
今年3月、大阪国際中学・高等学校(大阪府守口市)と、ニューウェストミンスター高校(BC州ニューウェストミンスター市)の吹奏楽部と合唱部が合同で、守口市でジョイントコンサートを開催しました。このコンサートは、守口市、守口市教育委員会、そして日本カナダ商工会議所の後援を受け、両市の姉妹都市関係を記念すると同時に、未来を担う若い世代同士の交流を深めることを目的としたイベントとして開催されました。
■ 両市の紹介と姉妹都市関係の歩み
ニューウェストミンスター市は、カナダ西海岸のブリティッシュコロンビア(BC)州バンクーバー都市圏に位置する人口約8万人の歴史ある街です。1859年にはBC州最初の州都として指定され、その名もイギリスの「ウェストミンスター」にちなんでいます。今では川沿いの美しい街並み、古い建物を活かした商業地区、多文化が共生する活気あるコミュニティが魅力の街です。
守口市は大阪市に隣接する人口約14万人の都市で、ものづくり産業を支える先進技術、落ち着いた住宅地、そして教育への投資を特徴とする街です。交通の便にも恵まれ、大阪都市圏の生活拠点として発展してきました。
両市が姉妹都市提携を結んだのは1963年。ちょうど日本とカナダの間で人的・文化的な交流を深めようという動きが高まっていた時期で、守口市にとっても初めての姉妹都市提携でした。以来60年以上、青少年交流、行政関係者の訪問、文化団体同士の交流など、多岐にわたる取り組みと交流を積み重ねてきました。コロナによって途絶えがちになった2022年から日加商工会議所では全4回に渡り「日加ユースオンライン交流会」を開催するなど、両都市の関係を育み直すことも目的としたイベントを開催して参りました。今回のジョイントコンサートも同様に、「次の世代にこの友情を引き継ごう」という強い思いを核として、ニューウェストミンスター高校吹奏楽部・合唱部の日本渡航に合わせて、守口市の若者との音楽交流実施のはこびとなりました。
■ 1年3か月にわたる調整の道のり
私は日本カナダ商工会議所の理事として、また一人のボランティアコーディネーターとして、ニューウェストミンスター高校の吹奏楽部・合唱部顧問の先生方、参加メンバーの保護者の皆さん、大阪国際中学・高等学校の先生方との間で、2023年末ごろから1年3か月以上にわたる調整を担いました。
コンサートの内容だけではなく、渡航スケジュールの検討、航空券や滞在先の手配、予算計画、楽器や楽譜の輸送、合同演奏の曲目決定、日本側でのリハーサル会場や移動手段の確保など、細部に至るまで調整が必要でしたが、全員が「生徒たちに最高の経験を」という思いで粘り強く話し合いを続けました。
また、大阪国際中学・高等学校側も年度をまたぐ学校行事のスケジュールを調整し、受け入れ体制を整えるため何度も打ち合わせを重ねてくださいました。
■ 「日本らしさ」と「カナダらしさ」を大切にした舞台づくり

最も大切にしたのは、どちらか一方の文化を押し付けるのではなく、お互いの文化を尊重し融合させるコンサートを作ることでした。
カナダ側の生徒たちは、O Canadaから始まり、カナダ先住民のKawkiyawk Oskiyakでダイバーシティを体現、また合唱部はジブリの『いつも何度でも』(『千と千尋の神隠し』より)を日本語で歌いました。一方日本側の生徒たちはカナダの国旗にちなんだ『楓葉の舞』や、世界中でよく知られた『銀河鉄道999』を演奏しました。
そしてカナダと日本の生徒が合同で演奏する演目としては、『Canadian Folk Trilogy』や、日系カナダ人が作曲した『Chasing Sunlight』(by Cait Nishimura)を選曲。最後は『情熱大陸コレクション』で盛り上がった後、『学園天国』で楽しくアンコールを迎えました。
初日のリハーサル、その夜は大阪国際中学・高等学校が準備してくださった夕食交流会を通して言葉の壁を超え、音楽で心を通わせるプロセスそのものが、今回の大きな成果だったと感じます。
当日の様子は大阪国際中学・高等学校の公式サイトでも紹介されていますが(こちら)、ご来場いただいた地域の皆さまの温かい拍手と声援が、生徒たちの努力を讃える何よりの贈り物だったでしょう。
■ 地域と保護者の支えあってこそ
また特筆すべきは、それぞれの高校及び地域の皆さんの大きな協力です。
カナダ側では渡航費などの負担を支えるため、吹奏楽部と保護者の方々が学校や商工会議所と協力して資金調達活動を行いました。日本側では守口市役所、教育委員会をはじめ、高校の国際交流担当の先生、英語の先生、そして吹奏楽部の生徒さんと卒業生の皆さんがカナダの生徒たちを温かく迎えてくださいました。
交流は単なるイベントではなく人と人とのつながりの積み重ねであり、地域全体で支えることでこそ実を結ぶのだと、改めて実感しました。
■ 今後の姉妹都市関係への期待
守口市とニューウェストミンスター市の姉妹都市関係は、1963年の提携から62年を超えましたが、その間世界情勢や社会も大きく変わりました。
だからこそ今回のように「次の世代同士が直接出会い、友達になる」という取り組みがこれまで以上に重要だと考えます。音楽という共通言語を通じて築かれた友情は一度きりの思い出で終わらず、将来社会に出てからも続くかもしれません。
日本カナダ商工会議所としてもこうした青少年交流を経済交流の土台、また、平和な未来を築く礎と捉え、今後も積極的に支援していきたいと考えています。
今回のジョイントコンサートを一つの節目として、守口市とニューウェストミンスター市の絆がさらに深まり、未来の子どもたちに誇れる姉妹都市関係を築き続けていけることを心から願っています。
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最後に、この取り組みにご尽力いただいた大阪国際中学・高等学校の先生方、生徒の皆さん、ニューウェストミンスター高校の先生方・保護者・生徒の皆さん、そして守口市、教育委員会、地域のボランティアの皆さまに心から感謝を申し上げます。
若い世代が築く友情こそが、私たちの街と街をつなぐ最も大きな財産です。
(寄稿 日本カナダ商工会議所理事 加藤まり)
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