エドサトウ
コモックスのフェリー乗り場に8時過ぎに到着。ここから対岸の本土であるパウエルリバーの街に渡る予定である。このルートは初めてなので少々エキサイティングな旅である。フェリーは対岸から車を乗せて9時15分くらいに来た。思っていたより大きな船で、中には昨日と同じような大きさのカフェテリアがあり、また、同じような朝食を食べた。1時間ぐらいの船旅であるが、船の中で食事をするのは、ゆったりとして好きである。風は冷たいが、天気も良く、船から見る風景ものんびりとゆっくりと流れていく。
このルートは、カナダに農業実習の研修を受けて一緒にカナダに来た僕らの副リーダーの年配のSさんが仕事をリタイヤした時のこの旅の印象が良かったか、彼は「佐藤君、機会があったら是非一度サンシャインコーストを回ってみるといいよ。」と勧められていた旅でもあった。
その彼も、晩年は動物の絵を描くのを趣味とされていて、個展をされるほどの腕前であった。その彼が勧めてくれた旅の風景を見ながら、フェリーは島の間をゆるゆると静かに進んでゆく。
パウエルリバーの港町は、かつては多くの日系人の漁師が、春になれば、ギルネットという二人乗りの小型船でアラスカ近くの海まで船団を組み、スティーブストンから鮭の漁業にやってくるのである。その北の町がパウエルリバーである。スティーブストンから、小船で20ノット(時速37㎞)でここパウエルリバーまでは、6~7時間ぐらい、ここで一息いれてさらに走りつづける。ギルネットは船のへさきのデッキの下には、バンクベッドがありキャビンから中に入れば、二人くらいが寝ることができる。交代で寝ずに北の漁場を目指すのであろう。そして、夏の終わりまで鮭とりが続くのである。海が時化(しけ)た時に白人の漁船が遭難、日本人があれる海で彼を救助したことがあったが、戦争中で日本人が表彰されることはなかったという話もある。
パウエルリバーに一泊。6時に起きると、息子が荷物を入り口付近に、すでにまとめて出発の準備をしている。外は、やや激しい雨降り、コーヒーも飲まず急ぎ出発して、朝一番のフェリーでサンシャインコーストに渡り、さらに南の端でホウシューベイへ渡るフェリーに乗らねばならぬ。
朝から激しい雨の中、小さめのフェリーはサンシャインコーストの北の港に到着。ここからは海の風景はおだやかで、ゆったりとした風景が、かつての印象であったが、今日は雨も強く止む気配もないので、僕たちは寄り道もすることなく、海岸線の国道を一気に走り抜けてゆくラリー競技の全輪駆動車のようである。僕の郷里愛知県にKさんというトヨタのラリードライバーがいて、世界中のラリー選手権にトヨタの車で走っている。一年前、帰国した折にも、地元と主宰の新しいラリーコースを走っていた。車好きの弟も「写真を撮りに行く。」と言っていた。
バンクーバーでも、サンシャインコーストのラリー競技を企画してみるのも面白そうである。息子は、雨の中、カーブの多い山道のフリーウェイを走りぬけてゆく。僕はラリーのサイドドライバーのように雨の中「次はカーブだよ。スピードを落として!」と大きな声で注意するような口調で、恐怖に震えるがごとくわめくのである。まだ、朝で雨ではあったが、対向車はほとんどなく、快調に走り続ける。サンシャインコーストの南端のギブソンからホウシューベイに渡る最後のフェリーに乗る。かつては30台ぐらいしか乗れない小さな渡し船であったけれど、今は大きなフェリーが接岸できる大きな新しいフェリー乗り場に変わっていた。
フェリーの待ち時間が1時間ぐらいあったが、自宅には12時過ぎに到着。雨の中、約6時間一気に駆け抜けての帰宅であったが、それはそれでラリーの感じがして面白かった。
もう20年にもなるホンダシビック、故障もなく良く頑張った。ご苦労様!
同じころ、日本の富士レースウェイでは、ホンダシビックが個人とチーム初優勝という快挙のニュースが飛び込んできた。こちらもおめでとう!
投稿千景
視点を変えると見え方が変わる。エドサトウさん独特の視点で世界を切り取る連載コラム「投稿千景」。
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