終活は新しい大人のマナー
叶多範子
12月のバンクーバーは、街中がクリスマスの雰囲気に包まれています。イルミネーションが美しく輝き、温かな空気が漂う中、多くの人々が贈り物を探しに街へと繰り出しています。私がこの原稿を書いている今、人気歌手のテイラー・スウィフトが3日連続でコンサートを開催しており、街はその熱気に満ちています。ラジオで彼女の音楽が流れる中、心躍る季節がやってきたことを実感しています。
「成功者たちの華やかな生き様」― 私たちはその言葉に憧れを抱きます。
起業して大成功を収めた人、世界中に邸宅を持つ人、子供たちを一流大学に送り出した人、若くしてFIRE(早期リタイアや経済的な独立)を達成した人たち。
SNSには華やかな日常が溢れ、講演会では「輝かしい成功体験」、時には「苦労話」や「失敗談」が語られます。しかし、その成功者たちの「死に様」はどうでしょうか?残念ながら、明るい話は少ないのが現実です。
* 資産を巡って家族間の確執が深まる
* 重要なデジタル資産のパスワードが不明で、遺族が途方に暮れる
* 生前整理が不十分で、残された家族が何年もかけて整理や処分に追われる
「うちにはたいした資産がないから、関係ないわ!」と笑い飛ばす人もいますが、日本では家庭裁判所に申し立てられた遺産分割調停の約75%が遺産総額5,000万円以下のケースです。
強調しますが、5,000万円以上ではなく5,000万円以下です。多くの方が予想される、何億もある莫大な遺産で争うというイメージとはかけ離れているため、驚かれる方もいるのではないでしょうか?
華やかな生前とは裏腹に、その最期は混乱と後悔に包まれていることが少なくありません。そして、それらの問題は身内の恥とされ、他人には言いたがらないため、多くの人は成功者とは思えない最期を迎えていることを知らないのです。
人生は「生き様」と「死に様」の両方で成り立っています。
経済的な成功や社会的地位も大切ですが、自分の死後に残される人々への思いやりも忘れてはいけません。あなたは今、デジタル遺品や財産目録をきちんと整理していますか?パスワードリストは誰かに共有していますか?大切な人にあなたの最期の希望や葬儀・供養について伝えていますか?介護が必要になった時のプランはありますか?
これらは決して「縁起でもない」ことではありません。むしろ、愛する家族への最後で最大の贈り物と言えるでしょう。受け取る側も、せっかくの愛情を「縁起の悪いことを言わないで!!」と拒否しないでください。
終活とは言うなれば、「究極の愛情表現」なのです。
華やかな生き様だけでなく、温かな余韻を残せる死に様まで考えられる人こそ、本当の意味で「素晴らしい人生」を全うできるのではないでしょうか。
あなたの人生の最終章は、今どれだけ周りの人を想い、配慮できるかにかかっているのです。
*このコラムは終活に関する一般的な知識や情報提供を目的とするものです。内容の正確さには努めておりますが、必要に応じてご自身で確認、または専門家へご相談ください。このコラムを元にして起きた不利益は免責とさせていただきます。
「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。
叶多範子(かなだ・のりこ)
グローバルライフデザイナー
2015年、友人の孤独死と相続問題をきっかけに、カナダのバンクーバーで遺言・相続専門の弁護士アシスタントとしてキャリアをスタート。2020年には終活アドバイザー資格を取得し、終活の視点を取り入れた知識と実務経験を活かしたノート術とコンサルティングを提供しています。
「終活せずに困った!」という後悔の声を「やってて良かった」「ありがとう」と笑顔で未来を彩ることをライフワークとしており、これまで300名以上に国境を越えた安心感を届けています。国内外問わず、すべての人が大切な未来をデザインできるようサポートしています。 家族はカナダ人の夫、2人の息子、愛猫1匹。日々の活動や最新情報は、メルマガ、ブログ、SNSで発信中。
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