日本語教師 矢野修三
今年度のアメリカ大リーグのワールドシリーズは、異様なほど盛り上がった。ナ・リーグ代表の「ドジャース」とア・リーグ代表の「ブルージェイズ」との天下分け目の大一番。
野球に関心のない方には申し訳ないが、ドジャースは大谷を含め3人の日本選手が活躍しているチームであり、一方、ブルージェイズは大リーク30チームの中で、唯一のカナダのチーム。奇しくも、今回は1993年以来のカナダとアメリカの国対抗となり、トロントはもちろん、カナダ全土、ここバンクーバーでも大いに活気づいた。
さらに、個人的にも、子供のころは、ピッチャーで四番バッターの野球少年だったので、気分はいつも二刀流の大谷翔平であり、日本選手の活躍をワクワクしながら応援。
しかし、カナダに移住している日本人としては、やはりカナダが大事であり、どっちを応援すればいいのか・・・うーん、いろいろ迷ってしまったのも事実である。
戦いは、最終第7戦までもつれ込む大接戦。最後は延長戦でドジャースが栄冠をつかんだ。まさに歴史に残る素晴らしい試合であり、さりげなく両チームを応援しながら、テレビに釘付け。どっちにも声援を送り、へんてこなテレビ観戦になったが、野球の醍醐味を存分味わった。
加えて、先月号の「ドッジボール」のエッセイを読んだ友人から、「ドジャース」のチーム名は「ドッジボール」と関係あり、との助言があり、聞いたり調べたりして、びっくり。「ドジャース」と「ドッジボール」の興味深い繋がりが判明。とてもタイムリーな話題に胸をときめかせてしまった。
さて、その繋がりとは・・・、このドジャース球団の歴史は古く、はるか昔1883年までさかのぼる。ナント日本では明治中期である。さらに驚いたことは、最初の本拠地はニューヨークのブルックリンとのこと。その当時、市民の足はトロリー(路面電車)であり、街中あちこち走っていたようである。だから、市民は道を横断するにも、このトロリーをドッジする、うまくよけなければならなかった。まさに、「ドッジ・ボール」と同じで、「ドッジ・トロリー」である。
そこで、トロリー(路面電車)をよけながら生活するブルックリン市民のことを「dodge」に「er」をつけて、トロリーをよける人、ドッジする人、すなわち、トロリー・ドジャース(Trolley Dodgers)と、少しおどけて呼ぶようになったとのこと。なるほど。
そしてこの地で生まれた野球チームに、この「トロリー・ドジャース」と名付けた。でも少し長いので、「トロリー」を除いて、単に「ドジャース」にした。Oh, I see!
その後、1958年に今のロサンゼルスに移ったが、古き伝統を残そうと、名前はそのままにしたようである。うーん、確かに、LAとは関係なく、「よける人々」では弱そうで、野球のチーム名としてはふさわしくない気もするが、でも昔からの伝統を重んじた粋な計らい。日本的なつつましさも感じられ、このチームには日本人選手が活躍しやすい雰囲気があるのでは・・・。
因みに、ブルージェイズはカナダ・オンタリオ州を代表する鳥BlueJay(アオカケス)が由来である。ぜひ来年も、再びこの両チームの決戦となり、日本選手は活躍するが、今度は「ブルージェイズ」が勝つ。こんな夢、My dreamをドッジしないでね。

「ことばの交差点」
日本語を楽しく深掘りする矢野修三さんのコラム。日常の何気ない言葉遣いをカナダから考察。日本語を学ぶ外国人の視点に日本語教師として感心しながら日本語を共に学びます。第1回からのコラムはこちら。
矢野修三(やの・しゅうぞう)
1994年 バンクーバーに家族で移住(50歳)
YANO Academy(日本語学校)開校
2020年 教室を閉じる(26年間)
現在はオンライン講座を開講中(日本からも可)
・日本語教師養成講座(卒業生2900名)
・外から見る日本語講座(目からうろこの日本語)
メール:yano94canada@gmail.com
ホームページ:https://yanoacademy.ca
日本語教師として37年、81歳になって
初めて、平仮名「あいうえお」の
素晴らしさ、奥深さを悟りましたよ。
愛情、いっぱいで、生まれ
あ い う
笑顔で、終える。
え お
素晴らしきかな「あいうえお」






















