第二波まっただ中でのコロナワクチン接種 ~体験者に聞く~

接種記録。どのワクチンを接種したのか記録するようになっている。Photo © The Vancouver Shinpo
接種記録。どのワクチンを接種したのか記録するようになっている。Photo © The Vancouver Shinpo

 12月にカナダでも始まった新型コロナウイルスのワクチン接種。米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発した新型コロナウイルスのワクチン接種を受けたという女性に話を聞いた。女性はブリティッシュ・コロンビア(BC)州メトロバンクーバーの高齢者介護施設に勤務している。

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 BC州政府の発表どおり、介護施設に勤務している人は優先で接種になったということですね。接種を受けるのに躊躇(ちゅうちょ)とかはありませんでしたか?
 前例にないスピードで開発・承認されたワクチンですので、正直なところ不安はありました。あまり受けたくなかったです。

 でも接種を受けたのですね。職場で強制的に受けるようにという指示はあったのでしょうか?
 特にそのような指示はありませんでした。でも、仕事をするには受ける必要があるだろうなと思ったので接種しました。インフルエンザの予防接種も毎年、受けなければいけませんから。
 
 12月にワクチンが承認されてBCで接種が始まると、まず12月16日に接種の招待メールが来ました。オンライン予約してバンクーバージェネラルホスピタル(VGH)へ行くようにとありました。受けたくないな、どうしよう…と悩んでいると、その2日後に「ワクチンが底をついた」と知らせが来ました。

 「えっ、もう?」と思っていると、勤務先のマネージャーからメールが届くようになりました。「フレイザーヘルスからこの日のこの時間に10人ワクチン接種のスポットをもらえた。希望者は連絡するように」といった感じです。

 職場からのメールは接種日の数日前に来て、翌日のスポットがもらえたという時もありました。まとまった数ではなくて、11人だったり、7人だったり……。「やった、この人数だけもらえた!」といったトーンのメールが突然送られてきます。次にいつ、何人受けることができるのかも分かりません。「受けられるときに受けたほうがよさそう」という気持ちになりました。

 ただし、個人でネットで予約をしてワクチン接種を受けることもできます。 予約しそこねたり、都合が合わない人のために、個人でオンライン予約するためのリンクもマネージャーから送られてきました。同僚の一人は自分で予約して、バンクーバー国際空港のそばで受けたと聞きました。

 職場を通しての接種については最初の数回は仕事のシフトが入っていたので、受けることはできなかったのですが、今回は休みの日だったので申し込みました。同僚も申し込んだのに、定員に達していたとかで受けることはできなかったそうです。早いもの勝ちでした。

 職場は何人ぐらいが働いているのでしょうか。接種は全てのスタッフが対象ですか?
 接種は看護師、介護スタッフ、ハウスキーパー、キッチンスタッフなど全てが対象です。何人ぐらいなのかしら。働いている人は200人以上いると思います。

 その200人をシステマティックにグループに分けて、順に接種していく…というわけではなかったのですね?
 インフルエンザの予防接種の場合は、日にちが決まっていて、その日に受けます。今回は、あらかじめスケジュールができているのではなくて、いきなり連絡がきました。

 職場で新型コロナウイルス感染者は出ていますか?
 10月に1人、そして12月に1人、スタッフが感染しました。幸い今のところは入居者の感染はありません。

 施設で感染者が発生しているかは、ワクチン接種スケジュールを左右しているのでしょうか。
 それは私には分からないですね。ワクチン接種に行ったとき、ほかの施設の人も来ていましたが、どこの人かは分かりませんでした。

コロナ禍、室内に入る人数も管理されていた。Photo © The Vancouver Shinpo
コロナ禍、室内に入る人数も管理されていた。
(人数管理用に渡されたカード)
Photo © The Vancouver Shinpo

 どこで接種を受けましたか?
 ロイヤルコロンビアンホスピタルです。仕事が休みの日だったので、病院に直接行こうかとも考えたのですが、職場からのシャトルバスに乗っていきました。エマージェンシーのところから入るのかと思っていたのですが、ワクチン接種は別の場所でした。

 ロイヤルコロンビアンの外来などではなく、新しくなった建物の入ってすぐの講堂のような部屋でした。

 入るときに、部屋に入る人数を制限しているようで、カードを渡されました。部屋の中は写真を撮ることはできませんでした。

 中には警備員やLPN(Licensed Practical Nurse:准看護師)らしき人たちがいました。注射を打った人はRN(Registered Nurse:看護師)のようでした。

 注射を打つRNは何人いましたか?
 注射を打つ机が15~16並んでいたのですが、ナースは3~4人しかいません。私は接種を受けるまで1時間ほど待ちました。

 ワクチン接種を受ける人たちは2メートル間隔で一列に並んで、ナースの準備ができたら呼ばれるので、順番で机のところに行きます。

 注射の前には問診表を渡されました。ペンを持っていない人用にペンも用意されていましたが、クリーンと未消毒に分かれていて、クリーンなペンを使って、書き終わったら未消毒のほうに入れます。感染防止対策を取っていました。

 問診表の質問は覚えていますか?
 しっかり覚えていないのですが、妊娠していないとか、体調とか…。接種前に熱を測って熱がないか確かめるとかはなかったと思います。接種の前にBCメディカルのカードと、職場のIDの2つを見せました。

 ワクチン接種はどんな感じでしたか? 筋肉注射ですよね。
 はい、筋肉注射なので痛いと言えば痛いです。

 私はバイアル(注射剤を入れる容器)が小さくて驚きました。何ミリ入っていたのかは分からないのですが、インフルエンザの注射よりずっと小さかったです。小さい、つまり量が少なかったので、その分、インフルエンザの予防接種ほど痛まなかったと感じました。あっという間に終わりました。

ワクチン接種後。局部が腫れるということはなかったという。Photo © The Vancouver Shinpo
ワクチン接種後。局部が腫れるということはなかったという。Photo © The Vancouver Shinpo

 ワクチン接種が終わってからも待機して、アレルギー反応が出ないかみるんですよね?
 はい、終わったら、矢印にそって移動して15分待機します。15分経ったら、矢印のとおりに出口から帰ります。

 実は同僚に呼ばれたので15分経っていなかったのですが建物の外に出てしまいました。話が終わって部屋に戻ろうとしたのですが、ドアがロックされていました。

 徹底した一方通行だったということですね。接種したあとの反応はどうでしたか?
 秋にインフルエンザの予防接種を受けたときは、受けて1時間ほどしたら接種部分が痒く重い感じになってきたのですが、コロナワクチンでは同様の反応がでてきたのは接種して6時間後ぐらいでした。

 夜寝る前にお風呂に入ったら、その重い感じはなくなりました。ただ、注射を打ったところが少し痛かったからでしょうか。その夜は眠りが浅かったです。

 痛かったですか?
 はい、当日は触られるのが怖いくらいでした。でも翌日はそんなことはなかったです。局所的な痛みのほかに全身的な反応は特にありませんでした。

 次回は21日後ということですよね?
 いえ、21日から28日の間に受けるようにということでした。追って職場のマネージャーから連絡が来るのかと思っていますが、1回目の接種をプライオリティにしていて、28日以上間があくという話もでています。副反応は2回目のほうが強いと聞いたことがあります。次も1回目のように軽いといいのですが。

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 女性の職場ではスタッフに続いて入居者のワクチン接種も1月15日ごろには開始するとの通知を受けた。2回目の接種についてはいつ、どこで受けるのか、詳細の連絡はインタビュー時点(1月5日)ではなかった。

 その後、1月8日にマネージャーから女性に宛てて、2回目の接種はいつになるか分からないので各自フレイザーヘルスのワクチン接種クリニックを予約するようにとのメールが届いた。クリニックはアボツフォードとサレーの2か所のみ。予約も翌日と翌々日の2日分のみだった。「遠い、困った」と思っていたら、9日には予約枠自体が消えてしまったという。

 「報道で問題になっているとおり、2回目の接種はいつになるのか全く分かりません。1回目を済ませた以上、2回目もちゃんとやってもらいたいのに困りました」

 女性は落ち着かない日々を過ごしている。


(取材 西川桂子)