ひょうたんアーティストあらぽんさん、バンクーバーで展示会

作品を持つあらぽんさん。展示会場で。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ
作品を持つあらぽんさん。展示会場で。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ

 ひょうたんアーティストとして活動しているあらぽんさんが今年9月にバンクーバーで展示会を開催した。会場はバンクーバー・ダウンタウンのアート展示スペース。5人での共同開催となったが、昨年11月の初訪問時に語っていたカナダでの展示会を1年たたないうちに実現した。

 一つひとつ夢を叶えていくあらぽんさんに展示会場で話を聞いた。

カナダでの展示に向けて日本で準備

 日本ではカナダでの展示会開催を前提に作品に取り組んでいたという。「カナダっぽい作品や、カナダをイメージする作品を作っていました」。テーマはカナダの自然。昨年バンクーバーを訪れた時のイメージや人から聞いたことを基に作品のイメージを作り上げていった。

バンクーバー市で人気のスタンレーパークをイメージして作った作品「Stanley Park」。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ
バンクーバー市で人気のスタンレーパークをイメージして作った作品「Stanley Park」。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ

 「カナダの人って森とか海とか自然を大切にするという印象があって、海や森をテーマに多く作りました。それ以外では、カナダの人が好きそうな日本の柄で、今回は初めて和紙と絵具を混合して作ったんです」

 普段の作品では和紙と絵具を合わせて作るということはないという。「新しい挑戦でしたね」。ヒントは昨年のバンクーバーでのワークショップ。参加した子どもたちが、和紙の上から色を塗っていたのを見て、「もともと色が付いている和紙に色を付けるという発想は僕にはなかったのでアートでも使えるな」と昨年のインタビューで語っていた。

和紙とマーブリングを融合させた作品。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ
和紙とマーブリングを融合させた作品。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ

 今回は「マーブリングした後に和紙で装飾した作品を作ってみました」と説明する。これまでのこだわりを捨て、なにか新しいものと考えた時に「混ぜちゃえばいいんだって。これでカナダの人で和が好きな人にも、マーブリングが好きな人にも、どっちにも刺さるかなって」。作品として上手くできたと自負する。

 そうして作った約20点を展示販売。展示会開催をドキドキしながら迎えた。

「自分のアートを選んで買ってくれたのはすごくうれしい」

 9月1日の展示会の前日、バンクーバーで開催されていた台湾フェスティバルでも販売を試みた。次の日の本番前の前哨戦だ。しかし「洗礼的な雰囲気でした。ヤバいこれ、みたいな。3時間で販売ゼロみたいな感じで、超心が折れまくってました」。

 そうして迎えた当日。「昨日の今日でもう大丈夫かなって、不安でした」。しかしふたを開けてみると「入場前からお客さんが待ってくれていて。今日はずっと人がいっぱい入っている状態で。皆さんの協力に感謝です」とうれしそうだ。今回もGifts and Thingsオーナー佐藤広樹さんやスタッフ、日本カナダ商工会議所がサポートした。

展示会場の様子。多くの人が作品を鑑賞していた。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ
展示会場の様子。多くの人が作品を鑑賞していた。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ

 口コミで多くの人が来てくれたようだと話す。「人から教えてもらってきたよって人が多かったみたいです。『楽しかったよって言われたから来ました』とか言ってもらって」。展示会は1日のみの開催。「午前中に来た人が友達に伝えて、こうして(夕方に)来てくれているみたいで。本当にうれしいですね」と笑顔が弾けた。

 インタビュー中にも購入者が話をしたいからということで中断するほど。絵を買った人の中にはカナダの人も多かったという。

ひょうたんに込めた思い

 今回の展示から始めたというのが「メッセージボトル・シリーズ」。作品の中のひょうたんを海岸に流れ着いた「メッセージボトル」に見立て、「気持ちはいつか誰かに伝わるよって意味を込めています」と語る。

バンクーバーのガスタウンをイメージした作品。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ
バンクーバーのガスタウンをイメージした作品。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ

 「海に来ている時って、10人いたら10通りの気持ちで来ていると思うんです。楽しい、うれしい、悲しいとか。その気持ちによって海の見え方も違っていると思います。ひょうたんは海に流れ着いたメッセージボトルをイメージしていて、それぞれ色々な気持ちで海に来ていると思うけど、メッセージボトルが海岸に届くように、うれしい気持ちも、悲しい気持ちも、いつかは誰かに届くよって」。

 そうして気持ちを込めて創作した作品を買ってくれる人がいるのは「むちゃくちゃうれしい」という。

 「色々なアートがある中で、自分のアートを選んでくれて、買ってくれて、それで飾って毎日見てくれるわけじゃないですか。自分の絵を見てそういう感覚になってくれたのはめちゃくちゃうれしいです。自分が思っていることが伝わっているんだなって、感じますね」

次はカナダで個展を

 昨年バンクーバーでワークショップを開いた時には次の目標は「カナダで個展を開く」だった。今回はクラウドファンディングを立ち上げて展示のための資金を集めたが目標額には少し足りなかったという。それでも個展とはならなかったが、展示会は実現できた。次はバンクーバーで個展を開きたいと話す。

 そしてもう一つ、自分の作品を評価してもらえるコンテストのようなイベントに出店したいという。それが何なのかはまだぼんやりとしか見えていないが、「こんな作品を作っている日本人がいるぞって分かるようなことを何かやってみたいなと思います」と語った。

 作品はいまも自身で育てたひょうたんを使っている。今年は夏が暑くひょうたんの出来にも影響したということだが、秋に収穫したひょうたんが来年の作品になるという。

 これまでひょうたんが縁でさまざまな夢を実現してきたあらぽんさん。次の目標に向けて、さらなる1歩を踏み出しているようだ。

小さいひょうたんを使った作品。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ
小さいひょうたんを使った作品。2025年9月1日、バンクーバー市。撮影 三島直美/日加トゥデイ

(取材 三島直美)

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