モルノー財務相が辞職

 ジャスティン・トルドー首相と二人三脚で自由党政権を支えてきたビル・モルノー財務大臣が突如辞職を発表した。

 この日の午前中に2週間の休暇から戻ったトルドー首相と会談したと報道され、財務大臣に関する何らかの話し合いが行われたとの憶測が飛んでいた。

 記者会見を開くことが発表されたのが会見の直前。一人で会見場に現れたモルノー財務大臣は、「トルドー首相に次の選挙には出馬しないことを伝え、財務大臣も辞任する意向を伝えた」と語った。

 理由については、新型コロナウイルス感染拡大で厳しい財政状況となっている中、長期的な視点に立ってカナダの経済回復計画を実行できないためと説明。次期選挙に立候補する意思がない自分よりも相応しい人物が財務大臣を務める方がカナダにとっていいと判断したと語った。

 また今後OECD(経済協力開発機構)のポストに立候補したいとの理由から、その準備のために議員も辞職するとも発表した。

 「トルドー首相には財務大臣という要職に任命してもらい、国民のために5年間財務大臣を務められたことは光栄だった」と語った。

 次期財務大臣はトルドー首相が相応しい人物を任命するだろうと語るにとどまった。

トルドー首相との溝は埋まらず、WEスキャンダルも影響か?

 新型コロナ経済対策でトルドー首相と度々意見が食い違っていたということは早くから指摘されていた。

 この点については認め「意見は食い違っても国民にとって最善の方法を常に見つけてきた」と述べた。

 ただ会見での言葉の裏には、トルドー首相の将来的なビジョンに自分が財務大臣として存在していないというニュアンスを含めていた。

 また若者のボランティア活動を支援するチャリティ団体WEチャリティを巡るスキャンダルも引き金になったとのではとの質問には、WEの招待旅行で41,000ドルがWEチャリティから支払われていることに気づかずに軽率だったと繰り返したが、特に今回の辞職には関係ないことを強調した。

 WEチャリティはカナダ政府からボランティア活動をする若者に現金を支給する制度を独占委託されていた。しかしその後、トルドー首相の母や弟がWEから多額の講演料などを受け取っていたことや、モルノー財務大臣の家族が関わっていたことが分かり、野党が追及している。

次期財務大臣は?

 モルノー財務大臣の辞職で、さっそく各メディアでは次期財務大臣が誰になるのかを予測している。

 最有力候補はクリスティア・フリーランド副首相。国際貿易大臣、外務大臣と要職を歴任し、現在は政府間関係大臣を兼務している。新NAFTAの締結でも奮闘し、経済界にも精通していることから、次期財務大臣の筆頭にあがっている。

 ほかには、新型コロナ対策で冷静な対応が評価されているジャンイブ・デュクロ予算庁長官、フランソワフィリップ・シャンパーニュ外務大臣の名前もあがっている。