「ダブルダッチをオリンピック種目に」若菜里咲さんの挑戦(前編)

ダブルダッチプレーヤー若菜里咲さん。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。Photo by Japan Canada Today
ダブルダッチプレーヤー若菜里咲さん。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。Photo by Japan Canada Today

 なわ跳びに夢中になった小学生の夏、毎朝早起きして学校に向かい、職員室から大縄を借りてきてクラスみんなで練習した。膝を使って大きく腕を振る息のあった2人、そのテンポにあわせ、縄が上がったタイミングで思い切って飛び込む。クラスメイトが引っかからないことを祈りながら、励ましあいながら、ドキドキして順番を待ったものだ。

 そんなワクワクや情熱を、ダブルダッチというスポーツが思い出させてくれた。ダブルダッチを体験できるイベント「Let’s Play Double Dutch」に7月23日に参加した。

日本、アメリカ、カナダで、ダブルダッチの普及活動

前後から下りてくるなわを跳びながら軽快なステップでダンスを披露する若菜さんに参加者たちの歓声があがった。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。撮影:池田茜音
前後から下りてくるなわを跳びながら軽快なステップでダンスを披露する若菜さんに参加者たちの歓声があがった。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。撮影:池田茜音

 今回のイベント「Let’s Play Double Dutch」を主催した若菜里咲さんは、ダブルダッチをオリンピック種目にすべくアメリカ・ロサンゼルスに渡り普及活動をしている。現在はバンクーバーに滞在してさまざまなダブルダッチイベントを企画。そんな若菜さんに詳しく話を聞いた。

-ダブルダッチをオリンピック種目にするための活動をされているということですが、まずダブルダッチとはどんなスポーツか教えていただけますか?

 はい、ダブルダッチというのは、簡単に言えば大縄跳び。小さい時にみなさんがやっていたような大縄跳びを2本のなわで跳ぶ、というような種目です。そのなかでも私はなわの中でダンスをしながら跳ぶフュージョンというのをやっています。

 そもそもダブルダッチはオランダの言葉で、オランダから言葉がきてニューヨークで発信されてという感じなんですけど、ニューヨークではもともと女の子のスポーツでした。はじまりは色々と説があるのですが、警察官が非行少女、非行少年を止めるために物干し用のロープを持ってきて遊ばせたのが始まりといわれています。

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 女の子のスポーツとしてニューヨークから始まったダブルダッチ。公式大会では女子が1人チームに参加していることが義務づけられているそう。

-なわを飛ぶだけでなく音楽に合わせてダンスをするというのは難しそうですね。

 そうですね。最近ではオリンピックに向けてルール化が進んでいて、例えば跳ぶ人だけじゃなくて、なわを回す人の技術だったり、回し方、「なわ技」と呼ばれる、どうやってなわを回して、どういうなわ技をするのかっていうのも審査基準の一つになっています。

-ダブルダッチの魅力は何だと思いますか?

 ダブルダッチをするには最低3人が必要で、相手を思いやらないと成り立たないスポーツなので、人を思いやれるところに魅力があります。あとは、なわの中で自分の得意が見つかるんです。なわを回すのが好きな人もいればアクロバットが好きな人、飛ぶのが好きな人、構成を考えるのが好きな人もいます。1つの競技のなかで得意なことを絶対1つ見つけられるというのがダブルダッチの魅力的な部分なのかなと思います。

-ダブルダッチを始められたきっかけは何だったんですか?

 大学に入学してサークル見学をしていたときに、友達にダブルダッチのサークルに入りたいと言われて。自分は興味はなかったですし、ダンスサークルに入ろうと思ってたんですけど。

-もともとダンスはされていたんですか?

 少ししていました。それを本格的にやりたいなと思っていて。ダブルダッチは幽霊部員じゃないけど、時々行って楽しめればいいか、くらいの気持ちでサークルに入ったんですけど、その年の夏の大会で同期のパフォーマンスを見て雷が落ちて。それから本格的に取り組むようになりました。

-ロサンゼルスに留学を決めたきっかけは何だったんでしょうか?

 もともと大学2年生の終わりくらいに1カ月留学していたんです。ロスに行きたいというよりもダンスがしたくて。ダンスはもともと大学でやりたいなって思っていたんですけど、ダブルダッチに行っちゃったので(笑)。だからダンスが足りない。それでロサンゼルスに1カ月ダンスしに行こうと思って、2年生の終わりごろにダンス留学に行きました。そのときすごく私の中で大きな変化があって、その期間が忘れられなくて。

 大学が終わったら1年間海外に行こうと思っていたんですけど、(新型)コロナ(ウイルス感染拡大)になってしまって。それで日本で活動を続けながらタイミングを見て行こうかなと考えていたら、ちょうど私がダブルダッチャーとして入っていたイベント会社の人が、「もうコロナも落ち着いてきたし、いまがタイミングじゃない?」と言ってくれて。会社では本当に良い方に出会えて、タイミングよく来させていただけました。

 イベントをサポートするという仕事をさせてもらう中でやっぱりプレイヤーというのが好きだなと思って、もう一歩、年齢が可能な限り挑戦したいなというのがあって。

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 ロサンゼルスに留学する前はストリートスポーツのイベントプロデュースをしていた若菜さん。その間にもダブルダッチの大会の審査員を務めたり、レッスンでダブルダッチを教えたりとダブルダッチに関わり続けてきた。

 後半では、若菜さんの海外での普及活動に込められた思いに迫る。

【今後のバンクーバーでのダブルダッチイベント】

8月17日
DD in Night Movie at Vancouver Art Gallery
パフォーマンスと体験会を予定

8月27日
Let’s Play Double Dutch(ダウンタウン・ロブソンスクエア)
誰でも参加できるダブルダッチイベント

9月2日
Richmond Night Market
ダブルダッチのパフォーマンス

9月3日
日系祭り
ダブルダッチのパフォーマンス

9月10日
日系ファーマーズマーケット
ダブルダッチのパフォーマンス

そのほか毎月最終週の日曜日には参加型のイベント “Let’s Play Double Dutch”も開催予定。会場はダウンタウン・ロブソンスクエア。

9月24日、10月29日、11月26日、12月10日

詳しくは若菜里咲さんのインスタグラムを。さまざまな情報を発信している。

𝐋𝐈𝐒𝐀 𝐖𝐀𝐊𝐀𝐍𝐀 (@lisa.wakana)

初めてダブルダッチに挑戦した参加者の矢野波琉さん。初めは、なわの中でジャンプするところから始め、若菜さんのアドバイスを受けながら2時間で床に手をついて足を高く上げる「ドンキー」という技をマスター。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。撮影:池田茜音
初めてダブルダッチに挑戦した参加者の矢野波琉さん。初めは、なわの中でジャンプするところから始め、若菜さんのアドバイスを受けながら2時間で床に手をついて足を高く上げる「ドンキー」という技をマスター。2023年7月23日、バンクーバー市ロブソンスクエア。撮影:池田茜音

(取材 池田茜音)

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