カナダ・リッチモンド市内の先住民への権利を巡って紛糾

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州リッチモンド市のルル・アイランドにある約7.5平方キロメートルの土地を巡って、議論が起こっている。

 リッチモンド市マルコム・ブロディ市長は「私有地が存在する地域でのアボリジナル・タイトル確立は受け入れられない」とし、「多くの人がいまだに状況を理解できておらず、非常に不安を感じている人もいる」と主張。リッチモンド市は10月中旬に影響があると見られる世帯約150戸に、同エリアの土地所有者への説明会を行うと通知した。説明会の案内状には「裁判所は、あなたの土地に対してアボリジナル・タイトルが存在すると宣言しました。これにより、あなたの所有権の状態や有効性が損なわれる可能性があります」と記されていたという。

 リッチモンド市が問題視しているのは、かつて先住民カウィチャン族が夏季の定住地として使っていた場所で、現在は連邦政府やBC州政府、バンクーバー・フレーザー港湾局、リッチモンド市、住宅所有者や民間業者が所有している土地。BC州最高裁判所が今年8月に11年にわたる裁判の末、カウィチャン族がこの土地の権利(アボリジナル・タイトル)を持つと認定した。

 バーバラ・ヤング判事は判決文の中で、「アボリジナル・タイトルの付与は(現在の)土地所有者たちを追い出すものではない」と説明。カウィチャン族の主任弁護士デイビッド・ローゼンバーグ氏も、9月のBC州自治体連合会議で「この訴訟は私有地の所有権を争うものではなく、政府が不当に奪った公有地の返還を求めるもの」だとし、「今回の判決によって、アボリジナル・タイトルと私有権は共存できるという認識が示された」と述べている。

 しかしリッチモンド市をはじめ、BC州政府やほかの先住民族もこの判決に異議を唱えている。BC州と先住民マスクリアム族は上訴の意向を示している。デイビッド・イービー州首相は判決への対応について、ビジネスの安定性や住宅所有者の私有財産権を守ると述べている。

(記事 高城玲、北野大地)

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