
「Vancouver Sake Fest’25」が10月9日、バンクーバー市で開催された。日本とカナダの酒蔵や輸入業者21社以上が集まった会場には、日本酒や焼酎、ビール、フルーツ酒など150種類を超える酒が並び、さらに日本酒に合うフードも提供された。昼の部は業界関係者向けトレードショー、夜の部は一般向け試飲会が行われ、招待客などを含め約300人が日本の酒と食を楽しんだ。
業界連携で築く、新たな日本酒市場
日本では10月1日は「日本酒の日」。BC州日本酒協会(The Sake Association of British Columbia:SABC)が主催する同イベントは今回が5回目で、これまでも毎回10月に行われ、日本酒を通じてカナダと日本の文化交流を深めることを目的としている。

BC州では約1,000銘柄の日本酒が流通しているが、アルコール税率が高く、州政府が流通を管理するなど厳しい市場環境にある。SABC代表の小西隆之さんは「税金が高くて、最終的に一般の消費者のところに渡らない」と語り、販売構造に課題があると指摘する。
それ以外にもカナダ全体の好みとして、「アルコールを飲む方が少なくなってる気がします。飲んでも低アルコールのものを選ぶ傾向があります」と、若年層を中心にビールやチューハイなど軽めの飲料が好まれる中で、日本酒のように度数の高い酒が選ばれにくいと感じている。
それでも「BC州はアジアからの移民が多く、文化的にお酒を知っている人が一定数います。だからこそ、この地域は日本酒を広める上で重要な市場」と話す。

また今回からは食品スポンサーの協力よる、和牛や日本米を使った料理、加工食品などが並んだ。来場者は酒を片手に食も一緒に楽しめて、会場は1日中賑わっていた。
小西さんは、「飲食業、輸入商社、アルコール業界が一緒にビジネスを考えていかないとマーケットが大きくならない」と述べ、同イベントを「業界が協力しながら新たな市場を育てるための場」と位置づけていると期待した。
来場者からは「お酒だけでなく、食事も楽しめた」「ビールや焼酎、フルーツ酒もあり幅広く味わえた」などの声が多く聞かれた。

茨城県産の「常陸牛」を提供したFrobisher International Enterprisesの担当者、廣見麻里亜さんは、カナダのレストランなどで見かける和牛の多くは日本産ではなかったり、グレードの低いものだったりする現状の中、「本物のジャパニーズ和牛は高価でなかなか手が出しづらい」と話す。だからこそ、「お客さんがたくさん集まるこういう機会に、せっかくなので日本の良い和牛を試してもらって、どういうものかを楽しんでいただきたい」と語った。
また、Azuma Foods (Canada) Co., Ltd.の土橋祐斗さんは、現地生産を行う食品メーカーとして、食を通じた文化理解を促進したいという。「まずは日本のカルチャーというものを知って欲しい」と語り、JETROと連携したジャパンモール事業を紹介していた。

そのほかにも食を軸にした取り組みとしてToyo Rice Corporationが日本米を提供。担当者の石塚貴史さんは、「去年はお米を展示するだけでしたが、今年は実際にホテルのフィンガーフードに使ってもらいました。食べてもらって興味を持ってもらいたい」と語り、体験を通じて日本米の魅力を伝えた。 LA International Tradingはオレンジマダイを提供した。
昼の部では日本酒の味わいや香りを学ぶセミナーも行われた。講師を務めたのは、日本酒のWSET認定講師でCru Classe Hospitality Corp.の代表ララ・ビクトリアさん。参加者に向けて「umami(うま味)の理解」をテーマに、日本酒のテイスティング方法や風味を構成する要素について解説した。



(取材 田上麻里亜)
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