ハロウィーンが終わり街はあっという間にクリスマスムードになってきたバンクーバー。そんな11月7日、Netflixで『フランケンシュタイン』(ギレルモ・デル・トロ監督)が配信開始となりました。フランケンシュタインと言えば、ハロウィーンのコスチュームでも定番の、あの緑色で顔に傷がたくさんある怪物を思い浮かべる人も多いはず。でもメアリー・シェリーが書いた原作では、フランケンシュタインは怪物を創り出した科学者の名前なんですね。今回お届けするのは、その科学者フランケンシュタインと彼が創り出した怪物、クリーチャーが繰り広げる悲しい物語です。
あらすじ:19世紀ヨーロッパ。科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、死者の体をつなぎ合わせて命を吹き込むという禁断の実験に成功します。
生まれた怪物は「クリーチャー」と呼ばれ、創造主であるヴィクターに拒まれながらも、生きる意味と愛を求めてさまよい始めます。やがてその孤独な怪物は、人間の残酷さと優しさの狭間で揺れ動き、復讐か赦しかを選ぶことになります。
怪物の内側にある、人間よりも人間らしい心
ギレルモ・デル・トロ監督が長年温めてきた構想をついに映像化した『フランケンシュタイン』。デル・トロ監督らしい幻想的でダークファンタジー的な世界感の中で、「人間が命を生み出す」という傲慢が引き起こす悲劇を描いています。
監督の代表作『シェイプ・オブ・ウォーター』も、異形の存在と人間の愛を描いた物語でした。『シェイプ・オブ・ウォーター』では愛による救いがあったのに、『フランケンシュタイン』ではむしろ愛を拒絶された痛みが強く描かれています。それでも監督の怪物の中に見る「人間らしさ」へのまなざしには、変わらぬ優しさが感じられます。その優しさがあるからこそ、「異形の物」を受け入れようとしない人間たちの愚かさとエゴが一層際立って見えるのです。

さらに、創造主と被創造物の関係を父と子の関係にも重ね、生みだした者としての責任にも問いを投げかけています。命を与えながら愛を与えなかった父と、愛されることを知らない子。その断絶こそが、この作品の悲劇の核心なのかもしれません。
デル・トロ版「フランケンシュタイン」は、この絶望的な物語の終わりに、ほんのわずかですが「救い」を忍ばせています。もしクリーチャーが、この究極の「毒親」である科学者を最後に赦し自分を受け入れられたのなら、それこそが本当に救いです。
物語の悲しさとは別に、壮大なセットや衣装、そして俳優さんたち皆、怪物までもがとても美しく描かれています。150分と長めですが、ヴィクターサイドの話とクリーチャーサイドの話に分かれているので、気にならない長さです。細部にまでデル・トロ監督の情熱が宿る世界に浸れることは間違いなしの作品です。
Netflixで配信中です。

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バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
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Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
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