
カナダで暮らす人々が同郷の絆を深め合う場として長年親しまれてきた県人会。同じ都道府県出身者が集まり、互いの近況を語り合いながら、地域の伝統や文化を次の世代へと伝える貴重な邦人・日系人コミュニティとして、現在でも各地で継続されている。
トロントでは、各都道府県人会をまとめる「トロント都道府県人会・連合会」が2022年に発足した。「一つ一つの都道府県人会はそれほど規模が大きくなくても、一緒になって活動すればイベントでも存在感を表すことができる」とトロント新潟県人会会長で連合会副代表のプオポロ浩子氏は話す。
代表はトロント千葉県人会会長の原あんず氏。現在は全カナダ日系人協会(NAJC)新移住者委員会(JNIC)と共催で、7月5日の「終戦80年 広島・長崎を通して戦争を考える-次世代と共に」のイベント開催に向け準備に忙しい。
県人会の存在意義が近年薄まっているという声もあるが、自分が暮らした土地に愛着があるのは今も昔も変わらない。
カナダで最初の県人会発足は、1902年8月2日、のちにカナダ広島県人会と改称する「芸備同志会」。戦前のバンクーバーには日本から多くの人が移民し、いくつもの県人会が創設された。当時は同郷からの移住者を迎え入れ、生活を支え合う役割を担っていた。
いまは各地で日本という同郷でイベントや集まりをすることが多いが、「各都道府県にはまだまだ知られていない埋もれた良い話がたくさんあるんです」とプオボロ浩子副代表。それを連合会で開催するイベントなどで各都道府県が紹介できる機会があれば県人会が盛り上がると話す。
戦前の県人会は1942年の日系カナダ人強制収容政策で解散してしまったが、戦後再開した県人会も多い。そうした戦前からの伝統を引き継ぐ県人会と、新移民の若い世代が作る県人会とが協力して日系コミュニティを盛り上げていけたらとトロント都道府県人会・連合会の意味があると原代表。県人会を通して日本文化の発信と日系コミュニティ、日系・日本に関心のある多くの人々をつないで次世代へとバトンを渡す、そんな役割が担えたらとこれからますます活動を活発にしていく。
***
7月5日「終戦80年 広島・長崎を通して戦争を考える-次世代と共に」はトロント市在住で広島での被爆体験を持つ平和活動家サーロー節子さんをゲストスピーカーに招き、オンタリオ州ハミルトン市でドキュメンタリー映画「平和への誓い」を上映後、Q&Aが行われる。会場では連合会に参加している県人会を紹介するコーナーも設置される。イベントはバンクーバー市でも同時開催する。
トロント都道府県人会連合会:https://www.torontorengokai.com/
(記事 三島直美)
合わせて読みたい関連記事