「『瓢箪から駒』を数える」ひょうたんアーティストあらぽんさんバンクーバーでワークショップ

楽しそうに自身の経験を話す、あらぽんさん。2024年11月26日、バンクーバー市で。写真提供:ウィトレッド太郎さん
楽しそうに自身の経験を話す、あらぽんさん。2024年11月26日、バンクーバー市で。写真提供:ウィトレッド太郎さん

 東京で2024年夏に個展を開いた2カ月後にはバンクーバーでワークショップを開いた。ひょうたん芸人兼ひょうたんアーティストとして活動するあらぽんさんがバンクーバーに来るきっかけは佐藤広樹さんとの出会いだった。

前編:「ひょうたんアートで『新世界』を開く」ひょうたんアーティストあらぽんさん、バンクーバーでワークショップ

東京足立区出身で意気投合

 あらぽんさんが佐藤さんと出会ったのはエコ関連のイベントがきっかけだった。佐藤さんはバンクーバーではGifts and Things他2店舗のオーナーとして忙しくしているが、東京でも環境問題を考える機会を作るエコ関連イベントを数年前から開催している。

 「そのエコイベントに1年くらい前に来てくれたのが最初です」と佐藤さんが説明する。「あらぽんさんのことも、ひょうたんのことも、知っていました。結構有名でしたよ」と笑う。二人とも東京都足立区出身というつながりもあった。

 佐藤さんは何か一緒にできればと思っていたがコンビの時はなかなか機会がなかったと振り返った。解散して一人で動けるようになって「やっと一緒にできるようになりました」。

 バンクーバーでのワークショップについて話し合ったのは東京での個展開催の約1カ月前。それまでも何度か東京でイベントを一緒にやっていた。佐藤さんは「東京で一緒にワークショップをやった時にかなり盛況でした。これはあらぽんさんという知名度とひょうたんという組み合わせですごいおもしろいことができるなって思って。なんとかカナダでできないかなと考えました」。

 あらぽんさんは「3回くらいの打ち合わせでカナダ行きを決めました」とほぼ即決。「行くしかないと思って。僕の中ではひょうたんで繋がっているので。僕の前にそうやって現れる方とは何か縁があるんだろうなって思って」。

 そうしてバンクーバーでのワークショップが決まった。

バンクーバーで大成功のひょうたんアートワークショップ

ワークショップの様子。写真提供:ウィトレッド太郎さん
ワークショップの様子。写真提供:ウィトレッド太郎さん

 バンクーバーで佐藤さんと共にワークショップ開催に尽力したのは、日本カナダ商工会議所の副会長ウィトレッド太郎さん。「ワークショップだと年齢問わず楽しめると思ったし、アートなので言語もあまり気にしなくていいかなと」。バンクーバーの参加者の中には日本語を話さない人も多くいたと振り返った。「すごく幅広く皆さん楽しまれたという感じです」。

 それは参加者が作った作品にも表れている。ユニークなのはひょうたんを見たこともない人が楽しんでいたことだという。「一つひとつ形も少しずつ違うから、海外でもおもしろいだろうなと企画段階から思っていました」。

 あらぽんさんも「めちゃくちゃ皆さん楽しんでくれているなと思って、びっくりしました」。それに日本で開催するより多くの人が集まったことにも驚いたという。「過去最大人数でした」と笑う。

バンクーバーでのワークショップで参加者がデザインした色とりどりのひょうたん。クリスマスオーナメントとして作ったつわものも。2024年11月26日、バンクーバー市。写真提供:ウィトレッド太郎さん
バンクーバーでのワークショップで参加者がデザインした色とりどりのひょうたん。クリスマスオーナメントとして作ったつわものも。2024年11月26日、バンクーバー市。写真提供:ウィトレッド太郎さん

 作品にも大いに刺激を受けたと話す。「海外の人たちは日本とは全然感覚が違っていて、できる作品が全然違うんです。それが新鮮でした」。バンクーバーではマーブリングはなかったものの、和紙を貼ったり、色を塗って絵を描いたりして、それぞれにデザインした。「絵の色合いとか、和紙の使い方が斬新というか。中には和紙の上から色を塗る子どももいて。もともと色が付いている和紙なのにそこに色を付けるという。あれは僕にない発想だったので、アートでも使えるなと、色々勉強になりました。かなりレベルが高かったです」。

次はカナダで個展開催を目指す

 バンクーバー滞在中には美術館も積極的に回った。「すごい刺激的で」。ウィスラーで巡った美術館では、自由に入れて、親切に詳しく作品を説明してくれる人がいた。「僕の知らない技法もあって、ひょうたんで使えるなって思ったものは写真も撮らせてもらいました。しかも1日1枚は作品が売れていて、その値段もすごくて」。美術館巡りは色々なことが刺激的だったと話す。

 自分の作品としては「カラフルな色を使った立体的なアートをこれからも制作して、現代アートとして広められたらいいなって」。キャンバスだけでなく、置物型の作品も手掛ける。

 それでも基本は変わらない。自分が育てたひょうたんで唯一無二のアートを作っていく。その年によって収穫できるひょうたんの種類も違うという。「今年は小さいのができなかったんです。でも逆に、最初に自分がひょうたんに出合った時に買いたいと思った6000円ぐらいのものが爆発的にできて。だから今年はこれを作れってことなんだなと思って」。自然に抗わずに共存していく。「だから来年はアートとして作品が広まっていくんだろうなって」期待している。

栽培して実った大きなひょうたんと一緒に。写真提供:あらぽんさん
栽培して実った大きなひょうたんと一緒に。写真提供:あらぽんさん

 スタートダッシュに大成功したひょうたんアートだが、その秘密は夢や希望を語ること。「自分だけでは絶対に叶えられないのでいろんな人に夢を話すようにしています。それがコンビを解散して一番変わったところかなと思います」。それまでは「これできる、あれできるって言ってたんです。それを聞いた人は『ああ、そうなんですね』で終わってしまいます。でも一人になってから不安が大きくて、できないことが多いと感じてたんです」。

 それで助けを求めるようになった。「これやりたいけど、どうしたらいいですかね?っていう言葉に自然と変わってきました。そしたらいろんな人が手を差し伸べてくれて。こうした方がいいんじゃない、ああした方がいいじゃないって。佐藤さんもそうだし、皆さんがこうして助けてくれることが増えました。だから応援してもらっているのが分かるから自分もできることはやろうと思うように変わりました」。

 次はカナダで個展を開きたいと話す。佐藤さんも次はアートの個展としてできたらと応援する。ウィトレッドさんは個展を通じてワークショップとは違った人たちを引き付けられないかという。「そこから可能性が大きく広がるような気がしています」とひょうたんアートの可能性に期待する。

 あらぽんさんはバンクーバーで個展ができて、ワークショップではマーブリングができたら「また皆さんと交流も深められるし、アートがもっと身近になるんじゃないかなって思っています」と語った。

大切にしている言葉「瓢箪から駒」を数える

 バンクーバーの感想を聞くと「すごくいいなって」。海外は今回で3回目くらいだと言い、「普通に夜、怖い思いをせずに歩けたのはカナダだけでした」と笑う。「人が優しいというか、ガツガツしていないというか。キリキリとせわしくしていないという感じがします」。目が合えば「Hi、みたいな。すごくいいですね」。

 バンクーバーでも声を掛けられて「カナダで『あらぽんさんだ』って言ってもらえるのはやっぱりうれしいです」と、バンクーバーでの滞在は楽しいことが多かったようだ。それもひょうたんが繋いだ縁と思っている。

 そんなあらぽんさんの座右の銘は「瓢箪から駒」。「僕は本当に『瓢箪から駒』という言葉をめちゃくちゃ大切にしています」と目をクリクリさせる。意味は、「意外な所から意外な物が出ること、ふざけて言ったことが実現することのたとえ」だ。

 あらぽんさんは「僕に今ひょうたんのことを教えてくれているおじいちゃんから『ひょうたんをやってるんだったら絶対に瓢箪から駒の数を数えなさい』って言われて。何気なく見過ごしている幸せがたくさんある、それを分かりやすく言葉にして教えてくれているのがそれかだから数えなさいって。そしたらすごく楽しくなるからって言われたんです」。

 だから、小さいものでいいので自分のひょうたんを身に着けて「瓢箪から駒を探して数えたら、僕がそうだったように、人生の楽しい見方ができるんじゃないかなと思うので、ひょうたんを身近に置いてほしいと思いますね」と語った。

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 インタビュー中、常に笑顔で楽しそうにひょうたんについて話すあらぽんさん。そのポジティブなエネルギーは周りの人を幸せにする力がある。

 そんなあらぽんさんの究極の目標は、同じ足立区出身のビートたけしさんのように、「アートで足立区から世界へを表現したい」だ。

 足立区という町に育てられた恩返しとして、「アートで海外で成功して、アーティストとして世界でも認められて、足立区出身だよって言えるのが一番いいですね」と笑った。

 まずは今年の夏にバンクーバーでの個展開催を目指している。

(取材 三島直美)

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