
グラッドストーン日本語学園の第54回卒業式が5月31日、バーナビー市の日系文化センター・博物館で行われた。小学科から高等科、基礎科の卒業生が、家族や関係者が見守る中、一人ひとり村上陽子学園長から卒業証書を受け取った。式典では、卒業生が思い出を語り、在校生がソーラン節、合唱などで送った。

毎週土曜日、3歳から通った日本語学園
「卒業生の言葉」では、小学科・中学科・高等科の卒業生全員が日本語との関わりや日々の努力を振り返った。小学科はことわざを用いた約10秒の短いスピーチ、中学科は約20秒で一番心に残っていることや制作課題などについて、高等科は日本語学校での思い出について1、2分ほどで語った。宿題や言葉ノート、言語の壁、学業とスポーツの両立、試験に合格した達成感など、それぞれに思いは尽きないようだった。
中学科を卒業した生徒は、最初は楽しく通っていたが学年が上がるにつれて学習内容は難しくなり、家庭での勉強とサッカーの両立にも苦労があったと話した。それでも「今まで通った自分を誇りに思う」と語り、「中学科卒業は節目にすぎない。これからも日本語と日本文化を学び続けたい」と力を込めた。
これが学園での最後の発表となる高等科の卒業生たちは、「14年間通い続けたことが自信になった」「祖父母と日本語で会話ができるようになった」「学んだ日本語が自分の一部になっている」など、それぞれが日本語と共に歩んできた時間を振り返った。
総領事の祝辞「日本語学習への熱意に敬意」
在バンクーバー日本国総領事館・髙橋良明総領事による祝辞が代読された。卒業生には、カナダの学校生活と並行して日本語学習に取り組んできた努力に心から敬意を、保護者や教職員にはその支えに感謝の意を表した。創立から54年を迎えた同学園には、学校の発展に尽力してきた村上学園長をはじめ全ての方に深く敬意を表するとし、さらなる発展を祈る言葉で締めくくった。
村上学園長「卒業は終わりでなく次の一歩」

村上陽子学園長は卒業生に「卒業はゴールではなく通過点。自分の力を信じて、あきらめずに続けてほしい」と語りかけ、「49年前の卒業生が会社でカナダと日本をつなぐ活動が評価され、また、皆さんの努力で学園は教育の部で小松和子生涯功労賞を共に受けることができました。皆さんもこれから、日本語を生かして日本とカナダの架け橋となってくれることを願っています」とはなむけの言葉を送った。
式後には「お稽古ごとと両立しながら通うのは簡単ではないと思います。欠席が続くと卒業できないので、他のクラスに出てもらったり、私自身が補習を担当することもたくさんありました」と振り返り、「先生たちと二人三脚でサポートしてきました。卒業する姿を見ると涙が出ます」と毎年来る別れに少し寂しそうだった。
それでも「私は校歌が大好きで、歌詞に込められた希望と夢を“あきらめない”というメッセージを授業でも繰り返し伝えています」と思いを込めて送り出した。
受け継がれる思い、次の卒業式へ
式の後には、クラスメートと談笑しながら写真を撮り合う生徒たちの姿があった。中学科の生徒たちは「あと2年しかないから、いっぱい勉強してがんばりたい」「友だちと笑って過ごしたい」と話した。卒業生の姿を見て「自分もあんなふうに袴を着て卒業式でスピーチをしたい」と憧れを口にする生徒もいて、思いは次の世代へと引き継がれていた。
式の最後には「蛍の光」が流れるなか、在校生が花を手に並び、卒業生一人ひとりに手渡した。卒業生は在校生や家族の拍手を受けながら順に退場し、温かな雰囲気の中で式は幕を閉じた。

(取材 田上麻里亜)
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