書道や日本の記憶にインスパイアを受けてダンスを制作~カーター 詩音・スカイさん~(前編)

Artist residency at LEÑA Artist Residency on Galiano Island, BC. December 2020。Photo courtesy of Dayna Szyndrowski
Artist residency at LEÑA Artist Residency on Galiano Island, BC. December 2020。Photo courtesy of Dayna Szyndrowski

 コンテンポラリーダンスのアーティスト、カーター 詩音・スカイ(以下、詩音)さん。スコシアバンク・ダンスセンターによる「Iris Garland Emerging Choreographer Award」を2021年6月に受賞した。同賞は新進のダンスアーティストをサポートするためのもの。

 また、制作したショートフィルムはアメリカやトルコ、ギリシャ、キプロスなどで上映され、世界に活躍の場を広げている。

 カナダ人の父と日本人の母を持つ日本生まれ、6歳まで日本で育ったという詩音さんにZoomで話を聞いた。2回に分けて紹介する。

– まず、自己紹介をお願いします。

 バンクーバー在住のコンテンポラリーダンスのアーティスト、カーター 詩音・スカイです。

 日本で生まれて、6歳のときにカナダに来ました。その後、グラッドストーン日本語学園で日本語を学びました。おかげで日本語や日本文化とのつながりを継続することができました。

 カナダに来てからも日本語学校で日本語や日本文化に触れることができたことについては、こういった機会を与えてくれた母に本当に感謝しています。私が踊ったり、振り付けを考えたりするうえで、グラッドストーンでの経験がとても役に立っています。

 小学5年生か6年生のときに村上陽子先生の下で習字を習いました。

 その後、忙しくて書道はやめていたのですが、グラッドストーンを卒業して約5年後の2019年にレッスンを再開しました。

 大学はサイモンフレイザー大学(SFU)で、ダンスとキネシオロジーを学び、ダンスが主専攻、キネシオロジーが副専攻です。ダンスプログラムを2018年に修了、キネシオロジーを2019年に修了して卒業しました。

"Flow Tide" performance with Kisyuu, at Spanish Banks in Vancouver hosted by Powell Street Festival. July 2020。photo courtesy of Emiko Morita
“Flow Tide” performance with Kisyuu, at Spanish Banks in Vancouver hosted by Powell Street Festival. July 2020。photo courtesy of Emiko Morita

– キネシオロジーも学んだんですね。

 はい、小さいころから科学や身体の動きにも関心がありました。卒業するのに1年余分にかかりましたが、リハビリテーションなどについても学びました。将来、ダンスをリタイアすることになったときに、たとえばフィジオセラピーができるかもしれないと思っています。

– ダンスを始めたきっかけを教えてください。

 カナダに来てすぐのころ、7歳ぐらいのときに、バーナビー市のシャドボルトセンター(コミュニティセンター)でバレエのレッスンを受けました。それが初めてのダンスの経験です。

 でも、陸上やサッカーといったスポーツがしたいとバレエは数カ月でやめました。その後、セカンダリースクールに入学した13歳になって、もう一度ダンスを始めました。

 私が行ったバインクリーク(Byrne Creek Secondary School)は公立校ですがダンスプログラムが有名で、コンテンポラリー、モダン、ジャズダンスなどを学びました。

– セカンダリースクールでコンテンポラリーとモダンダンスを学んだということでしょうか。

 はい。8年生から12年生までダンスのクラスを取りました。すばらしいダンスプログラムがあり幸運だったと思います。

 ダンススタジオでレッスンをすると、高いレッスン料がかかります。一方、バインクリークは公立校のプログラムなので特に費用もかかりませんでした。

 年に2回パフォーマンスがあったほか、ダンスの課外活動もありました。12年生になったときには、8年生にダンスを教える機会もいただきました。

 SFUにダンスプログラムがあることについても先生に聞きました。バインクリークに行かなければ、大学でダンスを学ぶなんて思いもしなかったでしょうね。

Artist residency at LEÑA Artist Residency on Galiano Island, BC. December 2020。Photo courtesy of  Dayna Szyndrowski
Artist residency at LEÑA Artist Residency on Galiano Island, BC. December 2020。Photo courtesy of Dayna Szyndrowski

– グラッドストーンでの書道の話に戻りますが、書道にインスピレーションを受けて作った作品もあるそうですね。

 小学生のときにグラッドストーンで教わった習字がとても楽しく、良い思い出になっていました。

 そこで大学を卒業してから村上先生にお願いして書道のレッスンを再開しました。最初は教室で練習していましたが、新型コロナでオンラインでのレッスンになりました。練習したものを写真に撮り、Eメールで村上先生に送り、添削されたものがEメールで返送されてくるというものです。

 練習をしている中で私にとって書道は瞑想のような効果があることに気が付きました。村上先生の書道のレッスンでは1カ月かけて漢字一字を繰り返し練習します。特に大人になってからは、忙しい毎日の中を過ごしています。そんな中でおけいこをすることで、立ち止まること、スローダウンすることの大切さを感じています。

 それだけではありません。再開したときに、書道では手だけではなく、身体全体や精神を使って「書く」ことに気がつきました。

 私はステージでのパフォーマンスを制作するアーティストとして創り上げたい色やイメージを思い浮かべるように努めています。書道の白と黒…白い半紙の上に黒い墨で書く文字…その美しさを前にしたとき、突然、インスピレーションが湧き上がってきました。

 白と黒のコスチュームを身に着ける、墨のイメージビデオを投射してみる……。次々にアイデアがひらめきました。

 書道と結び付けたダンスを制作する際には、私は半紙に書いた文字を床に広げます。そしてまずはそれらの文字を「書くこと」を身体を使って表現してみます。あるいは手だけを使って、または胴体など、身体のほかの部分を使って、書く動きをします。あるいは床に伏した体勢で、身体全体で文字を書く動きをしてみたり…そうして作品を作り上げます。

(後編へ)

コンテンポラリーダンスのアーティスト、カーター 詩音・スカイさん 。Photo courtesy of Bee Kent
コンテンポラリーダンスのアーティスト、カーター 詩音・スカイさん 。Photo courtesy of Bee Kent

カーター 詩音・スカイさん
ウェブサイト

https://shionskyecarter.com/

インスタグラム
https://www.instagram.com/shionskye/

(取材 西川桂子)

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