カーニー首相、アメリカへの報復関税撤廃を発表

 マーク・カーニー首相は、CUSMA(カナダ・アメリカ・メキシコ協定)の対象となっているアメリカ製品への関税を全て撤廃すると22日の会見で発表した。アメリカの対応に歩調を合わせると説明。9月1日から実施する。

 カーニー首相事務所は前日の声明で、21日にアメリカのドナルド・トランプ大統領と電話会談したと明らかにした。内容について詳細には触れていないが、「建設的で、幅広い内容について話ができた」とし、貿易上の課題、経済・安全保障、ウクライナ問題などに及んだと説明していた。この電話会談に先駆け、アニタ・アナンド外務大臣が21日にワシントンD.C.でアメリカのマルコ・ルビオ国務長官と会談していた。

 アメリカとの関税をめぐる交渉は、7月末の期限で合意に達することができなかったため、トランプ大統領は8月1日からCUSMA対象外のカナダ製品への関税を35%に引き上げた。フェンタニルの密輸問題と、カナダがアメリカ製品に報復関税を課したことへの対抗措置だと説明している。

 カナダ政府は、これまでに3度アメリカからの輸入品に報復関税を発動、総額600億ドル相当の消費財や自動車などへの関税を課してきた。報復関税取り下げについてカーニー首相は、今はアメリカとの間で新たな貿易関係を構築していく過程にあると説明した。

 一方で、アメリカからの鋼鉄、アルミニウム、自動車関連への関税は引き続き維持するとし、報復関税を全廃したわけではないことを強調した。会見では、アメリカの関税対応に弱腰になっているのではないかとの質問も出たが、CUSMA内のカナダからアメリカへの輸入品は無関税となっていることに歩調を合わせたものだと説明。報復関税一部撤廃でアメリカとの交渉再開の確約をトランプ大統領から得たのか問われると「イエス」と答えた。

 首相は、アメリカがカナダからの鉄鋼、アルミ、自動車、銅、木材、エネルギーなどに関税を課しているにもかかわらず、アメリカとの貿易のうち85%は依然としてCUSMAにより無関税で、これは他国よりも有利な条件だと強調した。

 カナダ政府は2026年に予定されているCUSMAの見直しに向けた準備のため9月からカナダの優先事項などについて協議を開始するとも発表した。

 21日の声明では、「両首脳は近く再び会談を行うことで合意した」としている。

 ホワイトハウスは今回の措置を歓迎、22日トランプ大統領も記者団に、「カーニーのことはとても好きだ。昨日の会談も非常に良かった」などと語った。

(記事 高城玲)

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