日々の小さな幸せが愛おしくなる「Perfect Days(パーフェクトデイズ)」ヴィム・ヴェンダース監督

「パーフェクトデイズ」より。Courtesy by TIFF
「パーフェクトデイズ」より。Courtesy by TIFF

 いよいよアカデミー賞授賞式が日曜日と迫ってきましたね!今年の注目は何と言っても「バービー」と「オッペンハイマー」の対決のはずでした。ところが、ノミネート作品発表の時点で「オッペンハイマー」がアカデミーの推しだと判明してしまい、少し、いやかなりがっかり。それでも、昨年公開作の中で大好きだった「アメリカン・フィクション」と「Past Lives」がノミネートされているし、ファッションチェックも楽しいし、となんだかんだ日曜を楽しみにしている私です。

 さて、今回ご紹介するのは、そのアカデミー賞で国際長編映画賞にノミネートされているヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」。昨年のカンヌ国際映画祭で上映された際には、主演の役所広司さんが日本人俳優としては19年ぶり2人目(1人目は柳楽優弥さん)の最優秀男優賞を受賞した作品です。日本では年末に公開されていたのに、ここバンクーバーでは2月中盤にやっと劇場公開になりました。

 ストーリーは東京、渋谷でトイレの清掃員として働く平山という男の毎日を静かに追っていきます。本当に静かに。毎朝起きて、缶コーヒーを飲んで、好きな音楽を聴きながら車を運転して、ていねいに仕事をして、同じ場所で昼食を食べ、木漏れ日に目を細め、仕事が終われば銭湯に行き、夕飯を食べ、読書してから寝る。休日は洗濯をして、写真を現像に出して、行きつけのバーで少し飲む。その繰り返し。そんな変わらぬ毎日にも同僚の影響でイレギュラーなことが起きてしまったり、平山の過去につながる人物が登場したり、と小さな波が押し寄せる。

 「足るを知る」という言葉がそのまま当てはまるかの様な平山の毎日。淡々としているけれど、小さな満足にあふれているのが観ている方にも伝わってきます。セリフがとても少ない役なのに目や表情だけで優しさや人間味を溢れさせてしまう役所さんの演技はさすがです。彼はこの生活に落ち着くまでにどんな人生を歩んできたんだろう、と想像力も掻き立てられました。あとは東京という都会の片隅で生きる人々が、皆それぞれにストーリーを持って生きている。そんな普通の人生を撮るヴェンダース監督の温かい眼差しも感じる2時間でした。

 観終わった後は平凡な毎日が本当に愛おしく思えて。ベタな感想だけど、もっともっと大切にしながら「今」を楽しもうと思えてきました。それにしても70年代のロック良かった・・・

 バンクーバーではFifth Avenue Cinemaで上映中です。

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バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
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Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
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