東京オリンピックでの活躍を胸に 

カナダ7人制ラグビー代表 ネイサン・ヒラヤマ選手インタビュー

2020年4月30日 第14号

カナダ代表が2020年東京オリンピック出場を決めたのは2019年7月。男子代表は初のオリンピック出場となる。このチームカナダを率いるのがネイサン・ヒラヤマ選手。3月7、8日にバンクーバーBCプレースで開催されたカナダセブンズではキャプテンを務め、銅メダルを獲得した。カナダセブンズ前の3月4日、BCプレースでの練習後に東京オリンピックについての思いを聞いた。

3月7日29-7と圧勝したウェールズ戦でのヒラヤマ選手コンバージョン

チームカナダ初出場となる東京オリンピック

 7人制ラグビー男子カナダ代表は、オリンピックでラグビーが正式種目となった2016年、リオデジャネイロ五輪での出場権を逃した。ここからチームカナダの新たな五輪への道が始まった。

 2017年のカナダセブンズでチームを率いたダミアン・マックグラスHCは「全てはオリンピック出場を目指してやっている」と語った。その目標が現実となったのが昨年7月。そこからチームは2020年7月を目指してトレーニングに励んできた。ヒラヤマ選手は、「去年の8月後半から(セブンズシリーズ)シーズンに向けて準備を始めて。でも(今年の)標準は夏」と語った。すべては2020年夏に向かっていた。

 3月初めのカナダセブンズまでに調子を上げ、チームはいい感触をつかんでいた。「ここまでシーズン前から8カ月かけてチームは目標に向かっていい方向に進んでいる」と語った。言葉通りチームはカナダセブンズで銅メダルを獲得。優勝すらできる勢いだった。試合後「残りのセブンズシリーズでさらにいい成績をあげて東京に向かっていきたい」、そう意気込んでいた。キャプテンとして同じくベテランのハリー・ジョーンズ選手とここまでチームをけん引してきた。念願のオリンピック初出場に向けてチームは着々と準備を進めている。

日系4世 日本で開催されるオリンピック出場は特別

 チームカナダとして夢の大舞台オリンピックへの初出場はもちろん、日系カナダ人として「日本で開催される五輪でプレーできることにもちろん特別な思いがあるよ」と語る。曾祖父母がカナダに移民してきた日系4世。他の選手と比べて特別小柄というわけではないが、他国代表のように大柄な選手でもない。それでもチームカナダにとってはなくてはならないキャプテンであり、最多トライ選手であり、得点王の#9だ。

 父ゲリー・ヒラヤマさんによると、ヒラヤマ選手は18歳からカナダ代表に選出されてきたという。15人制ラグビーでは何度も、カナダ代表として日本でプレーしている。それでも東京五輪は特別だ。「もし五輪代表に選出されたら、家族もそれが自分にとって特別な意味を持つってことを理解してくれていると思う。家族にとっても特別だよ」と語った。

 実はゲリーさん自身も、1980年にカナダが初めて参加した香港セブンズで代表としてプレーした経験を持つ。カナダ『オリジナルセブンズ』の一人だ。「私自身、もちろん大きい方ではないけど、今の7人制は昔とは比べ物にならないほど、体も大きいし、スピードも、パワーもすごい」。7人制ラグビーそのものが進化していく中で、自分の息子がカナダ代表で東京開催のオリンピックに出場できれば、うれしくないはずがない。

 ヒラヤマ選手のことを聞くと、「ベテランとしてジョーンズ選手と一緒にチームを引っ張って、チーム一丸でここまで戦っている」と、決してカナダ代表キャプテンを務める息子を手放しでは誉めないが、「東京にはもちろん家族で行くよ」と満面の笑み。家族も東京五輪に向け気合十分、「準備は万全」と笑った。

 カナダセブンズ開催時にはすでに新型コロナウイルス感染拡大がスポーツに影を落とし始めていたが、ゲリーさんは「東京五輪が開催されるかは新型コロナウイルスの状況次第だけど、ネイサンやがんばってきた選手たちのためにも開催されることを願っているよ」と語った。

2019ラグビーW杯カナダ代表について

 7人制に専念する前は15人制でもプレーしていたヒラヤマ選手。2019年9月から日本で開催されたラグビーワールドカップも、もちろん注目していた。「カナダ代表は残念ながら1勝もできなかったけど日本の人々からすごく喜ばれていたね」と試合が中止となった釜石で、カナダ代表が台風被害にあった街の片づけを手伝ったエピソードを知っていた。

 「チームのみんなはいい奴ばかりだから。カナディアンらしい行動だったよね」と笑った。試合の結果は残念だったと思うけど「日本でいい経験をしていたと思うし、カナダのラグビー界にとっても、すごくいい影響があると思う」と語った。福岡での初戦で会場のほとんどのファンがカナダを応援していたと知ると、「それってすごくかっこいいね」と驚いて、次のW杯も目指してほしいとエールを送った。「(主催国だった)日本の大会運営はすごくよかったと聞いているし、東京五輪も同じようにいい大会にしてくれると期待している」と語った。

出場できたら五輪を思い切り楽しみたい

 五輪代表に選出されたらと前置きして、「もちろん選手として全力を尽くしたい」と語った。ラグビーは大会期間中2日間しか試合がない。あとの時間がどれくらいあるかは分からないけどと言って、「他のスポーツも楽しみたい。選手村での経験とかも含めていろんな経験をしたい。日本での体験もすごく楽しみ。フィールドの内外で満喫したい」と笑う。

 真夏の日本での開催に、「想像を絶するほど暑くて湿気があるとは聞いているけど」とヒラヤマ選手。「大会前には暑さ対策もするだろうし、条件はみんな同じ。有利に働くとすれば日本代表くらいかな」とあまり気にしていない様子だ。五輪対策といえば、日本語も少し始めているとか。「ずっと習ってみたいと思っていたから。これ(自分が日本語を話せないこと)については父に文句を言いたい」と笑った。

 ラグビー五輪代表選手は大会直前に選出される。チームは新しいHCの下、ヒラヤマキャプテンとジョーンズ選手のベテランが若手を率いてまとまったチームになっている。五輪でもこれらの中心選手らが東京で活躍してくれるに違いない。

東京2020オリンピックの1年延期が決定

 カナダセブンズが無事に終了した2週間後の3月22日、カナダオリンピック委員会とパラリンピック委員会は連名で、新型コロナウイルス感染拡大への懸念から、2020年東京五輪への参加見送りを発表した。難しい決断だったが、選手やその家族の健康を考慮し、2020年内に開催される場合は参加しないと決定したと説明した。その後、国際オリンピック委員会(IOC)は、2020年7月24日に開幕を迎えるはずだった東京五輪の1年延期を決定した。4月9日付けのIOCホームページによると、すでに2020年東京五輪への出場が決定している選手・代表国について出場資格はそのまま有効としている。

 選手たちにとって五輪に向けた調整も1年間延長されることになったが、初出場を決めたラグビーカナダ代表をはじめとする選手やスタッフ、支えてきた家族のためにも来年7月に無事開催することを願いたい。

(取材 三島直美 / 写真 斉藤光一)

カナダセブンズ1日目最終戦を終えて地元テレビ局のインタビューを受けるヒラヤマ選手。3月7日

カナダセブンズ2日目第1試合スペイン戦。21-0と快勝。3月8日

ヒラヤマ選手の父ゲリー・ヒラヤマさん。3月8日BCプレース

大声援を送るヒラヤマ選手の応援団(?)3月8日BCプレース