バンクーバーが1年で最も華やぐ10日間、バンクーバー国際映画祭(VIFF)が10月2日に開幕する。すでに今年のラインナップも発表され、チケット販売も開始。徐々に雰囲気が盛り上がっている。
今年のVIFFは例年以上に上映映画が多く、うれしいことに日本映画も日系や短編も含め10作品となっている。
そこで今回は日本映画を紹介しよう。
「見はらし世代(Brand New Landscape)」団塚唯我監督

(日加トゥディ・メディアパートナー作品)
舞台は再開発が進む東京・渋谷。主人公の蓮(黒崎煌代)は配送運転手として働く。母親を亡くして以来、疎遠になっていた父(遠藤憲一)とある日再会する。姉は父に全く関心がなく、黙々と自分の結婚の準備を進めている。蓮はこれを機会にもう一度家族だけで過ごしてお互いの距離を測り直そうと考える…。
監督は短編「遠くへいきたいわ」の団塚唯我監督。「見はらし世代」はオリジナル脚本・初長編の作品で、日本人史上最年少の26歳で、いきなり今年のカンヌ国際映画祭の監督週間にも選出された。映画は渋谷の普遍的な家族の風景から、都市再開発がもたらす影響までを繊細に切実に描くと同時に、軽やかな新人監督ならではの日本映画に仕上がっている。
日本では10月10日に全国公開。
https://viff.org/whats-on/viff25-brand-new-landscape
「あかし(Akashi)」吉田真由美監督

バンクーバー在住の吉田真由美監督の映画「あかし」の主人公は、アーチストの夢を追って10年間バンクーバーに住み続ける山本かな(監督兼俳優の吉田真由美)。ある日祖母の訃報を聞き葬儀に出席するために東京へ戻る。昔付き合っていた男性ヒロ(田島遼)と再会し、祖母の過去をたどるうちに、家族の秘密や今まで感じたことのなかった感情に出合う。
白黒とカラーの交差した撮影が、かなの感じる愛、義務、自分の居場所などの感情を豊かに表現している。世界初プレミアはもちろんバンクーバー国際映画祭。
https://viff.org/whats-on/viff25-akashi
「国宝(Kokuho)」李相日監督

「壮大な芸道映画」を書くために3年間も歌舞伎の楽屋に入った原作者の吉田修一さん。ストーリーは歌舞伎役者の家に引き取られた主人公・立花喜久雄(吉沢亮)の50年の記録を描く。「任侠抗争」によって父を亡くした喜久雄は美しい顔立ちをしていたため、見初められて歌舞伎の世界へ。血筋と才能、歓喜と絶望、信頼と裏切りの中で苦しみながら進んで行く主人公が、国の宝になるまでを描く。
監督は「フラガール」で日本アカデミー賞の最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞を受賞した李相日監督。4代目中村鴈治郎さんが俳優として参加し、女形を演じる俳優陣の歌舞伎指導にあたったという。喜久雄のライバル役に横浜流星、歌舞伎名門の当主に渡辺謙、さらに日本映画に欠かせない豪華俳優たちが結集する。
https://viff.org/whats-on/viff25-kokuho
「西海楽園(Saikai Paradise)」鶴岡慧子監督

映画「まく子」と「バカ塗りの娘」でVIFFに登場した鶴岡慧子監督。これまで青森、群馬、長野など各地の風景を撮り続けてきた監督が、学生時代からの盟友で俳優の柳谷一成を主演にして、彼の生まれ故郷である長崎県西海市で撮影した作品。タイトルは実在し2007年に閉園した仏教テーマパーク「西海楽園」から来ている。
東京で苦闘する俳優・カズナリ(柳谷一成)は、俳優としては行き詰まり、婚約も破談となるなど度重なる失敗の末に故郷の長崎県西海市に親友のウエハラ(上原大生)と帰ってくる。家族が営む小さな豆腐店や、懐かしい顔ぶれに温かく迎えられるが、彼の心には失敗の痛みが残り、見慣れたはずの街並みもどこか遠く感じられる。そんな宙ぶらりんな感情で、一成は幼なじみの親戚・ミキ(木下美咲)と出会う。彼女との交流を通じて、一成はかつて故郷の夢の象徴だった廃墟となった遊園地「西海楽園」へと導かれていく。
https://viff.org/whats-on/viff25-saikai-paradise
「まっすぐな首(A Very Straight Neck)」空音央監督

昨年のVIFFで「HAPPYEND」が上映され好評だったニューヨーク在住の空音央監督。この最新作は今年8月のロカルノ国際映画祭でプレミア上映し、最優秀短編映画賞を受賞したばかり。
首の激しい痛みと共に目覚めた女性(安藤サクラ)は自分の子ども時代の記憶を思い出す。悪夢が徐々に身体に影響して、過去と現在が混ざり合い、彼女はバランスを失っていく…。
短編映画だが、予告だけではホラーなのかアニメなのか内容も不明なのでこれは見てのお楽しみ。
https://viff.org/whats-on/viff25-a-very-straight-neck
「粒子のダンス(particle dance)」岡博大監督

岡博大監督が大学時代の恩師、建築家・隈研吾氏を後世へ継承しようと、2010 年から15 年もかけて自主制作したドキュメンタリー映画。映像には世界16カ国80以上の建築プロジェクトが登場している。東日本大震災に伴う東北での復興プロジェクト、2020年東京オリンピック、新型コロナウイルス禍などで、絶えず新たな建築のあり方を問いながら提案し続ける隈氏。彼が普段旅する姿や建築教育の様子などを追う紀行映画。
https://viff.org/whats-on/viff25-particle-dance
「ルノワール(Renoir)」早川千絵監督

舞台は1987年夏の東京郊外。主人公沖田フキ(鈴木唯)は感受性と想像力の強いまだ11歳の少女。闘病中の父(リリー・フランキー)と仕事に追われる母(石田ひかり)と3人で暮らしている。親から十分にかまってもらえないフキは、それぞれ別の事情を抱えた他の大人たちと出会う。
監督はデビュー作「Plan 75」でいきなりカンヌ国際映画祭の新人監督部門で特別表彰を受けた早川千絵監督。この作品も今年同映画祭の最高となるコンペティション部門に招待された。
https://viff.org/whats-on/viff25-renoir
「レンタル・ファミリー(Rental Family)」Hikari 監督(言語:英語)

日本・アメリカの共同制作で、日本人俳優・柄本明や平岳大が出演するコメディドラマ。監督は「37セカンズ」でベルリン国際映画祭パノラマ観客賞を受賞しているHikari(宮崎光代)監督。
一人で東京に住む孤独なアメリカ人俳優(ブレンダン・フレイザー)は、ふとしたことから「レンタル・ファミリー」ビジネスで見知らぬ人たちの家族を演じることになる。だがそのうち彼も新しい家族と…。今月トロント国際映画祭でプレミア上映の作品。
https://viff.org/whats-on/viff25-rental-family
「Tears Burn to Ash」ナタリー・ムラオ監督

日系カナダ人4世ナタリー・ムラオ監督の短編映画。
タミーは20代の日系カナダ人女性。東京に到着した彼女は、バンクーバーに住む祖母が危篤であるという思いがけない知らせを受ける。タミーはその後の12時間を東京のナイトライフの中で過ごしながら、家族の死、過去とのつながり、そして自身の文化的ルーツという、避けられない喪失感と向き合うことになる。
https://viff.org/whats-on/viff25-tears-burn-to-ash
「その花は夜に咲く(Skin of Youth)」アッシュ・メイフェア監督

舞台は90年代のベトナム・サイゴン。望まぬ性に生まれナイトクラブで働くサンとボクサーのナムは二人で静かに暮らしていた。だが高額な手術費が必要なサンのために、より稼ぎの良い闇の仕事を引き受けてしまうナム。運命が狂い始めた二人の愛の行く末は…。
運命の鍵を握るミスター・ヴーン役に「侍タイムスリッパー」で好演した井上肇が、全てベトナム語で魅せてくれる。監督は「第三夫人と髪飾り」で注目されたベトナムのアッシュ・メイフェア監督。
https://viff.org/whats-on/viff25-skin-of-youth
バンクーバー国際映画祭
期間:2025年10月2日~12日
会場:バンクーバー市内10カ所
ウェブサイト:https://viff.org/festival/viff-2025
チケット:大人21ドル、シニア19ドル、学生・ユース16ドル、6枚チケットパック120ドル・10枚チケットパック180ド(チケットパック学生シニア料金あり)、その他詳しくはviff.org/ticket-infoを参照
(記事 Jenna Park)
VIFFチケット読者プレゼントのお知らせ
毎年実施しているVIFF読者プレゼント。今年は日加トゥデイのメディアパートナー作品「見はらし世代(Brand New Landscape)」を10名に、好きな映画を選べる一般チケットを10名にプレゼントします。
希望の方は件名に「VIFFチケット希望」として、「見はらし世代(Brand New Landscape)」もしくは一般チケットのどちらを希望するか明記してください。
応募先は、promo@japancanadatoday.ca。締め切りは9月12日(金)午後5時。抽選の上、当選した方に直接連絡いたします。
みなさまのご応募をお待ちしております。
(編集部)
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