お笑いコンビ「マシンガンズ」の滝沢秀一さんとお笑い芸人のワタリ119さんが、2月16日にバンクーバー市でトークイベントを開催した。主催は日本カナダ商工会議所。
芸人としての活動と並行して環境活動や防災問題に取り組む2人。滝沢さんは2012年からごみ収集会社で清掃員として働きながら、「ごみ清掃芸人」としてごみ分別や資源の重要性を発信している。これまでに19冊の本を出版し、2020年には環境省のサステナビリティ広報大使に就任した。ワタリ119さんは元消防士で、防災士資格を取得。芸人活動と並行し、防災教育や災害時の備えの啓発に取り組んでいる。
バンクーバー到着から数時間後という慌ただしい日程の中、イベント終了後に2人に話を聞いた。
日本での共演から来加へ 強行スケジュールでも楽しいイベントに
イベントでは、日本とカナダのライフスタイルの違いを入り口に、ごみや防災をテーマにトークが展開された。2人は昨年日本で環境と防災をテーマに講演を行い、カナダの防災や環境分野にも関心があったことから今回の来加につながった。
ワタリさんは、初めての海外トークイベントを前に緊張もあったという。バンクーバーに向かう機内では、「寝るぞ寝るぞって思ってたんですけど、飛行機に乗ったら全然寝れなくて」と笑う。ほとんど眠れないまま到着し、そのままヘイスティングス通りやガスタウンの蒸気時計を見て会場へ向かった。
寝不足のまま迎えたイベントだったが、「めっちゃ楽しかったです」と声を弾ませ、「結構みんなしゃべってくれたじゃないですか。ディスカッションみたいに」と、参加者が積極的に発言する形式が印象に残ったという。
滝沢さんも「参加型でおもしろかったですね。日本とはちょっと違う」と話す。日本での講演では「結構みんな『うんうん』ってうなずくんだけど、今日は『おおー!』みたいな感じで言ってくれるから、おもしろいですよね。リアクションが前向きというか、食いつきがいい感じ」と笑顔を見せた。
ごみと防災は切り離せない
ごみ清掃芸人として活動している滝沢さんはごみ分別の重要性を訴える。ワタリさんは防災について話す。一見、ごみ問題と防災は異なるテーマのようにも見える。しかし滝沢さんは「ごみも突き詰めると防災に関わってくる」と言う。

2019年の台風19号が日本を直撃した時には被災地で災害ごみの回収にも携わった。「タンスでも何でも1回水に浸かったりすると、川の水なのでもうヘドロの臭いがして使い物にならない。ありとあらゆるものがごみになってしまう」と説明。洪水被害では家財のほとんどが廃棄対象になるという。
また、「親御さんが亡くなったりすると実家に帰って、70年、80年と積み上がったものも全部ごみになってしまうんですよね」と、親を亡くし実家の片付けに直面する人の実態も話した。加えて、地域ごとに異なる分別ルールに従い大量のごみを処理する負担は想像を絶するという。
「生きているうちに物の整理をする。使えるものはリユースするとか、ごみになる前にどうにかするっていうのは、防災にも繋がっていると思います」。
さらに能登半島地震の被災地での活動にも触れた。進めないほどの山道でも、「そこに人が住んでいるのでごみって出るんですよね」。人の営みがある限り廃棄物は発生する。災害時に下水が使えないと糞尿もごみとして廃棄されることがあるという。そうすると、清掃車でごみを回収する際に袋が破れ、中身が飛び散ることがある。水が使えなければ車両も制服も洗えず、衛生環境はさらに悪化すると説明する。
「防災時の分別みたいなことも広げていかなきゃいけない」。平時の整理や再利用、普段からのごみ分別への理解が、災害時の廃棄物削減につながり、安全や衛生も支えるという考えだ。「僕の役目はごみといろんなことを繋なぎ合わせて、イベントをやったり、エンターテイメントを通して、現状とか問題とか知ってもらうこと。それが大事だなと思ってます」。
助け方は一つじゃない 消防士から芸人へ

ワタリさんは、かつて「人を助けたい」と思い消防の現場に立っていた。しかし、「テンパってしまうところがあって、そのミスで人を危険にさらすこともあるんじゃないか」と葛藤を抱えたという。現場を離れ芸人の道を選んだが、「人の助け方って本当にいろんな方法があるなって思った」と振り返る。人を笑顔にすることもまた一つの助け方だと考えるようになった。
芸人として活動する中で発信力を得た今、「消防士の時の経験もあるから、それを発信力に乗せて伝えていきたい」と語る。今回のカナダ訪問もその延長線上にある。「カナダには日本にない災害があるし、日本にしかない技術もある。ちゃんと吸収して日本に持って帰れたら」と話す。
芸人に転身した後、防災士の資格を取得した理由について、「消防士って、災害があった時に現場での活動の勉強をするんですよ。でも、被災された方の勉強ってしてなかったなと思って」。救助や消火の訓練は重ねてきた。しかし「被災生活をされる方のことって勉強する機会がなかった」と振り返る。
その気づきが資格取得につながった。「そういうところって実は全然学べてないんだなって思って防災の資格取って。学んでいったら、見落としているところってめちゃくちゃ多くあって」。
防災イベントでは火の起こし方や非常食の備えが取り上げられることが多いが、「もっと実は抜けてるところってあって。女性への気遣いとか、ペット飼ってる人とか、その後のケアの部分が色々あるんです」と言う。「そこをもっと伝えていきたい」との思いから、救命講習の普及に関わる資格も取得。教える立場として地域や学校で活動を始めている。
今年3月には東日本大震災から15年を迎えることについて聞くと、「地震に関しては全国どこでもあることで、東日本でもすごく被害された方はもちろんいると思うんですけど、能登も岩手とかも実はスポットが当てられてない所ってめちゃくちゃあると思っていて。僕はそういうところにもフォーカスしてほしいなと思っています」と気遣った。
そして、「忘れないようにしようっていうところで止まっている気がしていて。その先の若い子に伝えていかなきゃなっていうのを忘れないようにしていかないといけない」と、世代を超えた防災教育の必要性を強調した。
「世界中からごみという言葉をなくしたい」

滝沢さんは日本のごみ分別について「日本独特だと思います」と話す。「ペットボトルってみんな90% 以上分けてくれる」。PETボトルリサイクル推進協議会によると2024年の日本でのペットボトル回収率は91.9%という。その徹底ぶりを「これは(日本の)すばらしい技術なので、世界にも広げたいなと思っています」と評価する。
根底にあるのは、ごみの捉え方そのものへの問いかけだ。「ちゃんと分別すると資源になって、ごみじゃなかったりするんですよ」と話し、「基本的には世界中から『ごみ』という言葉をなくしたいと思っています」と語る。
発信の力にも手応えを感じている。「意外とそういうのを知って広めたり、周知活動みたいなことをするのもごみを減らす一つの方法。僕の発信を聞いて、『こうやって出せばいいんだ』って資源に回してくれる人も増えたりするんです」。
さらに、ごみ収集や消防といった仕事は「インフラの一つ」と位置づける。「ごみ清掃がなくなったら、本当に街中ごみだらけになる」。新型コロナウイルス禍でその重要性を改めて実感したという。一方で、日本では清掃員の待遇が十分とは言えず、なり手不足も課題だと指摘する。「もっと注目してもらえるようになったらいい」と語る。
また、これまで滝沢さんは、日本で不要とされたランドセルや文房具などをフィリピンやフィジー共和国など海外に届ける活動にも取り組んできた。「文房具とかノートとかも人気あるんですけど、そういったものって心躍るもので、誰かにとってはごみかもしれないけど、誰かにとっては宝物の可能性があったりする」。ごみとされるものの価値は、見る立場によって変わると実感する。
そして、「究極ね、本当に分別だとか資源みたいなことを大切にしたら、争いごとも減るんじゃないかなって思うんですよ。大きく言うと、6割ほどが資源の奪い合いで戦争とか争うことが起きるみたいな話もあるので、ちゃんと分別して、もう1回使えるものは使う。そういうことを積み重ねれば、余計な争いってなくなるんじゃないかな。そういう精神みたいなのを世界に伝えていきたい」と力を込めた。
(取材 田上麻里亜)
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