進むおっさん化、進化する血糖値測定器

 新年のご挨拶が大変遅くなりましたが、日加トゥディ読者の皆様、明けましておめでとうございます。2026年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 昨年は何かにつけてワクチンや感染症の話題が多くなってしまいましたが、今回は少し軌道修正して、糖尿病と血糖値測定の進化について書いてみようと思います。というのも、実は私、糖尿病指導士(Certified Diabetes Educator)の資格を持っています。この資格は5年に一度更新する必要があるのですが、新年早々、その更新案内(つまりテスト受験)が届いたので、今日はこのテーマで話をしましょう。

 思い返せば今から17年前、移民申請時の健康診断で「糖尿病っぽいですねー」と言われ、思わずドキッとしたことがありました。当時はカナダでの仕事に慣れようと必死で、知らないうちにストレスが溜まり、毎晩大きな箱を抱えてアイスクリームを食べていたのが原因だったと思います(そう、まるでくまのプーさん状態です)。学生時代にテニスに打ち込んでいた頃と同じ感覚で、運動量は減っているのに摂取糖分だけは多いという生活を続ければ、やはり血糖値が高くなるのも無理はありません。しかも新潟育ちの私は、基本的にお米を主食としていましたから、どうみても糖質の取り過ぎだったのでしょう。

 その後、一時的には気をつけていたものの、育児などに追われ、どうなったかといえば、とにかく加齢の影響(おっさん化)が体型などに顕著に現れてきて大変です。最近は老眼まで入り、私にとってこれらは全て予想外の出来事です。

 とにかく仕事中心の生活で運動量が減り、年齢とともに代謝も落ちる。すると、以前と同じ食事をしているつもりでも血糖が上がりやすくなる。そんなことは頭では分かっているのに、具体的に何ができるのかと考えた時に、じゃあ運動でもしようかなという行動になかなか移せないのが今までの現実です。

 そんなタイミングで、アボット社の「FreeStyle Libre 3」という、上腕の後ろ側に装着するタイプの血糖値測定センサーのサンプルが届いたので、勉強がてら試してみることにしました。

 従来の血糖測定は、指先から採血して、その瞬間の値を確認する方法でした。必要なときに確実に測れる一方で、食後のピークを逃したり、上がっている途中なのか下がっている途中なのかが見えにくかったりします。何より、毎回の指先の穿刺(せんし)が負担でした。

 そこで近年一気に普及したのが、センサーを皮膚に装着して連続的に変化を追えるタイプの血糖値測定器です。私のところに届いたアボット社の FreeStyle Libre 3 は、上腕の後ろ側に25セントコインくらいの小さなセンサーを貼り、スマートフォンのアプリで血糖値を確認できるシステムです。測定値が約1分ごとに自動更新され、Bluetooth通信でアプリに送信されます。同様の仕組みのセンサーに「Dexcom」というブランドもあり、これらは特にインスリン投与を必要とし、1日に何度も血糖値の測定を必要とする糖尿病患者さんの間で幅広く使用されています。

 ちなみにLibre3以前に幅広く使われていたLibre 2では、血糖測定のために、毎回センサーを携帯電話や専用のリーダーでスキャンする必要がありましたが、Libre3ではこのスキャン自体が不要となりました。

 さらに、Libre3では、数値だけでなくトレンド矢印(上昇・下降の方向)が一緒に見えるので、今現在の値だけでなく、これからどう変化していくかというところまでイメージしやすくなります。これはインスリンを使用している患者さんの低血糖予防に大変役に立つ機能です。Libre3センサーは最大15日間装着でき、日常生活(シャワーや水泳など)にも対応する耐水性が示されています。

 Libre3のアプリのレポート画面では、血糖(正確にはグルコース)の平均値に加えて、目標範囲に入っていた割合を示すTime in Range(範囲内/高め/低めの滞在時間)、平均センサー値から推定したHbA1cの目安となるGMI(Glucose Management Indicator)、そして日内のブレを示すグルコース変動(Variability)などが一目で確認できます。これらの指標によって、いつ上がりやすい、または下がりやすいかが見える化され、食後・夜間・運動時などの血糖の傾向をつかむのに役立ちます。

 気になるお値段ですが、Libre 3のセンサーは薬局にもよりますが1個あたり約100〜120ドル、1か月あたり約200〜250ドルが目安になります。一方、従来型の血糖測定器では、テストストリップ100枚が約80ドルで、測定回数が多い方ほどストリップ代がかさみますので、測定頻度によってはLibre3の方がコスパがよいと感じるケースもあります。参考までにDexcomの場合、一般に10日ごとにセンサー交換が必要で、1か月あたり約300ドルという計算になります。なお、Libre3・Dexcomいずれも、民間保険に加えて、特別承認(Special Authority)が得られ、免責金額に到達すれば、BC PharmaCareで費用がカバーされることがあります。

私の血糖値のデイリーパターン。ターゲットは少し厳しめにしてあります。
私の血糖値のデイリーパターン。ターゲットは少し厳しめにしてあります。

 最後に、私のここまで(5日間)の血糖の変化を少しご紹介します。装着して最初の頃は、思った以上に高い値を示すことがあり、正直ちょっと焦りました。ところが、データを見続けているうちに「どうすれば上げにくくできるか」を自然に考えるようになったのです。例えば、仕事の合間につい口にしていた甘いものが減りました。その代わりにアプリを開いて血糖の動きをチェックする、そんな小さな習慣ができてきました。さらに、夕食後に血糖が急上昇しやすいことにも気づき、なんと夜に15分ほどジョギングに行くようにまでなったのです。ここまでくると、Libre3さまさまです。これからは自腹で続けてみようかと考えています。そして今年は、お米を少し控えめにしたローカーボも試してみようと思います。

*薬や薬局に関する一般的な質問・疑問等があれば、いつでも編集部にご連絡ください。編集部連絡先: contact@japancanadatoday.ca

佐藤厚(さとう・あつし)
新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。 2008年よりLondon Drugsで薬局薬剤師。国際渡航医学会の医療職認定を取得し、トラベルクリニック担当。 糖尿病指導士。禁煙指導士。現在、UBCのFlex PharmDプログラムの学生として、学位取得に励む日々を送っている。 趣味はテニスとスキー(腰痛と要相談)

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