バンクーバー日本語学校 笑顔と涙の卒業式

卒業式のあと、緊張がとけ笑顔いっぱいでポーズをとる卒業生たち。高等科の卒業生は華やかな振袖や袴姿で参列した(写真右)。2023年6月17日、バンクーバー日本語学校。撮影:池田茜音
卒業式のあと、緊張がとけ笑顔いっぱいでポーズをとる卒業生たち。高等科の卒業生は華やかな振袖や袴姿で参列した(写真右)。2023年6月17日、バンクーバー日本語学校。撮影:池田茜音

 バンクーバー日本語学校(VJLS)で6月17日、2022年度の卒業式が行われた。今年度は小学科・中学科・高等科・基礎科F・ユースCから31人が卒業。終業式も同時に行われ、会場は在校生や卒業生、卒業生の家族と多くの人が集まった。はじめは緊張感のある雰囲気だったが、式が進むにつれて学校やクラスメートとの思い出を振り返り、思わず涙する卒業生の姿も見られた。

カナダと日本、そしてカナダと世界を結ぶ架け橋に

町田理事長は英語でのあいさつの中で「タカラモノ」という言葉をもちいて、学校で培ったことを忘れずにこれからも大切にしてほしいという思いを伝えた。2023年6月17日、バンクーバー日本語学校。撮影:池田茜音
町田理事長は英語でのあいさつの中で「タカラモノ」という言葉をもちいて、学校で培ったことを忘れずにこれからも大切にしてほしいという思いを伝えた。2023年6月17日、バンクーバー日本語学校。撮影:池田茜音

 町田友成理事長はあいさつで、「きょうのこの成果は、皆さんが日本語と日本文化を一生懸命学び、努力した証であり、皆さんのタカラモノです。グローバル化とテクノロジーによって世界が小さくなっていく今日、あなたのタカラモノは、今は気づかなくても、きっとあなたにとって有益な機会を与えてくれるでしょう」と卒業生に向けてお祝いの言葉を贈った。

終始和やかな表情で卒業生を見守った丸山総領事。卒業生のこれからの活躍を願いエールを贈る。2023年6月17日、バンクーバー日本語学校。撮影:池田茜音
終始和やかな表情で卒業生を見守った丸山総領事。卒業生のこれからの活躍を願いエールを贈る。2023年6月17日、バンクーバー日本語学校。撮影:池田茜音

 また、在バンクーバー日本国総領事館・丸山浩平総領事は、これから上級に進む小学科と中学科、今回で完全に卒業する高等科の卒業生へ「今どんなお気持ちでしょうか」ときょうが次のステップへの節目となる卒業生たちの今の思いを気遣い、「バンクーバー日本語学校で学ばれた日々は皆さんの将来の財産であり、皆さんがカナダと日本、そしてカナダと世界を結ぶ架け橋として、この学校で学ばれたことを大切にしながら、世界の舞台で活躍される日が来ることを心から願っています」と祝辞を贈った。

「幼いころから一緒に過ごしてきたみんなの強い絆があるからこそ、毎週この学校に通い続ける勇気を持てた」

藤井校長に卒業証書を手渡され、卒業生が深々と頭を下げ丁寧に受け取る。2023年6月17日、バンクーバー日本語学校。撮影:池田茜音
藤井校長に卒業証書を手渡され、卒業生が深々と頭を下げ丁寧に受け取る。2023年6月17日、バンクーバー日本語学校。撮影:池田茜音

 卒業の言葉では、小学科、中学科、高等科の卒業生がステージに上がり、学校生活での思い出を振り返りながら思い思いの言葉をのべた。小学科の卒業生は「羽根つきや餅つき、豆まきや運動会などカナダの学校ではできない日本の行事をたくさんできてうれしかった」と笑顔を見せ、百人一首大会やたこ焼きづくりなど、日本ならではの季節の行事を楽しんだ学校での様子がうかがえた。

 また、中学科の卒業生は「山田先生と放課後にスポーツの話をするのがとても楽しかった」と話し、他にもクラスメートや教員との思い出を振り返り、多くの卒業生が学校で出会った人たちにむけて感謝の気持ちを伝えた。

 最終学年を修了し、卒業後はそれぞれの進路に進んでいく高等科の卒業生。難しい宿題や毎週末の休みの日に学校に通うことに、学校に行きたくない日もあったと言うが、学校での出会いやクラスメートや教員との絆が深まっていくうちに学校が楽しみになっていったと話す。

 2歳のときからVJLSに通っていたというグレイ萌花さんは、高等科クラスは問題の多いクラスで有名だったと話し始めた。クラスで起こったさまざまな事件を上げ、会場の笑いを誘いながらも、「先生方にはご迷惑をおかけしました」と反省し、「この学校や、この学校を通じて築いたつながりは、一生涯私の心の特別な場所に残り続けると思います」と学校生活が特別なものであったことを涙ながらに語った。勢いのある元気なクラスだっただけに思い出も多く、生徒と教員、生徒同士の絆も深いのだろう。

 時折うんうんと頷きながら卒業生の言葉に深く聞き入っていた丸山総領事は、「式での卒業生たちの言葉や涙にぜんぶ込められていたと思います。色んな立場でいろんな目的やバックグラウンドで勉強している。そういう場所で実際に卒業式に出席できたことは本当にうれしく思います。胸がいっぱいになるような卒業式でした」と話し、これから次のステージに進んでいく卒業生の幸せと学校の発展を願った。

 多くの卒業生を送り出してきた藤井清子校長は、毎年卒業する生徒たちの性格によって卒業式の雰囲気も異なるのだと話した。個性豊かなバンクーバー日本語学校の絆の深さが垣間見える、温かな卒業式だった。 

卒業式の前におこなわれた終業式には在校生が出席し、翌日から始まる夏休みにワクワクした様子。大きな声で元気に校歌「桜と楓」を斉唱した。2023年6月17日、バンクーバー日本語学校。撮影:池田茜音
卒業式の前におこなわれた終業式には在校生が出席し、翌日から始まる夏休みにワクワクした様子。大きな声で元気に校歌「桜と楓」を斉唱した。2023年6月17日、バンクーバー日本語学校。撮影:池田茜音

(取材 池田茜音)

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