アメリカのトランプ政権により世界の貿易関係が急速に変化している中で、マーク・カーニー首相は9月5日、カナダ経済強化策を発表した。アメリカによる関税や貿易問題の影響をもっとも強く受けている産業分野を支援する。
カーニー首相は会見で「他国の行動をコントロールすることはできないが、自分たちが自身に何を与えるか、何を築くかをコントロールすることはできる」とし、世界の不確実性に直面する中でカナダの力を築いていくと述べた。
その一つが電気自動車(EV)義務化政策の一時停止。この義務化政策では、カナダで販売される新車のうち、ゼロエミッション車(温室効果ガス排出ゼロ車)の割合を2026年までに20%、2030年までに60%、2035年までに100%にする。しかし政府は自動車業界からの要望を受けて、2026年度の義務を免除し、60日間の政策見直しを行うとした。
このほかにも、雇用保険給付を延長・柔軟化し、デジタル職業訓練プログラムにより5万人の労働者がスキルをアップデートできるよう支援する「リスキリング(再教育)パッケージ」や、連邦政府にカナダの供給業者を利用することを義務付け、州や自治体も同様に取り組むためのロードマップを提示する「バイ・カナダ政策」、カナダ産業銀行の融資拡充などが発表された。
一連の施策について政府は「時代に対応するための新たな産業戦略の構築」の一つと位置づけ、「特定の貿易相手へ依存する経済から脱却し、強固なカナダ産業と多様な貿易パートナーによる世界的な打撃に強い経済へと変革していく」としている。
(記事 高城玲)
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