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Naomi Mishima

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バンクーバーでも盛り上がるブルージェイズのWS進出、シュナイダー監督もイエサベージ投手もバンクーバーに所属

バンクーバー・カナディアンズの本拠地ナットベリー・スタジアムで、「Kawasaki」のTシャツを着たファン。2014年8月30日、バンクーバー市。写真 読者提供
バンクーバー・カナディアンズの本拠地ナットベリー・スタジアムで、「Kawasaki」のTシャツを着たファン。2014年8月30日、バンクーバー市。写真 読者提供
トロント・ブルージェイズの本拠地ロジャーズセンター。開幕間もない3月31日のホームゲーム前に多くのファンが列を作る。2025年3月31日、トロント市。撮影 日加トゥデイ
トロント・ブルージェイズの本拠地ロジャーズセンター。開幕間もない3月31日のホームゲーム前に多くのファンが列を作る。2025年3月31日、トロント市。撮影 日加トゥデイ

 トロント・ブルージェイズがアメリカンリーグ優勝決定シリーズ(ALCS)を制し、ワールドシリーズ(WS)に進出した。10月20日にトロントで行われた第7戦の劇的な逆転勝利に、カナダはまだどことなくザワザワしているが、24日からいよいよWSが始まる。

 相手はスーパースター軍団のロサンゼルス・ドジャーズ。大谷選手を筆頭に3人の日本人選手がいることから日本でも大注目のシリーズにトロントが脚光を浴びている。

 ブルージェイズは、モントリオール・エクスポズがアメリカ・ワシントンDCに移ってからカナダで唯一の大リーグチームということもあり、カナダのチームとして全国にファンがいる。

 特にバンクーバーはブルージェイズファンが多い。ALCSは隣州アメリカ・ワシントン州シアトルのマリナーズとの対戦となった。レギュラーシーズンでもマリナーズ戦にはバンクーバーから多くのブルージェイズファンが詰めかける。車で約3時間。ALCSでもかなり行っていたとスポーツ局が伝えていた。

 バンクーバーにブルージェイズファンが多い理由は、カナダ国内でも野球が盛んな街なこと、そして、ブルージェイズ傘下のマイナーリーグHigh-Aバンクーバー・カナディアンズの存在がある。

 WS第1戦で先発するトレイ・イエサベージ投手は今年5月20日にはバンクーバーで投げていた。4回先発しただけでAAに昇格し、8月中旬にはAAAに昇格。そして9月に大リーグでデビューしてWSに先発するという驚異的な22歳。バンクーバーはもちろん通り過ぎるだけだが、それでもバンクーバーでは若い成長していく選手たちを応援し、ブルージェイズを応援する。

 チームをここまで率いたジョン・シュナイダー監督もバンクーバーで2014年、15年シーズンに指揮を執っていた。シュナイダー監督自身、優勝を決めた20日の記者会見ではバンクーバーからも祝福の声が届いたことを喜んでいた。

 それ以外にも調整を兼ねてバンクーバーでプレーする選手も少なくなく、バンクーバーのファンは成長していったブルージェイたちを見守り続けているというわけだ。

ブルージェイズで最も人気だった日本人選手は?

 32年ぶりのWS進出で沸くトロント、そしてカナダ。相手は昨季のWS覇者ドジャーズ。超強力打線には大谷選手、投手では山本、佐々木両投手と日本人選手の活躍が目立つ。トロントには現在日本人選手はおらず、スタッフで昨季まで日本ハム・ファイターズにいた加藤豪将さんがいるのみ。

 だが、ブルージェイズにもこれまで日本人選手はもちろんいた。投手としては、大家投手や五十嵐投手が活躍した。しかし、最も人気だったのはなんといっても、川﨑宗則選手だ。元日本代表という野球センスと底抜けに明るいキャラクターでカナダの野球ファンを虜にした。当時のチームメートはスポーツネット(ブルージェイズ専門スポーツ局)に「彼の言っている言葉は一言も分からないが、彼の言っていることは理解できるんだ」と語っていた。

 カメラを向けられるとマイクを奪って、チームメートすら分からない英語をテレビに向かって話す。そんなちょっとおどけたキャラクターでも、試合では堅実なプレーで内野を守る。そのギャップも良かったのかもしれない。バンクーバー・カナディアンズを観戦に来る白人男性でさえ、「Kawasaki」のユニフォームを着ていた。応援している子どもにカメラを向けて「誰のファン?」と聞くと、「Kawasaki」と返ってきた。もちろんメディアも川﨑選手にマイクを向けた。

 ブルージェイズに来る前はマリナーズに所属していたが、それほど大人気ということは聞いたことがない。物おじしない明るいキャラがカナダの野球ファンに受け入れられたことは間違いない。野球という枠を超えてブルージェイズファンに愛された日本人選手だった。

 24日から始まるWS第1戦。日本ではぜひ川﨑さんにブルージェイズの魅力を語ってもらいたい。

バンクーバー・カナディアンズの本拠地ナットベリー・スタジアムで、「Kawasaki」のTシャツを着たファン。2014年8月30日、バンクーバー市。写真 読者提供
バンクーバー・カナディアンズの本拠地ナットベリー・スタジアムで、「Kawasaki」のTシャツを着たファン。2014年8月30日、バンクーバー市。写真 読者提供

(記事 編集部)

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「グッドニュース(英語題 Good News)」(ビョン・ソンヒョン監督)ハイジャック事件を題材にした政治的ブラックコメディ

「グッドニュース(Good News)」より。Courtesy of TIFF
「グッドニュース(Good News)」より。Courtesy of TIFF

 カナダでは、トロント国際映画祭とバンクーバー国際映画祭が盛況のうちに幕を閉じ、今年も多くの良作が上映されました。今回ご紹介する「グッドニュース(Good News)」(ビョン・ソンヒョン監督)は、トロント国際映画祭でプレミア上映され話題となった韓国作品で、1970年代に実際に起きた航空機ハイジャック事件をモチーフにした、社会派ブラックコメディです。

あらすじ:物語は、日本から北朝鮮への亡命を企てる過激派グループの青年たちが、民間航空機をハイジャックするところから始まります。事件を受け、韓国の中央情報部は正体不明のフィクサーを投入し、極秘作戦を計画。日韓両国の政府高官たちは世論操作と情報戦に奔走し、事件を都合よく作り替えようとします。報道統制、対外プロパガンダ、そして捜査の混乱などが次々と描かれ、事態は予想外の方向へと展開していきます。

「グッドニュース(Good News)」より。Courtesy of TIFF
「グッドニュース(Good News)」より。Courtesy of TIFF

 物語は序盤からテンポよく進み、登場人物たちの会話にはユーモアと皮肉が巧みに織り込まれ、シリアスなのに思わず笑ってしまうシーンが多くあります。情報のねじ曲げや責任の押し付け合い、政治的駆け引きなどが、リアルさと可笑しさの絶妙なバランスで描かれています。

 例えば、どう見ても混乱状態なのに、「これは我々の勝利だ」と言い張る官僚たちや、何かを言っているようで実は何も言っていない官僚の言葉の数々など、国家の威信、メディアの圧力、そして登場人物たちの都合や打算が入り乱れ、観ている側は笑っていいのか戸惑いながらも、つい吹き出すシーンがたくさん。

 脚本の良さはもちろんですが、作品の最大の魅力は俳優陣の力強い演技です。火消し専門の裏の男として登場し、ミステリアスなのにどこか可笑しさも感じさせるソル・ギョング、ハイジャック犯のリーダーを冷静かつ狂気を秘めて演じる笠松将、誠実な韓国の将校を演じるホン・ギョン、日本の運輸政務次官として登場し政治の駆け引きと滑稽さを演じた山田孝之など、それぞれ自分の役割に誠実に取り組む人物をリアルに、かつコメディとしての面白さを損なわずに演じていました。

 「グッドニュース」は、実話をベースにした重い題材をユーモアたっぷりに描き切った、韓国映画らしい社会派エンターテインメントです。笑いと皮肉を交えながら「国家」、「メディア」、そして「真実」のあり方に鋭く切り込んでいきます。笑った後に、「これ実話ベースなんだ」と考えさせられる、見ごたえのある作品でした。

 10月17日からNetflixで配信開始となりました。

TIFF会場で上映後に登壇した「Good News」の(左から)笠松将さん、ホン・ギョンさん、ソル・ギョングさん、ビョン・ソンヒョン監督。笠松将さんは流暢な韓国語で挨拶をしていました! 撮影 Lala
TIFF会場で上映後に登壇した「Good News」の(左から)笠松将さん、ホン・ギョンさん、ソル・ギョングさん、ビョン・ソンヒョン監督。笠松将さんは流暢な韓国語で挨拶をしていました! 撮影 Lala

Lalaのシネマワールド
映画に魅せられて

バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
旬の映画や話題のドラマだけでなく、さまざまな作品を紹介します。第1回からはこちら

Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
良いストーリーには世界を豊にるす力があると信じてます
みなさん一緒に映画観ませんか!?

33 ☆「ドッジボール」は素敵な教材!

日本語教師  矢野修三

 先日、雨上がりの歩道をのんびり歩いていたら、前方から車が近づいてきた。水たまりがあり、水しぶきが・・・。うまくよけきれず、少しズボンにかかってしまった。頭にきたが、歳を重ねるにつれ、反射神経の衰えも、ちょこっと感じてしまった。

 それはともかく、「よける」や「水たまり」、「水しぶき」などをテーマにしようと、この出来事をオンラインで授業している上級レベルの生徒に話した。案の定、彼はこの動詞「よける」は知らなかったが、「避難する」や「さける」はおぼろげに知っており、「さける」との違いは・・・?と、間髪を入れず、質問がきた。さすが上級者。

 確かに、「さける」と「よける」の違いは気になる。でも日本人は感覚的に何となく使い分けているが、説明するとなると、なかなか難しい。この漢字「避」は常用漢字で、音読みは「ヒ」で、「避難」などで馴染みがある。でも訓読みは「避ける」で「さける」だが、もう一つ、「よける」もあり日本人でもややこしい。「避ける」を「よける」と読める人は少ないと思う。

 それゆえ生徒には、「さける」や「よける」は漢字ではなく、ひらがな書きで教えている。そこで、彼にもこんな説明をした。「さける」は障害や嫌な事を前もって回避すること。例えば、「争いをさける」や「ラッシュアワーをさける」など。

 一方、「よける」は目の前にやってきたものを素早く、ひらりとかわす。例えば、「ボールをよける」や「水しぶきをよける」などで、反射神経が重要である。

 すると、彼曰く、英語にも同じような二つの動詞、「avoid」と「dodge」がありますよ。うーん、「avoid」はおぼろげに知っていたが、「dodge」は聞いたこともなく、どんな意味か尋ねると、彼はこんな例文を出してくれた。「dodge the splashes of water」。えー、これはまさしく、「水しぶきをよける」である。なるほど。

 ここで思わず小学校時代の懐かしきドッジボールを思い出した。そして、ハタと膝を打った。ひょっとして、ドッジボールの語源は「よける」の英語「dodge」からか? 今まで、語源など考えたこともなく、びっくり。

 それを彼に確認すると、もちろん「Dodge ball」はカナダでもElementary school(小学校)でやっており、当然、「dodge」 から出来た言葉、当たり前です。先生、なぜそんなに驚いているんですか?と不思議がられてしまった。 

 そこで、いろいろな日本人に語源を聞いてみた。ご存じの人はごく僅かで、多くの人は考えたこともないとのこと。中には「どっちのボール?」が語源では、と、のたまう人もおり、拙者のオヤジギャグを奪われてしまった。

 でも、確かに子どものころは「どっちボール」と言っていた記憶があり、子ども心に、そのように思っていたのかも。現在の正式とされる表記はカタカナの「ドッジボール」だが、なんとなく「どっちボール」のほうがいい感じ。

 このドッジボールは野球より少し遅く、明治時代の終わりごろに米国から伝わったとのこと。

 そして、ベースボールを「野球」と表記したように、このドッジボールも「避球」という漢字表記が作られたようだが、「ひきゅう」など聞いたこともなく、ほとんど知られておらず、またびっくり。

 さて、日本語教育では、基本的には英語など使わず、なるべく日本語で教えるのが良し、とされている。その通り。でもこの「さける」と「よける」は英語の「avoid」と「dodge」とほぼ同じなので、違いを教えるにはとても便利。生徒もすぐ納得。この歳になって初めて「ドッヂボール」が素敵な教材であることが分かり、日本語教師として、ハッピーな気分に。超遅すぎだが・・・。

 このように「避ける」は2つの読み方と役目があり、「さける」知恵と、「よける」反射能力。これをしっかり身につけておけば、これからの老後の旅路も、より安全に歩めるはず。

  水たまりは「さける」か「よける」か、どっちがふさわしいか? 懐かしきドッヂボールに思いを馳せながら、家族や友と語り合うのもまた楽しからずや。

「ことばの交差点」
日本語を楽しく深掘りする矢野修三さんのコラム。日常の何気ない言葉遣いをカナダから考察。日本語を学ぶ外国人の視点に日本語教師として感心しながら日本語を共に学びます。第1回からのコラムはこちら

矢野修三(やの・しゅうぞう)
1994年 バンクーバーに家族で移住(50歳)
YANO Academy(日本語学校)開校
2020年 教室を閉じる(26年間)
現在はオンライン講座を開講中(日本からも可)
・日本語教師養成講座(卒業生2900名)
・外から見る日本語講座(目からうろこの日本語)    
メール:yano94canada@gmail.com
ホームページ:https://yanoacademy.ca

日本語教師として37年、81歳になって
初めて、平仮名「あいうえお」の
素晴らしさ、奥深さを悟りましたよ。

愛情、いっぱいで、生まれ
あ  い     う

笑顔で、終える。
え   お

素晴らしきかな「あいうえお」

「国宝」と「あかし」VIFF2025観客賞を受賞

レッドカーペットに現れた「あかし」の吉田真由美監督。2025年10月2日、バンクーバー市。Photo provided by VIFF
レッドカーペットに現れた「あかし」の吉田真由美監督。2025年10月2日、バンクーバー市。Photo provided by VIFF

 カナダ・バンクーバー市で10月2日~12日まで開催されたバンクーバー国際映画祭(VIFF)は17日に観客賞を発表。日本映画では、「国宝」と「あかし」が選ばれた。

 第44回となる今年は、106,000人以上が参加し、約590回の上映、セッション、トークイベント、ライブショー他のイベントが行われたという。

 観客賞は、VIFFの長編映画11部門で観客から選ばれた各部門1作品を表彰。受賞作品は11日間のフェスティバル期間中に5万票以上の投票によって選ばれた。

 VIFFエグゼクティブ・ディレクターのカイル・フォストナー氏は声明で、「今年のVIFFは記念すべき年となりました。2025年はここ数年で最大規模のフェスティバルとなり、上映数や会場数が拡大し、観客数も増え、さらに新たな国際的パートナーシップも誕生しました」と振り返った。

 「国宝(Kokuho)」(李相日監督)はGalas & Special Presentations部門で、「あかし(Akashi)」(吉田真由美監督)はNorthern Lights部門で受賞した。全部門の受賞作品は以下の通り。

Galas & Special Presentations
Kokuho, dir. Sang-il Lee

「国宝(Kokuho)」より。Photo proided by VIFF
「国宝(Kokuho)」より。Photo proided by VIFF

Showcase
In the Room, dir. Brishkay Ahmed

Panorama
Meadowlarks, dir. Tasha Hubbard

Vanguard
Gazelle, dirs. Nadir Saribacak, Samy Pioneer (Selman)

Northern Lights
Akashi, dir. Mayumi Yoshida

「あかし」より。Photo by VIFF
「あかし」より。Photo by VIFF

Insights
Free Leonard Peltier, dirs. Jesse Short Bull, David France

Spectrum
Khartoum, dirs. Anas Saeed, Rawia Alhag, Ibrahim Snoopy, Timeea Mohamed Ahmed, Phil Cox

Portraits
The Essence of Eva, dirs. Alex Fegan, Malcolm Willis

Altered States
Fucktoys, dir. Annapurna Sriram

Spotlight on Korea: The New Breed
3670, dir. Park Joon Ho

Focus: Edges of Belonging – Tales of Grit and Grace from India
Bad Girl, dir. Varsha Bharath

(記事 編集部)

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モントリオールからのアルバム 9月

OTAKUTHON 2025:8月8日-10日、Palais des congrès de Montréal

Otakuthonで、人気作品『ダンダダン』のキャラクターに扮した来場者たちが多くの注目を集めた。完成度の高い衣装やメイクは、まるで原作からそのまま飛び出してきたかのよう。

『ダンダダン』は、幽霊を信じる女子高生と宇宙人を信じる男子高校生が、数々のオカルト現象に巻き込まれる青春バトル&ラブコメディ。Netflixなどの配信サービスでもランキング上位に入り、海外からも高い評価を得ている。今回のコスプレイヤーたちは、作品世界の細部まで忠実に再現し、会場の視線を一身に集めた。

写真:鎌田淳平
instagram:@junpeke1984

秋の彩♪

コスモス

秋明菊

ミニトマトご馳走さま!ですよ♪

L’Île-Perrot風景

島内の風景(L’Île-Perrotはモントリオール島の南西にある島)

写真:鎌田珠代

Île Perrot(イル’ペロー‐ペロー島)はモントリオール島の西に位置する小さな島です。人口約4万人、4つの行政区分Notre-Dame-de-l’Île-Perrot、Pincourt、Terrasse Vaudreuil、L’Île-Perrotで構成されています。Montérégie regionのVaudreuil-Soulanges Regional County Municipalityですが電話の局番はモントリオールと同じ514です。Galipeault BridgeでSainte-Anne-de-Bellevueから渡れます。この島にはケベック州唯一の稼働している風車があり、1969年にカナダの歴史的サイトに、1977年にはケベック州の歴史的サイトに指定され、Don-Quichotteに存在しています。最近は住宅の開発が進んでいますが、森が存在し、様々な楓やナナカマドなどの木が存在しています

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ジャンルを超えた芸術映画「粒子のダンス」岡博大監督インタビュー

レッドカーペットに登場した岡博大監督。2025年10月9日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
レッドカーペットに登場した岡博大監督。2025年10月9日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

 バンクーバー国際映画祭(VIFF)で隈研吾氏の建築プロジェクトを追ったドキュメンタリー映画「粒子のダンス(英語タイトル:particle dance)が上映された。映画祭に参加するためにバンクーバーを訪れた岡博大監督に話を聞いた。

映画作りのきっかけ

 不思議な映画を観た。一見世界的に有名な建築家の隈研吾氏の建築プロジェクトを追ったドキュメンタリー映画だが、どこか違う。まず主役の隈氏のインタビューがない。隈氏は主人公ではあるが、講演の様子や誰かを相手に会話をする時だけ話す。さらにドキュメンタリー映画独特のナレーションやサブタイトルがない。何かの情報を習うのではなく、軽快なジャズ音楽を聴きながらどんどん変わっていく映像をひたすら目で追う、まるで美術館を廻ったかのような感覚になった。「私は選考する時に1回見て、ふと考えて時間を置いてもう一度見たんです」とVIFFのアラン・フレーニー氏が映画館で語ったように、終わりがないからもう一度見たくなる映画だ。

「粒子のダンス(particle dance)」Photo proided by VIFF
「粒子のダンス(particle dance)」Photo proided by VIFF

 大学生の頃「何か社会の役に立ちたい」と思っていた岡監督は、ふと「隈研吾先生」の授業を受けてみた。当時40代前半で新進気鋭だった隈氏は、絵画などの美術や自分の作品を通して、建築の魅力を学生に伝えていた。「ひとつ一つの建築作品に彼自身のストーリーがあったんです」と熱心に話した。もともと建築が専門分野でなかった岡監督は東京新聞の記者になった。そして恩師である隈氏の記事を書いている時、さらに感銘を受け、今度は映画撮影するために記者の仕事を辞めたという。

 もう一つのきっかけはアメリカの有名な映画評論家で、1960年代に小津安二郎、黒澤明、溝口健二監督らの作品を積極的に海外で紹介したドナルド・リチーさんとの出会いだった。「リチーさんが、映画は詩のように誰でも作ってよいもの、全く素人の私でも映画を作る権利があるんだと言ってくれました」と直接励まされたエピソードを語った。その後映画を撮りながらの独学が始まった。気がついたら15年間、17カ国、100カ所以上の建築プロジェクトがカメラに収まっていた。

隈研吾の魅力

 「建築家には主に2つのタイプがあります」と監督は前置きして、「前者は自分のスタイルを築いて、作品を見たら名前が分かるぐらい流儀を貫く建築家。後者は隈研吾先生のように、その土地の素材や職人を使って工夫しながら作品を作り上げていくテーラーメイド的な建築家です」。

 さらに「先生の建築は映画でいえば小津安二郎監督。小津映画は家族愛など大切なテーマを押し付けるのではなく、普通の日常生活の中で軽やかに描いています。隈先生も軽みを持ちながら、その土地の歴史、文化、技術、素材などを考慮した建築作品を残されています。そして私もその彼の軽み、柔らかさを映像に残したいと思いました」と話す。

 「隈研吾先生は毎回クライエントと相談しながら、その土地の地形を勉強します。素材も最近は木材も増えましたが、石、プラスチック、ガラスなど土地の名産や技術を、与えられた予算内に組み込もうとします」と岡監督が建築プロジェクトの背景を説明した。

 東日本大震災後の南三陸町での復興プロジェクトでは、地元の人たちからの「真新しい建物で街の雰囲気が壊されたくない」という意見を受け止めながら、新しいアイデアで街を明るくして人々の楽しみが増えるように努めた。実際に住民が喜んで隈氏に感謝している様子も収められている。

 監督によるとこのテーラーメイド的な建築は撮影当初は少なかったが、隈氏以外でもこの15年間で増えてきたそうだ。隈氏独特の粒子的な細かなエレメントを集めて作るモダン建築法にも「今時代がやっと追いついてきた感じです」と語った。

VIFFでの上映後にQ&Aに答える岡監督(中央)。2025年10月9日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
VIFFでの上映後にQ&Aに答える岡監督(中央)。2025年10月9日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

 映画の中で1人のフランス人女性による「あなたのような世界的に有名な建築家がなぜこんな田舎で建築をするの?」という素朴な質問に隈氏は、「建物の大小でなく、この特別な場所に似合う作品を作りたかった」とさりげなく答えている。

 隈氏の建築映像を後世に残したいと映画作りに初挑戦した岡監督だが、やはり自主制作で学びながらの15年は形になるのか分からずとても大変だったそう。一時は隈氏から「ガウディの建築」(終わりが見えないでずっと続いていく)のようだ」と冗談も言われた。でも隈氏は映画の完成を温かく見守ってくれたという。

 今回の映画祭では「彼の建築を見に日本へ行きたいが、どこへ行ったら見れるの?」「ヨーロッパから来ました。V&A Dundeeの美術館はすっかり市民の憩いの場になっています」「続編は作りますか?私は隈建築の続きを見たいです」という観客からの個人的な意見が多かった。

 VIFFで2回の上映とも満席だった「粒子のダンス」。今後はVIFFアンコールや世界中で上映されることを期待したい。隈氏は現在70代。まだまだ新しいプロジェクトに挑戦するならば、この映画は岡監督にとって「永遠に続くプロジェクト」になるかもしれない。

妹でプロデューサーの岡桃子さん(左)と岡監督。2025年10月8日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
妹でプロデューサーの岡桃子さん(左)と岡監督。2025年10月8日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

(取材 Jenna Park)

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高丘好セーブ光るも、ホワイトキャップス最終戦飾れず西2位でプレーオフへ

混戦で好セーブが光るGK高丘。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
混戦で好セーブが光るGK高丘。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 序盤から波乱の幕開けだった。いきなりレッドカードを受けたホワイトキャップスは10人で善戦したが、一歩及ばず惜敗。西カンファレンス2位でプレーオフ進出となった。

10月18日(BCプレース:26,741)
バンクーバー・ホワイトキャップス 1-2 FCダラス

11分にラボルダ(#2)がレッドカードで退場処分、18分にコーナーから決められ0-1。それでも28分にはミュラー(#13)がPKを決め同点に。しかし後半早々の47分にゴールされ1-2。後半の猛攻も実らずホワイトキャップスは追加点が奪えなかった。

高丘、再三の好セーブもレギュラーシーズン最終戦は惜敗

 11分にキャップスDFラボルダがレッドカードで10人での試合を強いられたが、GK高丘の動きはシャープだった。先制されるまで立て続けの好セーブが光った。後半に入っても1失点したものの、スーパーセーブを連発した。

 試合後、「10人になってオープンな展開になりましたが、そういう場面にも常に準備してましたし、ある程度自分の仕事はできたと思います」と振り返った。試合内容については「もちろん勝ちたかったですけど、アクシデント的に退場者が出た中で、良い試合を10人でもある程度できたと思います」と前向きに捉えた。ただ2失点したことは「悔しい」とプレーオフに向けてしっかりと準備したいと語った。

 勝利か引き分けで西カンファレンス1位を確定する大事な試合。序盤から緊張感ある展開を壊したのは審判の判定だった。11分にラボルダが受けたのはイエローカード。しかしその後ビデオ判定でレッドカードとなり、ホワイトキャップスはいきなりディフェンダーを失うことに。ソレンセン監督は「(ラボルダは)ファールだとは思ったけどレッドは厳しすぎる」と語った。ただビデオ判定で「そう判断したのだろう」と冷静な対応を見せ、「あとでまた分析する」と語った。

 10人でもチームは「特に後半は攻撃面で力強いプレーができたと思う。全体的にエキサイティングな試合だった」と振り返った。

キャプテンを務めたミュラー(#13)、先発フル出場でチームをけん引する。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
キャプテンを務めたミュラー(#13)、先発フル出場でチームをけん引する。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 キャプテンを務めたミュラーは「審判の判定については触れたくないが」と前置きして、もう少しよく見てれば判定が違ったところはあったと思うが「判定は判定だ」と審判を責めることはなかった。チームとしてはいくつかミスがあり、それが勝てなかった要因だったと思うが「(負けはしたが)内容的には良い試合だったと思う、次に向けて調整していければいい」と前を向いた。

高丘、今季は13無失点試合でMLS最多、ホワイトキャップス歴代最多タイ

 この日でレギュラーシーズン全34試合を終え、高丘は個人成績では13クリーシートはMLSリーグ最多、GKとして今季18勝はリーグタイとなった。

 クリーンシート13はホワイトキャップス歴代ゴールキーパーではウーステッド選手の記録に並んだ。

直接対決の場面でスーパーセーブを見せた後、すぐに起き上がりネット前へ。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today
直接対決の場面でスーパーセーブを見せた後、すぐに起き上がりネット前へ。FCダラス戦。2025年10月18日、BCプレース。Photo by Saito Koichi/Japan Canada Today

 現在MLSでは今月24日まで、MLS Save of the Yearの投票を受け付けている。候補プレーの中に高丘も含まれている。候補プレーの動画はこちらから。投票についてはMLSの該当ページを参照。https://www.mlssoccer.com/news/vote-for-the-2025-mls-save-of-the-year

日本代表ブラジル戦での勝利に刺激

 日本代表が初めてブラジルに勝利した10月14日(日本時間)の試合をバンクーバーで観戦していたという。「ブラジル相手の0-2の難しい展開でしたけど、そこから逆転できる力を持っているっていうのはすばらしい」と称賛。

 日本代表については「ワールドカップ(2026)で優勝を目指しているグループなので、僕自身もそこに食い込めるようにやっていかないといけないと思っています」と語り、海の向こうでの代表の活躍に「良い刺激をもらっています」と笑顔を見せた。

 高丘は来週から始まるプレーオフについて、「また同じ相手とできるので、今日の反省も生かしつつ、しっかり修正して勝てるようにしたいと思います」とこの日の敗戦にも手ごたえを感じているようだった。

プレーオフはFCダラスと10月26日から

 18勝7敗9分、勝ち点63で西カンファレンス2位となったホワイトキャップスのプレーオフ1回戦は、この日対戦した同7位のFCダラスが相手。10月26日にBCプレースで4:30pmキックオフ、第2戦は11月1日にダラスで、第3戦までもつれ込むと11月7日にBCプレースで行われる。

 昨季の覇者で吉田麻也率いるLAギャラクシーは今季は西カンファレンス最下位に沈み、プレーオフ進出はならなかった。MLSプレーオフ全日程はMLSサイトを参照。

(取材 三島直美/写真 斉藤光一)

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「映画を作りたい人へ捧げる」バンクーバー国際映画祭セミナー

VIFFシアターでのセミナーの様子。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
VIFFシアターでのセミナーの様子。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
左からSung Moonさん、Rebecca Steeleさん、Seo Woo-Sikさんと通訳。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
左からSung Moonさん、Rebecca Steeleさん、Seo Woo-Sikさんと通訳。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

国境を越えた映画のコラボ

 バンクーバー国際映画祭では映画上映だけではなく、セミナーやコラボイベントも多く開催されている。10月7日には「Co-Producing Across the Pacific: Bridging Canadian and Korean Stories」と題するセミナーがVIFFシアターで開催された。

 これはSpotlightイベントの一環で、太平洋の国境を越えて結ぼうとする新しい試み。第1回のセミナーには映画をこれから作りたい人や映画関係者など多くが参加した。

映画を作る基本

 映画を作るためにはまず観客を知らなければならない。今観客は何を求めているのか、作り手はまず彼らの声に耳を傾ける。歴史物では事実の背景をリサーチして忠実にストーリーを伝える。良い人、悪い人などキャラクターにも焦点を当てる。作る、繋ぐ、改革するなど映画作りの基本を学ぶことが大切。そして何よりも後世に残すことを考える。何も残せなければ映画の未来はない、というぐらい自分の情熱を伝え残すのが大切だ。

 オープニングからいきなりそんな助言的な発言が飛び出したセミナー。この日のゲストは韓国からCEOで「Okja」などのプロデューサーSeo Woo-Sikさんと、Jeonju映画祭のプログラマーSung Moonさん、そしてカナダからは国際映画製作をしているRebecca Steeleさんの3人がスピーカーとして参加した。

 「韓国映画にはアメリカ・ニューヨークみたいな大きな予算はないし、ハリウッド的な1人の強いヒーローを作るのも容易ではない。韓国の男優においては80%がデートしたいタイプで、夫風でなくロマンチックな男性が求められています」とSeoさんが話すと会場が爆笑した。

 「韓国政府はこれまで30年以上映画を推薦していて、公私に関わらず外国からの映画製作に協力的です。税額も映画の大きさを考慮してくれるし、少ない予算のために値引き交渉もできます」とSungさんが話すと、「まず自分が何を作りたいか、何を提供できるかをクリアにすること。ただ資金が欲しいというだけはでなく、相手側に与えるものも必要。コラボはギブ&テイクを踏まえて交渉する」とSeoさん。「例えばこの俳優と一緒に写真が撮れるという利点はグラントやファンディングに使える」と笑った。さらに「自分のストーリーのアイデアと、映画祭のこんな映画を探しているがマッチすれば、もっとファンディングが出る」とも話した。 

国際コラボについて

 「最近は映画祭でもアジアとヨーロッパなど国際コラボの作品が増えました」とSungさん。Seoさんは「コラボでは各国の法律や税金についてプロデューサー同士がまず話し合う」と話す。「例えば、ある監督は大きな機材を注文して全く必要なかったにも関わらず、50%の予約料が取られて予算に響いたこともあります」と説明した。カナダのSteeleさんも「マリファナが認められているカナダでは、吸わないと仕事ができないスタッフが数人いて、彼らはロケ地からすぐ帰国しなければなりませんでした」とつけ加えて、「システムやカルチャーの違いは事前に知っておかなければならない事項です」と忠告した。

 また、韓国では映画の予算・ロケーションやスタッフなどのコンタクトリストが用意されているので外国人の監督でも予算の見積もりはしやすいが、美しい景色が撮れるカナダでは州ごとに税金や法律が違うし、各プロデューサーの報酬も違う、「どうやって税金の返金が受けられるのかなど、誰に聞いたらいいのか全く分からなかった」など、Seoさんはこれまでの国が違うからこその苦労話も披露した。

 観客から「韓国でゲリラ撮影(撮影許可なし)でも警察に捕まらないか」という質問には、「そうすると上映させてもらえなくなるかも」と笑って、「予算が少ないインディーズ映画だからディスカウントをください」と積極的に政府に頼んだ方がいいと回答。ちなみにSeoさんのようなプロデューサーはいつも次のコラボ作品を探しているので、ぜひ映画の大小に関わらず積極的にプロジェクトの声を上げてほしいとのことだった。

VIFFシアターでのセミナーの様子。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
VIFFシアターでのセミナーの様子。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

(取材 Jenna Park)

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毎月、「笑いヨガ」を行っています。自宅にいながら参加できる、オンラインでのセッションです。 初めての方も大歓迎。楽しく一緒に笑いましょう!

日時:2025年11月20日(木)午後8時〜午後9時
会場:Zoom
参加費:初回無料、2回目からドネーション(e-Transfer、PayPalまたは小切手にて)

申し込み締め切り:2025年11月18日(火)
申し込みリンク: https://forms.gle/ScSN2tx7P12Me6ZGA

*お申し込みいただいた方には、追って参加方法をご案内いたします。

お問い合わせ先:orangecafevancouver@gmail.com
主催:日本語認知症サポート協会(Japanese Dementia Support Association)

おれんじカフェ de 看取りーと「あなたならどうする? 〜最期の選択、尊厳死〜」

皆さんは、ご自分の「最期」について考えたことがありますか?

もし、病気が治る見込みがなく、死期が迫ってきたとき—延命治療を受けず、自分の意思で人生の幕を閉じるという選択。それが、**尊厳死(MAID:Medical Assistance in Dying)**です。

カナダではこの尊厳死が合法化されており、「医療によって生かされる」のではなく、「自分で最期を選ぶ」ことができる選択肢のひとつとなっています。

今年の 「おれんじカフェ de 看取りーと」 では、この尊厳死をテーマに、高山宙丸さんのパフォーマンスをきっかけに、やさしく、ゆる〜く、皆さんの考えを分かち合いながら、「自分の最期」についてご一緒に考えてみませんか?

どうぞ、お気軽にご参加ください。

日本語認知症サポート協会

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人生には終わりがあります。その時、自分はどうありたいですか?

今年の「おれんじカフェ de 看取りーと」では、ただ「死」を待つのではなく、自分の意思を大切にする選択肢のひとつ、「尊厳死」を取り上げます。

自分らしい最期について、一緒に考えてみましょう。

特別ゲスト:高山宙丸
プロフィール:詩人、ビートメーカー(モジュラーシンセ)。法政大学哲学科卒。2007年より4年半、世界を放浪。無印良品、バンクーバー日本語学校、日系プレースなどに依頼を受けて詩や動画作品を提供。「Labyrinth of Messages」など、パブリックアートイベントを企画・主催している。

開催日時: 11月2日(日) 午後3時から午後5時
会場: Zoom

参加費:$20
チケット購入リンク:https://JDSA-Mitori.eventbrite.ca

(クレジットカードでのお支払い) 
 他のお支払い方法 (E-Transfer、小切手)をご希望の方は、下記のお申し込みリンクからお申し込みください。

参加申込リンクhttps://forms.gle/dMaWqsbpB7VqxFBP6
申込締切:10月30日(木)

連絡先:orangecafevancouver@gmail.com

主催:日本語認知症サポート協会
後援:一般社団法人日本看取り士会
メディアスポンサー:ふれいざー、日加トゥデイ、Life Vancouver

ある家族の肖像~被爆三世代の証言~

上松道夫監督作品 58分Blu-ray上映

【あらすじ】

2023年5月、ある家族三世代が神戸から旅に出た。目的地は祖父の被爆地・広島
78年前の薄れゆく“記憶”を取り戻すために…

凄惨な体験をした地で、果たして祖父・鈴木照二は何を思い出し、何を語るのか?
そして被爆二世である母・カオル、三世である娘・万祐子は、何を感じるのか?
カメラの前で、被爆三世代がそれぞれの思いを紡いだ…

祖父・鈴木照二さん(取材時95歳 被爆一世)

  昭和20年8月、旧制広島高等学校1年在学時、勤労動員先の寮内で、原爆に遭遇。大きなけがはなかったものの、翌日から1週間、帰らぬ学友の姿を求めて爆心地付近を捜索。京橋川の河畔で凄絶な地獄絵を見た。長年、体内に悪性腫瘍をかかえており、孫にも被爆の影響が出たのではないかと案じている…

母・鈴木カオルさん (取材時64歳 被爆二世)

 高校生の時、心臓に異常が発見され体調不良の日々を過ごす。 結婚し一女を出産。その後も甲状腺の機能低下や、原因不明の症状に悩まされている。愛娘に甲状腺ガンが発見され、ショックを受ける。福島の原発事故で避難を余儀なくされた子どもたちを、サマーキャンプに招待するボランティアに参加したことから、平和活動を推進することを決意。 ピアニスト・金谷康佑とともに平和のイベントを赤字覚悟で主宰している。

一人娘・万祐子さん (取材時26歳 被爆三世)                 

 たった一人の孫娘で、祖父から可愛がられた。 大学で軽音学部に所属し、ギターとヴォーカルを担当。卒業ライブを控えた四年次の7月、検査で甲状腺ガンが発見された。 医師から「甲状腺の全摘手術で声帯を傷つけるかもしれない。手術の日までに一生分の歌を歌っておくように」と言われた。4カ月後の手術当日、喉を広く切開しリンパも切除する大手術に臨んだ。果たして手術は成功し、再び歌うことができるようになるのか…

朗読・斉藤とも子(女優)

 2023年4月22日、広島のライブ・ジュークで行われた女優・斉藤とも子の朗読と、ジャズピアニスト・金谷康佑のコラボレーションをノーカット収録。爆心地近くで被爆し、小頭症児を出産したある被爆者の原爆症認定裁判での“陳述”を、斉藤とも子が渾身の朗読。恐ろしい原爆の実相と被爆者が背負わされた過酷な運命に胸を震わされる。

音楽・金谷康佑

 ジャズピアニスト・作曲家。兵庫県出身、立命館大学卒業。関西を中心に活動。金谷康佑のオリジナル・アルバム『LYRICISM』から、「気だるい午后のワルツ」「邂逅」「私のこの人生」「家族の肖像~セピア色の寫眞~」など…澄んだピアノ・ソロが、ドキュメンタリー全編を彩る。2023年から、女優・斉藤とも子の朗読と共に「地球・平和、そして未来へ」と題したライブ活動を各地で行なっている。鈴木カオルと中学生時代の同級生。

撮影・編集・監督 上松道夫

 1948年生まれ。1972年、テレビ朝日入社。数々の報道番組を制作。「報道ステーション」初代エグゼクティブプロデューサー。テレビ朝日退職後、フリーランスとしてドキュメンタリー制作を継続。2018年、テレメンタリー『追跡・原爆影響報告書』が、アジア・テレビジョン賞最優秀ドキュメンタリー番組にノミネート。2021年『ラストメッセージ“不死身の特攻兵”佐々木友次伍長』発表。映画雑誌「キネマ旬報」2024年ベストテンの文化映画部門で、奥村賢選考委員より1位に選出される。

トランプ関税懸念で「日本のような信頼できる貿易相手国が必要」 ランツPEI州首相インタビュー

インタビューに応じるカナダ・プリンスエドワード島州のロブ・ランツ州首相(大阪市で大塚圭一郎撮影)
インタビューに応じるカナダ・プリンスエドワード島州のロブ・ランツ州首相(大阪市で大塚圭一郎撮影)

 小説「赤毛のアン」の舞台として知られるカナダ東部プリンスエドワード島(PEI)州のロブ・ランツ州首相が2025年9月20日、大阪市で日加トゥデイの英語での単独インタビューに応じた。PEI州の魚介類や農産物の多くはアメリカ(米国)に輸出されているが、輸入品への関税を引き上げているドナルド・トランプ米大統領の復帰で「貿易相手国としての信頼性が低下している」と指摘。「日本のような信頼できる貿易相手国が必要だ」強調し、日本への輸出拡大に意欲を示した。

(共同通信社経済部次長・日加トゥデイ連載コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」執筆者・大塚 圭一郎)

▽「より多様な外国市場の開拓が必要」

 ―2025年大阪・関西万博のカナダパビリオン(カナダ館)でPEIの魚介類と農産品を知ってもらうイベントを9月20日に開催した目的を教えてください。

 「日本の食の選択肢を広げるのに役立つPEIの食品を、より効果的に発信する必要があると考えたためです。PEIは新鮮で自然、清潔で安全、持続可能な食品を提供している『食の楽園』です。これらは全て、日本の消費者が重視している品質と価値そのものです。

プリンスエドワード島の沖合で捕れた雌のロブスター。重量は844グラムあった(大阪市で大塚圭一郎撮影)
プリンスエドワード島の沖合で捕れた雌のロブスター。重量は844グラムあった(大阪市で大塚圭一郎撮影)

 もちろん来日の大きな目的は日本の皆様にPEIの商品を売り込みたいからですが、同時に日本からの輸入も拡大し、友好関係も深めたいとも思っています。良好な関係は双方向で成り立つものであり、おそらく日本から購入できるものもたくさんあります。貿易に不確実性がまん延している今、私たちが求めているのはまさにそれです」

 ―PEIが輸出先を広げようとしている不確実性とは、カナダにとって最大の貿易相手国である米国の大統領にドナルド・トランプ氏が復帰したことを指すという理解でいいですか。

 「はい。米国に近い私たちにとって長年重要な貿易相手国でしたが、トランプ氏が大統領に復帰して信頼性が低下し、予測不可能になっています。このことを踏まえると、より多様な外国市場を開拓することが必要だと承知しています。トランプ政権下ではルールがいつでも変わる可能性があり、より強靭な貿易基盤を構築するためには他の相手国を探す必要があります。それには日本のような信頼できるパートナーが必要なのです」

 ―類似の事例として私がPEI州関係者から聞いたのは「2010年代には輸出先および旅行者拡大で中国を重視していたものの、カナダと中国の関係悪化を受けて急速に冷え込み、中国に偏重することはリスクが大きい」という話でした。

 「そうです。かつてPEIからは年間約4千億カナダドル相当の生ロブスターを中国に輸出していましたが、中国政府がカナダ産の魚介類に100%の関税を課したために門戸が閉ざされてしまいました」

 ―カナダは米国、メキシコとの間で自由貿易協定(FTA)のアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を結んでいますが、発効6年後となる2026年7月1日までに実施する共同見直しに向けてトランプ氏は大幅な変更を辞さない姿勢を示していると報道されています。

 「USMCAは現在も有効で、PEIは実は非常に恵まれています。なぜなら、PEIから米国、メキシコへのほぼ全ての輸出品がUSMCAのおかげで現時点では関税が免除されているからです。一方でカナダには、トランプ政権が自動車や鉄鋼・アルミニウム、銅に対する輸入関税を引き上げた影響をより強く受けている州もあります。これらは他の州では非常に大きな産業になっているため、カナダ全体に大きな影響を与えています。このようにカナダ全体ではトランプ関税の影響を受けており、間接的な影響がPEIにも波及しています。ただ、PEIの現状はまずまずです」

▽PEIへの旅行促進アピールの「絶好の機会」

 ―日本には特にどのような品目の輸出を拡大したいですか。

 「あらゆる食品をもっと多く輸出したいのですが、特にブルーベリーは大きなチャンスがあると考えています。なぜならば日本向けのブルーベリーの流通ルートはまだ確立されていないものの、PEIは自然のままの素晴らしいブルーベリーを豊富に栽培しており、日本の消費者がその存在を知れば輸出を拡大できると考えているからです。一方、日本で既に多少売れているロブスターはもちろん、ムール貝やかきなどの幅広い魚介類もそろっています」

プリンスエドワード島産のブルーベリー(大阪市で大塚圭一郎撮影)
プリンスエドワード島産のブルーベリー(大阪市で大塚圭一郎撮影)

 ―私はPEIを2017年に訪れてロブスターと生ガキ、ムール貝の素晴らしさに感激しました。今回のイベントでは牛肉のバラ肉のステーキを試食し、PEIの牛肉の高品質ぶりにも驚かされました。

 「牧草で育てている自然飼育の素晴らしい品質のPEI産牛肉は、市場を順調に広げています。家族経営の小規模農場は牛を牧草地で放牧し、自然に生えた草を食べて育っています。このようなあらゆる品目で日本との関係を強化できると確信していますし、これこそが私たちが今回来日した使命です」

プリンスエドワード島の沖合で養殖したカキ(大阪市で大塚圭一郎撮影)
プリンスエドワード島の沖合で養殖したカキ(大阪市で大塚圭一郎撮影)

 ―PEIは2024年の旅行者数が年間過去最高となる約170万人でしたが、25年の旅行者数はどのように推移していますか。

 「ご存知の通り、PEIの主要産業の一つは観光業です。(トランプ関税への反発などで)米国への旅行を控えているカナダ人がPEIを大勢訪れたため、2025年夏は非常に好調でした。レストランとホテル、観光名所、公園のいずれにも大勢の旅行者が訪れ、PEI州の経済は非常に好調です」

 ―一方で、『赤毛のアン』が高い人気を誇る日本からの旅行者数はかつてより大きく減りました。

赤土が美しいプリンスエドワード島の海岸(大塚圭一郎撮影)
赤土が美しいプリンスエドワード島の海岸(大塚圭一郎撮影)

 「確かに私が若かった頃の1980年代後半から90年代にかけてはPEIで多くの日本人旅行者に出会い、今でも来ているものの昔ほど多くはありません。ですから、今回の訪日はPEIへの旅行を促進するためにアピールする絶好の機会でもあると思います。

 他方で日本が今、外国人旅行者数が非常に好調だと承知しています。大阪・関西万博の開催が追い風になっているだけではなく、非常に安全で美しい国、親切な国民性、おいしい料理が相まって訪日旅行の人気が急速に高まっています。今回は、ずっと日本に来たがっていた妻も帯同しました」

 ―日本からPEIへの旅行者数が減った背景には、外国為替市場での円安傾向で海外旅行費用が上がったことも一因になっています。

 「確かに過去数十年間に海外旅行の費用が高くなり、日本の訪問者数が減少したと認識しています。しかし私たちは、日本経済が繁栄し、日本の方々がよりお手頃な価格で旅行できるようになることを願っています。そしてPEIへのご来訪を促進し、歓迎するための方法を探していきます」

【ロブ・ランツ(Rob LANTZ)氏】ITやバイオサイエンス、再生可能エネルギーなどのスタートアップ企業のコンサルタント、投資家を経て、2023年4月にプリンスエドワード島(PEI)州議会議員に当選。PEI州の住宅・土地・地域相、教育・幼児教育相を経て、25年2月に第34代首相に就任した。州都シャーロットタウン出身。

色とりどりの漁師小屋が並ぶプリンスエドワード島のフレンチリバー地区(大塚圭一郎撮影)
色とりどりの漁師小屋が並ぶプリンスエドワード島のフレンチリバー地区(大塚圭一郎撮影)

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