人関係と交差し、家族に隠されてきた真実が少しずつ浮かび上がっていく。やがてカナは、愛に生きることの代償と、夢と責任のはざまで揺れる人生の選択に向き合っていく。

色彩パレットのような映像

吉田真由美監督。Photo by 2025 Pender PR
吉田真由美監督。Photo by 2025 Pender PR

 祖母のために作った映画なので、これから見てくれる人たちの反応が最初は心配だったという監督。だが色々な人に脚本を読んでもらっているうちに、このストーリーはユニバーサルで世代を超えて誰にでも通用すると感じた。そこで映像も従来なら過去がクラシックな白黒、現在は鮮明なカラーのところ、過去は愛人同士の目線で振り返るために鮮やかなカラー、現代の葛藤に普遍性を持たせるためにカナのストーリーは白黒でクラシカルに見せるという手法を選んだという。

 「鮮明な記憶をたどっている祖父の目線には色があると思ったんです」と監督。「逆にかなの描写は白黒に感じました」と続けた。「いつの時代でも人は心の葛藤を持っています。今ある感情に色をつけずに見たら本質を感じ取ってもらえるのでは」と思ったという。「ナチュラル」という言葉が似合うくらい時間が止まったように変化しながら映画は進んでいく。

素敵なコラボ

 映画のクロージング・ソングは坂本龍一さんの「Aqua」。吉田監督はこの曲を聞きながらストーリー中の気持ちの整理ができたそうだ。「映画の軸になっています」と話す通り、愛、存在、繋がりの「あかし」が最後まで感じられる曲だ。

 さらに音楽担当のAndrew Yong Hoon Leeさんは、作曲家目線から常に「映画はアート」だとリマインドしてくれたと語った。出演俳優も松原智恵子さんや村井國夫さんなどのベテラン俳優が脇を固め、映画製作からすてきなコラボが実現したようだった。

 10月5日初日のワールドプレミアには日本から俳優も駆けつけて、吉田監督と一緒に舞台あいさつをする予定。

「あかし」

10月5日(日)6pm @Vancouver Playhouse
10月9日(木)3pm @Granville Island Stage

詳細・チケット情報はウェブサイトを参照:https://viff.org/whats-on/viff25-akashi/

「あかし」撮影の様子。Photo by 2025 Pender PR
「あかし」撮影の様子。Photo by 2025 Pender PR

(取材 Jenna Park)

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VIFF日本映画特集「映画ならではの多様な日本文化に触れる」

「見はらし世代(Brand New Landscape)」より。Photo provided by VIFF
「見はらし世代(Brand New Landscape)」より。Photo provided by VIFF

 バンクーバーが1年で最も華やぐ10日間、バンクーバー国際映画祭(VIFF)が10月2日に開幕する。すでに今年のラインナップも発表され、チケット販売も開始。徐々に雰囲気が盛り上がっている。

 今年のVIFFは例年以上に上映映画が多く、うれしいことに日本映画も日系や短編も含め10作品となっている。

 そこで今回は日本映画を紹介しよう。

「見はらし世代(Brand New Landscape)」団塚唯我監督

主演の黒崎煌代。「見はらし世代」(団塚唯我監督)より。Photo by VIFF
主演の黒崎煌代。「見はらし世代」(団塚唯我監督)より。Photo by VIFF

(日加トゥディ・メディアパートナー作品)

 舞台は再開発が進む東京・渋谷。主人公の蓮(黒崎煌代)は配送運転手として働く。母親を亡くして以来、疎遠になっていた父(遠藤憲一)とある日再会する。姉は父に全く関心がなく、黙々と自分の結婚の準備を進めている。蓮はこれを機会にもう一度家族だけで過ごしてお互いの距離を測り直そうと考える…。

 監督は短編「遠くへいきたいわ」の団塚唯我監督。「見はらし世代」はオリジナル脚本・初長編の作品で、日本人史上最年少の26歳で、いきなり今年のカンヌ国際映画祭の監督週間にも選出された。映画は渋谷の普遍的な家族の風景から、都市再開発がもたらす影響までを繊細に切実に描くと同時に、軽やかな新人監督ならではの日本映画に仕上がっている。

 日本では10月10日に全国公開。

https://viff.org/whats-on/viff25-brand-new-landscape

「あかし(Akashi)」吉田真由美監督

「あかし(Akashi)」より。Photo proided by VIFF
「あかし(Akashi)」より。Photo proided by VIFF

 バンクーバー在住の吉田真由美監督の映画「あかし」の主人公は、アーチストの夢を追って10年間バンクーバーに住み続ける山本かな(監督兼俳優の吉田真由美)。ある日祖母の訃報を聞き葬儀に出席するために東京へ戻る。昔付き合っていた男性ヒロ(田島遼)と再会し、祖母の過去をたどるうちに、家族の秘密や今まで感じたことのなかった感情に出合う。

 白黒とカラーの交差した撮影が、かなの感じる愛、義務、自分の居場所などの感情を豊かに表現している。世界初プレミアはもちろんバンクーバー国際映画祭。

https://viff.org/whats-on/viff25-akashi

「国宝(Kokuho)」李相日監督

「国宝(Kokuho)」より。Photo proided by VIFF
「国宝(Kokuho)」より。Photo proided by VIFF

 「壮大な芸道映画」を書くために3年間も歌舞伎の楽屋に入った原作者の吉田修一さん。ストーリーは歌舞伎役者の家に引き取られた主人公・立花喜久雄(吉沢亮)の50年の記録を描く。「任侠抗争」によって父を亡くした喜久雄は美しい顔立ちをしていたため、見初められて歌舞伎の世界へ。血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切りの中で苦しみながら進んで行く主人公が、国の宝になるまでを描く。

 監督は「フラガール」で日本アカデミー賞の最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞した李相日監督。4代目中村鴈治郎さんが俳優として参加し、女形を演じる俳優陣の歌舞伎指導にあたったという。喜久雄のライバル役に横浜流星、歌舞伎名門の当主に渡辺謙、さらに日本映画に欠かせない豪華俳優たちが結集する。

https://viff.org/whats-on/viff25-kokuho

「西海楽園(Saikai Paradise)」鶴岡慧子監督

「西海楽園(Saikai Paradise)」より。Photo proided by VIFF
「西海楽園(Saikai Paradise)」より。Photo proided by VIFF

 映画「まく子」と「バカ塗りの娘」でVIFFに登場した鶴岡慧子監督。これまで青森、群馬、長野など各地の風景を撮り続けてきた監督が、学生時代からの盟友で俳優の柳谷一成を主演にして、彼の生まれ故郷である長崎県西海市で撮影した作品。タイトルは実在し2007年に閉園した仏教テーマパーク「西海楽園」から来ている。

 東京で苦闘する俳優・カズナリ(柳谷一成)は、俳優としては行き詰まり、婚約も破談となるなど度重なる失敗の末に故郷の長崎県西海市に親友のウエハラ(上原大生)と帰ってくる。家族が営む小さな豆腐店や、懐かしい顔ぶれに温かく迎えられるが、彼の心には失敗の痛みが残り、見慣れたはずの街並みもどこか遠く感じられる。そんな宙ぶらりんな感情で、一成は幼なじみの親戚・ミキ(木下美咲)と出会う。彼女との交流を通じて、一成はかつて故郷の夢の象徴だった廃墟となった遊園地「西海楽園」へと導かれていく。

https://viff.org/whats-on/viff25-saikai-paradise

「まっすぐな首(A Very Straight Neck)」空音央監督

「まっすぐな首(A Very Straight Neck)」より。Photo proided by VIFF
「まっすぐな首(A Very Straight Neck)」より。Photo proided by VIFF

 昨年のVIFFで「HAPPYEND」が上映され好評だったニューヨーク在住の空音央監督。この最新作は今年8月のロカルノ国際映画祭でプレミア上映し、最優秀短編映画賞を受賞したばかり。

 首の激しい痛みと共に目覚めた女性(安藤サクラ)は自分の子ども時代の記憶を思い出す。悪夢が徐々に身体に影響して、過去と現在が混ざり合い、彼女はバランスを失っていく…。

 短編映画だが、予告だけではホラーなのかアニメなのか内容も不明なのでこれは見てのお楽しみ。

https://viff.org/whats-on/viff25-a-very-straight-neck

「粒子のダンス(particle dance)」岡博大監督

「粒子のダンス(particle dance)」Photo proided by VIFF
「粒子のダンス(particle dance)」Photo proided by VIFF

 岡博大監督が大学時代の恩師、建築家・隈研吾氏を後世へ継承しようと、2010 年から15 年もかけて自主制作したドキュメンタリー映画。映像には世界16カ国80以上の建築プロジェクトが登場している。東日本大震災に伴う東北での復興プロジェクト、2020年東京オリンピック、新型コロナウイルス禍などで、絶えず新たな建築のあり方を問いながら提案し続ける隈氏。彼が普段旅する姿や建築教育の様子などを追う紀行映画。

https://viff.org/whats-on/viff25-particle-dance

「ルノワール(Renoir)」早川千絵監督

「ルノワール(Renoir)」より。Photo proided by VIFF
「ルノワール(Renoir)」より。Photo proided by VIFF

 舞台は1987年夏の東京郊外。主人公沖田フキ(鈴木唯)は感受性と想像力の強いまだ11歳の少女。闘病中の父(リリー・フランキー)と仕事に追われる母(石田ひかり)と3人で暮らしている。親から十分にかまってもらえないフキは、それぞれ別の事情を抱えた他の大人たちと出会う。

 監督はデビュー作「Plan 75」でいきなりカンヌ国際映画祭の新人監督部門で特別表彰を受けた早川千絵監督。この作品も今年同映画祭の最高となるコンペティション部門に招待された。

https://viff.org/whats-on/viff25-renoir

「レンタル・ファミリー(Rental Family)」Hikari 監督(言語:英語)

「レンタル・ファミリー(Rental Family)」より。Photo proided by VIFF
「レンタル・ファミリー(Rental Family)」より。Photo proided by VIFF

 日本・アメリカの共同制作で、日本人俳優・柄本明や平岳大が出演するコメディドラマ。監督は「37セカンズ」でベルリン国際映画祭パノラマ観客賞を受賞しているHikari(宮崎光代)監督。

 一人で東京に住む孤独なアメリカ人俳優(ブレンダン・フレイザー)は、ふとしたことから「レンタル・ファミリー」ビジネスで見知らぬ人たちの家族を演じることになる。だがそのうち彼も新しい家族と…。今月トロント国際映画祭でプレミア上映の作品。

https://viff.org/whats-on/viff25-rental-family

「Tears Burn to Ash」ナタリー・ムラオ監督

「Tears Burn to Ash」より。Photo proided by VIFF
「Tears Burn to Ash」より。Photo proided by VIFF

 日系カナダ人4世ナタリー・ムラオ監督の短編映画。

 タミーは20代の日系カナダ人女性。東京に到着した彼女は、バンクーバーに住む祖母が危篤であるという思いがけない知らせを受ける。タミーはその後の12時間を東京のナイトライフの中で過ごしながら、家族の死、過去とのつながり、そして自身の文化的ルーツという、避けられない喪失感と向き合うことになる。

https://viff.org/whats-on/viff25-tears-burn-to-ash

「その花は夜に咲く(Skin of Youth)」アッシュ・メイフェア監督

「その花は夜に咲く(Skin of Youth)」より。Photo proided by VIFF
「その花は夜に咲く(Skin of Youth)」より。Photo proided by VIFF

 舞台は90年代のベトナム・サイゴン。望まぬ性に生まれナイトクラブで働くサンとボクサーのナムは二人で静かに暮らしていた。だが高額な手術費が必要なサンのために、より稼ぎの良い闇の仕事を引き受けてしまうナム。運命が狂い始めた二人の愛の行く末は…。

 運命の鍵を握るミスター・ヴーン役に「侍タイムスリッパー」で好演した井上肇が、全てベトナム語で魅せてくれる。監督は「第三夫人と髪飾り」で注目されたベトナムのアッシュ・メイフェア監督。

https://viff.org/whats-on/viff25-skin-of-youth

バンクーバー国際映画祭

期間:2025年10月2日~12日
会場:バンクーバー市内10カ所
ウェブサイト:https://viff.org/festival/viff-2025
チケット:大人21ドル、シニア19ドル、学生・ユース16ドル、6枚チケットパック120ドル・10枚チケットパック180ド(チケットパック学生シニア料金あり)、その他詳しくはviff.org/ticket-infoを参照

(記事 Jenna Park)

VIFFチケット読者プレゼントのお知らせ

 毎年実施しているVIFF読者プレゼント。今年は日加トゥデイのメディアパートナー作品「見はらし世代(Brand New Landscape)」を10名に、好きな映画を選べる一般チケットを10名にプレゼントします。

 希望の方は件名に「VIFFチケット希望」として、「見はらし世代(Brand New Landscape)」もしくは一般チケットのどちらを希望するか明記してください。

 応募先は、promo@japancanadatoday.ca。締め切りは9月12日(金)午後5時。抽選の上、当選した方に直接連絡いたします。

 みなさまのご応募をお待ちしております。

(編集部)

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第44回バンクーバー国際映画祭「映画で見る世界中の文化」

VIFF今年のポスター。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
VIFF今年のポスター。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
記者会見の様子。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
記者会見の様子。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

 見たことのない世界の映画に触れて、自分の中で何かを感じる。そんな価値ある体験が意味ある変化を生み出すと、1982年に発足したThe Greater Vancouver International Film Festival Society。毎年バンクーバー国際映画祭の開催と、選りすぐった映画の上映をVIFF Centreで1年を通して提供している。

 2025年の今年も10月2日から12日まで、バンクーバー国際映画祭(VIFF)が開催される。今回は26本の世界プレミアを含む170本の長編映画と100本の短編映画(合計435回以上の上映)を、マクミラン・スペースセンター、グランビル・アイランドシアターやアリアンス・フランセーズを含む10カ所の映画館で上映。さらにシネマと音楽が合体するライブのショー、インサイダーが語る本音のトークイベントなどが、来加するトップアーチストや映画関係者によって上演される。

 オープニングはリチャード・リンクレーター監督による「Nouvelle Vague」。これはフランスのニューウェーブの始まりに関するコメディドラマで、レトロでフランスならではの楽しい画面の移り変わりが必見。クロージングはドイツのイド・フルク監督の「Köln 75」。1975年、16歳の音楽好き少女ベラ・ブランデスが偶然から当時最も売れたキース・ジャレットのケルン・コンサートを生み出す様子が描かれる。当日はピアニストChris Gestrinさんのピアノライブ付き。

 今回初の試みSpotlight on Koreaは、パク・チャヌク監督「No Other Choice」、ホン・サンス監督「その自然が君に何と言うの(What Does That Nature Say to You)」をはじめ、7本の韓国映画を一気に上映。新人監督(俳優はまだ未定)の舞台あいさつ付きで上映される。

 An Evening with Marc Maronでは、コメディアンでポッドキャストで有名なマーク・マロンの「Are We Good?」を上映後、彼との長いQ&Aが予定されている。カナダのマシュー・ランキン監督は今回ゲストとしてLeading Lightsセクションを担当。日本でも有名なアキ・カウリスマキ監督の映画をはじめ監督が厳選した映画数本が上映される。

 期待のプレミア上映はジム・ジャームッシュ監督の「Father Mother Sister Brother」や、パオロ・ソレンティーノ監督の「La Grazia」などに加えて、カンヌ国際映画祭でジャファル・パナヒ監督が最高賞に輝いた「シンプル・アクシデント(It Was Just an Accident)」、さらにヨアキム・トリアー監督の「Sentimental Value」、またベルギーのジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ兄弟監督の「Young Mothers」も見逃せない。カナダのブリティッシュ・コロンビア部門では日系カナダ人の吉田真由美監督をはじめ地元の監督の新作が続々と登場する。

 個性的なラインナップとなった日本映画も気になるところ。上映作は以下の通り:

主演の黒崎煌代。「見はらし世代」(団塚唯我監督)より。Photo by VIFF
主演の黒崎煌代。「見はらし世代」(団塚唯我監督)より。Photo by VIFF

「国宝」李相日監督
「ルノワール」早川千絵監督
「見はらし世代」団塚唯我監督
「西海楽園」鶴岡慧子監督
「あかし」吉田真由美監督(カナダ)
「レンタル・ファミリー」Hikari監督(言語:英語)

 VIFFエクゼクティブ・ディレクターのKyle Fostner氏は「この世界が緊張と不安定な財政に苦しむ中、VIFFが成長して開催できることは光栄です」と語り、VIFF Board ChairのAm Johal氏は「この映画祭は今年もスタッフチームとボランティアの情熱で築かれています」と述べた。さらにプログラム・ディレクターのCurtis Woloschuk氏は「映画祭は観客にとって芸術が創造される興奮や、純粋に文化を伝えようとする作り手の決意に触れられる良い機会です」と締めくくった。

VIFFエクゼクティブ・ディレクターのKyle Fostner氏(右)とプログラム・ディレクターのCurtis Woloschuk氏(左)Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
VIFFエクゼクティブ・ディレクターのKyle Fostner氏(右)とプログラム・ディレクターのCurtis Woloschuk氏(左)Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

 今年のArtist &Industryプログラムのテーマは“Create. Connect. Transform”(作る、繋ぐ、変革する)。多様文化によるコラボを通して、シネマという共有ビジョンがさらに進化して形成されていく。

 一般チケットは8月28日12pmから発売されている。大人1枚21ドル、6枚もしくは10枚のチケットパックも購入できる。VIFF+や19歳から25歳のユースメンバー割引もある。プログラムはviff.orgと来月発行されるパンフレットで詳細が確認できる。

バンクーバー国際映画祭

期間:2025年10月2日~12日
会場:バンクーバー市内10カ所
ウェブサイト:viff.org/
チケット:大人21ドル、シニア19ドル、学生・ユース16ドル、6枚チケットパック120ドル・10枚チケットパック180ド(チケットパック学生シニア料金あり)、その他詳しくはviff.org/ticket-infoを参照

(取材 Jenna Park)

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“Don’t Let’s Go to the Dogs Tonight” 植民地時代に生きる少女

写真: 2015 Sony Picftures Classics
写真: 2015 Sony Picftures Classics

 7歳の少女の視点から語られる戦時中の人種差別。Alexandra Fullerの同名伝記小説を基に、映画は1980年のRhodesia(現在のジンバブエ)の独立を舞台とする。それまでは白人が土地を所有し農場などを営んでいたが、選挙で政権交代となりアフリカ人との立場が逆転する。監督は俳優のEmbeth Davidtz、主演はLexi Venter。

 白人農場で育ったボボ(Lexi Venter)は、小さい時からアフリカ人は危険なテロリストだと教えられてきた。母親(Davidtz)は銃を持ちながら寝るし、父親(Rob Van Vuuren)は兵役で家を出ることが多い。家族は常に農場を奪われることを恐れながら生活していた。ボボは一人で馬やスクーターに乗って自由に行動し、農場で働くアフリカ人のサラ(Zikhona Bali) とジェイコブ(Fumani N Shilubana)を訪ねる日々を送っていた。彼女は当然のように自分がアフリカ人より上だと思っていたが、サラを慕い、サラもボボを娘のように可愛がってくれた。だがそんなある日…

 監督自身も子ども時代に南アフリカで差別を経験していた。主演のボボが子どもなりに状況を理解しようとする姿、特にLexi Venterの素晴らしい演技に注目したい。映画は、昨年トロント国際映画祭のガラで上映され、今月18日からFifth Avenue Cinemas で上映中。

(記事 Jenna Park)

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「人と違う幸せを望む道」On Swift Horses

左からリー(ポウルター)、ミュリエル(エドガー=ジョーンズ)、ジュリアス(エロルディ)。Courtesy of 2025 Sony Pictures Classics
左からリー(ポウルター)、ミュリエル(エドガー=ジョーンズ)、ジュリアス(エロルディ)。Courtesy of 2025 Sony Pictures Classics

 舞台は50年代のアメリカ。年頃の男女は普通に結婚して家を買い、家庭をもうけるのが当たり前だった時代。ミュリエル(デイジー・エドガー=ジョーンズ)はカンザスで親から受け継いだ家で婚約者のリー(ポールター)と住んでいる。ある日韓国での兵役を終えたリーの弟、ジュリアス(ジェイコブ・エロルディ)が訪ねてくる。「大好きな弟だけど、彼は僕たちとどこか違うんだ」とリーは忠告するが、ミュリエルとジュリアスはソウルメートのように仲良くなる。やがてカリフォルニアに住みたいというリーの願いでミュリエルはサンディエゴへ、ジュリアスは一人でラスベガスへと向かう。ストーリーはミュリエルとジュリアス、それぞれのギャンブルと同性愛など二人の共通点を並行しながら進む。

 監督はこれが長編映画2作目となるダニエル・ミナハンで、主演は過去に「プリシラ(2023)」でエルビス・プレスリーを演じたカリスマ性のあるジェイコブ・エロルディと、可憐なデイジー・エドガー=ジョーンズ。共演も素敵なキャストでウィル・ポールター、ディエゴ・カルヴァとサーシャ・カレ。カナダ人シネマトグラファーのルーク・モンペリエによる撮影テクニックも見逃せない。どちらかというとハリウッドの賞狙いでなく、内容もレアで濃い。昨年のトロント国際映画祭でプレミア上映した作品。

 目の前にある普通の幸せより自分の本質に忠実になりたい。だが人と違う道には新たな試練がある。主人公たちの行方を見守りながら、友達と一緒に最後のシーンについて語りたくなる映画。バンクーバー公開は4月25日から。

Coutesy of 2025 Sony Pictures Classics
Coutesy of 2025 Sony Pictures Classics

(記事 Jenna Park)

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The Friend「彼の残した大きな愛」

2025 Mongrel Media/ Star PR
2025 Mongrel Media/ Star PR

 作家で教師のアイリス(ナオミ・ワッツ)はニューヨークで心地良くシングルライフを楽しんでいた。だがある日突然、いつも一緒に過ごしていた親友兼メンターのウォルター(ビル・マーレイ)が亡くなり、彼の大きな犬(150パウンドのグレート・デーン)アポロを預かることになる。

 ニューヨーク市のアパート現状、職場での葛藤、家を荒らす犬、彼への悲しみや怒りなど新しい問題だらけ。だが自分と同じように悲しんでいる犬を見て、自分に素直になり彼との時間を新たな小説に変えていく。

 監督はスコット・マッギーとデビッド・シーゲルで、原作は作家のシークリット・ヌーネス。見終わった後にジーンとなる感動映画。

2025年4月4日よりThe Park Theatre にて上映
言語:英語
120 分

2025 Mongrel Media/ Star PR
2025 Mongrel Media/ Star PR

(記事 Jenna Park)

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The Penguin Lessons「愛いっぱいのペンギンに癒される映画」

Photos: Sony Pictures Classics, Mongrel Media, Star PR 2025
Photos: Sony Pictures Classics, Mongrel Media, Star PR 2025

 舞台は1976年のアルゼンチン。イギリス人で英語教師のトムは、ブエノスアイレスにある男子私立高校に赴任する。上品で楽な仕事を期待していたが、イタズラばかりの生徒やできないラグビーのコーチを押し付けられてうんざり。ある日同僚とウルグアイに出かけた彼は、オイルまみれで絶滅していたペンギンの群れに遭遇。一匹だけ生き残っていたペンギンを洗って翌朝海に戻そうとするが…

 要らないペンギンを何度も捨てようとするトム、離れたくないペンギン、連れて帰るように命令する警官、餌をあげたい生徒たち、心理相談をする同僚など、笑いいっぱいの反面、当時のアルゼンチンで起こっていた悲惨な歴史も背景にあり、バランスよく映画は進む。

 監督は『フル・モンティ』で有名なピーター・カッタネオで、主人公トムの性格が変わるまでを上手く表現している。主演のスティーヴ・クーガンは撮影前の数週間を二匹のペンギンと過ごした。抱っこが自然になりすっかり懐かれていたペンギンと離れるのが辛かったという。実話に基づいたコメディドラマで、ペンギンが高校のプールで泳ぐシーンは必見。

 昨年トロントでデビューしたこの映画は、春休み中3月28日から各地のシネプレックスで上映される。

Photos: Sony Pictures Classics, Mongrel Media, Star PR 2025
Photos: Sony Pictures Classics, Mongrel Media, Star PR 2025

(記事 Jenna Park)

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「The Return」夫婦で一緒に忘れたい過去

©2024 Bleecker Street/Mongrel Media/StarPR
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 アカデミー賞受賞作『イングリッシュ・ペイシェント』で共演したイギリス出身のレイフ・ファインズとフランス出身のジュリエット・ビノシュが、『The Full Monty』などで知られるイタリアのウベルト・パゾリーニ監督のドラマ映画『The Return』で再共演。今年のトロント国際映画祭で世界プレミアとして大きなスタンディングオベーションを受けた。

 『The Return』は、ホメーロスの『オデュッセイア』をリメイクしたもの。トロイ戦争に出征して帰って来ないオデュッセウス王(ファインズ)は、過去の家臣達から新しい王を選ぶように迫られている妻ペネロペ(ビノシュ)と、命を狙われている息子テーレマコス(チャーリー・プラマー)を救おうと自ら乞食となって王国に戻る。妻子を捨てた過去の自分と向き合い、欲に溺れた昔の家臣達を相手に命がけの戦いを繰り広げる。

 主人公のレイフ・ファインズは5カ月間のダイエットと運動で全裸のシーンにも挑戦。撮影はほとんどギリシャで行われ、美しい水面やサーファーが喜ぶような波のシーンなど、全て自然の光で撮影された。パゾリーニ監督の静かな皮肉やユーモアは映画ファンの期待を裏切らない。演技派俳優揃いで最後まで楽しめる作品。

 12月6日よりFifth Avenueやシネプレックスで公開。

(記事 Jenna Park)

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