カーニー政権予算案 赤字額は780億ドルも経済成長と生産性促進に重点

 マーク・カーニー自由党政権が11月4日に発表した予算案は17日に議会で承認された。内容は、貿易の不確実性と景気減速の中、成長と生産性を促進するための投資計画と歳出削減策が含まれている。

 カーニー政権が重点を置いたのが経済成長と競争力の強化。その一環として、企業の資本投資でより大きな割合を迅速に償却できる制度や、製造・加工施設の建物への新たな控除、液化天然ガス(LNG)関連の設備・建物への新しい資本コスト控除を設ける。

 またカーニー首相は総裁選で国内でのプロジェクトの迅速化を図ると公約していた。その中核であり、すでに稼働中の「主要プロジェクト局(MPO)」に今後5年間で2億1,400万ドルを投入。重要鉱物プロジェクトの承認を次の段階とするほか、オンタリオ州トロントからケベック州ケベックシティ間の高速鉄道建設を従来の8年計画から4年に短縮するとした。住宅、道路、水道、医療施設など地域インフラ整備に今後10年間で510億ドルを投じる。

 注目されたのは大幅に拡充された防衛費。カーニー首相はすでにNATO(北大西洋条約機構)目標のGDP比2%の防衛支出を3月31日までに、さらに5%を2035年までに達成するため、93億ドルの拡充を約束している。2025年度予算では、今後5年間で818億ドルを防衛にあて、そのうち約720億ドルが新規支出となる。

 赤字額は、2025年度は780億ドルの見込みで、トルドー前自由党政権が約束した420億ドルを大きく上回る。翌年度には650億ドル、2029年度には570億ドルと段階的に減少、3年以内に運営支出を均衡させるとしている。また今後5年間で1,410億ドルの新規支出を予定しているが、その一部は支出削減などによって相殺される見通し。

 歳出削減として政府の規模縮小が行われる。すでに実施中の連邦政府の日常的な運営費削減により2028年度までに年間130億ドルの支出削減を見込む。さらに公務員数を今後数年で約4万人削減する。

 納税者の資金を「国家建設のためのインフラ、クリーンエネルギー、イノベーション」などにより多く投入し、社会保障制度を守るとしている。

 一方で、企業への温室効果ガス排出量規制の撤廃や植林予算の削除など、環境問題への対応を一部撤廃した。

 移民政策では、住宅問題や医療システムへの圧迫を背景に一時居住者の新規受け入れを673,650人(2025年)から385,000人(2026年)へと大幅に削減。一方で就労ビザ保持者には「地域社会に深く根を下ろし、納税し、カナダ経済を支える重要な存在」として、2026年と27年に最大で就労ビザ保持者33,000人を永住権に移行させる一時措置を導入する。

(記事 高城玲)

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