Anatomy of a Fall(ジュスティーヌ・トリエ監督)犯罪ミステリーの影にある国際結婚夫婦の確執の物語

「Anatomy of a fall 」より。Courtesy of VIFF
「Anatomy of a fall 」より。Courtesy of VIFF

 バンクーバーでも国際映画祭(VIFF)がいよいよ始まりましたね!映画好きの皆さんならカンヌ、ベルリン、ニューヨークと世界各地で開催されている映画祭のニュースを追いながら、気になっている作品がバンクーバーでも観られる日を心待ちにされていたのではないでしょうか。

 今回ご紹介する作品「Anatomy of a Fall」は、カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した注目作。嬉しいことにVIFFでも2回の上映が予定されているのでよければご覧になってみてください。

 あらすじ-フランスの山間の家で暮らすフランス人の夫サミュエルとドイツ人の妻サンドラ、そして盲目の息子ダニエル。ある日サミュエルが屋根裏の窓から転落死、事故か他殺か分からないまま妻に殺人の嫌疑がかけられ裁判が始まる。現場にいたのはサンドラと第一発見者のダニエルのみ。裁判を通して次々と明るみにされる夫婦間の軋轢。妻は夫を殺したのか?それとも・・・?

 法廷で夫婦の確執や親としての葛藤などプライベートな問題を次々と検察に明かされ激しい追及を受けるサンドラ。夫より成功している妻、夫以外と性交渉を持ったことがある妻、そして仕事がうまくいかず悩んでいた夫の姿などがどんどん浮き彫りに。その裁判の過程を見てタイトルにある「転落の解剖」が実は夫婦関係の「転落」も意味していたのか、と気づかされます。これは犯罪ミステリーでありながら、夫婦の物語でもあったんだ、と。

 印象的だったのは、サミュエルが2人の共通言語である英語での生活をストレスに思っていると怒り、対するサンドラも母国を離れてフランス人に囲まれて暮らすことを我慢していると訴えるシーン。そしてフランス語中心の裁判中にサンドラが「英語でよいですか」と頼むシーンもあったり、国際結婚と海外暮らしのリアルな描写がふたりのストレスをよく表しているなと思いました。

 主演のサンドラ・フラーの演技はとても説得力があり、ある瞬間は実は彼女が犯人かもと思わせ、次の瞬間はいや無実だろうと応援したくなったりと圧倒されっぱなしでした。すごい女優さんだなと思ったら、なんと彼女は同じくカンヌで次点にあたる審査員特別賞(グランプリ)を受賞した「The Zone of Interest 」(ジョナサン・グレイザー監督)にも出ており、人間の底知れぬ恐ろしさを見せてくれています。こちらもVIFF で上映されるのでよければご覧になってみてください。

 「Anatomy of a fall 」は9月30日と10月3日に上映。VIFFは10月8日まで開催です。上映スケジュールはhttps://viff.org/でご確認を。

「Anatomy of a fall 」より。Courtesy of VIFF
「Anatomy of a fall 」より。Courtesy of VIFF

Lalaのシネマワールド
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バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
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Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
良いストーリーには世界を豊にるす力があると信じてます
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