終活は新しい大人のマナー
叶多範子
12月に入り、今年もいよいよ締めくくりの季節となりました。
街はホリデーの雰囲気に包まれ、少し気持ちが忙しくなる頃です。
そんな年末だからこそ、自分や家族のために見直しておきたいことがあります。
今回は、“オンライン時代の終活”をテーマに、海外で実際に起きた例を紹介します。
先日、とある方(Z子さん)から、深いため息まじりにこんな言葉がこぼれました。
「実は家じゅう探しても、亡くなった息子の財産に関するものが一つも出てこないの。」
紙の明細はすべてオンライン。
ログイン情報もどこにあるのか分からない。
特に最近増えているのは、パスワードが分からないことで
「携帯を開けられない」
「Emailが見れない」
というケースです。
携帯電話もメールも、実は“情報の宝庫”なんです。
友人や仕事先とのやりとり、サブスクの契約状況、届いている通知……。
大切な情報がぎゅっと詰まっています。
Z子さんのケースでは、銀行だけは一緒に開設を手伝ったので把握できていたものの、年金、保険、投資口座……。“存在していたのかどうか”さえ手がかりがない状況でした。
こうした状況は、紙の明細が減り、オンライン管理が当たり前になった今、とくに海外在住者のまわりで増えてきています。家族と離れて暮らすからこそ、誰も情報に触れられないまま時間が経ってしまうことが多いのです。
便利さの裏側で、家族が大切な情報にまったくアクセスできないリスクが、静かに大きくなっているのが今の時代です。
だからこそ、年末のこのタイミングで、次の3つだけ、ぜひ見直してみてください。
1 まずは“存在しているもの”を把握する
銀行や保険、投資口座、クレジットカードなど、持っている“種類”だけ分かればOKです。金額がわからなくても、「どこに何を持っているのか」を把握できるだけで、家族の負担は驚くほど軽くなります。
2 ログイン情報は“どこに保存しているか”を決めておく
パスワードそのものではなく、安全な「保存場所」をメモしておくと実用的です。紙のノートなのか、パスワード管理アプリなのか、家族が後で確認できる“場所そのもの”を決めておくことが大切です。
3 家族に“見てほしい場所だけ”伝えておく
すべて説明する必要はありません。「何かあれば、このノート(フォルダ)を見てね。」このひとことが、将来の大きな助けになります。
終活というと重く感じる方もいますが、
本質は“未来の自分と家族をラクにすること”。 忙しい年末だからこそ、来年の心が軽くなる一手を、小さく始めてみませんか?
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本コラムは終活に関する一般的な情報提供を目的としています。内容には十分配慮しておりますが、必要に応じてご自身での確認や、専門家へのご相談をおすすめします。なお、本コラムをもとに行動されたことによる不利益については、免責とさせていただきます。

「Let’s海外終活~終活は新しい大人のマナー」の第1回からのコラムはこちらから。
叶多範子(かなだ・のりこ)
グローバルライフデザイナー/海外終活アドバイザー。カナダ・バンクーバー在住。
カナダで親しい友人を突然亡くした経験から、「準備があることで、まわりの負担が減り、安心して暮らせる」ことを痛感。現在も相続専門の弁護士アシスタントとして実務に携わりながら、海外で暮らす日本人が将来の不安を少しずつ整理できるよう寄り添いながら活動している。
エンディングノートを通じて、終活を“死の準備”ではなく、これからの自分の人生を整える“私活(わたしかつ)”として紹介している。
家族はカナダ人の夫、2人の息子、愛猫1匹。
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