「冬至の日*駿河の海に富士ひかる」

カナダde着物

第78話
*里帰りで着物を学ぶ*

 いよいよ、今年の二十四節気も冬至を迎えました。

 世界中では、依然として紛争や戦争が続き、心を痛める出来事が後を絶ちません。
 日々報じられるニュースに、不安を感じることも多かったのではないでしょうか。

 そのような中でも、私たちはそれぞれの場所で日常を重ね、人とのつながりや、学び、ささやかな喜びに支えられながら、この一年を歩んできたように思います。

 冬至は、一年で最も夜が長い日であると同時に、ここから再び光が増していく節目でもあります。

 どうかこの冬至が、皆さまにとって心を静め、次の季節への希望を見出すひとときとなりますように。
 寒さ厳しき折、くれぐれもご自愛ください。

「Peace, Love, and Passion」Manto Artworks
「Peace, Love, and Passion」Manto Artworks

 晩秋の日本へ里帰りをしています。

 駿河湾を囲むように私の故郷静岡県はありますので、東京へ向かう時も大阪へ向かう時も、どちらかの肩側に駿河湾を横にし、お天気がいい日には、雪を覆う富士山を見ながら目的地へ向かうようになります。
 今年の秋は、珍しく肌寒い日もあり、富士山はうっすらと雪化粧、青空とのコントラストが美しい姿を見せてくれました。

「晩秋の富士山」コナともこ
「晩秋の富士山」コナともこ

 静岡の自宅とグループホームに暮らす両親は、会うたびに少しずつ体が小さくなっていきます。 小柄な私でさえ、自分のほうが成長しているのではないかと錯覚してしまうほどです。

 それでも、好奇心旺盛な二人は、デイサービスやホームで行われるさまざまなアクティビティに積極的に参加しています。
 母は俳句や書道に親しみ、父は毎日新聞に目を通し、いつまでも時代の流れを感じていたいという思いがあるのでしょう。

 日本人は、季節を楽しみ、外からの文化を柔軟に取り入れながら、日々の暮らしを楽しむことを大切にしてきました。

 そのため、シニア向けのアクティビティも非常に充実しており、カナダに住む私たちも、ぜひ見習ってみたいものです。

「季節を楽しむ日本の食文化、秋の和菓子、米寿のお祝いに金目鯛の煮付けをリクエストする母」コナともこ
「季節を楽しむ日本の食文化、秋の和菓子、米寿のお祝いに金目鯛の煮付けをリクエストする母」コナともこ

*今日の着物*Today’s Kimono*
「里帰りで着物を学ぶ:きもののヒミツ 友禅のうまれるところ」

 私が静岡に到着した折、ちょうど静岡市美術館で、きものの特別展覧会が開催されていました。
 これはぜひ見たいと思い、早速、幼なじみと一緒に出かけることにしました。

 彼女は、春の里帰りの際にも私に付き合ってくれた友人で、着物や帯の制作にも携わる、共通の“着物好き”でもあります。
 作品を見る目も確かで、展示を前に交わす会話は尽きることがありませんでした。

 京都と静岡の二都市のみで開催されたこの展覧会は、友禅の老舗・千穂のコレクションを中心に構成され、近世の着物や当時流行した雛形本、友禅染裂、染め型、さらには人間国宝によるきもの作品などが紹介されていました。
 デザインが生み出される背景や、制作者の創意に迫る内容は、「きもののヒミツ」と題され、見応えのあるものでした。

「静岡市美術館にて”きもののヒミツ 友禅のうまれるところ”展覧会にて」 コナともこ
「静岡市美術館にて”きもののヒミツ 友禅のうまれるところ”展覧会にて」 コナともこ

 真っ白な館内に並ぶ、豪華絢爛なきものの数々。
 日本刺繍の繊細さや洗練されたデザインは、百年以上前のものとは思えず、今なお新しささえ感じさせます。

 一反の布に込められた技と美意識、そして時代を超えて受け継がれてきた感性に触れながら、着物が単なる衣服ではなく、日本の文化や精神を映し出す存在であることを、改めて実感しました。

 幼なじみと静かに作品を見つめながら過ごした時間は、心豊かなひとときとなりました。

「着物の撮影はできませんでした。美術館のショップには着物に関する専門書が並んでいました。」コナともこ
「着物の撮影はできませんでした。美術館のショップには着物に関する専門書が並んでいました。」コナともこ

*今年最後のご挨拶*My last greeting of the year*

 今年も残すところ、あとわずかとなりました。皆さまにとりまして、どのような一年だったでしょうか。

 本年も、和の学校@東漸寺ならびに東漸寺では、日本文化を通じて、季節の行事やさまざまな教室、ワークショップを開催してまいりました。日本を離れて暮らしていても、学び、楽しめることはたくさんありますね。

 そこで得た知識や経験を生かし、カナダの皆さんへ日本文化を紹介する「大使」としてのご活躍も期待しております。大それたことをしなくても、日々の暮らしの中に和の文化を取り入れて過ごすことは、十分に意義のあることだと思います。

 どうぞ皆さま、良いお年をお迎えくださいませ。

コナ ともこ
(和の学校@東漸寺 主宰)

「Rainbow & I」Manto Artworks
「Rainbow & I」Manto Artworks

*参照*

暦生活
https://www.543life.com

静岡市美術館
https://shizubi.jp/

展覧会「きもののヒミツ:友禅の生まれるところ」
https://shizubi.jp/exhibition/20251025_kimono/251025_01.php

「着物語り」
コナともこさんが着物の魅力をバンクーバーから発信する連載コラム。毎月四季折々の着物やカナダで楽しむ着こなしなどを紹介します。
2020年8月から連載開始。第1回からのコラムはこちらから

コナともこ
アラ還の自称着物愛好家。日本文化の伝道師に憧れ日々お稽古に励んでおります。
14年前からコキットラム市の東漸寺で「和の学校」を主宰。日本文化を親子で学び継承する活動をしております。

年間を通じて季節の行事に加え、お寺での初参り、七五三祝い、十歳祝い、元服祝い、二十歳祝い、結婚式、生前葬、お葬式などの設えと装いのお手伝いもさせていただいております。

*詳しくはコナともこ までお問い合わせ下さい。tands410@gmail.com
東漸寺は非営利団体で、和の学校の収益は東漸寺の活動やお寺の維持の為に使われています。

カナダ人の夫+社会人と大学生の3人娘がおり、バンクーバー近郊在住。

和の学校ホームページ https://wanogakkou.jimdofree.com/
インスタグラム https://www.instagram.com/wa_no_gakkou_tozenji/
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東漸寺Tozenji Temple https://tozenjibc.ca/

コナともこ
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「東漸寺🌸春🌸2024」Manto Artworks
「東漸寺🌸春🌸2024」Manto Artworks