第49回パウエル祭が開幕 来年の50周年に向けて始動

神輿の周りを多くの人が囲み、威勢のよい掛け声とともに練り歩いた。最後には観客から大きな拍手が送られ、会場は一層の熱気に包まれた。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
神輿の周りを多くの人が囲み、威勢のよい掛け声とともに練り歩いた。最後には観客から大きな拍手が送られ、会場は一層の熱気に包まれた。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 第49回パウエルストリートフェスティバル(パウエル祭)が8月2日と3日の2日間、バンクーバー市オッペンハイマー公園とその周辺で開催された。

 日本文化と日系カナダ人コミュニティの歴史を祝うこの催しには、地元住民や観光客が訪れ、多彩なパフォーマンスや展示、食文化を楽しんだ。開会式では地域の先住民や政府関係者も出席、来年の50周年に向けた思いを語った。

協会新体制で迎える49回目のパウエル祭 次の50年に向けて

 開会式は、ツレイル・ワウトゥス族のカーリーン・トーマス長老によるあいさつで幕を開けた。トーマスさんはツレイル・ワウトゥス族の言語で「皆さんにお会いでき、この場で一緒に祝えることを心からうれしく思います」と述べた。自身がスコーミッシュ族やナナイモ、ナス渓谷の村にルーツを持つことにも触れ、コースト・セイリッシュの伝統である両手を高く掲げる所作で「この地へようこそ」と晴れやかに開会を告げた。

開会式に出席した、(左から)、パウエル祭協会ジャン会長、バンクーバー市カービー=ヤング市議、フィリップBC州議員、クワン国会議員、髙橋総領事、ツレイル・ワウトゥス族トーマス長老、パウエル祭協会ラティマー事務局長。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
開会式に出席した、(左から)、パウエル祭協会ジャン会長、バンクーバー市カービー=ヤング市議、フィリップBC州議員、クワン国会議員、髙橋総領事、ツレイル・ワウトゥス族トーマス長老、パウエル祭協会ラティマー事務局長。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 カナダ連邦議会のジェニー・クワン国会議員(バンクーバー・イースト選出)、ブリティッシュ・コロンビア州ジョアン・フィリップ議員、バンクーバー市サラ・カービー=ヤング市議と続き、それぞれにパウエル祭への思いと文化的な意義、地域とのつながりの大切さを語った。

 在バンクーバー日本国総領事館・髙橋良明総領事は、昨年11月に着任後今回が初めての参加となったことに触れ「このバンクーバーの街に、まるで突然日本が現れたかのような、この光景を楽しみにしていました」と語った。「このフェスティバルが49年間も続いたのは、協会の理事の皆さま、ボランティアの方々、地元企業やスポンサーの支援、そして何よりも日本文化を愛し、この場に集まってくださる皆さまのおかげです」と関係者や来場者へ感謝を伝えた。

 パウエルストリートフェスティバル協会の新事務局長ソフィー・ヤマウチ・ラティマーさんと新会長ラッセル・チョンさんもあいさつ。二人は子どもの頃からこのフェスティバルに親しんできたことを振り返り、チョン会長は「今こうして運営側として皆さんと関われることは大きな誇りです。300人を超えるボランティア、そして地域の知恵と力でこのフェスティバルは成り立っています」と感謝し、第49回の開幕を正式に宣言した。

 ソフィーさんは就任後初めての開催に「パウエルストリートフェスティバルは、私にとって日系カナダ人としての文化的つながりを感じられる一番の場所でした。来年の50周年に向けて大きな一歩となります」と述べた。「来年は過去を振り返る回顧展を日系文化センター・博物館で開き、フェスティバルの歴史をまとめた書籍も出版する予定です。これまで築いてきた遺産や伝統を振り返りながら、次の50年を見据えて次世代を巻き込んだ活動をしていきたいと考えています」と今後の意気込みを語った。

1977年から続く、バンクーバー最大級の日系イベント

パウエル祭で最も盛り上がるイベントの一つ、相撲トーナメント。2025年8月3日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ
パウエル祭で最も盛り上がるイベントの一つ、相撲トーナメント。2025年8月3日、バンクーバー市。撮影 日加トゥデイ

 パウエル祭は日系カナダ人移民百周年を記念して1977年に初めて開催された。現在ではカナダで最も歴史が長く、規模が大きいコミュニティ・アート・フェスティバルの一つとして知られている。地元はもちろん、国内外から約23,000人が集まる。

 会場は、かつての日系人街「パウエル街」と呼ばれた地域で、現在のバンクーバー・ダウンタウン・イーストサイドに位置する。戦前、この地域には約1万人の日系人が暮らし、商店や文化施設が立ち並んでいたが、第二次世界大戦中の日系人強制収容政策によって全員が住み慣れた町を離れざるを得なかった。

 パウエル祭は、その歴史と文化を次世代に受け継ぎ、芸術やパフォーマンス、食を通じて多様な人々が交流する場となっている。

 日本の夏祭りを思わせる屋台が並び、焼きそばやかき氷、たこ焼きのほか、ヨーヨー釣りや日本のアニメの面も販売され、家族連れや幅広い世代でにぎわった。

今年も天気に恵まれ、屋台が並ぶストリートは多くの来場者でにぎわい、飲食やクラフトの買い物を楽しむ姿が見られた。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
今年も天気に恵まれ、屋台が並ぶストリートは多くの来場者でにぎわい、飲食やクラフトの買い物を楽しむ姿が見られた。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 今年は和太鼓、武道、舞踊などの恒例パフォーマンスに加え、新たな企画「ビッグプリント」が行われた。これは日系カナダ人と先住民アーティストが共同で制作した4×8フィート(約1.2メートル×2.4メートル)の木版画を地面に置き、スチームローラーで刷るもので、来年の50周年やその先の活動資金のために販売された。

 このほか、会場各所では相撲トーナメント、茶道や生け花の実演、子ども向けワークショップ、アート展示など多彩なプログラムが行われ、日本文化と日系カナダ人コミュニティの魅力を発信していた。訪れた人々は、舞台での演目を鑑賞したり、日本フードを楽しみながら、思い思いに過ごしていた。

日本人留学生「改めて日本すごいなって思いました」

サーモンBBQには開幕前から長蛇の列ができ、香ばしいバーベキューの香りが広がった。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
サーモンBBQには開幕前から長蛇の列ができ、香ばしいバーベキューの香りが広がった。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

 友人に誘われたというバンクーバー在住のジュリー・バーナードさんは「とてもこのイベントを気に入りました。手作りの作品や地域の文化的な品々を幅広く見られるのが魅力です」と話し、会場で触れられる地域の創作活動の多様さに驚いた様子だった。日本文化については「本当に美しいと思います」と語った。

 埼玉県出身で約2カ月前に留学のためバンクーバーに来た黒田祐太郎さんは、ホームステイ先のホストからパウエル祭を紹介され初めて訪れた。「日本人なので久々にちょっと日本を感じたくて来ました」と話す。会場では焼きそばやコロッケを食べ「日本のカルチャーがカナダにもこんなあるなんて思わなかったです。改めて日本、すごいなって思いました」と、驚きと誇らしさが入り混じった笑顔を見せた。

パウエル祭のキャラクター・ダルマが会場を歩き、ボードを手に来場者との記念撮影に応じて会場を盛り上げた。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
パウエル祭のキャラクター・ダルマが会場を歩き、ボードを手に来場者との記念撮影に応じて会場を盛り上げた。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
バンクーバー日本語学校で行われた祥平塾合気道カナダによる演武。受け(攻撃側)と投げ(防御側)の役割を担い、打撃やつかみへの対応や、転がり技、武器の取り方、護身術などを披露した。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
バンクーバー日本語学校で行われた祥平塾合気道カナダによる演武。受け(攻撃側)と投げ(防御側)の役割を担い、打撃やつかみへの対応や、転がり技、武器の取り方、護身術などを披露した。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
バンクーバー仏教会で行われたバンクーバー生け花協会による展示。4つの流派のスタイルが並び、日本の花道の多様な美しさが披露された。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today
バンクーバー仏教会で行われたバンクーバー生け花協会による展示。4つの流派のスタイルが並び、日本の花道の多様な美しさが披露された。2025年8月2日、バンクーバー市。Photo by Koichi Saito/Japan Canada Today

(取材 田上麻里亜/撮影 斉藤光一)

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