トランプ大統領がオンタリオ州の広告を非難、関税交渉中止へ

 アメリカのドナルド・トランプ大統領は10月23日夜遅く、カナダのオンタリオ州政府による反関税広告を非難し、カナダとの全ての関税交渉を打ち切ると発表した。

 この広告は、オンタリオ州ダグ・フォード州首相政権が制作したもので、アメリカ国内でアメリカ人視聴者を対象としている。故ロナルド・レーガン元大統領が1987年に行った「自由貿易に関するラジオ演説」の一部が使われており、反関税のメッセージを伝える内容となっている。すでにワシントンD.C.地域では放映され、大リーグのアメリカンリーグ優勝決定シリーズ第7戦でも確認されたという。

 トランプ大統領は23日、自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」で、この広告を「偽造で詐欺的だ」と非難した。大統領は、その数日前にこの広告を見ていたが、その時点では強く反応していなかったという。

 CBCニュース電子版は関係者の話として、トランプ大統領の貿易交渉打ち切りはカナダ政府にとって寝耳に水だったと伝えている。

 トランプ大統領は、10月7日のマーク・カーニー首相との会談後、閣僚2人にカナダとの鉄鋼・アルミ・エネルギー分野での合意をまとめるよう指示していた。カナダ・アメリカ貿易担当ドミニク・ルブラン大臣の報道官は、22日時点で交渉は「進展している」と話している。一部報道によると交渉が順調にいけば、アメリカのサンクスギビングごろまでにまとまる予定だったという。

 一連の事態にカーニー首相は24日、ASEAN出席のために出発する前に記者団に応じ「アメリカ側が話し合いを再開する準備ができたときに、カナダは貿易交渉を続ける用意がある」と述べた。

 この広告に関しては、レーガン大統領財団・研究所も声明で「レーガン大統領の演説内容を誤って伝えており、オンタリオ州政府は発言の使用や編集について許可を求めていないし、受けてもいない」とし、法的措置を検討していると発表している。これに対し、フォード州首相報道官は「広告では、レーガン大統領の公の演説の一部を編集せずそのまま使用しており、パブリックドメインとして使用可能だ」と述べ、法的に問題はないとの見解を示した。

 オンタリオ州は大リーグのワールドシリーズ第1、2戦を含めた26日まで広告を放映し、27日に一旦停止すると発表した。

 カーニー首相は、マレーシア・クアラルンプールで開催されたASEANと韓国で開催されるAPECに出席するが、トランプ大統領との会談は予定されていないという。

(記事 高城玲)

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