「映画を作りたい人へ捧げる」バンクーバー国際映画祭セミナー

左からSung Moonさん、Rebecca Steeleさん、Seo Woo-Sikさんと通訳。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
左からSung Moonさん、Rebecca Steeleさん、Seo Woo-Sikさんと通訳。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

国境を越えた映画のコラボ

 バンクーバー国際映画祭では映画上映だけではなく、セミナーやコラボイベントも多く開催されている。10月7日には「Co-Producing Across the Pacific: Bridging Canadian and Korean Stories」と題するセミナーがVIFFシアターで開催された。

 これはSpotlightイベントの一環で、太平洋の国境を越えて結ぼうとする新しい試み。第1回のセミナーには映画をこれから作りたい人や映画関係者など多くが参加した。

映画を作る基本

 映画を作るためにはまず観客を知らなければならない。今観客は何を求めているのか、作り手はまず彼らの声に耳を傾ける。歴史物では事実の背景をリサーチして忠実にストーリーを伝える。良い人、悪い人などキャラクターにも焦点を当てる。作る、繋ぐ、改革するなど映画作りの基本を学ぶことが大切。そして何よりも後世に残すことを考える。何も残せなければ映画の未来はない、というぐらい自分の情熱を伝え残すのが大切だ。

 オープニングからいきなりそんな助言的な発言が飛び出したセミナー。この日のゲストは韓国からCEOで「Okja」などのプロデューサーSeo Woo-Sikさんと、Jeonju映画祭のプログラマーSung Moonさん、そしてカナダからは国際映画製作をしているRebecca Steeleさんの3人がスピーカーとして参加した。

 「韓国映画にはアメリカ・ニューヨークみたいな大きな予算はないし、ハリウッド的な1人の強いヒーローを作るのも容易ではない。韓国の男優においては80%がデートしたいタイプで、夫風でなくロマンチックな男性が求められています」とSeoさんが話すと会場が爆笑した。

 「韓国政府はこれまで30年以上映画を推薦していて、公私に関わらず外国からの映画製作に協力的です。税額も映画の大きさを考慮してくれるし、少ない予算のために値引き交渉もできます」とSungさんが話すと、「まず自分が何を作りたいか、何を提供できるかをクリアにすること。ただ資金が欲しいというだけはでなく、相手側に与えるものも必要。コラボはギブ&テイクを踏まえて交渉する」とSeoさん。「例えばこの俳優と一緒に写真が撮れるという利点はグラントやファンディングに使える」と笑った。さらに「自分のストーリーのアイデアと、映画祭のこんな映画を探しているがマッチすれば、もっとファンディングが出る」とも話した。 

国際コラボについて

 「最近は映画祭でもアジアとヨーロッパなど国際コラボの作品が増えました」とSungさん。Seoさんは「コラボでは各国の法律や税金についてプロデューサー同士がまず話し合う」と話す。「例えば、ある監督は大きな機材を注文して全く必要なかったにも関わらず、50%の予約料が取られて予算に響いたこともあります」と説明した。カナダのSteeleさんも「マリファナが認められているカナダでは、吸わないと仕事ができないスタッフが数人いて、彼らはロケ地からすぐ帰国しなければなりませんでした」とつけ加えて、「システムやカルチャーの違いは事前に知っておかなければならない事項です」と忠告した。

 また、韓国では映画の予算・ロケーションやスタッフなどのコンタクトリストが用意されているので外国人の監督でも予算の見積もりはしやすいが、美しい景色が撮れるカナダでは州ごとに税金や法律が違うし、各プロデューサーの報酬も違う、「どうやって税金の返金が受けられるのかなど、誰に聞いたらいいのか全く分からなかった」など、Seoさんはこれまでの国が違うからこその苦労話も披露した。

 観客から「韓国でゲリラ撮影(撮影許可なし)でも警察に捕まらないか」という質問には、「そうすると上映させてもらえなくなるかも」と笑って、「予算が少ないインディーズ映画だからディスカウントをください」と積極的に政府に頼んだ方がいいと回答。ちなみにSeoさんのようなプロデューサーはいつも次のコラボ作品を探しているので、ぜひ映画の大小に関わらず積極的にプロジェクトの声を上げてほしいとのことだった。

VIFFシアターでのセミナーの様子。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today
VIFFシアターでのセミナーの様子。2025年10月7日、バンクーバー市。Photo by Jenna Park/Japan Canada Today

(取材 Jenna Park)

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