「グッドニュース(英語題 Good News)」(ビョン・ソンヒョン監督)ハイジャック事件を題材にした政治的ブラックコメディ

「グッドニュース(Good News)」より。Courtesy of TIFF
「グッドニュース(Good News)」より。Courtesy of TIFF

 カナダでは、トロント国際映画祭とバンクーバー国際映画祭が盛況のうちに幕を閉じ、今年も多くの良作が上映されました。今回ご紹介する「グッドニュース(Good News)」(ビョン・ソンヒョン監督)は、トロント国際映画祭でプレミア上映され話題となった韓国作品で、1970年代に実際に起きた航空機ハイジャック事件をモチーフにした、社会派ブラックコメディです。

あらすじ:物語は、日本から北朝鮮への亡命を企てる過激派グループの青年たちが、民間航空機をハイジャックするところから始まります。事件を受け、韓国の中央情報部は正体不明のフィクサーを投入し、極秘作戦を計画。日韓両国の政府高官たちは世論操作と情報戦に奔走し、事件を都合よく作り替えようとします。報道統制、対外プロパガンダ、そして捜査の混乱などが次々と描かれ、事態は予想外の方向へと展開していきます。

「グッドニュース(Good News)」より。Courtesy of TIFF
「グッドニュース(Good News)」より。Courtesy of TIFF

 物語は序盤からテンポよく進み、登場人物たちの会話にはユーモアと皮肉が巧みに織り込まれ、シリアスなのに思わず笑ってしまうシーンが多くあります。情報のねじ曲げや責任の押し付け合い、政治的駆け引きなどが、リアルさと可笑しさの絶妙なバランスで描かれています。

 例えば、どう見ても混乱状態なのに、「これは我々の勝利だ」と言い張る官僚たちや、何かを言っているようで実は何も言っていない官僚の言葉の数々など、国家の威信、メディアの圧力、そして登場人物たちの都合や打算が入り乱れ、観ている側は笑っていいのか戸惑いながらも、つい吹き出すシーンがたくさん。

 脚本の良さはもちろんですが、作品の最大の魅力は俳優陣の力強い演技です。火消し専門の裏の男として登場し、ミステリアスなのにどこか可笑しさも感じさせるソル・ギョング、ハイジャック犯のリーダーを冷静かつ狂気を秘めて演じる笠松将、誠実な韓国の将校を演じるホン・ギョン、日本の運輸政務次官として登場し政治の駆け引きと滑稽さを演じた山田孝之など、それぞれ自分の役割に誠実に取り組む人物をリアルに、かつコメディとしての面白さを損なわずに演じていました。

 「グッドニュース」は、実話をベースにした重い題材をユーモアたっぷりに描き切った、韓国映画らしい社会派エンターテインメントです。笑いと皮肉を交えながら「国家」、「メディア」、そして「真実」のあり方に鋭く切り込んでいきます。笑った後に、「これ実話ベースなんだ」と考えさせられる、見ごたえのある作品でした。

 10月17日からNetflixで配信開始となりました。

TIFF会場で上映後に登壇した「Good News」の(左から)笠松将さん、ホン・ギョンさん、ソル・ギョングさん、ビョン・ソンヒョン監督。笠松将さんは流暢な韓国語で挨拶をしていました! 撮影 Lala
TIFF会場で上映後に登壇した「Good News」の(左から)笠松将さん、ホン・ギョンさん、ソル・ギョングさん、ビョン・ソンヒョン監督。笠松将さんは流暢な韓国語で挨拶をしていました! 撮影 Lala

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バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
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Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
良いストーリーには世界を豊にるす力があると信じてます
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