バーナビー・釧路姉妹都市60周年、日系センター近くの小道を「釧路レーン」に

「釧路レーン」でテープカット。2025年7月13日、バーナビー市。撮影 斉藤光一
「釧路レーン」でテープカット。2025年7月13日、バーナビー市。撮影 斉藤光一

 ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バーナビー市と北海道釧路市は今年姉妹都市60周年を迎えた記念として、同市にある日系文化センター・博物館近くにある小道を「釧路レーン」と名付け、7月13日には同センターで記念式典が行われた。

 釧路市からは鶴間秀典市長をはじめ市の関係者が出席。バーナビー市からは不在のマイク・ハーレー市長に代わり、市議のダニエル・テトロー市長代理ほか、市議や同市に選挙区があるBC州議員らも参加して、バーナビー・釧路の友好関係をさらに強める新たなスポットで写真撮影などして盛り上がった。

釧路にも「バーナビー」の名前を冠した小道を

 今回初めてバーナビー市を訪問したという鶴間市長は「60年間の歴史をつないでくれた皆さんに感謝します」と語った。釧路が国際化するきっかけとなったのがバーナビー市との姉妹都市提携だったという。

 バーナビー市の北側、サイモンフレーザー大学に隣接するバーナビーマウンテン公園には、姉妹都市を記念して釧路を象徴する彫刻が設置されている。一つは緑の葉をまとったつがいのタンチョウヅル、もう一つはアイヌ族の親子による彫刻された木の柱群。

 阿寒湖温泉で育ったという鶴間市長は、この彫刻の作者が阿寒湖温泉に住んでいた「私の友達のお父さんでよくこのバーナビーのお話を聞かせてくれてました」とぜひ行ってみたい場所の一つだったと笑顔を見せた。

 市長によると釧路には姉妹都市を紹介する記念史や写真はあるが、「バーナビー」を冠したモニュメントや場所はないという。今回はこれを機に「『バーナビーレーン』を作ろうと思ってます」と話す。秋には釧路にバーナビー市からの一行が訪問する。

 文化交流や若者の往来など交流が盛んな両市だが、最近は規模が小さくなってきているという。「今日皆さんからいただいた思いを釧路の市民に伝えて、これからもしっかりバーナビー市と釧路市の交流を続けていきたいと思ってます」と語った。

日系カナダ人コミュニティの思いが詰まった「釧路レーン」

左から、ケン・シノザキさん、釧路市鶴間秀典市長、ヘンリー・ワカバヤシさん、ハーブ小野さん、日系センター事務局長ケーラ・ゴシンモンさん、前列にニック・スエヨシさん。「釧路レーン」を説明するプレートを囲んで。2025年7月13日、バーナビー市。撮影 斉藤光一
左から、ケン・シノザキさん、釧路市鶴間秀典市長、ヘンリー・ワカバヤシさん、ハーブ小野さん、日系センター事務局長ケーラ・ゴシンモンさん、前列にニック・スエヨシさん。「釧路レーン」を説明するプレートを囲んで。2025年7月13日、バーナビー市。撮影 斉藤光一

 「釧路レーン」は日系センターに隣接する日系ホームの西側にある小道に名付けられた。発想したのはヘンリー・ワカバヤシさんとケン・シノザキさん。当初は150本の紅葉と桜を植える計画だったが、BCハイドロ(電力会社)、フォーティスBC(ガス会社)、バーナビー市からの許可が出なかったため植樹の計画は流れてしまったという。しかし姉妹都市60周年もあり、なにかできないかと発案したのが「釧路レーン」だった。紆余曲折あったがなんとか実現したとワカバヤシさんは振り返る。

日系ホームの西側にある「釧路レーン」。日系ガーデナーたちによる並木も。2025年7月13日、バーナビー市。撮影 三島直美
日系ホームの西側にある「釧路レーン」。日系ガーデナーたちによる並木も。2025年7月13日、バーナビー市。撮影 三島直美

 小道は日本の並木を思い起こさせる志向で、ニック・スエヨシさんやバンクーバー日系ガーデナーズ協会が手掛けた。

 シノザキさんは「思ったよりもいい出来栄えになった」と満足そうだ。「ガーデナーズ協会の場所に見合った美しい風景を作り出すセンスのおかげ」と感謝した。ワカバヤシさんは置かれた6つの岩について「6という数字は北海道釧路のアイヌ民族にとって意味のある数字だというのは(式典で)紹介されていた通り」。アイヌでは「6」は数字を示すと共に「たくさん」という意味があり大切な数字とされているという。「今回が60周年ということで(6つの岩と共に)記念となったと思う」と語り、「これからはずっと手入れをしていかなくてはいけない」と笑った。

 「釧路レーン」と周辺の道路には、姉妹都市60周年を祝うバナーが掲げられていた。バナーをデザインしたのは日系センターでデザイン・展示コーディネーターを担当する日系4世のダニエル・ハルミ・ジェティさん。デザインのアイデアは日系センターの資料などを調べて類似点を見つけるところから始めたという。そのデザインの一つが、タンチョウヅルとオオアオサギ(great blue heron)。「タンチョウヅルは釧路市の鳥で、オオアオサギはバーナビー市でよく見かける鳥なので」と両都市の共通点としてデザインしたと話す。「姉妹都市関係を記念するこうした行事はとても良いことだと思う」とジェティさん。このバナーを見た人に2つの都市の友好関係を思ってほしいと語った。

バナーをデザインしたダニエル・ハルミ・ジェティさん。オオアオサギ(左)とタンチョウヅルをデザインしたバナーの前で。2025年7月13日、バーナビー市。撮影 斉藤光一
バナーをデザインしたダニエル・ハルミ・ジェティさん。オオアオサギ(左)とタンチョウヅルをデザインしたバナーの前で。2025年7月13日、バーナビー市。撮影 斉藤光一

 日系文化センター・博物館が設立されたのは2000年(ナショナル日系ヘリテージセンター)で、姉妹都市関係よりもかなり若い。同センター代表のハーブ小野さんはこれまで姉妹都市関係を築いてきた先人に感謝するとともに「日系カナダ人コミュニティの推進とカナダで日本の文化を紹介する役割を担うセンターが姉妹都市関係に関わることはとても重要なことだと思っている」とバーナビー市と協力してカナダでの日本文化を継承していく重要性を話す。そして今回の「60周年の記念行事を共に祝えたことをうれしく思います」と語った。

式典で披露された楽一による獅子舞。2025年7月13日、バーナビー市。撮影 斉藤光一
式典で披露された楽一による獅子舞。2025年7月13日、バーナビー市。撮影 斉藤光一

(取材 三島直美)

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