ある家族の肖像~被爆三世代の証言~

2025年は戦後80年であり、被爆80年でもあります。第二次世界大戦は終戦を迎え今年で80年と言われていますが、被爆者にとってはどうでしょうか。被爆二世や三世の中には、医学的には証明させていませんが、癌や心臓病などを抱えそれが一世の被爆の影響ではないかと不安を抱きながら生きている人たちが大勢います。差別を恐れて、自分が被爆者であることを隠してきた一世に続いて、二世三世も自分の生い立ちの一部を未だ公表していない人たちも大勢いるのです。

2023年にテレビ朝日の「報道ステーション」初代統括プロデューサーである上松道夫監督が、祖父鈴木照二、母鈴木カオル、娘万祐子のインタビューを中心としたドキュメンタリー映画「ある家族の肖像~被爆三世代の証言~」を制作されました。

鈴木照二は、旧制広島高等学校の在学中に広島で被爆、その娘である被爆二世は高校時代から体調を崩します。そして三世である孫は、大学生4年生の夏に甲状腺癌の告知を受けます。3世代が戦争や原爆についてそれぞれの想いを語ると共に、未来をどのように生きていきたいと思っているかを語っています。三世代が共に広島を訪れるロードムービーです。

自主映画として上映していますが、是非たくさんの方々に見ていただき、原爆の影響、被爆者の苦悩や不安、不安と共生していく未来を観ていただけたらと思います。今回の上映イベントには、映画の音楽を提供したジャズピアニスト金谷康佑のピアノ演奏と映画に登場している被爆二世である母、鈴木カオルが上映後にトークショーを行います。是非、たくさんの方々にお越しいただきたいです。よろしくお願いいたします。

上松道夫監督作品 58分Blu-ray上映

【あらすじ】

2023年5月、ある家族三世代が神戸から旅に出た。目的地は祖父の被爆地・広島
78年前の薄れゆく“記憶”を取り戻すために…

凄惨な体験をした地で、果たして祖父・鈴木照二は何を思い出し、何を語るのか?
そして被爆二世である母・カオル、三世である娘・万祐子は、何を感じるのか?
カメラの前で、被爆三世代がそれぞれの思いを紡いだ…

祖父・鈴木照二さん(取材時95歳 被爆一世)

  昭和20年8月、旧制広島高等学校1年在学時、勤労動員先の寮内で、原爆に遭遇。大きなけがはなかったものの、翌日から1週間、帰らぬ学友の姿を求めて爆心地付近を捜索。京橋川の河畔で凄絶な地獄絵を見た。長年、体内に悪性腫瘍をかかえており、孫にも被爆の影響が出たのではないかと案じている…

母・鈴木カオルさん (取材時64歳 被爆二世)

 高校生の時、心臓に異常が発見され体調不良の日々を過ごす。 結婚し一女を出産。その後も甲状腺の機能低下や、原因不明の症状に悩まされている。愛娘に甲状腺ガンが発見され、ショックを受ける。福島の原発事故で避難を余儀なくされた子どもたちを、サマーキャンプに招待するボランティアに参加したことから、平和活動を推進することを決意。 ピアニスト・金谷康佑とともに平和のイベントを赤字覚悟で主宰している。

一人娘・万祐子さん (取材時26歳 被爆三世)                 

 たった一人の孫娘で、祖父から可愛がられた。 大学で軽音学部に所属し、ギターとヴォーカルを担当。卒業ライブを控えた四年次の7月、検査で甲状腺ガンが発見された。 医師から「甲状腺の全摘手術で声帯を傷つけるかもしれない。手術の日までに一生分の歌を歌っておくように」と言われた。4カ月後の手術当日、喉を広く切開しリンパも切除する大手術に臨んだ。果たして手術は成功し、再び歌うことができるようになるのか…

朗読・斉藤とも子(女優)

 2023年4月22日、広島のライブ・ジュークで行われた女優・斉藤とも子の朗読と、ジャズピアニスト・金谷康佑のコラボレーションをノーカット収録。爆心地近くで被爆し、小頭症児を出産したある被爆者の原爆症認定裁判での“陳述”を、斉藤とも子が渾身の朗読。恐ろしい原爆の実相と被爆者が背負わされた過酷な運命に胸を震わされる。

音楽・金谷康佑

 ジャズピアニスト・作曲家。兵庫県出身、立命館大学卒業。関西を中心に活動。金谷康佑のオリジナル・アルバム『LYRICISM』から、「気だるい午后のワルツ」「邂逅」「私のこの人生」「家族の肖像~セピア色の寫眞~」など…澄んだピアノ・ソロが、ドキュメンタリー全編を彩る。2023年から、女優・斉藤とも子の朗読と共に「地球・平和、そして未来へ」と題したライブ活動を各地で行なっている。鈴木カオルと中学生時代の同級生。

撮影・編集・監督 上松道夫

 1948年生まれ。1972年、テレビ朝日入社。数々の報道番組を制作。「報道ステーション」初代エグゼクティブプロデューサー。テレビ朝日退職後、フリーランスとしてドキュメンタリー制作を継続。2018年、テレメンタリー『追跡・原爆影響報告書』が、アジア・テレビジョン賞最優秀ドキュメンタリー番組にノミネート。2021年『ラストメッセージ“不死身の特攻兵”佐々木友次伍長』発表。映画雑誌「キネマ旬報」2024年ベストテンの文化映画部門で、奥村賢選考委員より1位に選出される。