「赤毛のアン」の島、州首相が日本への輸出拡大を目指して豊かな食品PR トランプ米大統領復帰で「貿易不透明」の中で

2025年大阪・関西万博のカナダ館でのイベントでプリンスエドワード島(PEI)について紹介するロブ・ランツPEI州首相(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダ館でのイベントでプリンスエドワード島(PEI)について紹介するロブ・ランツPEI州首相(大塚圭一郎撮影)

 小説「赤毛のアン」の舞台として知られるカナダ東部プリンスエドワード島(PEI)州のロブ・ランツ州首相が来日し、ロブスターやサーモン、かき、ムール貝といった豊かな食品を紹介するイベントが2025年大阪・関西万博(大阪市)のカナダパビリオン(カナダ館)で9月20日、開かれた。最大輸出国となっているアメリカ(米国)のドナルド・トランプ大統領が輸入品への関税を引き上げるなど「アメリカとの貿易が不透明になっている」(ランツ氏)という中で、日本を含めた世界への輸出を拡大するのが狙いだ。

▽「タリフマン」が脅威に

 カナダは2024年のモノ(商品)輸出のうち約76%に当たる5474億カナダドル(1カナダドル=105円で57兆4770億円)を米国が占めている。私が2020~24年に駐在していた米ワシントン首都圏では、PEI産の新鮮なカキが「安心して食べられるブランド」として認知されて販売されていた。

 輸出の追い風になっているのは、カナダと米国、メキシコが結んでいる自由貿易協定(FTA)の「アメリカ・メキシコ・カナダ協定」(USMCA)で、魚介類や農産物の多くの品目について互いに輸入関税の適用を免除している。

 しかし、「タリフマン(関税男)」を自称するトランプ氏は、USMCAの大幅な見直しを迫っている。発効6年後となる2026年7月1日までに実施する共同見直しが迫る中で、カナダのムール貝漁獲量のうち約8割を占め、ジャガイモ生産量のうち約2割を賄うなど食品生産が活発なPEI州は懸念を強めている。

▽カナダ館政府代表「『カナダの食の島』という名にふさわしい」

 カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表は「小説『赤毛のアン』の舞台であるPEIは赤い砂浜と肥よくな農地から世界的に有名なロブスター、ムール貝、ジャガイモに至るまでが送り出されているプリンスエドワード島は『カナダの食の島』という名にふさわしい存在だ」と紹介。

2025年大阪・関西万博カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博カナダ館のローリー・ピーターズ政府代表(大塚圭一郎撮影)

 PEI州のランツ州首相は「PEIの魚介類や農産品の高い品質の背景には漁師や農家のまごころ、何世代にもわたって海と大地で働いてきた家族の誇り、そして安全で持続可能、信頼される食料を生産するという確固たる決意がある」と強調した。

ロブスターロールを作るところを実演するシェフのアダム・ルー氏(大塚圭一郎撮影)
ロブスターロールを作るところを実演するシェフのアダム・ルー氏(大塚圭一郎撮影)

 イベントでは、バンズにロブスターの身を挟んだ「ロブスターロール」や生ガキ、蒸したムール貝の料理、揚げたジャガイモに載せたスモークサーモン、バターと香草で味を添えたズワイガニの料理、牛肉のバラ肉を焼いたステーキなどが出席者に振る舞われた。

 PEIのレストランで腕を振るうシェフのアダム・ルー氏は、持続可能な漁業をしていることを証明する国際認証制度「海洋管理協議会」(MSC)の認証を受けたロブスターを使ったロブスターロールを作る様子を実演した。

 また、PEIの州都シャーロットタウンにある「赤毛のアン」を題材にしたチョコレート店「アン・オブ・グリーンゲイブルズ・チョコレート」や、PEIにあるブルーベリー農園などの経営者らも会場で自社商品を売り込んだ。

【プリンスエドワード島】北大西洋に面したセントローレンス湾に浮かぶ島で、2025年4月1日時点の人口は18万29人。島を所管するプリンスエドワード島州はカナダの州としては最小で、州都はシャーロットタウン。赤い砂浜と灯台、瑠璃色の海で知られる保養地となっており、日本でもルーシー・モード・モンゴメリの小説『赤毛のアン』の舞台として広く知られている。

 カナダ連邦が誕生した1867年7月の約3年前、国家樹立について協議した最初の建国会議の舞台はシャーロットタウンだった。このためカナダ本土のニューブランズウィック州との間に1997年に架けられた橋は、連邦結成を意味する「コンフェデレーション橋」(全長12・9キロ)と名付けられた。橋は高速道路の一部となっており、片側1車線、計2車線の道路を通って自動車で直行できる。

バターと香草で味を添えたズワイガニの料理(大塚圭一郎撮影)
バターと香草で味を添えたズワイガニの料理(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダ館の赤くライトアップされた様子(大塚圭一郎撮影)
2025年大阪・関西万博のカナダ館の赤くライトアップされた様子(大塚圭一郎撮影)

(共同通信社経済部次長・日加トゥデイ連載コラム「カナダ“乗り鉄”の旅」執筆者・大塚 圭一郎)

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