第125回 「活舌法 & 桜楓会」

~グランマのひとりごと~

 澄子! 鼻濁音の練習、「が」じゃないの!「んがぁ」なのよ。「がぎぐげご」ではなくて、『んがぁ、んぎぃ、 グ、 んげぇ、 んご』。 

 もう一度、言って!

 次は「活舌法」

あいうえ えおあお

かきくけ けこかこ

さしすせ せそさそ

たちつて てとたと

なにぬね ねのなの

はひふへ へほはほ

まみむめ めもまも

やいゆえ えよやよ

 口をはっきり開けて言ってみて!

 従姉のマコは突然、頼みもしないのに、私の日本語の先生になったみたいだった。彼女は早稲田大学の学生で、父親が九州転勤になった為、学校から近い、池袋の我が家に住むことになった。一人姉妹が増えたようだった。グランマは、まだ高校生だったから、大学生の従姉から学ぶことは多かった。

 時間がある時、彼女は「アナウンス アカデミー」という学校へも行って、話し方の勉強もしていた。そこで習ったことを、本当に頼みもしないのに、高校生の私に教えてくれるのだ。多分、教えることで自分が勉強していたような気がする。

 そして、彼女は大学卒業と同時にTBSに入社、長年アナウンサーをしていた。彼女は大変スタイルもよく美しい女性で、テレビにもよく出ていた。

 でも、本人の言うところ「美人でないから、カメラ映りが悪く、いい番組に出してもらえない」とこぼしていた。

 あれから70年近くたった今でも、グランマは「活舌法」覚えているし、「んがぁ、んぎぃ、ぐぅ、んげぇ、んご」で鼻濁音の調整もできている。彼女のお陰である。

 今日、「朗読とバイオリン」の会に行った。「わぁ、驚いた。」朗読者の大和奈緒美さん、彼女の美しい日本語、聞いたとたん、思わずグランマは従姉のマコを思い出したのだ。何故って、大和奈緒美さんは元アナウンサーだったという。大和さんの日本語、本当にきれい。そして、その表現力の豊かさ、素晴らしかったぁ。

 朗読も素晴らしかったが、長井明さんのバイオリン! VSO時代が思い出されて、ああ、涙が黙って出てきた。300年も生きて来てた、あの小さな彼の「名バイオリン」。そこから出る音色。目を閉じてジーッと聞く、その音は会場中に広がり、自然に涙が出てくるのだ。

 この「朗読とバイオリン」の会は桜楓会主催だが、そのオーガナイズの良さ、司会の丸尾豪司さんの解説も、とても丁寧でわかりやすかった。彼自身が其の司会役を楽しんでいるのがよーくわかった。

 とにかく、ボランティアのスタッフ達のなんと優しく明るい応対、入り口から、会場の隅々まで、笑顔で互いに挨拶しあっている姿、会場中が正に「和気あいあい」って感じ、正に幸せなひと時だった。

 羽鳥総領事ご夫妻も前席でニコニコ座っていらした。

 グランマは桜楓会をよく知らない、ただの老人の会と思っていたけれど、なんだか、本当に才能のある人達の集まりみたいだ。そして、私の様な真老人でも楽しめる、こんな、素晴らしい演奏会を開いてくださった。

 有難う、桜楓会の皆さま。本当に、いい一日でした。

 許 澄子