150 番外編その1

ガーリック康子

 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。あっという間に年が明け、去年の今頃とは180度変わってしまった新しい年が始まりました。しばらくご無沙汰してしまいましたが、お元気でしたか。

 2020年の年明けと前後して、世界的に「新型コロナウイルス(国際正式名称:COVID-19)」による感染症の蔓延が始まり、1月末には、世界保健機構(WHO)が「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。その後、世界各地で流行は加速し、3月11 日には、同機構からメディアに向けて、「新型コロナウイルスの世界流行(パンデミック)」の宣言が発表されました。1918年から1919年にかけて世界的に大流行し、通称「スペイン風邪」と呼ばれた「H1NI亜型インフルエンザ」以来の、ウイルス性感染症の大流行と言われています。

 その後、各国で渡航制限や入国制限の措置が取られ、国外在住の永住者や国民の帰国ラッシュで、国境周辺や空港は俄かに慌ただしくなりました。国際規模の催しに始まり、各国であらゆるイベントや集会が延期および中止になりました。7月に開催が予定されていた東京オリンピックも、1年後に延期となりました。カナダでは、新型コロナウイルス感染症の蔓延を防ぐため、不要不急の海外渡航の自粛が呼びかけられ、必要に迫られて海外に渡航する場合は、戻ってから、14日間の自己隔離期間を外出せずに過ごさなくてはなりません。一部の州では州間の移動も制限されるようになりました。

 海外、国内の旅行が制限されることにより、ホスピタリティー産業の中でも、旅行業、宿泊業、運輸業などが大きな影響を受けています。また、外出自粛の影響により、外食産業でも、収入が激減し、倒産を免れない店舗が増えています。エンターテイメント業界では、三密(密集・密閉・密接)を避ける必要から、映画館やコンサート会場、スポーツ施設などでの集客が望めず、関連する様々な業種の人たちの一時解雇や失業に繋がっています。

 このように日常生活が大きく変化する中、マスク着用が生活の一部となり、どこへ行っても人との距離を保つことが求められ、手洗いやアルコール消毒が欠かせなくなりました。特に、認知症を含め、基礎疾患や特別な病気のある人は、感染予防のための注意が必要となりました。

 通常、認知症の症状は、薬による治療やある程度の活動的な生活を維持することで、改善したり進行を抑えたりすることができます。ところが、新型コロナウイルス感染症の流行による外出自粛で、身体的活動、知的活動、社会的活動の機会が大幅に減ったため、認知機能や生活機能が低下するとともに、ストレスや不安感が増し、認知機能を低下させるだけでなく、もともと出ていた意欲の低下、妄想、暴言・暴力などの認知症の行動・心理症状を悪化させ、家族やその他の介護者への大きな負担に繋がります。

 一般的に、認知症の方は、感染予防の自己管理が困難なうえ、新型コロナウイルスに感染した場合、発熱、呼吸困難、嗅覚や味覚の低下などの症状を自覚しにくいことがわかっています。周囲の人たちが、食欲が落ちた、ぼーっとしている、元気がないなど、いつもと違う症状に早めに気付くことが大切です。認知症の方は、糖尿病、腎臓病、心臓病などの基礎疾患を持っていることも多く、ウイルスに感染すると重症化しやすい傾向があるため、周囲の人の協力による感染予防の徹底が求められます。他にも、感染予防のため、デイサービス、訪問介護、訪問リハビリなどの介護サービスの変更や中断、入所していた介護施設のサービスが大きく変わることで、生活のリズムが崩れてしまい、それがストレスの原因となる場合もあります。

 また、現状では難しくもありますが、認知症の方にとって、感染予防に注意を払いながらサービスを継続し、できるだけ今まで通りの生活を続けることも重要とされています。三密(密集・密閉・密接)を避けながら、散歩に出かけるなど、適度な運動することも大切です。ただし、運動の機会が減り、転びやすくなっている恐れがあるため、杖やウォーカーなどの歩行補助器具を使い、転倒予防に注意を払いながら行う必要があります。

 誰もがストレスを感じる状況下で、認知症の方本人や、認知症の方の生活を支える家族には、これまでにない苦労や心労があることでしょう。新型コロナウイルス感染症の蔓延を一日も早く終息させるためにも、認知症の方やその家族、サービスを提供する介護者だけでなく、生活に関わるすべての人の協力が必要です。

 当たり前と考えていた生活が一変した2020年。2021年を迎えても、我慢の日々はまだまだ続きそうです。今はとにかく耐え凌ぐのみ。明けない夜はないことを信じて、乗り越えていきましょう。