前回の記事では、カナダで詐欺被害に遭った日本人留学生の体験談をまとめた。こうした被害は一部の人だけの問題ではなく、就労や住居探しなど、カナダで生活する中で誰もが直面する可能性がある。
在バンクーバー日本国総領事館とRCMP(連邦警察)は、留学生や在留者を狙った詐欺に注意を促している。両機関に詐欺被害の現状と対策について話を聞いた。
留学生を狙う詐欺の現状
RCMPによると、詐欺は来加を予定している留学生と、すでにカナダに滞在している留学生の双方に影響を及ぼしているという。留学を検討する段階から渡航後まで、さまざまな場面で詐欺に接触する可能性がある。
特に留学やビザ申請に関わる過程では移民サービス詐欺への注意が必要という。カナダ移民・難民・市民権省(IRCC)は、留学ビザ申請を支援すると称しLOA(入学許可証)要件を満たすための虚偽書類作成を持ちかける手口について注意を呼びかける。
また、カナダに滞在している間は他の在住者と同様の詐欺の手口にもさらされる可能性があると指摘する。
詐欺グループは電話やSMS、電子メール、QRコード、SNSなど複数の手段を使い、被害者に接触する。SNSでは、正規の企業や政府機関を装った広告や偽サイトが使われる場合もあるという。RCMPは、使われる媒体は変化しても、被害者を信用させて近づくという手口の基本は変わっていないと警鐘を鳴らす。
さらに、留学生が意図せず犯罪行為に利用される可能性にも言及する。荷物の運搬や銀行口座の開設などを依頼されマネーロンダリングに関与させられるケースなどもあるとして、注意の必要性を強調した。
確認されている主な詐欺の手口
バンクーバー総領事館は、詐欺の対象は留学生に限らないとした上で、手口が日々変化しているため、実際に被害に遭うまで詐欺だと気付かないケースも少なくないと指摘する。その上で、過去1年間に領事館に寄せられた相談を基に、いくつかの典型的な詐欺の手口を挙げた。
「誰でも簡単に稼げる」「軽作業で高収入」などをうたう広告は、いわゆる「タスク詐欺」と呼ばれる手口の可能性が高い。固定電話番号や正確な所在地が示されず、Gメールなどのフリーメールや携帯電話番号のみを連絡先としている場合は注意が必要としている。
他にも、住居探しに関連した賃貸契約詐欺も多い。内見前や賃貸契約前にデポジットや家賃の前払いを求められるケースがあり、簡単に支払いに応じないよう注意が必要としている。
記者も経験、就職に関する詐欺メールを受信
今年5月、アメリカIT大手メタ(Meta)の研究部門「Reality Labs」を名乗る採用に関するメールを受け取った。送信元のメールアドレスは「info@employlinkrealitylabs.recruitee.com」で、募集ポジションには希望していた職種が含まれていた。数カ月前に複数の求人に応募していたこともあり、見た目は正規の採用連絡と区別がつきにくい内容だった。

しかし大手企業にも関わらず短期間で採用が進む点に違和感を覚え、メールアドレスをインターネットで調べたところ、同じアドレスに関する詐欺被害の報告が多数見つかり、詐欺の可能性に気付いた。送信元のメールアドレスにも一見すると正規の採用管理サービスを装ったドメインが使われるなど、求人を巡る詐欺の手口は分かりにくくなっている。
被害を防ぐために求められる行動
詐欺被害を防ぐためには、どのような場合でも一人で判断せず、家族や友人、知り合いなど第三者に相談することが重要と総領事館は助言する。あわせて、個人情報を安易に渡さないこと、不審なリンクを安易にクリックしないことも基本的な対策として挙げている。
RCMPも、「If it’s too good to be true, it probably is.(うますぎる話には裏がある)」という古くからの言葉が示すように、条件が良すぎる話には注意が必要だとしている。応募していない懸賞への当選連絡などは、その一例だという。さらに、ソーシャルメディアではプライバシー設定を確認し、個人情報が過度に公開されていないか見直すことを勧めている。
被害に遭ってしまった後の行動
RCMPは、緊急事態が発生している場合は、警察や救急、消防に9-1-1で通報するよう呼びかけている。緊急性がない場合でも、被害があった地域を管轄する警察に相談することができ、地域によってはオンラインでの通報も可能としている。
また詐欺被害に遭った場合は、管轄の警察に加え、Canadian Anti-Fraud Centre(CAFC)への通報を推奨している。CAFCは捜査機関ではないが、全国から情報を集約し、法執行機関の捜査や被害防止に役立てている。被害に遭わなかった場合でも、詐欺の接触を受けた時点で通報することが可能だという。
被害の未然防止に向けた取り組みとして、リッチモンドRCMPでは、個人間取引に伴うトラブル防止を目的とした「セーフゾーン(Safe Zone)」を設けている。オンライン上で知り合った相手との売買や物品の受け渡しを警察施設周辺のより安全な環境で行う取り組みで、ソーシャルメディアなどを通じた取引などが対象となっている。
セーフゾーンは、リッチモンドRCMP分署(11411 No. 5 Road, Richmond, BC V7A 4E8)の正面入口付近に設けられており、フロントオフィスの開庁時間である午前7時から午後8時まで利用できる。
祝日はフロントオフィスが閉鎖されており、警察官は24時間体制で施設を使用しているものの、窓口職員は配置されていない。この時間帯は、分署前の屋外で受け渡しを行うことができ、周辺には防犯カメラが設置されている。警察官が立ち会う形ではないものの、警察施設の近くであることや防犯カメラの存在が犯罪抑止につながるとしている。
詐欺を目的とする人物は、警察署での受け渡しに応じない場合が多いため、取引場所として警察施設周辺を指定すること自体が一つの確認手段にもなるとしている。
被害報告はバンクーバー総領事館でも受け付けており、被害届提出方法の案内や今後の対応について助言を行っている。同種の被害が続く場合には、同館のホームページや領事メールを通じて注意喚起を行い、再発防止に役立てるとしている。
各種犯罪被害(詐欺、強盗・暴行、車上ねらい等)に関する注意喚起(在バンクーバー日本国総領事館)https://www.vancouver.ca.emb-japan.go.jp/itpr_ja/kakusyuhanzaihigai.html
Canadian Anti-Fraud Centre (CAFC)https://antifraudcentre-centreantifraude.ca/index-eng.htm
British Columbia RCMP (B.C. RCMP)https://rcmp.ca/en/bc
Immigration and citizenship fraud and scams (Government of Canada)https://www.canada.ca/en/immigration-refugees-citizenship/services/protect-fraud.html
(取材 田上麻里亜)
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