トランプ大統領デジタル課税に反発、貿易協議打ち切り宣言から一転協議再開へ

 目まぐるしく変わるカナダとアメリカとの関税交渉がまたしても二転三転している。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領は6月27日、カナダのデジタルサービス税(DST)導入に反発、全ての貿易協議を中止すると発表した。交渉再開は、この税の撤廃が条件だと主張していた。

 カナダ政府は27日の時点でDSTは予定通り実施されると強気の発言をしていたが、30日に一転、アメリカとの交渉を再開すると発表した。DST導入を見送ったとみられる。

 DSTは、Amazon、Google、Meta、UberなどアメリカのIT企業に対し、カナダ国内で得た収益に対して3%の税を課すというもので、6月30日からの施行が予定されていた。2022年までさかのぼって適用されるため、アメリカ企業は6月末までに約20億ドルを納税する必要があった。

 DSTは2021年にトルドー前政権によって成立した。DSTをめぐるアメリカとカナダの対立はトランプ政権以前からで、バイデン前政権下の駐カナダ大使も同税の施行はアメリカの報復を招くと警告していた。

 カナダとアメリカはこれまで、トランプ大統領が課したカナダからの輸入品に対する関税の撤廃をめぐって協議を続けてきた。トランプ大統領とマーク・カーニー首相は6月16日、アルバータ州でのG7サミット(先進7カ国首脳会議)中に会談し、30日以内に何らかの合意を目指すことで一致していた。

 トランプ大統領は「(カナダは)我々とのビジネスに依存している。そういう関係なら、もっと相手を尊重すべきだ」と述べた。これを受けて首相事務所は「カナダ政府は、カナダの労働者と企業の利益を守るため、引き続きアメリカとの複雑な交渉に取り組んでいく」との声明を発表した。

 しかし30日には、アメリカ政府はトランプ大統領とカーニー首相の電話会談で、カナダが「折れた」として大統領が「勝利」したと表現して交渉が再開されると発表。カーニー首相も週末にトランプ大統領と電話会談したことを報道陣に明らかにしたが、DSTを交渉の手段として利用したかについては詳細を語らなかった。

(記事 高城玲)

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