“Past Lives”
カナダ育ちの韓国人女性監督が贈るラブストーリー

映画
映画 "Past Lives"; Photo courtesy of Elevation Pictures

こんにちは。バンクーバー在住の映画・ドラマライター、Lala です。

映画館で観られる大型映画だけでなく、ストリーミングサービスのドラマや小さな劇場でのインディペンデント作品まで、おススメの作品をどんどん紹介していけたらと思っています。

今回紹介するのはこちら。

「Past Lives 」(2023)セリーヌ・ソン監督

年初に開催されたサンダンス映画祭で絶賛を浴びて、2月のベルリン映画祭でも好評だった「Past Lives」(セリーヌ・ソン監督)。ずっと観たいなと思っていたところやっとバンクーバーでも上映になったので行ってきました。実はラブストーリーはそこまで好みではない私ですが、この映画は別格でおススメです。

12歳の時に韓国からカナダに家族と移り住み、現在はニューヨークでアメリカ人の夫アーサー(ジョン・マガロ)と暮らすノラ(グレタ・リー)。そんな彼女に会いに、幼い頃韓国で特別な相手だったヘ・ソン(ユ・テオ)が訪ねてやってくる。ニューヨークの街を観光するノラとへ・ソンの距離は時を超えてあっという間に縮まるが・・・というストーリー。そんな二人とアーサーの姿を観客は静かに見守り、時にハラハラしたりもするわけです。

映画自体はとても静かなトーンで進みます。「で、結局ノラは誰を選ぶの?過去なんて美化されるもんなんだから現実を見なさい!」と気持ちが早まる私も、登場人物たちの会話と演技が素晴らしくすごく豊かな小説を読んでいるように引き込まれていきました。今生きている人生って過去の何重もの自分の選択で作られているんですよね。

もしもあの時違った選択をしていたら、という「もしも・・・」のストーリーは珍しいものではないけれど、ここですごく私に刺さったのはノラが移民の子という背景。韓国を出ることを選んだのは彼女ではない点なんですよね。もしあのまま韓国で育っていたらヘ・ソンと恋人になっていたのか、それ以上に韓国人としてどんな人生だったのだろう、と考えてしまいました。実はソン監督自身も子どもの頃に家族とカナダに移住したそうです。10代での移住は言葉の習得だけでなくアイデンティティの形成にもとても大きな影響を与えるものです。北米で育ったアジア系として今の居場所を築いた彼女が紡ぐ「もしも」の物語は、カナダで移民として住んでいる私の中にもとても深く響きいろいろ考えさせられました。

Past Lives・・・「前世」、というタイトルの意味にもつながるエンディングは本当にもうヤラレタ!という感じです。俳優たちの演技、セリフ、間の取り方、ロケーションやカメラワークなども完璧で素晴らしいのだけど、そんな小難しい事は抜きにしてラブストーリーなんて普段は興味のない私も久しぶりにジーンときてしまうほどでした。

ソン監督はこれが監督デビュー作。半分以上?韓国語のアメリカ映画、おまけに切ない静かなラブストーリーなんて、少し前なら絶対に資金を集めることも配給先を見つけるのも難しかったと思われます。この流れに乗って今後も素敵な作品をどんどん作ってもらえたらな、と期待させてくれる一人です。

カナダではElevation Picturesが配給。

バンクーバーでの上映が少なすぎるので、正直もっと上映すべきー!と付け加えておきます。

バンクーバーでは5th Ave Cinemaで上映です。

映画 "Past Lives"; Photo courtesy of Elevation Pictures
映画 “Past Lives”; Photo courtesy of Elevation Pictures
映画 "Past Lives"; Photo courtesy of Elevation Pictures
映画 “Past Lives”; Photo courtesy of Elevation Pictures

Lalaのシネマワールド
映画に魅せられて

バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライターLalaさんによる映画に関するコラム。
旬の映画や話題のドラマだけでなく、さまざまな作品を紹介します。掲載は不定期です。

Lala(らら)
バンクーバー在住の映画・ドラマ好きライター
大好きな映画を観るためには広いカナダの西から東まで出かけます
良いストーリーには世界を豊にるす力があると信じてます
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