がんと闘うハリーさんを応援、チャリティーボクシングイベントも開催

 現在バンクーバーでステージ4のがんと闘っている留学生、米澤幸也(ハリー)さんを応援する動きが広がっている。2月11日にはチャリティーボクシングイベントがRaincity Boxingで開催される。

ハリーさんについて

 今年1月22日、日系文化センター・博物館で開かれたAsahi Baseball Association (バンクーバー朝日)の新年会で、ハリーさんに話を聞くことになった。闘病中だが、新年会に参加するという。「Asahi」の帽子をかぶって現れたハリーさんは笑顔が似合う青年だった。

 留学生としてバンクーバーに来て、ボランティアで少年たちに野球を教えていた。がんだと分かったのは昨年の秋。ステージ4だと教えてくれた。

 取材中に体調のことを聞くと、患っているがんの種類では10年後の生存率が25%なのだと言う。落ち着いた様子でそう話すが、まだ23歳。留学のために一人でバンクーバーに来て、がんという重い病気を患い、ずっと自分の中にいる敵と闘っている。

温かい人たちに囲まれて

ハリーさん(左)の病状を伝えるも「(朝日は)みんな家族」と励ますAsai Baseball Associationジョン・ウォン会長。2023年1月22日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito
ハリーさん(左)の病状を伝えるも「(朝日は)みんな家族」と励ますAsai Baseball Associationジョン・ウォン会長。2023年1月22日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito

 新年会の会場でふとあることに気づいた。ハリーさんの周りにいる人たちの温かさだ。

 朝日の副会長でコーチの福村十三男さんは彼の助けになればとファンドレイジングサイトを立ち上げ、募金活動を始めた。朝日に所属する選手の父であり、コーチの小川学さんは、兄のように明るく彼を支える。日本人でプロボクシングトレーナーの吉川英治さんは、彼を応援するためチャリティーイベントを企画している。朝日の選手たちは彼を慕って写真を撮りたいと駆け寄っていく。彼のことをよく知る選手のお母さんたちからはハリーさんの良いところをたくさん聞いた。

 周りの人がこんなにも彼を慕い、支え、助けようと動くのはなぜなのか。それは彼の人柄だった。誰に対してもまっすぐに誠実に向き合い、同じように人を支え、助けているからなのだと、話してそう思った。初対面で病状のことを聞いてくる同年代記者の私にさえ、汗をぬぐいながら、嫌な顔一つせず、すべての質問に丁寧に答えてくれた。そして聞きたかったことが話せただろうかと気遣ってくれた。自分の体調がひどくすぐれないときに、こんなに人を思いやれる人がいるだろうか。

「あきらめずに生き続ける」

インタビューで思いを語る米澤幸也(ハリー)さん。2023年1月22日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito
インタビューで思いを語る米澤幸也(ハリー)さん。2023年1月22日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito

 ハリーさんは旅をすることが好きで、バックパッカーとしてアジアを旅したり、車でカルガリーの山奥までドライブしたり、一人でケローナに住んでいる友だちに会いに行ったりしていたそうだ。

 昨年からは、ずっと続けてきた日本の野球の良さを伝えたいという思いから、バンクーバー朝日でボランティアコーチを始めた。礼儀や基礎・基本を大切にする日本と、楽しむことを大切にするカナダの野球。それぞれに歴史があって、良い野球文化を育んできた。色々な場所を旅している彼は、野球を通して異なる文化が交じりあうことのおもしろさをカナダの選手たちに伝えてきた。

 ハリーさんは「化学療法での治療は、生きたいけどつらい。死ぬのもこわい。だけど、周りのみんなが、まだできるお前なら帰ってこれると言ってくれるから、最後まで生きることをあきらめずに生き続けよう」と思ったのだと語ってくれた。スポーツマンシップとは、相手に対する思いやりのことだという。彼は野球を通してそれを学び、彼もまたそれを大切にしているのだと感じた。

 ハリーさんが、できるだけ早く元気になって、また野球や旅や写真を楽しむ姿が見たいと誰もが心から願っている。闘っている彼は一人ではない。皆が共に闘いたいと思っている。チームの一員として。ハリーさんはそう思わせてくれる。

チャリティーボクシングイベントを開催

 治療費などを支援するチャリティーボクシングイベントが、2月11日にリッチモンドで行われる。ハリーさんのために集まったボクサーたちもそれぞれの思いを胸に、戦う準備を整えている。吉川英治さんと2人の日本人ボクサー、全カナダチャンピオンRobert Couzensが出場する。

【日時】
2023年2月11日(土) 5:00pm開始
第1試合(5:15pm予定)の4ラウンドがチャリティ試合

第1試合 
Round 1 吉川英治 vs 徳永篤(プロボクサー東京出身)
Round 2 吉川英治 vs 高橋勇輔(キックボクサー)
Round 3 & 4 吉川英治 vs Robert Couzens (30) 全カナダ、ウェルター級チャンピオン(4回、国のチャンピオンになった有名選手)

他に公式戦、約10試合(男女両方)あり(チャリティ試合ではなく通常の公式戦)

【会場】
Raincity Boxing Studio(150‐5811 Cedarbridge Way, Richmond)

【チケット】
$35(全席自由席)
Eijifist@gmail.com にE-transferでの購入で全額寄付へ。支払い時に氏名や所属先などを記入すると、当日わかりやすいとのこと。
すでに日にちが迫っているため会場の入口でチケットを受け取って入場。
入口にEIJI Reception というカウンターがあり、そこで名前を告げるとチケットが受け取れる。

【チャリティについて】
同イベントはこれまで10年以上、フィリピンに支援をしているが、今回は米澤幸也さんへの支援(医療費生活費など)を追加。チケット代の寄付は、フィリピンと米澤さんへの支援となる。

【吉川英治さんより】
シニアや足腰が心配な人は「Nikkei」という場所を最前列と2番目の列に確保しているので、そこに座ってもらって大丈夫です。もちろん、その人の家族も同様です。

吉川英治(よしかわ・えいじ)
映画作家、著作家、映画学校講師。「TV TECHNOLOGY」編集長。テリー・フォックス日本大使。プロボクシングレトレーナー。Motivational Speaker 慈善活動家

【朝日のコーチ福村さんによるファンドレイジングサイト】
https://www.gofundme.com/f/coach-harry-yonezawa-beat-cancer?utm_campaign=p_cf+share-flow-1&utm_medium=copy_link&utm_source=customer

朝日の選手と吉川英治さん(右)の即席ボクシングマッチ!2023年1月22日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito
朝日の選手と吉川英治さん(右)の即席ボクシングマッチ!2023年1月22日、日系文化センター・博物館。Photo by ©Koichi Saito

(取材 池田茜音 / 写真・動画 斉藤光一)

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